4-2. “粘膜免疫の重要性(Mgワクチンを例として)” メルボルン大学教授

4-2. “粘膜免疫の重要性(Mgワクチンを例として)”
メルボルン大学教授
Dr. Kevin Whithear 獣医学博士
講 演
粘膜免疫の重要性(Mgワクチンを例として)
メルボルン大学教授
Dr. Kevin Whithear 獣医学博士
ご紹介ありがとうございました。何回か日本に来ていますが、春、桜の季節に来るのは
初めてですが、絵葉書で見るより美しい景色に感激しています。
The Importance of
Mucosal Immunity
粘膜免疫の重要性
MG Vaccines as a Case Study
MG生ワクチンを例にして
Kevin Whithear BVSc PhD
School of Veterinary Science
The University of Melbourne
Australia
今日のテーマは、「ニワトリにおける粘膜免疫の重要性」で、Mg生ワクチンを例にして
お話したいと思います。
粘膜免疫

粘膜面に感染する以下のような病原体で非常に重要
 サルモネラ
 マイコプラズマ
2
粘膜免疫とはどういうものかといいますと、粘膜表面の表面上皮細胞に起こる免疫応
答で、これには呼吸器と消化管等で見られるものです。粘膜免疫は、粘膜表面に感
染する病原体で非常に重要です。消化管ではSEのようなサルモネラや、呼吸器では、
Mgのようなマイコプラズマ等があります。ただこれらの病原体の自然感染が起こる場
合のメカニズムはただ単に粘膜免疫が関与するだけでなくもっと複雑です。
ワクチン免疫は粘膜上にあるこれらの病原体をターゲットとするのが理想的です。そう
する事によりそれらの病原体が傷害を起こすことを効果的に防ぐことができます。これ
からマイコプラズマ生ワクチンを例にとって、この粘膜免疫の重要性をお話ししたいと
思います。
MG 感染とは
正常な気管
気管粘膜
粘膜下織
気管軟骨
正常な気管の断面
3
まずMgと粘膜免疫について説明する前に、Mgがどのように病気を起こすかというこ
とを簡単にご説明したいと思います。Mg感染のメカニズムを理解するには、ニワトリの
呼吸器の構造を知っておかなくてはなりません。
ニワトリの呼吸器は副鼻腔、口腔、気管それから気管支からなります。これが正常な気
管の組織像ですが、一番下に気管軟骨、その上に粘膜下織、それから気管粘膜が
一番内側にあります。
今日お話しする粘膜免疫の中で一番重要な役割を果たすのがこの気管粘膜で、この
表面は絨毛を持った細胞と、粘液分泌腺からなっています。Mg感染が起こった場合、
気管はどのように変化をするのでしょうか。この矢印がMgの通常の感染ルートを示し
ています。多くの場合は近くのMgに感染しているニワトリからの感染ですが、まれに
非常に離れたところから空気感染するようなこともあるようです。Mgの感染が起こると、
このピンクで示した呼吸気道で増殖を始めます。
MG 感染とは
呼吸器道への感染
MGが気管粘膜に接着
MGが気管粘膜に接着
4
これは先ほどの写真よりもかなり倍率の高い電子顕微鏡の写真です。マイコプラズマ
が気管の粘膜上の絨毛に接着しているのが見えると思います。マイコプラズムは気管
粘膜上皮に感染する病原体です。まず気管粘膜上皮に感染して障害を起こします。
私たちが考えている良いワクチンというのは、気管局所に働いて局所免疫を発揮さ
せるようなワクチンです。ですからワクチン接種により惹起された免疫で、その後に野
外株の感染が起こったときに十分な防御効果を発揮させることができます。
もう一つ重要なことは、野外の強毒Mgが鶏群に感染した場合、それが持続感染を起
こして、かなり長い間、鶏群の中に残っているということがあります。このような持続感
染が起こっている場合には、感染しているニワトリはキャリアとなって他の感染していな
い感受性のあるニワトリに感染を起こす原因になります。これがMgをコントロールする
上で非常に大きな問題となります。ですから、生ワクチンを開発するにあたって非常
に重視したポイントは、ニワトリに持続感染する弱毒生ワクチン株の確立です。ワク
チン株が持続感染するということは、継続的に免疫刺激を与えてニワトリを長期間Mg
感染から防御してくれると考えられます。
Mycoplasma 感染とは
強毒 MG 株感染後の気管の病変
強毒MG
感染による粘膜の肥厚
強毒MG感染による粘膜の肥厚
5
次に、強毒Mgが感染した場合、気管はどの様な変化を起こすかを簡単にご説明い
たします。先ほど正常な気管像をお見せしましたが、これが強毒Mg感染後の気管粘
膜像です。このように非常に肥厚します。この肥厚は主にリンパ系細胞や炎症細胞等
が集まることによって起こります。また、気管の表面にある絨毛が消失し、気管内に炎
症産物が認められます。Mgの病原性を気管粘膜の厚さで評価するという方法をいま
使っております。この方法は日生研の布谷先生らによって報告されたもので、ワクチン
の有効性を評価するのにも有用です。というのは、ワクチンが有効であれば攻撃に対
して防御し、粘膜の肥厚が見られないからです。
MG ワクチン
選択肢は?


