Spin系の統計力学 とMetropolis法

Spin系の統計力学
とMetropolis法
計算機アルゴリズム特論:2015年度
只木進一
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Spin系
磁性を有する固体
各原子が小さな磁石
各原子の磁石をモデル化
スピン
磁性の仕組みを理解するモデル
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統計力学
Statistical Mechanics
多粒子系(気体、液体、固体など)の
巨視的性質(比熱、状態方程式、相転
移など)を調べる
系の力学的構造(エネルギー構造な
ど)から巨視的性質を導出
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基本的な平衡系の統計力学
系の力学変数の組𝑉𝑉に対して、エネル
ギー𝐻𝐻(𝑉𝑉)が与えられている
𝑣𝑣 ∈ 𝑉𝑉が実現する確率
𝛽𝛽 = 1/(𝑘𝑘B 𝑇𝑇)
P ( v ) ∝ exp ( − β H (v) )
𝛽𝛽が大きい(𝑇𝑇が小さい)場合、エネ
ルギー最低の状態が指数関数的に高い
確率で発生
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期待値を求める
巨視的量は期待値として得られる
規格化定数
P ( v ) = Z −1e − β H ( v )
Z = ∑ e− β H (v )
v∈V
𝑍𝑍は分配関数(partition function)と呼ば
れる基本量
巨視的量を求める元になる
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例:内部エネルギー
U
=
1
H ∑ H (v) P=
=
(v)
Z
v
−β
H
v
e
(
)
∑
H (v)
v
1 ∂ 
1 ∂
− β H (v)
= −
= −
∑e
Z  ∂β  v
Z  ∂β

∂
ln Z
−
Z =
∂β

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例:エントロピー
S = −kB ∑ P ( v ) ln P ( v )
v
= −kB ∑ Z −1e − β H ( v ) ln  Z −1e − β H ( v ) 
v
=
−kB ∑ Z −1e − β H ( v ) ( − ln Z − β H ( v ) )
v
β
1
− β H (v)
= kB ln Z ∑ e
+ kB
Z
Z
v
1
= kB ln Z + U
T
∑ H (v) e
v
− β H (v)
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平均量を求めるには
分配関数を厳密または近似的に求める
そこから平均量を計算
一般には困難
Monte Carlo法
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Monte Carlo法による平均量
の計算
変数のサンプル𝑣𝑣 ∈ 𝑉𝑉を確率𝑝𝑝(𝑣𝑣)から
選択
物理量𝑄𝑄(𝑣𝑣)、サンプル数𝑀𝑀
𝑀𝑀が十分に大きいとき、状態𝑣𝑣は
𝑀𝑀𝑀𝑀(𝑣𝑣)回出現することに注意
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Q =
1
M −1
Z sample
i =0
M −1
Z sample = ∑ e
i =0
∑ Q ( vi ) e
− β H ( vi )
− β H ( vi )
p −1 ( vi )
p −1 ( vi )
一様な𝑝𝑝(𝑣𝑣)の場合、寄与が指数関数的
𝑒𝑒 −𝛽𝛽𝛽𝛽(𝑣𝑣) に小さい項ばかりが出てくる
正しい近似にならない
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Importance Sampling
和への寄与の大きい項を選択的に選ぶ
p (v) = e
Q =
− β H ( vi )
1
M −1
Z sample
i =0
1
=
M
∑ Q ( vi ) e
M −1
∑ Q (v )
i =0
i
− β H ( vi )
p −1 ( vi )
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スピン系とMetropolis法
𝑁𝑁個のスピン𝑠𝑠𝑖𝑖 (0 ≤ 𝑖𝑖 < 𝑁𝑁)
簡単のために𝑠𝑠𝑖𝑖 = ±1
Ising スピン
1
H = − ∑ J ij si s j
2 i, j
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Metropolis法
各時刻でランダムにスピンを選ぶ
このときの状態を𝜇𝜇、そのスピンを反転し
た場合の状態を𝜈𝜈とする
Δ𝐸𝐸 = 𝐸𝐸𝜈𝜈 − 𝐸𝐸𝜇𝜇
Δ𝐸𝐸 ≤ 0:状態を𝜈𝜈へ更新
Δ𝐸𝐸 > 0:確率𝑒𝑒 −𝛽𝛽Δ𝐸𝐸 で状態を𝜈𝜈へ更新
スピン𝑠𝑠𝑖𝑖 の値の変化をΔ𝑠𝑠𝑖𝑖 とする
∆E = −∆si ∑ J ij s j
j
1
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𝜇𝜇
e β∆E
𝜈𝜈
∆E ≤ 0
𝜈𝜈
∆E > 0
e − β∆E
𝜇𝜇
1
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全ての状態を確率的に実現することが
できる:ergodic
遷移確率は、直前の状態だけで決定さ
れ、履歴に依らない:Markov 過程
平衡状態では詳細つり合いが成り立つ
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詳細つり合い:隣接する二つの微視的
状態の間で状態遷移が釣り合っている
Δ𝐸𝐸 ≤ 0
𝑃𝑃 𝜇𝜇 = 𝑃𝑃 𝜈𝜈 𝑒𝑒 𝛽𝛽Δ𝐸𝐸
Δ𝐸𝐸 > 0
𝑃𝑃 𝜇𝜇 𝑒𝑒 −𝛽𝛽Δ𝐸𝐸 = 𝑃𝑃 𝜈𝜈
つまり、状態の出現確率はエネルギー
のみで決まる:𝑃𝑃 𝐸𝐸 ∝ 𝑒𝑒 −𝛽𝛽𝛽𝛽
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Importance Samplingのテス
ト
準備−1 ≤ 𝐽𝐽𝑖𝑖𝑖𝑖 < 1(𝐽𝐽𝑖𝑖𝑖𝑖 = 𝐽𝐽𝑗𝑗𝑗𝑗 , 𝐽𝐽𝑖𝑖𝑖𝑖 = 0)をラ
ンダムに生成
初期状態をランダムに生成
一定時間の緩和
観測
各ステップで新しい状態のエネルギーと
頻度を計算
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結果:16個のスピン、106 モンテカ
ルロステップ