1 不等式正誤表 (2016 年 2 月 8 日版) 2014 年 7 月 30 日版より,正誤表の大改訂を行いました.第 2 章の主要 部分については,2013 年以後に発見された多くの新定理を取り込んで,全 面的に書き直しました.既存の定理の証明も,最近発見された簡略化され た証明と差し替えました.それに関連して,新定理を断片的に紹介してい た以前の補遺は廃止し,正誤表本文中に取り込みました. ● 目次 目次のページ番号の中で,以下の 9 個のページ番号が間違っていて,正 しいページ番号より1だけ小さい値になっていました. 2.1.4 5次以上の対称・巡回不等式 2.3 4次斉次不等式 32 → 33 56 → 57 2.4.2 5次巡回不等式 81 → 82 2.5.3 6次巡回不等式詳論 107 → 108 3.1.2 分母が 1 次の斉次巡回有理不等式 123 → 124 3.1.3 分母が 1 次の一般有理不等式 128 → 129 4.1.3 Popoviciu-Cı̂rtoaje の不等式 183 → 184 4.1.4 EV-定理 186 → 187 5.2.6 命題 P12 と P23 の証明 262 → 263 ● p.7, 下から 4 行目 誤: 狭義単調減 正: 狭義単調減少 ● p.7, 下から 3 行目と下から 2 行目 (2ヶ所) 誤: 定議 2 正: 定義 ● p.21, 第 1 章の末尾 以下の原稿を追加して下さい (証明はちょっと難しいので割愛します). 1.3.8. Hilbert の第 17 問題 定理 1.3.9. (E.Artin) f1 (x1 ,. . ., xn ), f2 (x1 ,. . ., xn ) は互いに素な実数 f2 (x1 , . . . , xn ) とする.さらに,f1 (a1 ,. . ., f1 (x1 , . . . , xn ) an ) = 6 0 であるような任意の有理数の組 (a1 ,. . ., an ) に対し て f (a1 ,. . ., 係数多項式で,f (x1 , . . . , xn ) = an ) = 0 が成り立つと仮定する.すると,ある自然数 r と,ある実数係数 有理関数 g1 (x1 ,. . ., xn ), . . ., gr (x1 ,. . ., xn ) が存在して, f (x1 , . . . , xn ) = r X g(x1 , . . . , xn )2 i=1 と書ける.さらに,f1 , f2 が有理数係数多項式ならば,g1 ,. . ., gr を整数係 数有理関数として選ぶことができる. 証明は順序体・実閉体の理論が必要で,可換体論に関する相当な準備が 必要である.例えば,永田雅宜「可換体論」裳華房 §5.3 の定理 5.3.6 を参 照されたい.証明は背理法と Zorn の補題を使うもので,与えれれた f に 対して,具体的に g1 ,. . ., gr を求める方法については,何も語っていない. 上の定理において,f が実数係数多項式の場合,g1 ,. . ., gr を多項式とし て選べるとは限らない.これに関しては,Hilbert 自身が以下の定理を証明 している. 定理 1.3.10. (Hilbert) 一般に,ある多項式 f が何個かの多項式の 2 乗 の和として表せるとき,f は SOS (Sum Of Squares) であるという.2 以 上の自然数 n と , 2 以上の偶数 d を固定する. 任意の実数 a1 ,. . ., an に対して f (a1 ,. . ., an ) = 0 を満たすような任意の 実数係数 d 次斉次多項式 f が SOS であるための必要十分条件は,n = 2 または d = 2 または (n, d) = (3, 4) である. 3 証明は結構いろいろな知識が必要で難しい.解析学を使って証明してい る原論文 D. Hilbert, Uber die Darstellung definiter Formen als Summe von Formenquadraten, Math. Ann., 32(1888), 342-350 あるいは,実代数幾何を利用した証明 J. Bochnak & M. Coste & M.F. Roy, Real Algebraic Geometry, Springer, §6.3 などを参照してほしい. ● p.26, 命題 2.1.1 の (2) 誤: (2) 3S4 = T3,1 = 2S2,2 = 2U S1 正: (2) 2S4 = T3,1 = 2S2,2 = 2U S1 ● p.35, 4 行目 (例題 2.1.10(4)) 誤: = (a + b)3 (b + c)3 (c + a)3 正: = 27(a + b)3 (b + c)3 (c + a)3 (不等式自体はウソではありませんが ) ● p.42, グラフ グラグ中の P は Q の誤りです.以下のグラフと差し替えて下さい. 4 S1,1 y= 2 6 S1 1 3 1 4 Q C2 D C1 U 3 S - 1 x= 1 27 ● p.43, 下から 5 行目 (補題 2.2.2 の証明の 1 行目) 誤: 前定理の ° 1 を書き換えると, 正: p = S1 , q = S1,1 , r = U として前定理の ° 1 を書き換えると, ● p.45∼55, 定義 2.2.4 から例題 2.2.12 の直前まで. 以下の原稿と差し替えて下さい.判別式の概念の導入は 2014 年 5 月に 気づいたことですが,これによって,第 2 章全体がすっきりしました.定 理 2.2.4b∼定義 2.2.9f は 2014 年 10 月に証明できた定理で,これらの一般 論により,後の 6 次巡回多項式までの見通しがよくなりました. P.S. 2015 年 5 月 28 日にさらに理論に改良を加えました. P.S. 2015 年 6 月 25 日に代数的領域の定義を変更しました.実代数幾何 に ’subalgebraic set’ という概念があるのですが,PSD 錐が subalgebraic set であることは,まだ証明されていません.そのかわり, 「 PSD 錐は代数 的領域である」という命題が成立するように,aubalgebraic set の代わり に「代数的領域」という概念を考えました.ただ,適切な定義を与えるのに 結構苦労していて,今までに何回か定義を変更しました.少なくとも,ブ 5 ローアップにより代数的領域の逆像や像が再び代数的領域になるようなう まい定義を与えておかないと,理論がうまく回りません. [差し替え原稿] ¯ © ª R+ := x ∈ R ¯ x = 0 とおく. 定義 2.2.4a. Rn 内の空でない部分集合 C が凸錐であるとは, 「 x, y ∈ C ならば,任意の α, β ∈ R+ に対して αx + βy ∈ C 」 が成り立つことをいう. Rn の部分集合 A に対し, ¯ © ª R+ · A := αx ¯ α ∈ R+ , x ∈ A は凸錐になる.R+ · A を A によって生成される凸錐という.A が Rn の 閉集合ならば,R+ · A は閉凸錐であることに注意する. 凸錐 C を含む Rn の最小の部分ベクトル空間の次元を dim C と書く. dim C = n であるとき,C は非退化であるという.0 6= x ∈ C は,y, z ∈ C が x = y + z を満たせば必ず y, z ∈ R+ · x となるとき,C の端の元であ るという.端の元は C の境界上にあるが,逆は正しくない. C が凸錐のとき, ¯ © ª C ⊥ := x ∈ Rn ¯ 任意の y ∈ C に対し x · y = 0 は Rn 内の閉凸錐 (閉集合かつ凸錐) になる.C ⊥ を C の双対凸錐という. ここで,x · y はベクトル x と y の内積である.一般に,凸錐 C に対し ¡ ⊥ ¢⊥ ¡ ¢⊥ C は C の閉包と一致する.したがって,C が閉凸錐ならば C ⊥ =C が成り立つ. 一般に R-ベクトル空間 V や凸錐 C に対して P(V ) := (V − {0})/R× , P(C) := (C − {0})/R× + と書く. ¡ ¢ d は自然数とし,n + 1 変数 d 次斉次多項式全体の集合を H 0 Pn , O(d) e 6= 0 は Rn+1 内 とし ,その部分ベクトル空間 H 6= 0 を 1 つ固定する.A e ⊂ Pn とおく.また, の閉凸錐とし,A = P(A) ¯ © ª e H) := f ∈ H ¯ 任意の a ∈ A e に対して f (a) = 0 P = P(A, 6 とおく.N = dim H − 1 とするとき,P は H ∼ = RN +1 内の凸錐である. e 上の H 内の PSD 錐という. PをA H は Pn 上の線形系とみなせる. ¯ © ª Bs H = a ∈ A ¯ 任意の f ∈ H に対して f (a) = 0 と おく.線形系 H が 定め る有理写像を Φ: Pn · · · → PN = P(H∨ ) と する.つまり,s0 ,. . ., sN を H の基底とするとき,a ∈ Pn に 対し て , ¡ ¢ ¡ ¢ e Φ(a) = s0 (a) : · · · : sN (a) と定める.同様に,Φ(a) = s0 (a), . . . , sN (a) e Rn+1 −→ RN +1 ∼ によって正則写像 Φ: = H∨ を定める.Φ(A − Bs H) の解 e H) の特性多 析的位相 (普通の位相) に関する閉包を X とする.X を (A, e H) と書く.また,X e := Φ( e A) e とおく. 様体と呼び,X = X(A, e と f ∈ H を取る.Φ(s) e e 点 P ∈X = Φ(t) = P となる任意の 2 点 s, e に対して,f (s) = f (t) が成り立つので,f (P ) := f (s) と定義する t∈A ことができる. 代数幾何に詳しくない人は無視してもらってもよいが,可逆層 OP(H∨ ) (1) ¡ の X への制限を OX (1) とすると,Φ∗ H は OX (1) を生成し,f は H 0 X, ¢ OX (1) の元と考えることもできる. e ⊂ RN +1 = H∨ によって生成される凸錐の 定理 2.2.4b. (双対定理) X e とすれば,P は D e の双対凸錐である. 閉包を D 証明. f = α0 s0 + · · · + αN sN ∈ H (αi ∈ R) を取る.α = (α0 ,. . ., αN ) e に対し ,Φ(a) e とおく.a ∈ A = x = (x0 ,. . ., xN ) (xi = si (a)) とすれば , 内積を用いて f (a) = α · x と表せる.よって, e に対して f (a) = 0 f ∈ P ⇐⇒ 任意の a ∈ A e に対して α · x = 0 ⇐⇒ 任意の x ∈ X e の双対凸錐である. であるので,P は D V は Rm または Pm の (広義の) 代数多様体 (つまり,被約ではあるが既 約とは限らない広い意味での閉部分代数多様体) であって,V のすべての 既約成分の次元は等しいとする.また,Y は V の部分集合とする.V の ある開集合 U が存在して,通常の解析的位相に関する U の閉包を U とす 7 るとき U ⊂ Y ⊂ U が成り立つならば,Y は V 上の領域であるという.特 に,Y = U のとき閉領域という.V が既約な代数多様体であるとき Y は 既約であるという.Y が既約でも Y は連結とは限らない. 次に,Y は Rm または Pm の部分集合とする.Y を含む V の最小の (被約だが必ずしも既約とは限らない) 閉部分代数多様体 Z を Y のザリス キー閉包という.通常の解析的位相についての Z における Y の境界を ∂Y と書き,Y の境界という. 定義 2.2.4c. (代数的領域) W = Rm または W = Pm とする.∆0 は W 内の点の集合とする.今,帰納的に ∆0 , ∆1 ,. . ., ∆r−1 まで定まったとき, ∆r を以下のように定める. Y ∈ ∆r であるための必要十分条件は,以下の (1), (2) が成り立つこと である. (1) W 内の既約かつ被約な r 次元閉部分代数多様体 Z が存在して,Y は Z 内の解析的位相についての空でない開集合である. (2) Z における Y の境界を ∂Y とするとき,ある有限個の F1 ,. . ., Fk ∈ ∆0 ∪ ∆1 ∪ · · · ∪ ∆r−1 が存在して,∂Y = F1 ∪ · · · ∪ Fk である. Y ∈ ∆r であるとき,Y は r 次元の代数的開領域という.また,解析的 位相に関する W における Y の閉包を,r 次元の代数的領域という.Y の ザリスキー閉包を Z とする.Z が Rm や Pm の超平面のとき,Z の (被 約な) 定義方程式を Y の決定方程式という.Y の決定方程式が 1 次式であ るとき,Y は線形な代数的領域であるという. Y は r 次元の代数的領域で,F ⊂ Y とする.F ∈ ∆r−1 が Y の,ある いは,∂Y の面成分であるとは,F のザリスキー閉包を Z 0 とするとき,Z 0 は既約な代数多様体であって,F が ∂Y における Z 0 ∩ (∂Y ) の解析的開核 の解析的閉包と一致することをいう.面成分は代数的領域である. C ⊂ Rm は閉凸錐とする.C が代数的領域であるとき,凸錐 C は代数 的凸錐であるという.Rm や Rm + は代数的凸錐である. 8 一般に,C の面成分 F は滑らかであるとは限らないし ,F の開核 (内 部) F ◦ は連結であるとは限らない. Y1 Y1 C C Y2 面成分は滑らかとは限らない Y2 面成分は原点を除くと連結とは限らない なお,面成分以降,本章に登場するいろいろな用語は,著者が勝手に命 名したものであって,他に支持者がいるわけではない. e ⊂ Rn+1 が代数的凸錐ならば,P = P(A, e 命題 2.2.4d. (代数性定理) A H) も代数的凸錐である. e が代数的ならば,その像で張られる ∂ D e も代数的である.その 証明. ∂ A 双対多様体として得られる ∂P も代数的である. e − {0} とする. 定理 2.2.4e. (境界定理) f ∈ P, a ∈ A (1) f (a) = 0, a ∈ / Bs H ならば,f ∈ ∂P である. (2) f ∈ ∂P であれば,f (a) = 0 を満たす a ∈ A が存在する. 証明. (1) a ∈ / Bs H だから,ある g ∈ P が存在して g(a) > 0 を満た す.