不活化ワクチン
生ワクチン
 F株

弱毒株
 Mg生ワクチン(NBI) ( ts-11 )
 6/85
6
これからMGワクチンのお話になりますが、まず現在どのようなMgワクチンが市販され
ていて、どのような選択肢があるのでしょうか。基本的には2つのタイプのワクチン、即
ち不活化ワクチンと生ワクチンです。不活化ワクチンの有効性については、「いい」と
いう報告もあれば「悪い」という報告もあり、その評価は様々です。たぶんその理由と
しては、アジュバント、特にオイルアジュバントの効果の違いによるものではないかと思
います。その点、生ワクチンは、有効性であるとの報告が多数あります。生ワクチン
にも2種類あり、一つはF株のように若干病原性が残っている株と弱毒されたほとんど
病原性がない株です。F株というのは、粘膜免疫を惹起するのに非常に有効な株で
すが、ただ中程度の病原性を残しております。現在アメリカ等では使われております
が、これは病原性が残っていますので選択としてはお勧めすることはできません。
現在市販されている弱毒株は2種類あります。一つは、我々が開発したMg生ワクチ
ン(NBI)で株名としてはts-11 株です。もう一つは、インターベット社の6/85 株です。
これからは、主にこの弱毒株についてお話します。ただ報告されている文献等では、
Mg 生ワクチン(NBI)のts-11 株に関するものは比較的多いのですが 6/85 株につい
てはほとんどありませんので、お話の中心はts-11 株、すなわちMg生ワクチン(NB
I)についてです。
MG ワクチンに何を期待するのか?




安全性
気道での強固な局所免疫の付与
 気道粘膜面での抗原刺激
免疫の長期持続
 気道粘膜面での持続的抗原刺激
生産性の改善
7
Mgワクチンの開発に当たりMgを使用する立場の方々がどういうことをMgワクチンに
期待するのかを考えました。まずワクチン株に病原性がなく安全でなくてはなりません。
2つ目は、接種したワクチンが効果を発揮するためには、気道で強固な局所免疫を付
与しなくてはなりません。そのためには、接種したワクチン株が気管粘膜上に定着・増
殖し、そこで持続的な抗原刺激を与え続けなくてはなりません。
ワクチンを気管粘膜上に接種する方法としては、ニワトリの分野では通常スプレーと点
眼の2つの方法があります。6/85 株もしくはMg生ワクチン(NBI)、どちらも効果は接
種量に依存します。ですから、効果を発揮するための必要最小限の量以上を接種す
る必要があります。そのためMg生ワクチン(NBI)では、点眼を接種方法として採用し
ました。点眼は非常に手間はかかりますが1羽1羽接種するので必要な量を均一に接
種するのに適しています。スプレーは非常に簡便な方法ですが、ただすべての鶏が
均一に、最小有効量以上のワクチン菌株を投与することができるかは非常に疑問で
す。
3つ目として、このワクチンは種鶏や採卵鶏に使用されるので、免疫が長期間持続し
なければなりません。ですからこのためには、気道粘膜表面で持続的な抗原刺激を
与えなければなりません。そしてワクチンを使う最終的な目的は、ワクチン接種により
生産性を改善させるということで、これが非常に重要になります。これから、これらの点
についていくつかデータをお示ししながらもう少しお話しいたします。
弱毒Mg生ワクチンの安全性
Mg 生ワクチン(NBI)
6/85
弱い
弱い
感染性
弱い*
非常に弱い*
産卵に対する影響
ない**
?
卵質に与える影響
ない**
?
