株式会社アーケイディア・グループ 東京都港区赤坂 2-17-22 赤坂ツインタワー東館 15 階 TEL:03-5562-3111 ARCADIA NEWS 平成 21 年 10 月号 執筆責任者:本田 俊則 連結財務諸表再考 –連結財務諸表作成のメリットと連結の範囲- 【イントロダクション】 金融商品取引法で規制される上場企業にとって、決算書といえば、一般的に連結財務諸表 が想定される。 近年、粉飾や処理誤りなどにより過去の決算書を訂正する事例が少なくないが、連結財務 諸表であれば、たとえ SPC などを用いた巧妙な取引であろうと、最終的には連結の範囲の 問題に辿り着く。 換言すれば、有用な連結財務諸表を作成するためには、適切な連結の範囲を設定すること が重要であると言える。今回は、連結財務諸表の有用性を考えると共に、連結の範囲につ き考えたい。 【法令との関係】 金融商品取引法では、連結財務諸表による開示が第一に要求されているため、上場企業で は決算書といえば連結財務諸表が想定される。 一方で、金融商品取引法に規制されない企業は会社法のみに従うが、こうした企業では、 決算書といえば(個別)財務諸表が想定される。 【必要性】 企業が企業集団・系列グループを構成することは、上場企業に限られたことではなく、非 上場の企業でも一般的である。そしてその株主や債権者等の利害関係者、経営者のいずれ にとっても、企業集団全体の財政状態や経営成績を把握する必要がある。 なぜなら、財政状況や経営成績に基づく定量的指針は、投資判断や与信判断、企業経営に 有用だからである。 1 株式会社アーケイディア・グループ 東京都港区赤坂 2-17-22 赤坂ツインタワー東館 15 階 TEL:03-5562-3111 【連結財務諸表とは】 連結財務諸表は、企業集団を単一の組織体とみなし、企業集団の実態を把握・報告するた めに作成されるものであり、企業集団とは連結財務諸表提出会社及び支配従属関係が認め られる子会社とされる。 【阻害要因】 連結財務諸表は、企業集団の外部者および内部者の双方にとってメリットがある一方で、 上場企業以外では作成されていない場合が多い。 これは、連結財務諸表の作成手続きとこれに伴う情報の収集が必要であり、阻害要因とな っているためである。 このように、連結財務諸表の作成は難しいと思われがちだが、継続的な作業に慣れさえす れば、個別上の決算手続きと変わらぬ決算作業となる。 【作成手続き】 制度上、連結財務諸表は個別財務諸表を基礎として作成されるものとされる。 連結財務諸表は、企業集団を単一の組織体とみなして報告を行うから、グループ間取引は、 ないものとして取り扱う必要がある。しかし、グループ各社の個別財務諸表を合算して作 成する連結財務諸表にあっては、グループ間取引を合算後に相殺消去するため、これらに 関する情報を収集する必要がある。 【連結外しの誘因】 本来的には、グループ間取引は単なる振替にすぎないため、連結財務諸表の作成過程にお いて相殺される。しかしながら、支配力を行使し得る会社をグループ外部と位置付けるこ とで、相殺対象から除外し、連結上の取引と認識させる粉飾方法が存在する。 2 株式会社アーケイディア・グループ 東京都港区赤坂 2-17-22 赤坂ツインタワー東館 15 階 TEL:03-5562-3111 【連結の範囲】 連結外しによる売上や利益の過大計上は、決算書上の見せかけにすぎず、企業集団の本質 的な情報を提供するものではない。 一方で、あまりに子会社の多い企業集団にとっては、すべての子会社を連結することは煩 雑である。 よって、企業集団の財政状態及び経営成績に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性 の乏しいものは、連結の範囲から除くことができるとするルールが存在する。 【重要性の判定基準】 実務上は、以下で計算される割合が、いずれも重要ではない場合には、連結の範囲から除 外することができる。なお、重要でないとは、一般に 3%から 5%を上限とするといわれる が、この基準は継続して適用することが必要で、また、割合の計算にあたっては、各子会 社の質的な重要性を検討する必要があるとされる。 1. 資産基準 非連結子会社の総資産額の合計額 連結財務諸表提出会社の総資産額及び連結子会社の総資産額の合計額 2. 売上高基準 非連結子会社の売上高の合計額 連結財務諸表提出会社の売上高及び連結子会社の売上高の合計額 3. 利益基準 非連結子会社の当期純損益の額の合計額 連結財務諸表提出会社の当期純損益の額及び連結子会社の当期純損益の額の合計額 4. 利益剰余金基準 非連結子会社の利益剰余金の合計額 連結財務諸表提出会社の利益剰余金の額及び連結子会社の利益剰余金の額の合計額 3 株式会社アーケイディア・グループ 東京都港区赤坂 2-17-22 赤坂ツインタワー東館 15 階 TEL:03-5562-3111 推薦図書 題名 : 『金融システムを考える ひとつの行政現場から』 著者 : 大森泰人 感想 : 一部で非常に有名な行政官である著者の講演録等と書き下ろしです。1990 年代後 半から近年までの金融行政の変遷がうかがい知れます。 政権交代にあたり官僚のあり方が一つの話題となっていますが、多少、考えが変 わるかもしれません。 4
© Copyright 2024 ExpyDoc