任意の ε > 0 に対して,f (a) − εg(a) < 0 なので,f − εg ∈ / P である. よって,f ∈ ∂P である. e − {0} に対して f (a) > 0 を満た (2) 対偶を示す.f ∈ P が任意の a ∈ A すとする.すると,任意の g ∈ P に対して,十分小さい ε > 0 を選べば, f ± εg ∈ P となる.よって,f ∈ / ∂P である. 補題 2.2.4f. C ⊂ Rm は閉凸錐で,F ⊂ ∂C は C の面成分とする.相 異なる 3 点 P , Q, R ∈ Rm があり,Q は線分 P , R の内点であるとする. このとき,P ∈ C, P ∈ / F , Q ∈ F ならば,R ∈ / C である. 9 証明. もし,R ∈ C ならば,P , R ∈ F でなければならない. 定義 2.2.4g. s ∈ A に対して, ¯ © ª Ls := f ∈ ∂P ¯ f (s) = 0 ⊂ ∂P とおく.P ∈ Φ(A − Bs H) ⊂ X に対して,Φ(s) = P を満たす s ∈ A が存 在する.s, t ∈ A, Φ(s) = Φ(t) ならば Ls = Lt である.そこで,LP = Ls e H) と書く. と定義する.LP を点 P における局所錐と呼び,LP = LP (A, (X − ∂X) の特異点全体の集合を Sing(X) と書き, Reg(X) := Φ(A − Bs H) − (Sing(X) ∪ ∂X) と書く. 定理 2.2.4h. (LP 定理) 前定義の LP について,以下が成り立つ. (1) 任意の s ∈ A に対して,Ls は閉凸錐である. [ (2) ∂P = Ls が成り立つ. s∈A [ (3) Bs H = φ ならば,∂P = LP が成り立つ. P ∈X ¯ © ª (4) s ∈ / Bs H ならば,Ls = f ∈ P ¯ f (s) = 0 ⊂ ∂P が成り立つ. [ (5) U := Ls とおく.このとき,U の解析的閉包は ∂P と一致 s∈A−Bs H する. (6) 0 6= f ∈ Ls に対し.f が P の端の元であるための必要十分条件は,f が Ls の端の元であることである. 証明. (1) P が閉凸錐なので,f , g ∈ Ls , 0 5 t 5 1 のとき,(1 − t)f + tg ∈ Ls となり,Ls も閉凸錐である. (2) ⊃ は自明である.⊂ を示す.0 6= f ∈ ∂P はある s ∈ A に対して f (s) = 0 を満たす.よって,f ∈ Ls である. (3) は (2) よりすぐわかる. (4) s ∈ / Bs H とする.境界定理 (1) より,f ∈ H が f (s) = 0 を満たせ ば f ∈ ∂P であるので,f ∈ Ls となる. 10 (5) 双対定理より,U は ∂P の空でない開集合を含む.Bs H は A のザリ スキー閉集合だから,∂P における U の補集合はザリスキー閉集合である. (6) f が P の端の元のとき,f が Ls の端の元であることは明らかである. 逆を証明する.f が P の端の元でないとする.すると,ある g, h ∈ P−R+ ·f が存在して f = g+h と書ける.g(s) = 0, h(s) = 0 で,g(s)+h(s) = f (s) = 0 なので,g(s) = h(s) = 0 でなければならない.よって,g, h ∈ Ls である. したがって,f は Ls の端の元でない. e が Φ(s) e e 一般に ,s, t ∈ A = Φ(t) を満たすとき,f ∈ H に 対し て, ∂f ∂f ∂f ∂f (s) = (t) が成り立つので, (P ) := (t) と定義することがで ∂ai ∂ai ∂ai ∂ai ∂f きる.P ∈ X に対しても, (P ) = 0 か否かは意味を持つ. ∂ai 点 P ∈ X における X の古典的な意味での接空間を TX,P ⊂ PN と書く. また,f = N X αi si に対し, i=0 ( Hf := ¯ ) N ¯X ¯ (x0 : · · · : xN ) ∈ P(H ) ¯ αi xi = 0 ¯ ∨ i=0 と書く. 定理 2.2.4i. (面成分 F) Φ(∂A − Bs H) ⊂ ∂X が成り立つと仮定する. ¯ © ª X ◦ := P ∈ Reg(X) ¯ LP 6= 0 [ [ F◦ := LP = {0} ∪ LP P ∈Reg(X) P ∈X ◦ とし ,P における F◦ の解析的位相に関する閉包を F とおく.このとき, 以下が成り立つ. (1) P ∈ X ◦ ならば, ¯ © ª LP = f ∈ P ¯ TX,P ⊂ Hf である.特に,P が非退化ならば,dim LP = N − dim X である. (2) dim F = dim P − 1 ならば,F は P の面成分である. 11 e H) と書く.dim F = dim P − 1 のとき,F を ∂P の主成分 F = F(A, といい,F の定義方程式を P の主判別式という. 証明. この定理の証明は,次の定理 2.2.4k の証明を F = X として適用 すればできる. e は代数的凸錐,X は (A, e H) の特性多様体 定義 2.2.4j. (X の複体構造) A で,m = dim X とし,∆m (X) = {X} とする.今,∆m (X), ∆m−1 (X),. . ., ∆r+1 (X) まで定まったとき,∆r+1 (X) に属する r + 1 次元の代数的領域 F の境界 ∂F の面成分として現れる r 次元の代数的領域全体の集合を ∆r (X) と定める.この ∆(X) := {∆0 (X), ∆1 (X),. . ., ∆m (X)} を X の代数的複 体と呼ぼう.これは,胞複体であるとは限らないことに注意する. Y も特性多様体で Ψ: X · · · → Y は有理写像とする.Φ が構造的である とは,以下の (1)∼(3) を満たすことを言う. (1) Ψ の不確定点集合を X1 とし X0 := X − X1 とする.Ψ(X0 ) の Y に おける解析的な閉包は Y と一致する. (2) ど の F ∈ ∆i (X) (i = 0, 1,. . ., m = dim X) も X1 に含まれない. Ψ(F ∩ X0 ) の Y における解析的な閉包を Ψ(F ) と書くことにする. k := dim Y とするとき,i = m − k であれば,任意の F ∈ ∆i (X) に 対し Ψ(F ) ∈ ∆i+k−m (Y ) である. (3) 任意の G ∈ ∆j (Y ) に対し,Ψ−1 (G) の X における解析的な閉包の任 意の既約成分 F は,F ∈ ∆j+m−k (X) と Ψ(F ) = G を満たす. e は非退化な代数的凸錐で,Φ: A · · · → X は 定理 2.2.4k. (面成分 E) A 構造的有理写像であるとする.さらに,(∂A) ∩ Bs H = φ あると仮定する. 今,F ∈ ∆r (X) (r < m = dim X) を取る. ¡ ¢ Reg(F ) := (F ∩ Φ(A − Bs H)) − (∂F ) ∪ Sing(F ) ¯ © ª F ◦ := P ∈ Reg(F ) ¯ LP 6= 0 [ [ E◦ := LP = {0} ∪ LP P ∈Reg(F ) P ∈F ◦ とし,E◦ の H における解析的位相に関する閉包を E とする.このとき, 以下が成り立つ. 12 (1) P ∈ F ◦ ならば, ¯ © ª LP = f ∈ P ¯ TF,P ⊂ Hf である.特に,P が非退化ならば,dim LP = N − r である. (2) dim E = dim P − 1 ならば,E は P の面成分である. e H, F ) と書く.dim E = dim P − 1 のとき,E を ∂P の F に E = E(A, 対応する端成分という.F = P ∈ ∆0 (X) の場合は E = LP で,LP は線 形,つまりその定義方程式は 1 次式であることに注意する.1 5 m < n の とき,E の定義方程式を P の端判別式という. 証明. (1) S ∈ ∆n−m+r (A) を Φ−1 (F ) の既約成分とする.dim S = n − m + r である.P ∈ Reg(F ) に対し P = Φ(s) を満たす s ∈ Reg(S) が 存在する. まず,0 6= f ∈ P に対し,f ∈ LP と TF,P ⊂ Hf が同値であることを証 明する. 0 6= f ∈ P を取る.TF,P ⊂ Hf と仮定する.すると,f (s) = N X αi si (s) = 0 i=0 である.よって,f ∈ LP である. 逆に,f ∈ LP を取る.P = Φ(s) ∈ Reg(F ) とする. S における s の局所環を (OS,s , ms ) とする.これは,正則局所環なの で,正則パラメータ系 (t1 ,. . ., tn−m+r ) が存在とする.これは s のある近 傍 U ⊂ S における局所座標系である.U 上で f (t) = 0 と仮定してもよ ∂f く,これは f ∈ m2s であることを意味する.よって, ∈ m (i = 1, . . ., ∂ti ∂f n − m + r) であり, (P ) = 0 である.P(H∨ ) 上では f は 1 次関数であ ∂ti るから,これは,任意の Q ∈ TF,P に対して f (Q) = 0 であることを意味 する.よって,TF,P ⊂ Hf である. dim TF,P = dim F = r に注意する.P が非退化のとき,TF,P ⊂ Hf と いう条件は,f が与えられた独立な r + 1 個の点を通ることを意味する. よって,dim LP = dim P − (r + 1) = N − r である. (2) LP のザリスキー閉包を LP とおく.LP は LP 内の凸錐なので, 13 dim LP = dim LP である. [ ¯ © ª LP = f ∈ H ¯ ある P ∈ F ◦ に対して TF,P ⊂ Hf P ∈F ◦ は既約だから,E は既約である. ¯ © ª Ms := f ∈ H ¯ f ∈ m2s とおく.(1) の考察から,Φ(s) ∈ Reg(F ) ならば Ls = Ms が成り立つ.E, S のザリスキー閉包を E,S とし, ¯ © ª U := s ∈ S ¯ dim Ms = N − dim F とおく.上半連続性定理から,U は S のザリスキー開集合である.また, [ s ∈ U ならば,Ms ⊂ E である.よって, Ms は E のある空でないザ s∈U リスキー開集合 W1 を含む. もし ,∂P ∩ E の ∂P の解析的開核の解析的閉集合が ∂P ∩ E と一致 しないとすると,∂P ∩ E に含まれる ∂P のある解析的開集合 W2 で E と交わらないものが存在する.W = W1 ∩ W2 は空でない開集合である と仮定し てよい.f ∈ W を一般の点とする.f ∈ Lt を満たす t ∈ U が 存在する.Φ(t) ∈ / Reg(F ) だから ,t ∈ Bs H または t ∈ ∂S または Φ(t) ∈ Sing(F ) である.定理 2.2.4g(5) より t ∈ / Bs H と仮定してよい. Q := Φ(t) ∈ F − Reg(F ) とおくとき,f ∈ LQ である.s ∈ U に対し ¯ © ª M0s := f ∈ Ms ¯ ある Q ∈ F − Reg(F ) に対し f ∈ LQ とおくと,M0s $ Ms であって,dim M0s < dim Ms = N − r となる.こ のことは,dim W < dim ∂P を意味し,矛盾である.よって,E は P の面 成分である. e = R3 , H = H 0 (Pn , O(2)) の場合を考察する.特性多様体 例 2.2.4l. A X ⊂ P5 は非特異 2 次曲面で,∂X = φ なので ∂P は主成分 F のみから 成る. 2 次多項式 f (a, b, c) = p1 a2 + p2 b2 + p3 c3 + q1 bc + q2 ca + q3 ab ∈ H に 対応して,H ∼ = R6 の座標系を (p1 , p2 , p3 , q1 , q2 , q3 ) で定める.F の元 14 は (s1 a + s2 b + s3 c)2 + (t1 a + t2 b + t3 c)2 という形に表せる.pi = s2i + t2i , qi = 2si+1 si+2 + 2ti+1 ti+2 (添え字は巡回的) から si , ti を消去すると, 4p1 p2 p3 + q1 q2 q3 − p1 q12 − p2 q22 − p3 q32 = 0 が得られ,これが F の定義方程式であり,P の主判別式である.これを P5 内の 3 次超曲面 Z と考えるとき,Sing(Z) は 4 本の代数曲線の和集合 であり,判別式の符号だけから P を決定することはできない. e = R3+ , H = H 0 (Pn , O(2)) の場合を考察する.∆1 (X) は 例 2.2.4m. A (b, c)-平面,(c, a)-平面,(a, b)-平面の X における像である 3 曲線 C1 , C2 , C3 からなり,∆0 (X) は a-軸,b-軸,c-軸の X における像である 3 点 P1 , P2 , P3 からなる. C1 に対応する端成分 E1 の元は (s2 b + s3 c)2 + p1 a2 + q2 ca + q3 ab (p1 , q2 , q3 ∈ R+ ) という形であるので,E1 の定義方程式は 4p2 p3 − q12 = 0 である.同様に, 4p3 p1 − q22 , 4p1 p2 − q32 も端判別式である.また,Pi に対応する端成分 E0i の定義方程式は pi = 0 である. ∂P = F ∪ E1 ∪ E2 ∪ E3 ∪ E01 ∪ E02 ∪ E03 で,∂P は 7 個の面成分からなる. d = 2 のとき,H = H 0 (P2 , O(2d)) に対して,P(R3 , H) の主判別式は, まだ求められていない.それは,困難なので,以下,もう少し易しい場合 を扱っていく. 2.2.2b. 相対定理 e ⊂ Rn+1 は非退化閉凸錐で,H ⊂ H 0 (Pn , 命題 2.2.5a. (相対定理 H) A e H) は非退化であると仮定する.部分 O(d)) とする.さらに,P := P(A, e に対し,P0 := P(A, e H0 ) とおく. ベクトル空間 0 6= H0 ⊂ H と s ∈ A (1) すると,P0 = P ∩ H0 , ∂P0 ⊂ ∂P ∩ H0 が成り立つ.