他のウイルスワク
チンとの併用
可
不可
要因
病原性
*Ley et al (1997) Avian Diseases 41:187-194
**Branton et al (2000) Avian Diseases 44:618-623
8
このスライドは弱毒Mg生ワクチンの安全性に関して既に学会等で発表されているデ
ータをまとめたものです。病原性については、両株とも弱毒された株ですので、病原
性は非常に弱く、安全なワクチンです。
次に感染性についてです。接種したワクチン株が他の感受性鶏に感染を起こさない
という点です。感染性については、ノースカロライナ州立大学のレイ博士によって「ア
ビアンディジーズ」で報告されています。Mg生ワクチン(NBI)は、非常に同居感染性
は弱く、ケージでしきられ直接接触がない場合には場合には感染はしませんが、同じ
ケージ内では感染することもあります。6/85 株の感染性は非常に弱いと分類され、同
じケージに入っていてもほとんど感染は起こりません。ですからこの同居感染性が非
常に弱いということは、接種したワクチン株が IBD のように広がっていくことは期待でき
ませんから、1羽1羽確実に免疫をする必要があります。ですから 6/85 株をスプレーと
いう接種方法が適切な方法であるかは非常に疑問です。
また、接種したワクチン株により産卵率や卵質に対し悪影響を与えないという点も非
常に重要です。ブラントンらの最近の報告によれば、Mgフリーの鶏群にMg生ワクチ
ン(NBI)を接種した例では、産卵率や卵質に全く悪影響を及ぼさなかったということで
す。私が知る限り、6/85 株ではそういう研究がまったくなされていません。
もう一つの安全性の目安として、他のウィルスワクチンと併用ができるかというのも一つ
の指標になります。Mgと弱毒ウィルスワクチン株が同時に感染することにより病原性
が増強するということはよく知られています。Mg生ワクチン(NBI)では、種々の弱毒
ウィルス生ワクチンと同時に接種しても、まったく問題がないことを確認してあります。
それに対して、インターベットの使用説明書にもありますが、6/85 株を接種した場合、
その前後2週間は、他の弱毒ウィルス生ワクチンを使用してはならないことが明記し
てあります。
粘膜への免疫刺激
ワクチン株の気管での持続感染*
M g
(% )
80
離
40
分
100
20
生 ワクチ ン (
6/85 t
60
一生涯持続
0
1
3
ワ ク
6
9
チ
ン
12
15
`
*Ley et al (1997) Avian Diseases 41:187-194
9
続いて粘膜への免疫刺激についてお話ししたいと思います。このスライドでお示しし
ているのは、ワクチン接種後かなりの長期間にわたってワクチン株が気管で定着して
いるということです。この仕事もレイ博士によって行われたもので、この黄色い線がMg
生ワクチンを点眼で接種した群で、6/85 株接種群は青い線で示しています。
この試験では、ワクチン接種後、1週から 15 週まで定期的に気管を採材して、そこか
らMgの分離を行なっております。Mg生ワクチン(NBI)を接種した群では、分離時期
によって若干異なりますが 60%から 90%ぐらいのニワトリからワクチン株が分離されて
おります。それに対して6/85 株では、最大に分離されても 20%の鶏からしかワクチン
株は分離されていません。ですからこのデータから言えることは、6/85 株は、Mg生ワ
クチン(NBI)の ts-11 株よりも、その気管粘膜への感染率というか定着率が圧倒的
に低いということです。また、私が行った試験では、Mg生ワクチン(NBI)を点眼で接
種した群からは、67 週齢時になっても気管よりワクチン株が分離されていますので、ワ
クチンの効果は一生涯持続するというふうに私は考えています。
気道における強固な局所免疫
Mg生ワクチン(NBI)と不活化ワクチン の比較
群
Mg 生ワクチン( NBI)
( ts-11)*
n
凝集
スコア
粘膜の
厚さ
10 1.8±1.1
b
不活化ワクチン *
10 3.7±0.5
c
無接種対照*
10
0
c
無攻撃対照
10
0
a
5.7-倍
5.7-倍
a,b,c
*ワクチン接種後4週で噴霧攻撃
1.6-倍
1.0-倍
P<0.05
10
次に気道局所に強い局所免疫を確立できるかについて考えてみたいと思います。生
