(第6章)略解

2015 年 7 月 22 日
solution phys6
『工科系の物理学基礎 I』問題略解
第 6 章 剛体の運動
6.1-1 図 6.1(b) のように,円錐の頂点を原点とし,円錐の軸を z 軸とする座標系を
設定すると,重心は z 軸上にある.xy 面からの高さが z で,xy 面に平行な平面で円錐
を切断すると,断面の円の半径は a = (R/H)z で与えられる.円錐の密度を ρ とすると,
円錐の質量は M = πR2 Hρ/3 である.円錐の頂点から重心までの距離を c とすると,
∫ H
∫
ρ
πρ H R2 3
3
2
c=
z dz = H.
πa z dz =
2
M 0
M 0 H
4
6.2-1 剛体の運動エネルギーの表式
K=
1∑
mi (vi · vi )
2 i
において,vi · vi に式 (6.5) を代入すると,
vi · vi = ω 2 (ez × ri ) · (ez × ri ) = ω 2 ez · [ri × (ez × ri )]
と書き直すことができる.ただし,最後の式変形ではスカラー三重積の公式 A·(B ×C) =
B · (C × A) を利用した(第 4.2 節参照).さらにベクトル三重積の公式を使うと,
vi · vi = ω 2 ez · [ri × (ez × ri )] = ω 2 ez · [ez (ri · ri ) − ri (ri · ez )]
[
]
= ω 2 [(ez · ez )(ri · ri ) − (ez · ri )(ri · ez )] = ω 2 (x2i + yi2 + zi2 ) − zi2 = ω 2 (x2i + yi2 )
となる.したがって,
K=
1
1 ∑
1∑
mi (x2i + yi2 ) = ω 2 Iz . (Q.E.D.)
mi ω 2 (x2i + yi2 ) = ω 2
2 i
2
2
i
6.2-2 平板内の点の z 座標はゼロだから,
Ix =
∑
mi (yi2 + zi2 ) =
∑
mi yi2 ,
Iy =
したがって,
Ix + Iy =
∑
mi (zi2 + x2i ) =
i
i
i
∑
mi (x2i + yi2 ) = Iz . (Q.E.D.)
i
1
∑
i
mi x2i .
6.3-1 式 (6.16) より,円板の重心を通り円板に垂直な軸のまわりの慣性モーメントは
Iz0 = M R2 /2 である.したがって,平行軸の定理から,回転軸のまわりの慣性モーメン
トは
(
Iz =
Iz0
2
+ M` = M
微小振動の周期は,式 (6.27) より
√
T = 2π
)
1 2
2
R +` .
2
√
Iz
= 2π
M g`
R
g
(
)
`
R
.
+
R 2`
√
この周期 T を `/R の関数としてグラフに描くと下図のようになる.`/R = 1/ 2 のとき,
T は最小値
Tmin
√√
2R
= 2π
g
をとる.
6.3-2 滑車の回転角を ϕ,滑車から垂れたひもの長さを x とすると,
Rϕ̇ = ẋ
という関係が成り立つ.また,ひもの張力を T とすると,滑車およびおもりの運動方程
式は次のようにかける.
I ϕ̈ = RT
mẍ = mg − T.
ただし, I = M R2 /2 は軸のまわりの滑車の慣性モーメントである.これら 3 つの式か
ら ϕ と T を消去すると,
ẍ =
g
g
=
2
1 + I/mR
1 + M/2m
2
という結果を得る.M/m が大きいほど,おもりの落下加速度は小さくなる.
6.4-1 ひもの張力を T とすると,円板の重心の降下速度 V についての運動方程式は
M V̇ = M g − T
であり,円板の回転角速度 ω についての運動方程式は
1
I = M R2
2
I ω̇ = RT,
となる.一方,V と ω の間には V = Rω という関係がある.これら 3 つの方程式より
2
V̇ = g
3
を得る.