さらに Bs H0 = φ ならば,P0 は非退化である. e H), F0 := F(A, e H0 ), Ls := Ls (A, e H), L0s := Ls (A, e H0 ) (2) F := F(A, e に対し L0 ⊂ Ls ∩ H0 が成 とする.すると,F0 ⊂ F ∩ H0 で,s ∈ A s e − Bs H0 ならば,L0s = Ls ∩ H0 である. り立つ.さらに,s ∈ A 15 e H0 ), X 0 := X(A, e H0 ) とする.もし ,Φ0−1 ((X 0 )◦ ) ⊂ (3) Φ0 := Φ(A, Φ−1 (X ◦ ) で,P0 6⊂ F であるならば,F0 = F ∩ H0 である. e は 代数的凸錐で ,Φ と Φ0 は 構造的であると仮定する.さらに , (4) A (∂A) ∩ Bs H = φ と仮定する.m := dim X, m0 := dim X 0 とし , Ψ: X · · · → X 0 は Φ0 = Ψ ◦ Φ を 満た す 自然な 有理写像と す る . F 0 ∈ ∆r (X 0 ) を取る.このとき,Ψ−1 (F 0 ) の任意の既約成分 F は 0 e H, F 0 ) が P0 の端成分 ∆m−m +r (X) の元である.また,E0 := E(A, e H, F ) は P0 ⊂ E でない限り P の端成分 であるならば ,E := E(A, であって,E0 = E ∩ H0 が成り立つ. (5) 0 6= f ∈ P0 に対し ,f が P の端の元であれば ,f は P0 の端の元で ある. 証明. (1) P0 = P ∩ H0 と ∂P0 ⊂ ∂P ∩ H0 は自明である. Bs H0 = φ ならば P0 が非退化であることを証明する.H0 の基底を延長 e0 と Φ e を作る.Ψ: e H∨ −→ H0∨ して H の基底を作る.その基底によって Φ i e0 = Ψ e ◦Φ e が成り立つ.Bs H0 = φ な を上の基底による正射影とすれば,Φ e0 と Ψ e は正則写像である.X, X 0 が生成する凸錐を D, e D e 0 とする. ので,Φ e 0 は原点を含む直線を含む.Φ( e D) e =D e0 もし dim P0 が退化していれば,D e も原点を含む直線を含む.しかし,P は非退化だからそれはあ なので,D りえない. (2) s ∈ Bs H0 , f ∈ Ls ∩ H0 を取る.f (s) = 0 で s ∈ / Bs H0 だから f ∈ ∂P0 である.よって,f ∈ L0s である. [ [ (3) F◦ = Ls , F0◦ = (Ls ∩ H0 ) より,結論を得る. s∈Φ−1 (X ◦ ) s∈Φ0−1 (X 0◦ ) (4) F 0 ∈ ∆r (X 0 ) を取る.Φ0 は構造的だから,Φ0−1 (F 0 ) の既約成分を S とすると,S ∈ ∆n−m+r (A) である.Φ は構造的だから,Ψ−1 (F 0 ) の既約成 分 F に対して,上の S を適当に選べば Φ(S) = F となり,q = m − m0 + r とおくと F ∈ ∆q (X) である. E0 は P0 の面成分であるとし,P ∈ Reg(F 0 ) を取る.Φ0 (s) = P を満た す点 s ∈ S ⊂ A が存在する.(∂A) ∩ Bs H = φ なので,s ∈ / Bs H である. 16 そこで,Q = Φ(s) ∈ F とおくと,Ψ(Q) = P である. E0 ⊂ E ∩ H0 , L0s ⊂ Ls ∩ H0 は定義から明らかである.逆に,f ∈ Ls ∩ H0 は f (s) = 0 を満たすので,f ∈ L0s であり,L0s = Ls ∩ H0 がわかる.つ まり,L0P = LQ ∩ H0 である. [ E, E0 は E◦ := LQ , E0◦ := Q∈Reg(F ) 0 [ L0P の解析的閉包であった P ∈Reg(F 0 ) 0 ので,E = E ∩ H が成り立つ. N := dim H − 1 とするとき,定理 2.2.4k より dim LQ = N − q である. E0 6= φ だから,E 6= φ である.dim E = dim LQ +dim F = (N −q)+q = N であり,E は P の面成分である. (5) は明らかである. 注意. Bs H0 6= φ の場合には P0 は退化する可能性がある.その例を示 e = Rn+1 , H = H 0 (Pn , O(d)), d = 2, P = P(Rn+1 , H) とおく. す.A + + ¯ © n+1 n s は P+ = P(R+ ) の内点とし ,Ls を局所錐とする.Hs = f ∈ H ¯ ª f (s) = 0 とおく.Bs Hs = {s} であることに注意する.このとき,P(Rn+1 + , Hs ) = Ls である.定理 2.2.4i より,これは退化している. e⊂A e00 ⊂ Rn+1 は閉凸錐で,A e と P00 := 命題 2.2.5b. (相対定理 A) A e00 , H) は非退化である仮定する.また F := F(A e00 , H) 6= φ と仮定す P(A e00 , H) 6= φ であり,F と F00 のザリスキー閉包は一 る.すると F00 := F(A 致する. e00 , H) と Φ(A, e H) の写像の定義方程式は 一致するので , Φ(A e00 , H) と お くと ,Reg(X 00 ) は Reg(X) の 空でな い 開集合 X 00 := X(A e00 , H) とおく.定義 であって,dim X = dim X 00 である.L00 := LP (A 証明. P から ,P00 ⊂ P ⊂ H なので ,P ∈ Reg(X 00 ) ならば L00P ⊂ LP であ ¯ © ª る.P ∈ Reg(X 00 ) に 対し て ,VP := f ∈ H ¯ TX,P ⊂ Hf とおく. S LP ⊂ L00P ⊂ VP で ,dim VP = N − n である. P ∈Reg(X 00 ) VP は F, F00 両方のザリスキ ー閉包に 含まれ る N 次元の空でない領域である. dim F = dim F00 = N なので,F と F00 のザリスキー閉包は一致する. 17 命題 2.2.5c. (閉包定理) C は Rm 内の閉凸錐で,直線を含まず,dim C = m であるとする.F0 , F1 ,. . ., Fr は C の面成分であり,∂C = F0 ∪ F1 ∪ · · · ∪ Fr が成り立つと仮定する.すると, ∂F0 = (F1 ∪ F2 ∪ · · · ∪ Fr ) ∩ F0 が成り立つ. 証明. 明らかである. e = Rn+1 ,または,d は偶数で A e = Rn+1 補題 2.2.5d. d は自然数で A + e H) とする.さらに Bs H = φ であるとし,H ⊂ H 0 (Pn , O(d)), P = P(A, ならば,P は非退化である. e 等の記号は, 証明. (1) まず,H = H 0 (Pn , O(d)) の場合に証明する.D e を含む Rn+1 の座標系を (x0 ,. . ., 定理 2.2.4b とその証明と同じとする.A xn ) で表わす. e は原点を通 もし P が H のある超平面に含まれるならば,双対定理から D r X e − {0} が存在して る直線を含む.よって,ある a1 ,. . ., ar ∈ A Φ(ai ) = 0 i=1 を満たす.H の基底 s0 ,. . ., sN を,s0 = xdk と選んでおけば,ai の xk -成分 を ci とするとき,Φ(ai ) の s0 -成分は cdi であるから,cd0 + cd1 + · · · + cdr = 0 が成り立つ.d が偶数ならば c0 = c1 = · · · = cr = 0 である.d が奇数の場 e = Rn であったので ci = 0 であり,やはり c0 = c1 = · · · = cr = 0 合は A + を得る.対称性から,これが任意の 0 5 k 5 n に対し て成立するので, a0 = · · · = ar = 0 となり,矛盾する. (2) 一般の H に対しては,(1) と命題 2.2.5a から結論が得られる. e は非退化な Rn+1 の閉凸錐で,d は偶数であるか,また 定理 2.2.5e. A e は直線を含まないと仮定する.また,H ⊂ H 0 (Pn , O(d)), は d は奇数で A e H) とする.さらに,Bs H = φ ならば,P は非退化である. P = P(A, e は直線を含まない場合を考える.dim P は,A e を含 証明. d が奇数で A んでいる Rn+1 の座標変換によって不変であるので,Rn+1 の座標系を適 18 e ⊂ Rn+1 とできる.P(A, e H) ⊃ P(Rn+1 , H) なので, 当に選び直せば ,A + + 前補題より,結論を得る. e H) ⊃ P(Rn+1 , H) と前補題より,結論を得る. d が偶数の場合は,P(A, 2.2.2c. Rn+1 上の巡回不等式 e = Rn+1 で,有限群 G が Rn+1 に作用していて,任意の a ∈ Rn+1 と A 任意の σ ∈ G に対して,σ(R+ · a) = R+ · σ(a) を満たすものとする.する と,自然な全射 (Rn+1 − {0}) −→ Pn = P(Rn+1 ) を通して G は Pn にも 作用する.1 := (1 : 1 : 1 : · · · : 1) ∈ Pn とする.Pn 内の G の固定点全体 の集合を ¯ © ª (Pn )G := a ∈ Pn ¯ 任意の σ ∈ G に対して σ(a) = a とおくとき,(Pn )G = {1} が成り立つと仮定する. 例えば,G が (n+1) 次巡回群で σ ∈ G が σ(a0 ,. . ., an ) = (aσ(0) ,. . ., aσ(n) ) として Rn+1 に作用するとき,(Pn )G = {1} が成り立つことに注意する.また, ¡ ¢ π: Pn → Pn /G を自然な全射とするとき,Sing(Pn /G) = π (Pn )G = {π(1)} である. さて, ¡ ¢G H := H 0 Pn , O(d) ¯ © ª H0 := f ∈ H ¯ f (1) = 0 P := P(Rn , H) Q := P(Rn , H0 ) = P ∩ H0 F := F(Rn+1 , H) F0 := F(Rn+1 , H0 ) とおく.d = 1 のとき,Bs H = φ, Bs H0 = {1} である.d が奇数の場合 は,P = 0, Q = 0 である. π Ψ 正則写像 Φ: Pn → X は,Pn −→ Pn /G −→ X と分解することに注意 する. 19 定理 2.2.6a. (P, Q の構造定理) Ψ: Pn /G −→ X は同型写像であると仮 定する. (1) Q は P の面成分であり,P = F ∪ Q である. (2) ∂Q はただ 1 つの面成分 F0 からなり,F0 = F ∩ Q が成り立つ. (3) LP = LP (Rn+1 , H), P1 = Φ(1) とおくと,LP1 = Q が成り立つ. 証明. (3) f ∈ Q は f (1) = 0 を満たすので,Q ⊂ L1 = LP1 である.逆 に f ∈ LP1 ならば,f (1) = 0 より f ∈ H0 である.f ∈ LP1 ⊂ P なので, Q = P ∩ H0 より,f ∈ Q である.また,Q のザリスキー閉包は H0 なの で,Q は P の面成分である. S (1) 定理 2.2.4h(2) より,P = P ∈X LP である.Reg(X) = X − {P1 } S であるので,P = LP1 ∪ P ∈Reg(X) LP である. [ [ LP = LP = F◦ ⊂ F ⊂ P P ∈Reg(X) P ∈X ◦ なので,P = LP1 ∪ F = Q ∪ F である. (2) は命題 2.2.5c と,命題 2.2.5a(3) から得られる. 定理 2.2.6b. (Xd の構造定理) G = Z/(n + 1)Z で ,Hd が (n + 1) 変数 d 次斉次巡回多項式全体の集合である場合を考える.d ∈ N のとき Bs H = φ である.そこで,Φd := Φ(Rn+1 , Hd ), Xd := Φd (Pn ) とする. π Ψ d Φd : Pn −→ Xd は Pn −→ Pn /G −→ Xd と分解するこのとき,d = n + 1 ならば,Ψd : Pn /G −→ Xd は同型写像である.また,Xd の特異点は Φd (1) のみである. 証明. まず,d = n + 1 の 場合を 考え る .H を Pn の 超平面とし X D := σ ∗ H, D0 := π(H) とおく.D は G-不変な因子で,π ∗ D0 = D を σ∈G 満たす. ¡ ¢ ¡ ¢G ¡ ¢G H 0 Pn /G, O(D0 ) = H 0 Pn , O(D) ∼ = H 0 Pn , O(n + 1) = Hd が成り立つ.H は非常にアンプルなので D0 は非常にアンプルである.Ψd は完備線形系 |D0 | が定める有理写像なので同型写像である. 20 次に,d = n + 1 の場合を考える.単射 ¢G ¢G ¡ ¡ H 0 Pn , O(dH) −→ H 0 Pn , O((n + 1)H) ∼ = Hn+1 が存在するので,正則写像 ρd : Xd → Xn+1 が存在して,Φn+1 = ρd ◦ Φd を満たす.Ψn+1 は同型写像なので,Ψd も同型写像である. 実数の範囲では,G による Pn の固定点は 1 = (1 : 1 : · · · : 1) のみであ る.よって,X/G の非特異は π(1) のみであり,Xd の非特異は Φd (1) の みである. 2.2.2d. R3 上の巡回不等式 以下,n = 2 の場合,つまり,3 変数斉次多項式の場合を考える. e = R3 とし. 定義 2.2.7a. A ¯ © ª Hd := f (a, b, c) ¯ f は d 次巡回多項式 ¯ © ª H0d := f ∈ Hd ¯ f (1, 1, 1) = 0 ¯ © ª Hsd := f (a, b, c) ∈ Hd ¯ f は対称多項式 s 0 Hs0 d := Hd ∩ Hd Pd := P(R3 , Hd ) Qd := P(R3 , H0d ) = Pd ∩ H0d Rd := P(R3 , Hsd ) = Pd ∩ Hsd s Sd := P(R3 , Hs0 d ) = Qd ∩ Hd とおく.