ワクチンと不活化ワクチンの比較です。というのは6/85 株ではこのようなデータが得ら
れていませんので、ここでは Mg生ワクチン(NBI)と不活化ワクチンを例にとって、気
道における局所免疫の強さについてご説明したいと思います。
左の列は試験群で、この☆印(星印)がついているのは、ワクチンを接種してから4週
で噴霧攻撃をしたという意味です。ですから第 1 群は、Mg生ワクチン(NBI)を接種後、
攻撃した群、2群は不活化ワクチンを接種後、攻撃した群、そして3群は、ワクチン無
接種で、攻撃を行った群です。最後の群はワクチン無接種で、攻撃もしていない無接
種・無攻撃対照群です。ここで、2 列目は試験に使用した1群の羽数で、各群 10 羽を
使用しております。3 列目は、平板凝集反応の強さをスコア化したもので、スコアは、0
から4+まで、凝集の強さで分類しています。0の場合はまったく凝集が認められない
もの、すなわち陰性です。1+は非常に弱い凝集、4+は非常に強い凝集というふう
に表しています。
この凝集スコアは、ワクチンを接種してから4週後の攻撃前に測定したものです。です
からそれぞれのワクチンによる抗体応答を測定したものです。Mg生ワクチン(NBI)接
種群のスコアは 1.8 で、中程度の強さの凝集を示しています。それに対して不活化ワ
クチン接種群では 3.7 ですから、最も強い凝集スコアの4に近い非常に強い凝集抗体
反応を示しております。ですから凝集抗体のみを見れば、不活化ワクチンは生ワクチ
ンより非常に良い抗体応答を示しています。
最後の列に粘膜の厚さとありますが、これは攻撃後の粘膜肥厚の程度を示したもので
す。ここでは、ワクチン無接種・無攻撃群の粘膜の厚さを基準とし、その厚さを1としま
した。Mg生ワクチン(NBI)接種群では 1.6 倍と無接種・無攻撃対照群に比べて若干
の肥厚はしております。それに対して不活化ワクチン接種群では 5.7 倍です。これは
ワクチン無接種で攻撃した群とまったく同じですから、この試験では、不活化ワクチン
はまったく局所免疫、つまり粘膜免疫を惹起していないということがわかります。
気道における強固な局所免疫
コマーシャル種鶏
Mg生ワクチン(
NBI)
)接種 3
週齢
Mg生ワクチン(NBI
接種 3週齢 — 攻撃17
攻撃17週齢
Mg生ワクチン(
NBI)
) Mg生ワクチン(
Mg生ワクチン(NBI
Mg生ワクチン( NBI)
NBI)
接種・無攻撃
接種・攻撃
ワクチン無接種
攻撃
11
いまの試験はSPF鶏で行なった試験ですが、これは一般の種鶏農場で行なった試
験です。ワクチンは3週齢時に接種しています。ワクチンの接種も自分たちがやったも
のではなくて、その農場の方に任せて接種をしてもらいました。17 週齢時、つまりワク
チンを接種してから 14 週後に農場から実験室へ移動して攻撃をしました。左の写真
がワクチンのみを接種した群です。前にお見せした正常気管像とほぼ同じであること
がお分かりになると思います。Mg生ワクチン(NBI)接種によって粘膜の肥厚がまっ
たく見られない、つまり安全なワクチンであることがわかります。中央の写真は、Mg
生ワクチン接種群に噴霧攻撃し、攻撃後2週間の気管の組織像です。この2つを見比
べていだきますとわかると思いますが、この2つの気管粘膜の厚さはまったく変わりま
せんし、この気管の粘膜面に炎症像というのがまったく見られません。右側がワクチン
を接種しないで攻撃した群の気管像です。粘膜の厚さが攻撃によって肥厚していま
す。
免疫の長期持続
ワクチン接種後40週で攻撃*
群
n
凝集
スコア
粘膜の
厚さ
Mg 生ワクチン(NBI)*
13
1.3±1.0
a
ワクチン無接種・攻撃*
10
0
b
4.7-倍
ワクチン無接種・無攻撃
9
0
a
1.0-倍
a,b
*ワクチン接種後40週にエアゾール攻撃
1.4-倍
P<0.05
12
前にご説明いたしましたように、Mg生ワクチン(NBI)による免疫は非常に長期間持
続すると言いましたが、これはワクチンを接種してから 40 週でそれを確認した試験で
す。上の2群には、ワクチン接種後 40 週目に攻撃しています。1 番下の群には攻撃を
行っていません。つまり対照群です。ワクチン接種後 40 週でも平均の凝集スコアが
1.3 と、まだ抗体応答が認められております。6/85 株とMg生ワクチン(NBI)との違い