6.4-2 下図のように,点 C を原点とする直交座標 (x, y, z) をとる(z 軸は,紙面の手
前方向を向く).そして,点 C から円柱の軸に下ろした垂線が y 軸となす角を ϕ とする.
y
Mg
ϕ
R
C
h
D
x
B
A
円柱が点 C に接触した直後に,円柱は z 軸を回転軸として回転をはじめる.接触の前
後では,点 C に関する円柱の角運動量(の z 成分)が保存する.接触前の円柱の角運動
量──重心の角運動量と重心に関する円柱の回転(角速度 −v/R)の角運動量の和──は
v
Lbefore = −(R − h)M v − I0 ,
R
1
I0 = M R 2
2
で与えられる(I0 は重心に関する円柱の慣性モーメント).また,接触直後の角運動量は
Lafter = I ϕ̇,
3
I = I0 + M R 2 = M R 2
2
3
で与えられる(I は z 軸に関する円柱の慣性モーメント── I0 と I の関係は,平行軸の
定理から得られる).したがって,角運動量の保存則(Lbefore = Lafter )により,接触直後
の回転角速度 ω0 = ϕ̇ は
(
)
2h v
ω0 = − 1 −
3R R
となることが分かる.
円柱が,点 C に接触したあとの,z 軸のまわりの回転に関する運動方程式は
⇒
I ϕ̈ = M gR sin ϕ
ϕ̈ =
2g
sin ϕ
3R
で与えられる.この式の両辺に ϕ̇ をかけて,時間で積分すると,
1 2
2g
ϕ̇ = −
cos ϕ + C (C は積分定数)
2
3R
となる.円柱が点 C に接触した瞬間の角度 ϕ の値を ϕ0 とする(R cos ϕ0 = R − h)と,
このとき ϕ̇ = ω0 だから,
2g
1
cos ϕ0
C = ω02 +
2
3R
である.
円柱が段差を上りきるためには,ϕ = 0 のときに,ϕ̇2 > 0 でなければならない.この
条件より,
2g
>0
C−
3R
⇒
√
2R 3gh
v>
.
3R − 2h
6.4-3 下図左に示すように,x 軸と y 軸をとり,下図右に示すように,半球の傾きを
θ,半球の中心(断面の円の中心)から重心 G までの距離を c とする(c = 3R/8).する
と,重心 G の座標 (X, Y ) は
X = Rθ − c sin θ,
Y = R − c cos θ
と表される.
y
c
G
R
θ
G
x
4
床から半球に作用する抗力の x 成分(摩擦力)を Fx ,y 成分(垂直抗力)を Fy とす
ると,重心の運動方程式は
M Ẍ = Fx ,
M Ÿ = Fy − M g
で与えられる.これらの方程式の左辺を θ を使って表し,θ が小さいと仮定して(微小振
動)θ の 1 次の項まで残すと,
M (R − c)θ̈ = Fx ,
0 = Fy − M g
(A6.1)
という関係が得られる.
重心のまわりの回転に関する運動方程式は
−I0 θ̈ = Fy c sin θ + Fx (R − c cos θ),
I0 =
83
M R2
320
で与えられる.θ が小さいとき,この式の右辺は M gcθ + Fx (R − c) と近似できる.ここ
で,式 (A6.1) を使って Fx と Fy を消去すると,
−I0 θ̈ = M gcθ + M (R − c)2 θ̈
これより,振動の周期 T は
⇒
θ̈ = −
15g
θ.
26R
√
T = 2π
26R
.
15g
6.5-1 毎秒 58 回転.
(
6.6-1 α = arccos
a−b
b
√
b2 − `2
a(a − 2b)
)
.
6.6-2 はしごに沿って,距離 a だけ登ったときに滑りはじめるとすると,
[ (
)
]
M
M
a = ` 2µ 1 +
cot θ −
.
m
m
ただし,2m/M < (2µ − tan θ)/(tan θ − µ) ならば,はしごを登り切るまで滑ることはない.
5