指数 (i, j, k) の集合 Id を ¯ © ª Bd := Si,j,k ¯ (i, j, k) ∈ Id が Hd の基底になるように取る. |(i, j, k)| := max{|i − j|, |i − k|, |j − k|} N := #Id − 1 とおく.Hd ∼ = RN +1 , H0d ∼ = RN である.Bd の元を適 当な順番に並べて s0 ,. . ., sN とする.ただし ,s0 = ad + bd + cd とし , |(i, j, k)| が最小となる (i, j, k) を選んで,sN = Si,j,k とする.例えば , I3 = {(3, 0, 0), (2, 1, 0), (1, 2, 0), (1, 1, 1)}, I4 = {(4, 0, 0), (3, 1, 0), (1, 3, 0), (2, 2, 0), (2, 1, 1)} と選ぶことができる. 21 Hd の元 f は,その Sd の係数が 1 であるときモニックと呼ぶことにす る.また,f が Sd の項を持たないとき,f は無限遠点にあるという. ¯ © ª H̆d := f ∈ Hd ¯ f はモニック ¯ © ª H∞ f ∈ Hd ¯ f は無限遠点にある d := とおく.H̆d は P(Hd ) ∼ = PN R のアフィン開集合とみなすことができ,その N ∞ 補集合が H∞ d の PR における像 P(Hd ) である.一般に,Hd 内の凸錐 C に対して, C̆ := C ∩ H̆d と書くことにする.C̆ は H̆d 内の凸集合である. 命題 2.2.7b. (次元定理) dim Hd = d(d + 1)(d + 2)/6e である. 証明. #Id = d(d + 1)(d + 2)/6e より,すぐわかる. P2 = R+ · (S2 − S1,1 ) + R+ · (S2 + 2S1,1 ) であることは,容易にわかる.d = 4 の場合は,命題 2.2.6b より P2 /G ∼ = Xd であるので,命題 2.2.6a が適用でき,以下が得られる. 系 2.2.7c. d が 4 以上の偶数のとき,3 変数 d 次斉次多項式について は,以下が成り立つ. (1) Pd の面成分は Fd := F(R3 , Hd ) と Qd の 2 つで,∂Pd = Fd ∪ Qd である. (2) Qd の面成分は F0d := F(R3 , H0d ) ただ 1 つで, ∂Qd = F0d = Fd ∩ Qd である. (3) Rd の面成分は Fsd := F(R3 , Hsd ) と Sd の 2 つで,∂Rd = Fsd ∪ Sd で ある.また,Fsd = Fd ∩ Hsd である. 3 s0 (4) Sd の面成分は Fs0 d := F(R , Hd ) ただ 1 つで, s0 ∂Sd = Ss0 d = Fd ∩ Hd である. 22 定義 2.2.7d. H̆d の元 f = s0 + N X αi si に (α1 , . . ., αN ) ∈ RN を対応 i=1 させて H̆d = R N と考える.Fd ∩ H̆d の定義方程式を discd (α1 ,. . .,αN ) と 書く. また,H̆0d の元 f = (s0 − sN ) + N −1 X αi (si − sN ) に (α1 , . . ., αN −1 ) ∈ i=1 RN −1 を対応させて H̆0d = RN −1 と考える.F0d ∩ H̆0d の定義方程式を disc0d (α1 ,. . .,αN −1 ) と書く. 2.2.2e. R3+ 上の巡回不等式 e = Rn+1 の場合について,n = 3 の場合は ∂X の構造が難し くなる A + ので,今後の研究課題とすることにし ,ここでは n = 2 の場合のみ扱う. e = R3 とする.Hd , H0 , Hs , Hs0 は前節と同じとし ,以下の不等式の A + d d d 凸錐を考察する. 2 P2+ := (R3+ − {0})/R× + ⊂P 3 P+ d := P(R+ , Hd ) + 3 0 0 Q+ d := P(R+ , Hd ) = Pd ∩ Hd + 3 s s R+ d := P(R+ , Hd ) = Pd ∩ Hd + 3 s0 s S+ d := P(R+ , Hd ) = Qd ∩ Hd 命題 2.2.8a. (Xd+ の構造定理) Xd+ := X(R3+ , Hd ), Cd := ∂Xd+ = Φd (∂R3+ ), G = Z/3Z とおく. (1) d = 3 のとき,Ψd : P2+ /G −→ Xd+ は同型写像である.Xd+ の特異点は Φd (1 : 1 : 1) のみであり,それは (A1 ) 型有理 2 重点である. (2) PN = P(H∨ d ) における Cd のザリスキー閉包を C d とすると,C d は PN 内の d 次代数曲線で,その特異点は Φd (0 : 0 : 1) のみである.また, ¯ © ª Cd = Φd (0 : s : 1) ¯ s = 0 である. 証明. (1) Xd := X(R3 , Hd ) とすると,命題 2.2.6b より,d = 3 のとき Ψd : P2 /G −→ Xd は同型写像であったので,Ψd : P2+ /G −→ Xd+ は同型写 23 像である. ¡ ¢ (2) Φd (a) = (s0 (a) : · · · : sN (a) で,各 si は d 次斉次式だから,C d は d 次代数曲線である.特に,C 3 は P2 内の 3 次曲線である.Φ3 (0 : 0 : 1) = Φ3 (0 : 1 : 0) より,C 3 はこの点に結節点を持つ.3 次曲線の特異点は 高々1 点だから,Φ3 (0 : 0 : 1) 以外に特異点は存在しない. d = 3 のとき,正則写像 ρd : C d −→ C 3 が存在するので,C d も Φd (0 : 0 : 1) 以外では非特異である. 上の命題より,∆2 (Xd+ ) = {Xd+ }, ∆1 (Xd+ ) = {Cd+ }, ∆0 (Xd+ ) = {Φd (0 : 2 0 : 1)} である.また,d = 3 のとき,Φd : P+ −→ Xd+ は構造的正則写像で, Bs Hd = φ である. 定義 2.2.8b. s, t ∈ R に対して, ¯ © ª Ls,t := f ∈ Pd ¯ f (s, t, 1) = 0 ⊂ ∂Pd ¯ © ª L+ := f ∈ P+ ¯ f (s, t, 1) = 0 ⊂ ∂P+ s,t L0s,t L0+ s,t d d := Ls,t ∩ Qd = Ls,t ∩ H0d + + 0 := L+ s,t ∩ Qd = Ls,t ∩ Hd とおく.P = Φd (s : t : 1) ⊂ Xd のとき,LP = Ls,t である.L0P = L0s,t と定義する.同様に,P ∈ Xd+ = Φd (P2+ ) ⊂ Xd のとき,Φd (s : t : 1) = P + 0+ 0+ を満たす s, t ∈ R+ を取り,L+ P = Ls,t , LP = Ls,t と定義する. 定理 2.2.8c. 上の記号のもと,以下が成り立つ. [ (1) ∂P+ L+ P d = P ∈Xd+ (2) ∂Qd = [ P ∈Xd L0P , ∂Q+ d = [ L0+ P P ∈Xd+ + + (3) L1,1 = Qd , L+ 1,1 = Qd で,それらは,それぞれ Pd , Pd の面成分で ある. 0+ + + (4) L+ 0,0 , L0,0 は,無限遠点にあり,それぞれ,Pd , Qd の面成分である. + 0+ + ∞ ∞ つまり,L+ 0,0 = (∂Pd ) ∩ Hd , L0,0 = (∂Qd ) ∩ Hd である. 24 証明. (1), (2) は定理 2.2.4h, 命題 2.2.5a より,すぐわかる. + + (3) f ∈ Q+ d は f (1, 1, 1) = 0 を満たすので,Qd ⊂ L1,1 である.逆に + + 0 f ∈ L+ 1,1 ならば ,f (1, 1, 1) = 0 より f ∈ Hd である.f ∈ L1,1 ⊂ Pd な + + + 0 ので,Q+ d = Pd ∩ Hd より f ∈ Qd である.また,Qd のザリスキー閉包 は H0d なので,Q+ d は Pd の面成分である. Qd については,命題 2.2.6a で示した. (4) Si,j,k ∈ Bd − {Sd } で あれば ,Si,j,k (0, 0, 1) = 0 を 満た すので , + Si,j,k ∈ L+ 0,0 である.これより,L0,0 の元は Sd の項を持たないことがわ ∞ かり,L+ 0,0 ⊂ Hd である.また,N 個の 1 次独立な元 Si,j,k ∈ Bd − {Sd } + ∞ を含むので,dim L+ 0,0 = dim Hd = N である.L0,0 のザリスキー閉包は + + ∞ H∞ d で,L0,0 = Pd ∩ Hd なので,L0,0 は Pd の面成分である. L0+ 0,0 についても同様である. 定義 2.2.8d. + ∞ P+∞ := L+ 0,0 = (∂Pd ) ∩ Hd d + ∞ Q+∞ := L0+ 0,0 = (∂Qd ) ∩ Hd d + と書き,これらを P+ d , Qd の無限遠成分という. 定理 2.2.9a. (P+ d の構造定理) 3 d = 3 とする.F+ d := F(R+ , Hd ), 3 E+ d := E(R+ , Hd , Cd ) とおく. + + + +∞ (1) P+ の中の空でないもの全体であり. d の面成分は,Fd , Ed , Qd , Pd + それらの和集合が ∂P+ d である.特に,Pd の面成分の中で線形でな + いものは,F+ d と Ed の高々2 個である. + + (2) Fd ∩ (∂P+ d ) ⊂ Fd であり,もし dim Fd = N ならば Fd と Fd のザ リスキー閉包は一致する. 証明. (1) Xd+ = Reg(Xd+ ) ∪ Reg(Cd ) ∪ {Φd (1 : 1 : 1)} ∪ {Φd (0 : 0 : 1)} [ + + + + なので,定理 2.2.8c より,∂P+ = L+ P = Fd ∪ Ed ∪ L1,1 ∪ L0,0 = d P ∈Xd+ + + +∞ F+ である. d ∪ Ed ∪ Qd ∪ Pd (2) は命題 2.2.5a と命題 2.2.5b から得られる. 25 定理 2.2.9b. (Q+ d の構造定理) d = 3 とする.Xd0+ := X(R3+ , H0d ), 0+ 3 0 3 0 0 Cd0 := ∂Xd0+ , F0+ d := F(R+ , Hd ), Ed := E(R+ , Hd , Cd ) とおく. ; + + 0+ + (1) F0+ d = Fd ∩ Qd , Ed = Ed ∩ Qd が成り立つ. 0+ 0+ +∞ (2) Q+ の中の空でないもの全体である.こ d の面成分は,Fd , Ed , Qd 0+ の中で線形でないものは,F0+ d と Ed の高々2 個である. 0+ 0+ 0 0 (3) F0d ∩ (∂Q+ d ) ⊂ Fd であり,もし dim Fd = N − 1 ならば Fd と Fd のザリスキー閉包は一致する. 証明. (1) は命題 2.2.5a より,(2) は命題 2.2.5c より,(3) は命題 2.2.5b より,すぐわかる. + 定理 2.2.9c. (R+ d , Sd の構造定理) s+ 3 s (1) d = 3, Xds := X(R3+ , Hsd ), Cds := ∂Xds , Fs+ d := F(R+ , Hd ), Ed := +∞ s+ E(R3+ , Hsd , Cds ), R+∞ := R+ とする.R+ d d ∩ Pd d の面成分は Fd , + +∞ s+ s+ +∞ Es+ の高々4 つであり,∂R+ で d , Sd , Rd d = Fd ∪ Ed ∪ Sd ∪ Rd + s+ + s s ある.また,Fs+ d = Fd ∩ Hd , Ed = Ed ∩ Hd が成り立つ. s0+ s0 s0 := F(R33 , Hs0 (2) d = 4, Xds0 := X(R3+ , Hs0 d ), d ), Cd := ∂Xd , Fd +∞ +∞ s0 = S+ とする.S+ Es0+ := E(R3+ , Hs0 d , Cd ), Sd d ∩ Pd d の面成分 d s0+ +∞ s0+ は Fs0+ の高々3 つであり,∂S+ ∪ Es0+ ∪ S+∞ d , Ed , Sd d = Fd d d s0+ s0 s0 である.また,Fs0+ = F+ = E+ d d ∩ Hd , Ed d ∩ Hd が成り立つ. 3 s0 X3s0 は線分であって,Φs0 3 : R+ · · · → X3 は構造的でないことに注意する. 定義 2.2.9d. 定義 2.2.7d と同じ 座標系を用いて,P+ d の端判別式を + disc+ d (α1 ,. . ., αN ) と書く.また,Qd の主判別式,端判別式を,それぞれ, disc0d (α1 ,. . .,αN −1 ), disc0+ d (α1 ,. . .,αN −1 ) と書く. P+ d の主判別式は Pd の主判別式は一致することに注意する. 0+ 定理 2.2.9e. d = 3 で,Q+ d の端判別式 discd (α1 ,. . .,αN −1 ) が存在す + + ると仮定する.すると,P+ d の端判別式 discd (α1 ,. . ., αN ) も存在し,discd には αN を含む項は登場せず, 0+ disc+ d (α1 , . . . , αN ) = discd (α1 , . . . , αN −1 ) 2.2b 3次斉次不等式 26 0+ が成り立つ.そこで,disc+ d , discd を, disc+ d (α1 , . . . , αN −1 ) とも表す. + 同様に,S+ d の端判別式が存在すれば,それは Rd の端判別式と等しい. 