というのはもう一つあります。それは抗体応答ですが、6/85 株では、ワクチン接種後
の抗体応答が見られません。ここでもワクチンを無接種で無攻撃群の気管粘膜の厚
さを1として表しています。ワクチン接種群は 1.4 倍ですが、これは統計学的に処理し
てもまったく有意差が認められません。それに対してワクチン無接種で攻撃をした群
では、5倍近い厚さになっており、無接種無攻撃対照群、もしくはワクチン接種・攻撃
群に比べて、統計学的有意差が認められます。
産卵の改善
コマーシャルレイヤー – 日本*
ワクチン
76 週での
HH 産卵数
MG 不活化ワクチン
315.3
Mg 生ワクチン( NBI)
(ts-11)
338.4
*日本バイロジカルズ資料
13
皆さんが最も興味をもっていることは、Mg生ワクチン(NBI)がどの程度産卵成績を改
善することができるのかだと思います。これは日本での野外成績ですが、ワクチン接
種による産卵率の改善の一例です。これは過去 5 年間にわたる 44 万羽のニワトリで
行われた試験のまとめです。この試験では、Mg生ワクチン(NBI)は 54 日、不活化ワ
クチンは 80 日で接種をされています。この試験の結果、76 週令までのヘンハウスの
産卵個数を見ますと、23 個の差がMg生ワクチン(NBI)と不活化ワクチンの群では
見られております。ですから非常にこの違いというのが明らかになっています。ですか
らこれは非常に大きな違いです。
これはケージで飼っているニワトリの例ですが、平飼で飼っている場合でも同じような
違いがみられます。Mg生ワクチン(NBI)はオーストラリアではほとんどのブロイラー種
鶏にも使われております。
ブロイラーの生産成績改善
コマーシャルブロイラー種鶏にワクチン接種- レバノン*
種鶏での接種
ワクチン
Mg 生ワクチン(NBI)
無接種
種卵からの ブロイラーの
MG 分離
成績
FCR 斃死率
陽性率
0
2.05
5.3%
42%
2.44
10.7%
*Barbour et al (2000) Poultry Science 79:1730-1735
14
これはバーボーラによって最近報告されたレバノンの例です。ブロイラー種鶏にワクチ
ンを接種した場合、コマーシャルブロイラーの生産成績が改善されたという報告です。
これはMgの問題がある種鶏群6群で行いました。その6群のうち3群をMg生ワクチン
(NBI)接種群、そして残りの3群を無接種対象群として行ないました。
2 列目の種卵からの分離成績は、Mgの垂直感染の有無を種卵からマイコプラズマを
分離することにより検討したものです。Mg生ワクチン(NBI)接種群ではまったくMgが
分離されません。それに対してMg生ワクチン(NBI)を接種していない群では、42%
の種卵からMgが分離されています。このMgの垂直感染率の違いがコマーシャルブ
ロイラーの成績にも反映されていて、飼料要求率では、0.4 程度の改善が認められて
います。また斃死率も約半分に減っており、全体としても生産成績が大きく改善されて
います。
結論
粘膜表面での抗原刺激は Mg感染に対する防御免疫産
生に重要である
 生ワクチンは不活化ワクチンより優れている
 Mgワクチン株の持続感染は長期(終生)免疫を付与す
るために重要であろう

15
まとめになりますが、今までの話の中で皆さんに粘膜免疫の重陽性と、粘膜免疫を与
える上での生ワクチンの役割について説明してきました。
粘膜表面の抗原刺激というのは、Mg感染に対する防御免疫産生に重要であり、その
目的では生ワクチン(NBI)の方が不活化ワクチンより優れています。また種鶏や採卵
鶏にMg生ワクチンを接種するもうひとつの目的としては、ワクチンを 1 回接種すること
により、その鶏群を、終生Mgの感染から防御するということも重要です。そのために
は、ワクチン株が終生にわたって持続感染して、継続的に抗原刺激を与えていくこと
が必要です。
最後に、このワクチンに関する研究は既に 15 年以上にわたってやっています。しかし、
この研究もこれらの機関や研究者の協力なしには今日の成果はないのではないかと
思います。この場を借りて感謝の気持ちを述べさせていただきます。最後にこのような
機会を与えてくださった主催者の方々に心より感謝いたします。どうもありがとうござい
ました。
以上