0+ ◦ 証明. disc0+ d が存在するので dim Ed = N − 1 であり,P ∈ Cd に対し 0+ て dim L0+ P = N − 2 である.f1 ,. . ., fN −2 ∈ LP を 1 次独立な元とする. d = 3 のとき sN = Si,j,k は |(i, j, k)| の最小性から,i = 1, j = 1, k = 1 を 満たすので,U = abc で割り切れる.U (0, s, 1) = 0 なので sN ∈ L+ P である. 0+ + 0 他方,Si,j,j (1, 1, 1) = 3 6= 0 なので,sN ∈ / L0+ P である.Ed = Ed ∩ Hd 0+ + 0+ + なので,f1 ,. . ., fN −2 , sN ∈ L+ P である.LP , LP , Ed , Ed をそれぞれ + 0+ + 0+ + L0+ P , LP , Ed , Ed のザリスキー閉包とする.LP = LP + R · sN なので, + 0+ Ed は Ed を底とし,無限遠点 sN を頂点とする錐であり,H̆d 内では柱 0+ である.したがって,disc+ d (α1 , . . . , αN ) = discd (α1 , . . . , αN −1 ) が成り立 つ. 定理 2.2.9f. d = 3 とする.s0 = Sd で , 1 5 i 5 d − 1 については si = Sd−i,i となるように Hd の基底 s0 ,. . ., sN を以下のように取る.する + と,P+ d の端判別式は,αd ,. . ., αN を含む項を持たず,discd (α1 ,. . ., αd−1 ) の形に書ける.つまり,disc+ d は abc の倍数であるような項を含まない. 証明. 前定理の証明から,sj が U の倍数であれば,disc+ d は αj を含む 項を持たないことがわかる. 2.2b. 3次斉次不等式 2.2.3. 3次巡回不等式の基本定理 定理 2.2.10a. (基本定理) f (a, b, c) = (a3 + b3 + c3 ) + p(a2 b + b2 c + c2 a) + q(ab2 + bc2 + ca2 ) + rabc について,任意の a = 0, b = 0, c = 0 に対 して f (a, b, c) = 0 が成り立つための必要十分条件は,3 + 3p + 3q + r = 0 であって,次の条件 (i), (ii) のいずれかが成立することである. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 27 (i) 4p3 + 4q 3 + 27 = p2 q 2 + 18pq (ii) p = 0 かつ q = 0 上の定理は,後で定理 2.2.11a の一部として証明する. 3 0 まず,Q+ 3 = P(R+ , H3 ) の構造を決定する.H3 の基底として s0 = S3 = a3 + b3 + c3 , s1 = S2,1 = a2 b + b2 c + c2 a, s2 = S1,2 = ab2 + bc2 + ca2 , s3 = U = S1,1,1 /3 = abc を用いる.∂Q+ 3 を決定するための幾何学的考察 をしよう.正則写像 Φ3 : P2 −→ P3 を ¡ ¢ Φ3 (a : b : c) := S3 (a, b, c) : S2,1 (a, b, c) : S1,2 (a, b, c) : U (a, b, c) によって定め,前節のように,X3+ = Φ3 (P2+ ), C3 = ∂X3+ とおく.実射影 空間 P3 の斉次座標系を (x0 : x1 : x2 : x3 ) で表すとき,X3 := Φ3 (P2 ) の 定義方程式は以下のようになる. x31 + x32 + 9x33 − 6x1 x2 x3 − x0 x1 x2 + 3x0 x23 + x20 x3 = 0 また,fi (s) = s0 (0, s, 1) とすると, ¯ © ª C3 = (f0 (s) : f1 (s) : f2 (s) : f3 (s)) ∈ X3+ ¯ s ∈ R+ である.x = x1 /x0 ,y = x2 /x0 とし て (x, y)-平面上で 見ると ,C3 は x3 + y 3 = xy で定まる 3 次曲線で,点 Φ3 (0 : 0 : 1) = (1 : 0 : 0 : 0) に結節 点を持つ. (1 : 0 : 0 : 1/3) (1 : 0 : 1 : 1/3) P3 = (1 : 1 : 1 : 1/3) X3+ (1 : 0 : 0 : 0) C3 (1 : 1 : 0 : 0) (1 : 1 : 1 : 0) 0+ + 0 L0+ 0,s = L0,s ∩ H3 を 考え ると ,s 6= 0 のと き ,L0,s 6= 0 ならば , 0 dim L0+ 0,s = dim H3 − 1 − 2 + 1 = 1 である.P = Φ3 (0 : s : 1) とするとき, 0 f ∈ L0+ 0,s ならば TC,P ∩ H3 ⊂ Hf である.そこで,点 Φ3 (0 : s : 1) におい 28 2.2b 3次斉次不等式 て曲線 C3 に接し,点 Φ3 (1 : 1 : 1) を通る P3 内の平面の定義方程式 fs を 求めよう. ¯ ¯ x0 ¯ ¯ f (s) fs := − 3 ¯ d 0 ¯ ds f0 (s) ¯ 1 x1 f1 (s) d ds f1 (s) 1 x2 f2 (s) d ds f2 (s) 1 ¯ x3 ¯ ¯ f3 (s) ¯ ¯ d ds f3 (s) ¯¯ 1/3 = s2 x0 − (2s2 − 1)x1 + (s4 − 2s)x2 − 3(s4 − 2s3 + s2 − 2s + 1)x3 で与えられる.そこで,fs (a, b, c) := s2 S3 − (2s3 − 1)S2,1 + (s4 − 2s)S1,2 とおき,fs (a, b, c) ∈ L0+ 0,s となるかど うか,調べればよい. 定理 2.2.10b. (Q+ 3 の構造定理, [1], [2]) 定理 2.2.9b までの記号を用い る.また, fs (a, b, c) := s2 S3 − (2s3 − 1)S2,1 + (s4 − 2s)S1,2 − 3(s4 − 2s3 + s2 − 2s + 1)U f∞ (a, b, c) := S1,2 − 3U ¯ © ª B := (1/s2 )fs ¯ s > 0 ¯ © ª I := (1 − t)f0 + tf∞ ¯ 0 ≤ t ≤ 1 とおく.f (a, b, c) = S3 + pS2,1 + qS1,2 − 3(p + q + 1)U ∈ H̆0 と (p, q) ∈ R2 を同一視することにより,H̆0 = R2 と考える.Q+ 3 は 3 次元の凸錐であり, 以下が成立する. (1) 任意の s > 0 に対して, ¯ © ª ¯ L0+ 0,s = αfs α > 0 ¯ © ª ¯ E+ 3 = αfs s ∈ [0, ∞], α > 0 Q+∞ = L0+ 3 0,0 = R · I + + +∞ であり,F0+ 3 = 0 である.したがって,Q3 の面成分は E3 と Q3 の 2 個である. 3 3 2 2 (2) disc+ 3 (p, q) = 4p + 4q + 27 − p q − 18pq である. + (3) ∂ Q̆+ 3 = B であり,これは (p, q)-平面上で disc3 = 0 で定まる有理 4 次曲線の第 2, 3, 4 象限にある部分である. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 29 (4) 任意の a = 0, b = 0, c = 0 に対して f (a, b, c) = 0 が成り立つための 必要十分条件は,disc+ 「 p = 0 かつ q = 0 」が成り 3 (p, q) = 0,または, 立つことである. 証明. (1) 定理 2.2.9b より, 0+ 0+ +∞ ∂Q+ 3 = F3 ∪ E3 ∪ Q3 である.定理 2.2.4i(1) より,P ∈ (X3+ )◦ ならば ,dim L0+ P = N −3 = 0 である.よって,F0+ 3 = 0 である. + s = 0 に対し fs ∈ L0+ 0,s ⊂ Q3 であることを証明する. fs (b, a, c) = s4 f1/s (a, b, c) なので ,0 5 a 5 b 5 c = 1 と 仮定し て fs (a, b, c) = 0 を示せばよい.k := (1 − b)/(1 − a) とおく.0 5 a 5 b より 0 5 k 5 1 である.これより, fs (a, b, c) = fs (a, 1 − k(1 − a), 1) n ¢ ª ¡ = (1 − a)2 a(1 − ks)2 (k + s2 ) + 1 + (1 − k)s2 (1 − k − s)2 =0 を得る.fs (0, s, 1) = 0 であることは,Mathematica 等を用いて計算してみ れば,直ちに確認できる.また,fs (1, 1, 1) = 0 であるので,fs (1, 1, 1) ∈ L0+ 0,s である. 0+ dim L0+ 0,s 5 dim E3 − 1 = N − 2 = 1 なので,L0,s = R+ · fs である.こ れより,E0+ 3 = R+ · B である. f0 (1, 1, 1) = 0, f0 (0, 0, 1) = 0, f∞ (1, 1, 1) = 1, f∞ (0, 0, 1) = 1 なので,f0 , 0+ 0+ 0+ 0+ 0+ + f∞ ∈ E0+ 3 ∩ L0,0 である.dim(E3 ∩ L0,0 ) = 1 で,E3 ∪ L0,0 は凸錐 Q3 の境界なので, 0+ E0+ 3 ∩ L0,0 = R+ · f0 ∪ R+ · f∞ である.よって,L0+ 0,0 = R+ · I である.以上で (2), (3) が得られた. s4 − 2s 2s3 − 1 ,q= から s を消去すると, 2 s s2 関係式 27 + 4p3 + 4q 2 = p2 q 2 + 18pq が得られる.これを (p, q)-平面上の (2), (3) 2 つの関係式 p = − 曲線として図示すると下図のようになる. 30 2.2b 3次斉次不等式 q 6 − + (3, 3) p − (4p3 + 4q 3 + 27) − (p2 q 2 + 18pq) = 0 上図で曲線 27 + 4p3 + 4q 2 = p2 q 2 + 18pq の第 1 象限にある部分は s < 0 の部分の軌跡であり ∂Q+ 3 に属さない.s > 0 の部分の軌跡は,第 2,3,4 象 限にある部分である.これより (1) がわかる. (4) は以上の考察より,すぐわかる. + 系 2.2.10c. (S+ 3 の構造定理) 凸錐 S3 は 2 次元の凸錐であり,その境界 ¡ ∂S+ 3 は 2 つの半直線 R+ · (T2,1 − 6U ) と R+ · S3 + 3U − T2,1 ) の和集合 である. + s 証明. 命題 2.2.5c より,S+ 3 = Q3 ∩ H3 である.あとは,前定理よりす ぐ 分かる. + 定理 2.2.11a. (P+ 3 の構造定理) 今までの記号を使う.P3 は 4 次元の 凸錐であり,以下が成り立つ. + + +∞ (1) P+ の 3 つであり,∂P+ 3 の面成分は,Q3 , E3 , P3 3 はそれらの和集 号である.また,s > 0 のとき ¯ © ª ¯ L+ 0,s = αfs + βU α, β ∈ R+ ¯ © ª ¯ E+ 3 = αfs + βU α, β ∈ R+ , s ∈ [0, ∞] P+∞ = L+ 3 0,0 = R+ · U + R+ · I が成り立つ. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 31 (2) H̆3 の元を f = S3 + pS2,1 + qS1,2 + rU と表すとき,P+ 3 の判別式は, 0+ 2 2 3 3 disc+ 3 (p, q, r) = disc3 (p, q) = p q + 18pq − (4p + 4q + 27) であり,これは disc0+ 3 (p, q) と等しい. (3) 任意の a = 0, b = 0, c = 0 に対して f (a, b, c) = 0 が成り立つための 必要十分条件は次の (i), (ii) のうちいずれかが成立することである. (i) 3 + 3p + 3q + r = 0 かつ 4p3 + 4q 3 + 27 = p2 q 2 + 18pq (ii) 3 + 3p + 3q + r = 0 かつ p = 0 かつ q = 0 証明. (1) s > 0, t > 0 のとき,dim Ls,t = N − dim X3 = 1 に注意す ると,Ls,t = R+ · U であることがわかる.よって,F+ 3 = R+ · U であり, + + + dim F+ 3 = 1 < 2 なので,F3 は面成分にはならない.また,F3 ⊂ L0,0 で ある. + + + 定理 2.2.9a より P+ 3 の面成分は,E3 , Q3 , L0,0 の 3 つである. E+ 3 を決定する.s > 0 とする.f = αfs + βU は f (0, s, 1) = 0 を満た + す.α = 0, β = 0 のときは f ∈ P+ 3 なので,f ∈ L0,s ⊂ E3 である. + + α > 0, β > 0 のとき f ∈ P+ 3 − ∂P3 で αfs ∈ ∂P3 なので,補題 2.2.4f より,αfs − βU ∈ / P+ 3 である. fs (0, t, 1) > 0 となる t > 0, t 6= s が存在するので,α < 0, β > 0 の場合 には,f (0, t, 1) = αs (0, t, 1) < 0 となり,f ∈ / P+ 3 である.よって, ¯ © ª ¯ E+ 3 = αfs + βU α, β ∈ R+ , s ∈ [0, ∞] である. L+ 0,0 を決定する.命題 2.2.5c より, ¡ + ¢ + ∞ ∂L+ 0,0 = E3 ∪ Q3 ∩ H3 である. ¡ ¢ ¡ ¢ ∞ E+ 3 ∩ H3 = R+ · f0 + R+ · U ∪ R+ · f∞ + R+ · U 0+ ∞ Q+ 3 ∩ H3 = L0,0 = R+ · I なので,(1) の結論を得る. (2) は定理 2.2.9e よりわかる. 32 2.2b 3次斉次不等式 + (3) f ∈ P̆+ 3 は f = f1 + αU (∃f1 ∈ Q3 , ∃α = 0) という形に書ける. 3 + 3p + 3q + r = f (1, 1, 1) = α = 0 である. また, f1 (a, b, c) = S3 + pS2,1 + qS1,2 + (r − α)U ∈ Q+ 3 であるので,定理 2.2.10b(3) より 4p3 + 4q 3 + 27 = p2 + q 2 + 18pq または 「 p = 0 かつ q = 0 」となる. + 系 2.2.11b. (R+ 3 の構造定理) R3 は 3 次元の凸錐であり,R+ ·(T2,1 −6U ), R+ · (S3 + 3U − T2,1 ), R+ · U を 3 本の辺とする三角錐 R+ 3 = R+ · (T2,1 − 6U ) + R+ · (S3 + 3U − T2,1 ) + R+ · U である. + s 証明. R+ 3 = P3 ∩ H3 よりわかる. ● p.57, 下から 3 行目 誤: xyz の最小値を r1 = α1 β 2 , 正: xyz の最小値を r1 = α1 β22 , ● p.59∼74, 第 2.3.2 項全部 下記の原稿と差し替えます.新定理が多数追加されています.定理 2.3.5a は 2013 年の秋に証明できた定理です.初版第 1 刷の定理 2.3.8 は一部間違 いを含んでいました. [差し替え原稿] ◦ ◦ P4 , P+ 4 を決定したいのであるが,P ∈ X4 のとき dim LP = 2, P ∈ C4 + + のとき dim L+ P = 3 なので,Q4 , Q4 を先に決定し ,それを元に P4 , P4 を決定するほうが簡明なようである. 定理 2.3.3a. (Q4 の構造定理, [2], [10]) gp,q (a, b, c) := S4 + pS3,1 + qS1,3 µ 2 ¶ µ ¶ p + pq + q 2 p2 + pq + q 2 + − 1 S2,2 − p + q + U S1 3 3 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 33 g∞ (a, b, c) = gp,∞ (a, b, c) = g∞,q (a, b, c) := S2,2 − U S1 ¡ ¢ S1 (s, t, 1) T2,1 (s, t, 1) − 6U (s, t, 1) − 3(s − t)(t − 1)(1 − s) p(s, t) := 1 − 2(S2,2 (s, t, 1) − U (s, t, 1)S1 (s, t, 1)) ¡ ¢ S1 (s, t, 1) T2,1 (s, t, 1) − 6U (s, t, 1) + 3(s − t)(t − 1)(1 − s) q(s, t) := 1 − 2(S2,2 (s, t, 1) − U (s, t, 1)S1 (s, t, 1)) とおく.ただし ,p(1, 1) = q(1, 1) := −2, p(0, 0) = q(0, 0) = ∞ ∈ P1 とす る.(p(s, t) = q(t, s) であることに注意せよ.) Q4 は 4 次元の凸錐であって, 以下が成立する. (1) (s, t) 6= (0, 0) とすると, L0s,t = R+ · gp(s,t),q(s,t) L00,0 = R+ · g∞ ¯ ¡© ª © ª¢ F04 = R+ · gp,q ¯ (p, q) ∈ R2 ∪ g∞ である.また,∂Q4 = F04 である. (2) H̆04 の元を S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 − 3(1 + p + q + r)U S1 と表す とき, disc04 (p, q, r) = 3(r + 1) − (p2 + pq + q 2 ) である. (3) f (a, b, c) = S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 − (p + q + r + 1)U S1 ∈ H̆04 を とる.任意の a, b, c ∈ R に対して f (a, b, c) = 0 が成り立つための必 要十分条件は, 3(r + 1) = p2 + pq + q 2 が成り立つことである. (4) f ∈ Q4 に対し ,ある p, q ∈ R と,ある α, β ∈ R+ をうまく選んで, f = αgp,q + βg∞ と表すことができる ([10]). 証明. (1) gp(s,t),q(s,t) (s, t, 1) = 0, gp,q (1, 1, 1) = 0 は Mathematica 等を用いて, 直接計算してみれば確認できる.また,任意の実数 p, q に対し, X 6gp,q (a, b, c) = (2a2 − b2 − c2 − pab + (p + q)bc − qca)2 = 0 cyclic 2.2b 3次斉次不等式 34 であるので,gp(s,t),q(s,t) ∈ L0s,t ⊂ ∂Q4 である.定理 2.2.4i(1), 命題 2.2.5c より dim L0s,t = N − 3 = 4 − 3 = 1 である.よって,(s, t) 6= (0, 0), (1, 1) のとき,L0s,t = R+ · gp(s,t),q(s,t) である. 任意の a, b, c ∈ R に対して g∞ (a, b, c) = 0 であり,g∞ (0, 0, 1) = 1 な ので,L00,0 = R+ · g∞ である.また,(s, t) → (1, 1) とした極限において, L0s,t −→ R+ · g−2,−2 が成り立っている. [ 系 2.2.7c(3) より,∂Q3 は L0s,t の閉包である.これで,(2) (s,t)∈R2 −{(1,1)} が証明された. (2) gp,q が Q̆4 の境界を生成するので,gp,q 係数から,結論が得られる. (3), (4) は以上の議論よりすぐ 分かる. Q+ 4 の構造については,天下り的に定理を述べるのではなく.ど のよう にして Q+ 4 の面成分を決定したのか説明しておく. H4 の基底を s0 = S4 , s1 = S3,1 , s2 = S1,3 , s3 = S2,2 , s4 = U S1 と 選んで ,正則写像 Φ4 : P2 −→ P4 を (s0 : · · · : s4 ) によって定義する. X4 := Φ4 (P2 ) とおく.まず,次の関係式が成り立つことは容易に確認で きる. (S3,1 + S1,3 + U S1 )2 − (S4 + 2S2,2 )(S2,2 + 2U S1 ) = 0 (S3,1 + S1,3 − 2U S1 )2 + 3(S3,1 − S1,3 )2 + (S4 − 2S2,2 + U S1 )2 − (S4 − U S1 )2 = 0 X4 は 4 次曲面なので,P4 の斉次座標系を (x0 : x1 : x2 : x3 : x4 ) で表せ ば,X4 の定義方式は,連立方程式 (x1 + x2 + x4 )2 − (x0 + 2x3 )(x3 + 2x4 ) = 0 2 2 ° 1 2 2 (x1 + x2 − 2x4 ) + 3(x1 − x2 ) + (x0 − 2x3 + x4 ) − (x0 − x4 ) = 0 であり,完全交叉になっている.命題 2.2.6b より,X4 の特異点は点 P4 := (1 : 1 : 1 : 1 : 1) のみである. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 35 P4 = (1 : 1 : 1 : 1 : 1) X4+ C4 X4 0 f ∈ L0+ s,t ならば TX,P ∩ H3 ⊂ Hf である.そこで,gi (s, t) = si (s, t, 1) として,以下の行列式を計算する. ¯ ¯ x0 x1 ¯ ¯ g0 (s, t) g (s, t) 1 ¯ ∂ ∂ g0 (s, t) ∂s g1 (s, t) G(s, t) = ¯¯ ∂s ¯ ∂ g0 (s, t) ∂ g1 (s, t) ¯ ∂t ∂t ¯ 1 1 x2 g2 (s, t) ∂ ∂s g2 (s, t) ∂ ∂t g2 (s, t) 1 x3 g3 (s, t) ∂ ∂s g3 (s, t) ∂ ∂t g3 (s, t) 1 ¯ ¯ x4 ¯ g4 (s, t) ¯¯ ∂ ¯ ∂s g4 (s, t) ¯ ∂ ¯ g (s, t) ¯ ∂t 4 ¯ 1 Mathematica を使って計算すると, Gp,q (x0 , x1 , x2 , x3 , x4 ) := x0 + px1 + qx2 µ 2 ¶ µ ¶ p + pq + q 2 p2 + pq + q 2 + − 1 x3 − p + q + x4 3 3 とおくとき, ¡ ¢2 G(s, t) = −S1 (s, t, 1) S2 (s, t, 1) − S1,1 (s, t, 1) ¡ ¢ × S2,2 (s, t, 1) − U (s, t, 1)S1 (s, t, 1) × Gp(s,t),q(s,t) (x0 , x1 , x2 , x3 , x4 ) となる.よって,点 Φ4 (s : t : 1) で X4 に接し,点 P4 を通る P4 の超平面 の方程式は,Gp(s,t),q(s,t) = 0 である.実は,この計算によって,前定理の gp,q を発見した.gp,q ∈ P4 (前定理で証明した) であれば,s > 0, t > 0 の 0 場合に L0+ s,t = Ls,t = R · gp(s,t),q(s,t) であることがわかる. 0 f ∈ L0+ 0,s ならば TC,P ∩ H3 ⊂ Hf であることを利用して,L0,s を求め る.点 Ψ4 (0 : s : 1) において曲線 C4 に接し,かつ点 Φ4 (1, 1, 1) を通る超 平面 Ls の定義方程式を計算しよう.しかし,これだけの条件では Ls は一 36 2.2b 3次斉次不等式 意的に定まらないので.さらに,Ls は点 (t0 : t1 : t2 : t3 : t4 ) を通ると仮 定する.li (s) := si (0, s, 1) とおき, ¯ x1 ¯ x0 ¯ l1 (s) ¯ l0 (s) ¯ d d l0 (s) ds l1 (s) L(s) := ¯ ds ¯ 1 ¯ 1 ¯ t0 t1 x2 l2 (s) d ds l2 (s) 1 t2 x3 l3 (s) d ds l3 (s) 1 t3 ¯ x4 ¯ ¯ l4 (s) ¯ ¯ d ds l4 (s) ¯¯ 1 ¯ ¯ t4 とおく.Mathematica を用いて計算すると, Hs (x0 , x1 , x2 , x3 , x4 ) := x1 + s2 x2 − 2sx3 − (s − 1)2 x4 とおくとき, L(s) = −s2 (t1 + s2 t2 − 2st3 − (1 − s)2 t4 )Gp(0,s),q(0,s) © + s2 t0 + (s − 2s3 )t1 + (−2s + s3 )t2 ª + (1 − s2 )2 t3 − (1 − s − s2 − s3 + s4 )t4 Hs が得られる.ただし ,上のように式を整理するには,L(s) が Gp(0,s),q(0,s) の項を含むはずである,という理論的考察がないといけない.あとは , αgp(s,t),q(s,t) + βhd ∈ P+ 4 となるための α, β の条件を求めればよい. 定理 2.3.4a. (Q+ 4 の構造定理, [2], [10]) hs (a, b, c) := S3,1 + s2 S1,3 − 2sS2,2 − (s − 1)2 U S1 , h∞ (a, b, c) := S1,3 − U S1 , ks,t (a, b, c) := s2 g2s− 1s , 2s −s (a, b, c) + s(t − 1)hs (a, b, c) = s2 S4 − (2s3 − st)S3,1 + (s3 t − 2s)S1,3 ¡ ¢ + (s4 − 2s2 t + 1)S2,2 + s2 − (s − 1)2 (s2 + st + 1) U S1 とおく.Q+ 4 は 4 次元の凸錐であって,以下が成立する. 0 (1) s > 0, t > 0 のとき L0+ s,t = Ls,t である.よって, ¯ ¡© ª © ª¢ F0+ gp,q ¯ 9(p + q)2 − (p − q)2 = 62 , p + q 5 0 ∪ g∞ 4 = R+ · である. ¯ © ª ¯ (2) s > 0 のとき,L0+ 0,s = R+ · ks,t t = 1 である.よって, ¯ © ª ¯ E0+ 4 = R+ · ks,t s = 0, t = 1 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 37 である. © ¯ ª (3) Q+∞ = R+ · k0,1 + R+ · hs ¯ s ∈ [0, ∞] である.ここで,k0,1 = g∞ = 4 S2,2 − U S1 である. 0+ 0+ +∞ (4) ∂Q+ から成る.面成分である. 4 は 3 つの面成分 F4 , E4 , Q4 (5) f ∈ Q+ 4 に対し ,ある α, β, s ∈ R+ と,ある t ∈ [0, ∞] をうまく選 んで, f = αht + βgp(s,t),q(s,t) と表すことができる. 証明. (1) s > 0, t > 0 のとき Φd (s : t : 1) ∈ (X4+ )◦ なので,dim Ls,t = 1 である.よって, 0 L0+ s,t = R+ · gp(s,t),q(s,t) = Ls,t であり,(1) がわかる. (2) hs (1, 1, 1) = hs (0, s, 1) = hs (0, 0, 1) = 0, ks,t (1, 1, 1) = ks,t (0, s, 1) = 0 であることは,Mathematica 等を用いて直接的計算で確認できる. s = 0, t = 1 に 対し ,hs , ks,t ∈ Q+ 4 であることを 証明する.まず, 2 1 p(0, s) = − 2s, q(0, s) = s − であることに注意しておく.a, b, c ∈ R+ s s とする.S1,3 = U S1 なので, hs (a, b, c) = s2 (S1,3 − U S1 ) − 2s(S2,2 − U S1 ) + (S3,1 − U S1 ) µ ¶2 S2,2 − U S1 U S1 (S2 − S1,1 )2 = (S1,3 − U S1 ) s − + S1,3 − U S1 S1,3 − U S1 =0 0+ 0+ である.よって,hs ∈ Q+ 4 である.(1) より,hs ∈ L0,s ∩ L0,0 である.また, ks,t (a, b, c) = s2 gp(0,s),q(0,s) (a, b, c) + s(t − 1)hs (a, b, c) + で,gp(0,s),q(0,s) , hs (a, b, c) ∈ Q+ 4 なので,ks,t ∈ Q4 である.(1) とあわせ + + て,hs , ks,t ∈ L0+ 0,s ⊂ ∂Q4 である.他方,gp(0,s),q(0,s) ∈ ∂Q4 なので,補 題 2.2.4f より t < 1 の場合には ks,t ∈ / Q+ 4 である.これより,(2) がわかる. (4) 定理 2.2.9b からわかる. 38 2.2b 3次斉次不等式 ¡ 0+ ¢ 0+ 0+ ∞ (3) 命題 2.2.5c より,∂L0+ ∩ H∞ 4 である.F4 ∩ H4 = 0,0 = F4 ∪ E4 R · g∞ = R · k0,1 である.また, © ¯ ª ∞ ¯ E0+ 4 ∩ H4 = R + · h s s = 0 である.これより,結論を得る. (5) は容易にかわる. 定理 2.3.4b. H̆04 の元を S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 − (1 + p + q + r)U S1 と表すとき,Q+ 4 の主判別式は disc04 (p, q, r) = 3(r + 1) − (p2 + pq + q 2 ) であり,端判別式は,以下の通りである. 2 2 2 3 3 3 3 2 3 2 3 disc0+ 4 (p, q, r) = p q r − 4p q + 18p qr + 18pq r − 4p r − 4q r − 27p4 − 27q 4 + 16r4 − 6p2 q 2 − 80pqr2 + 144p2 r + 144q 2 r − 192pq − 128r2 + 256 = 0 証明. 連立方程式 p=− 2s3 − st , s2 q= s3 t − 2s , s2 r= s4 − 2s2 t + 1 s2 から媒介変数 s, t を消去すると,disc0+ 4 が得られる. 定理 2.3.5a. f (a, b, c) = S4 +pS3,1 +qS1,3 +rS2,2 −(1+p+q +r)U S1 ∈ H̆4 について,任意の a, b, c ∈ R+ に対して f (a, b, c) = 0 が成り立つた めの必要十分条件は,以下の (1)∼(6) のいずれかが成立することである. √ (1) r = −2, p 5 −2 r + 2, p + q = 0, かつ disc0+ 4 (p, q, r) 5 0 √ 0+ (2) r = −2, q 5 −2 r + 2, p + q = 0, かつ disc4 (p, q, r) 5 0 √ √ √ (3) r = −2, − r + 4 5 p + q 5 0, p = −2 r + 2, q = −2 r + 2, かつ disc0+ 4 (p, q, r) = 0 √ √ (4) r = −2, p = −2 r + 2, q = −2 r + 2, かつ p + q = 0 (5) r = 0, かつ p2 + pq + q 2 5 3r + 3 (6) r 5 −2, p + q = 0 かつ disc0+ 4 (p, q, r) 5 0 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 39 証明. f (a, b, c) = S4 + xS3,1 + yS1,3 + zS2,2 − (1 + x + y + z)U S1 ∈ H̆4 と (x, y, z) ∈ R3 を同一視することにより,H̆4 = R3 と考える.Q∞ 4 ∩ H̆4 = φ 0+ 0+ なので,∂ Q̆+ 4 = F̆4 ∪ Ĕ4 である. ¯ © ª S := (x, y, z) ∈ H̆4 ¯ disc0+ 4 (x, y, z) = 0 とおくと,S は H̆4 内の 6 次代数曲面であり,Ĕ0+ 4 のザリスキー閉包で ある. H̆4 における曲面 ∂ Q̆+ 4 を観察するために,z = r で定まる H̆4 内の平面 ¯ © ª Vr := (x, y, z) ∈ H̆4 ¯ z = r + 0 を考え,D := Q+ 4 ∩ Vr , C := (∂Q4 ) ∩ Vr , F := (∂Q4 ) ∩ Vr = F4 ∩ Vr , 0+ 2 F + := F0+ 4 ∩ Vr , E := E4 ∩ Vr , E = S ∩ Vr とおく.F は 3(x + y) + (x − y)2 = 12(r + 1) で定まる楕円で, ¯ © ª F + = (x, y) ∈ F ¯ 9(x + y)2 − (x − y)2 = 62 , x + y 5 0 である.F は r > 0 のとき楕円の弧であり,r > 0 のときその 2 端点 P1 , P2 は µ (x, y) = √ √ ¶ √ √ ±3 r − r + 4 ∓3 r − r + 4 , 2 2 である.E は 6 次曲線で,パラメータ表示 1 x= 2 µ ¶ 1 r − − 3s , s3 s 1 y= 2 µ ¶ 3 3 s − rs − s ° 1 を持つ.E は E の部分集合である.曲線 E と楕円 F は 2 点 P1 , P2 で接 し,この 2 点が F + , E の端点になっている.さらに D は凸集合であるこ とに注意して,r > 6 の場合に C を図示すると,以下のようなグラフに なる. 40 2.2b 3次斉次不等式 y 6 C D − + − − + − + F − x - F+ − + E + + − + − − + E − E 図1r>6 既約 6 次曲線 E は原点について対称な 2 本の分枝に分かれて見え,それ ぞれの分枝は 2 個の尖点と 1 個の結節点を持ち,さらに 2 つの分枝の交点 が E の別の結節点になっている.直線 x + y = 0 上にある E の結節点の √ √ 座標は (x, y) = (±2 r + 2, ∓2 r + 2 ) であり,直線 x = y 上にある E √ の結節点の座標は x = y = ±2 r − 2 である.E の 4 つの尖点は, ° 1 に s √ r ± r2 − 36 おいて,s = ± (複号任意) とした場合の点である.D の境 6 界 C は太線で図示した曲線である.D は太線より右上の部分である.こ の D が (1), (2), (3), (4) または (5) を満たす領域として特徴づけられるこ とは容易にわかる. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 y 6 C + − − + y 6 D + F 41 − D E x - x - F+ + − − + E E C − + C 図205r56 図 3 −1 5 r < 0 0 5 r 5 6 の場合の C のグラフは左上の図のようになる.r > 6 の場合に あった 4 個の尖点と 2 個の結節点は消滅する.しかし,D が (1), (2), (3), (4) または (5) を満たす領域として特徴づけられることは同じである. −1 5 r < 0 の場合の C のグラフは右上の図のようになり,6 次曲線 E と楕円 F が接しなくなる.よって,C = E となる.この場合 D は (1), (2), (3) または (4) を満たす領域として特徴づけられる. y 6 y 6 − + + D − x - x C − C − + + 図 4 −2 < r < −1 図 5 r < −2 −2 < r < −1 の場合の C = E のグラフは左上の図のようになり,楕円 F は消滅する.この場合,C + は (1), (2), (3) または (4) を満たす領域と 42 2.2b 3次斉次不等式 して特徴づけられる. r 5 −2 の場合の C = E のグラフは右上の図のようになり,D は (5) を 満たす領域として特徴づけられる. 参考 2.3.6. X4 の定義方程式は,上で述べたように, (x1 + x2 + x4 )2 − (x0 + 2x3 )(x3 + 2x4 ) = 0 2 2 ° 1 2 2 (x1 + x2 − 2x4 ) + 3(x1 − x2 ) + (x0 − 2x3 + x4 ) − (x0 − x4 ) = 0° 2 である.このうち, ° 2 は点 Φ4 (1 : 1 : 1) を頂点とする楕円体錐面の定義方 程式であり, ° 2 の接平面の方程式から gp,q = 0 が得られる.他方, ° 1 は 円錐と直線の直積の定義方程式で,この 2 次曲面は点 Φ4 (1 : 1 : 1) を通ら ない. ° 1 の接平面の方程式は,次の不等式に対応する. S4 − 2tT3,1 + (t2 + 2)S2,2 − 2t(1 − t)U S1 = (S2 − tS1,1 )2 = 0 (t 5 −1 または t = 2 で , a, b, c ∈ R). この単純な不等式は,後の定理 2.3.8a で重要な役割をはたす. 2 2 参考 2.3.6b. disc0+ 4 (p, p, r) = (4r − p − 8) (r + 2p + 2)(r − 2p + 2) な 0+ ので,p = q, 4r − p2 − 8 = 0 で定まる曲線は Q+ 4 内にある disc4 の零点 集合である.この曲線上の点は,上の不等式 (S2 − tS1,1 )2 = 0 に対応する 点である. 定理 2.3.7a. (S4 の構造定理, [10], [2]) 定理 2.3.3a, 定理 2.3.4a と同じ 記号を用い,さらに, gp := gp,p = S4 + pT3,1 + (p2 − 1)S2,2 + (2p − p2 )U S1 とおく.S4 は 3 次元の凸錐であって,以下が成立する. s 0 (1) S4 の境界は 1 つの面成分 Fs0 4 := F4 ∩ H4 から成る楕円錐であって, © ¯ ª ¯ Fs0 4 = R+ · gp p ∈ R ∪ {∞} である. (2) S̆4 の元を f = S4 + pT3,1 + qS2,2 − (1 + 2p + q)U S1 と表すとき,S4 の判別式は,q + 1 − p2 である.また,f ∈ S4 であるための必要十分 条件は,q + 1 = p2 が成り立つことである. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 43 (3) f ∈ S4 に対し,ある非負実数 α, β, p を選んで f = αgp + β(S2,2 − U S1 ) と表すことができる. s0 証明. (1) S4 = Q4 ∩ Hs4 なので,∂S4 = F04 ∩ Hs4 = Fs0 4 である.F4 の 構造は,計算で簡単にわかる. (2) 判別式については disc04 (p, p, q) = 3(q + 1 − p2 ) よりわかる.残りも ∂Q4 の構造定理からすぐわかる. (3) は,は定理 2.3.3a より,すぐわかる. + 定理 2.3.7b. (S+ 4 の構造定理, [10], [2]) 前定理と同じ記号を用いる.S4 は 3 次元の凸錐であって,以下が成立する. s0+ s0+ s s (1) S+ := F0+ := E0+ 4 の境界は 3 つの面成分 F4 4 ∩ H4 , E4 4 ∩ H4 , S+∞ := Q+∞ ∩ Hs4 から成る集合であって,それぞれの面成分は以下 4 4 の構造を持つ. © ¯ ª Fs0+ = R+ · gp ¯ p ∈ [1, ∞] 4 ¡ ¢ Es0+ = R+ · g1 + R+ · (T3,1 − 2S2,2 ) 4 ¡ ¢ S+∞ = R+ · g∞ + R+ · (T3,1 − 2S2,2 ) 4 ここで,g1 = S4 + 4U S1 − T3,1 は 4 次 Schur 不等式である. + (2) H̆s0 4 の元を f = S4 + pT3,1 + rS2,2 − (1 + 2p + r)U S1 と表すとき,S4 の主判別式は,r + 1 − p2 であり,端判別式は 2p + r + 2 である. + (3) 上の f ∈ H̆s0 4 に対して,f ∈ S4 であるための必要十分条件は,以下 の (i) または (ii) の一方が成り立つことである. (i) p 5 −1 かつ r + 1 = q 2 (ii) p > −1 かつ 2p + r + 2 = 0 (4) 任意の f ∈ S+ 4 に対して,ある非負実数 α, β ∈ R+ とある p ∈ [1, ∞] を選んで f = αgp + β(T3,1 − 2S2,2 ) と表すことができる. 44 2.2b 3次斉次不等式 + s0+ +∞ s0+ s 証明. (1) S+ の 4 = Q4 ∩ H4 なので,その面成分は F4 , E4 , S4 3 つである.p = q のとき,条件 9(p + q)2 − (p − q)2 = 62 , p + q = 0 は p = q = 1 と同値なので, © ¯ ª Fs0+ = R+ · gp ¯ p ∈ [1, ∞] 4 である.また ,hs (s = 0) が 対称式にな るのは s = 1 のときのみで , h1 = T3,1 − S2,2 である.よって, ¡ ¢ S+∞ = R+ · g∞ + R+ · (T3,1 − 2S2,2 ) 4 である. Es0+ を求める.ks,t が対称式になるのは,−(2s3 − st) = s3 t − 2s が成 4 り立つときである.(2s3 − st)s3 t − 2s = s(s2 − 1)(t + 2) (s = 0, t = 1) な ので,s = 0, 1 である.s = 0 の場合は S+∞ に含まれる.s = 1 の場合は, 4 k0,1 (a, b, c) = g1,1 (a, b, c) + (t − 1)h1 (a, b, c) = (S4 + 3U S1 − T3,1 ) + (t − 1)(T3,1 − 2S2,2 ) であるので, ¡ ¢ Es0+ = R+ · g1 + R+ · (T3,1 − 2S2,2 ) 4 となる. (2) 主判別式は,disc04 (p, p, r) = 3(r + 1 − q 2 ) から得られる. 2 2 disc0+ 4 (p, p, r) = (4r − p − 8) (r + 2p + 2)(r − 2p + 2) であるが,gp の形から Fs0+ の決定方程式になっている因子は,r + 2p + 2 4 であり,これが端判別式である. (3) は定理 2.3.5a から,(4) は定理 2.3.4a からすぐわかる. 次の定理は,論文 [13] の結果を拡張したものである. 定理 2.3.8a. (P4 の構造定理) 定理 2.3.3a, 定理 2.3.4a の記号を用いる. また,k ∈ R に対して ¡ ¢2 ek (a, b, c) := k(a2 + b2 + c2 ) − (ab + bc + ca) = k 2 S4 − 2kT3,1 + (2k 2 + 1)S2,2 − (2k − 2)U S1 とおく. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 45 P4 は 5 次元の凸錐であって,以下が成立する. (1) (s, t) ∈ R2 − {(0, 0), (1, 1)} に対し, ¯ ¯ st + s + t ¯ p = p(s, t), q = q(s, t), k = Ls,t = αgp,q + βek ¯¯ s2 + t 2 + 1 ¯ α, β ∈ R+ ¯ ª © (2) L0,0 = αg∞ + βe0 ¯ α, β ∈ R+ [ Ls,t (3) F4 = (s,t)6=(1,1) (4) ∂P4 は 2 つの面成分 F4 と Q4 の和集合である. (5) s > 0, t > 0, (s, t) 6= (1, 1) のとき,L+ s,t := Ls,t が成り立つ. 証明. (5) は P+ 4 に関る事項であるが,証明の都合上,(1) と (5) をまとめ てここで証明する.定理 2.2.4i(1) より,(s, t) 6= (1, 1) のとき,dim Ls,t = N − 2 = 2 である.また,s > 0, t > 0 のときは dim L+ s,t = N − 2 = 2, Ls,t ⊂ L+ s,t である. st + s + t s2 + t2 + 1 := αgp(s,t),q(s,t) + βek(s,t) k(s, t) = fs,t,α,β とおく.gp(s,t),q(s,t) ∈ Ls,t , ek(s,t) ∈ Ls,t なので,α = 0, β = 0 のとき, fs,t,α,β ∈ Ls,t である. (1), (5) を示すには,α < 0 または β < 0 のとき,fs,t,α,β ∈ / P4 (s > 0, t > 0 のときは fs,t,α,β ∈ / P+ 4 であることを示せばよい. α > 0, β > 0 のとき fs,t,α,β ∈ P4 , fs,t,α,0 ∈ ∂P4 なので,補題 2.2.4f よ り,fs,t,α,−β ∈ / P4 である.(s > 0, t > 0 のときは fs,t,α,−β ∈ / P+ 4 ) である. α < 0 の 場合を 考え る.(s, t) ∈ R2 のとき 関数 k(s, t) の 値域は , −1/2 5 k 5 1 であり,(s, t) ∈ R2+ のとき k(s, t) の値域は,0 5 k 5 1 である.この値域の内点に属する k0 を 1 つ取るとき,k(s, t) = k0 を満 たす (s, t) 全体の集合はある 2 次曲線の区間 K(k0 ) をなす.よって,(s, t) 6= (s0 , t0 ) ∈ K(k(s, t)) を取れば,ek(s,t) (s0 , t0 , 1) = 0 なので, fs,t,α,1 (s0 , t0 , 1) = αgp(s,t),q(s,t) (s0 , t0 , 1) < 0 となり, fs,t,α,1 ∈ / P4 (s > 0, t > 0 のときは fs,t,α,1 ∈ / P+ 4 ) がわかる. 2.2b 3次斉次不等式 46 (2) L0,0 についての証明も,上と同様である. (3), (4) は系 2.2.7c(1) よりわかる. 参考 2.3.8b. p := p(s, t), q := q(s, t), k := st + s + t の 3 式から s, t s2 + t 2 + 1 を消去すると,以下の関係式が得られる. k=− 3(p + q + 1) p2 + pq + q 2 + 3p + 3q + 9 つまり,F4 の内点に属する不等式は,上のように表わされた k を用いて, αqp,q + βek (α = 0, β = 0) の形としている. 予想 2.3.8c. 一般に d が 4 以上の偶数で,P ∈ (Xd+ )◦ のとき,LP = L+ P + が成立するように思われる.また,LP , L+ P の境界の Qd に属さない部分 は,Fd の特異点になっているように見える.次元の関係から,f が A 内 に 1 次元以上の零点集合を持つ d/2 次斉次多項式のとき,f 2 = 0 という形 の不等式に対応する点は Pd の特異点になる傾向がある.なお,LP ⊂ L+ P は自明である. 定理 2.3.8d. (P4 の判別式) H̆4 の元 S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 + (v − 1 − p − q − r)U S1 を点 (p, q, r, v) ∈ R4 と同一視するとき,P4 の判別式は,以下の多項式で ある. disc4 (p, q, r, v) ¡ ¢ = 3(r + 1) − (p2 + pq + q 2 ) (2p + 2q + r + 5)3 ³ − v p4 + q 4 + 34p3 q + 34pq 3 + 39p2 q 2 + 2(p + q)(5p2 + 7pq + 5q 2 )r − (2p2 + pq + 2q 2 )r2 + 86p3 + 86q 3 − 12(v − 16)(p2 q + pq 2 ) − (v − 84)(p2 + q 2 )r + (v + 18)pqr − 22(p + q)r2 + 8r3 − 57(v − 2)(p2 + q 2 ) + (v 2 − 63v + 51)pq − 2(13v + 126)(p + q)r + 2(3v − 106)r2 + 2(7v 2 + 3v − 139)(p + q) + 8(19v − 70)r ´ − (v 3 + 20v 2 − 162v + 388) 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 47 また,disc4 (p, q, r, v) = 0 で定まる曲面 Y は有理曲面である. st + s + t とおき, s2 + t 2 + 1 証明. k(s, t) = f = (1 − u)gp(s,t),q(s,t) + uek(s,t) ∈ Ls,t (0 5 u 5 1) を取る.適当に α ∈ R をとり,αf = S4 + xS3,1 + yS1,3 + zS2,2 + (w − 1 − x − y − z)U S1 と表示すると, (1 − u)p − 2uk (1 − u)q − 2uk x= , y= , 2 (1 − u) + uk (1 − u) + uk 2 z= (1 − u)(p2 + pq + q 2 − 3) + 3u(2k 2 + 1)) , 3(1 − u) + 3uk 2 w= 3u(k − 1)2 (1 − u) + uk 2 (ただし,p = p(s, t), q = q(s, t), k = k(s, t)) となる.この 4 式から s, t, u を消去すると,disc4 (x, y, z, w) = 0 という関係式が得られる.上のパラ メータ表示から,Y は有理曲面である. 参考 2.3.8e. H̆4 の元を S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 + vU S1 と表わして 判別式を表示するより,前定理の表示を採用するほうが,優れているよう である.実際,v の値を 27 よりかなり大きい値 (例えば,v = 200) に固定 して,disc4 (p, q, r, v) = 0 で定まる曲面を Mathematica を利用して描いて みると,P4 の幾何学的構造が奇麗に浮かび上がる.そのグラフを眺めてい ると,次の予想が成立することがわかるが,きちんとした証明を付けるに は disc4 が複雑すぎて,まだ成功していない. 予想 2.3.8f. f = S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 + (v − 1 − 2p − r)U S1 ∈ H̆4 について,任意の a, b, c ∈ R に対して f (a, b, c) = 0 が成り立つための必 要十分条件は,v = 0 であって,次の条件 (1) または (2) が成り立つこと である. (1) v = 0 かつ disc04 (p, q, r) ≥ 0. √ (2) 0 < v 5 27 かつ disc4 (p, q, r, u) = 0 かつ 4r = (p + q)2 − 4(u + 2 3u + 1). 2.2b 3次斉次不等式 48 (3) v > 27 かつ disc4 (p, p, r, u) = 0 かつ r = (p + q)2 + 2. 16 次の定理の十分条件の部分は Cirtoaje と Zhou によって証明された.逆 の部分が,予想として提示されたものである. (Cirtoaje-Zhou 予想) 定理 2.3.8g. (Cirtoaje-Zhou 予想) f ∈ H̆4 を とり, f (a, b, c) = S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 + vU S1 1 αf := 1 + p + q + r + v = f (1, 1, 1) 3 βf := 6 + 3p + 3q + 2r + v γf := 2(1 + p + q) δf := 2 + 2r − v − (p2 + pq + q 2 + p + q) √ √ ϕf (x) := 2 αf x3 − βf x2 + γf αf x + δf とおく.このとき,任意の a, b, c ∈ R に対して f (a, b, c) = 0 が成り立つ ための必要十分条件は,次の (1), (2) のいずれかが成立することである. √ √ (1) αf = 0 かつ,ある x ∈ (− 3, 3 ) が存在して ϕf (x) = 0 が成り 立つ. (2) f = (S2 − κS1,1 )2 (∃κ ∈ R) の形である.すなわち,p = q かつ p2 − 4p = 4r かつ p2 + 2p = 2v が成り立つ. また,(2) を満たさない f が P+ 4 に属するための必要十分条件は,ϕf (x) = 0 √ √ を満たす x が開区間 (− 3, 3 ) 内にただ 1 つだけ存在することである. 証明. (2) を満たす f が P̆4 に属することは明らかなので,f ∈ H̆4 が √ √ (1) を満たす場合を考える.ϕf (x0 ) = 0 を満たす x0 ∈ (− 3, 3 ) をひと つ取り固定する. √ √ 3p − 2 αf x0 + 2x20 3q − 2 αf x0 + 2x20 p1 := , q := , 1 3 − x20 3 − x20 √ √ 3v − 2αf + 2 αf x0 3r − αf + 2 αf x0 − 3x20 , v1 := , r1 := 3 − x20 3 − x20 f1 (a, b, c) := S4 + p1 S3,1 + q1 S1,3 + r1 S2,2 + v1 U S1 , e1 (a, b, c) := ex0 /(x0 −√αf ) (a, b, c) 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 49 とおく.数式処理ソフトを使って計算すると, √ 3f = (3 − x20 )f1 + (x0 − αf )2 e1 = (3 − x20 )f1 f1 (1, 1, 1) = 1 + p1 + q1 + r1 + v1 = 0 p21 + p1 q1 + q12 3ϕf (x0 ) − 1 − r1 = − 50 3 (3 − x20 )2 であることが確認できる.(f1 ∈ Q4 に注意せよ.) √ (x0 − αf )2 3 − x20 ϕf (x0 ) f= gp1 ,q1 + g∞ + e1 3 3 − x20 3 であるので,f ∈ P4 が得られる. 逆に,(2) を満たさない f ∈ P̆4 が (1) を満たすことを証明する. 1 まず,αf = f (1, 1, 1) = 0 である. 3 à !2 √ √ 3 (p − q)2 √ ϕf ( 3 ) = −4 (p + q + 4) − 50 αf − 4 4 à !2 √ √ (p − q)2 3 √ ϕf (− 3 ) = −4 (p + q + 4) − 50 αf + 4 4 に注意する. Case 1: まず,f ∈ Ls,t の場合を考える. p2 = p(s, t), q2 = q(s, t), −1/2 5 k < 1, f = α2 gp2 ,q2 + β2 ek とおく. α2 + β2 k 2 (この仮定は f ∈ Ls,t より弱い仮定である.) p22 + p2 q2 + q22 p2 + p2 q2 + q22 − 1, v2 = −p2 − q2 − 2 とおくとき, 3 3 α2 p2 − 2β2 k α2 q2 − 2β2 k p= , q= , α2 + β2 k 2 α2 + β2 k 2 α2 r2 + β2 (2k 2 + 1) α2 v2 − β2 (2k − 2) r= , v= α2 + β2 k 2 α2 + β2 k 2 ¶ µ√ αf k に注意して αf , ϕf (x) を計算すると,ϕf = 0 が直接的な計算で k−1 得られる (複雑な計算なので数式処理ソフトで確かめてみよ).ここで, ¯ ¯√ ¯ ¯ √ ¯ √ ¯ αf k ¯ ¯¯ ¯ ¯ = ¯− p 3β2 k ¯¯ < 3 ¯k−1¯ ¯ α2 + β2 k 2 ¯ r2 = 2.2b 3次斉次不等式 50 で あ る.特に k = √ S1,1 (s, t, 1) の 場合, つまり f ∈ Ls,t の 場合には , S2 (s, t, 1) αf k が ϕf (x) = 0 の重根になることが数式処理ソフトを利用して確 k−1 √ √ √ 認でき,ϕf ( 3 ) 5 0 なので ϕf (x) = 0 を満たす x ∈ (− 3, 3 ) はただ x= 1 つである. Case 2: f ∈ Q4 の場合を考える.3αf = f (1, 1, 1) = 0, ϕf (x) = −(5 + 2p + 2q + r)x2 + (3 + 3r − p2 − pq − q 2 ) となる.定理 2.3.3a(3) より, ϕf (0) = 3(r + 1) − (p2 + pq + q 2 ) = 0 √ である.なお,ϕf ( 3 ) 5 0 なので,5 + 2p + 2q + r = 0 であり,ϕf (x) = 0 √ 0+ を満たす 0 5 x < 3 が 存在する.f ∈ / Q+ = ∂Q4 の場合は , 4 ∩ F4 ϕf (0) > 0 であることに注意する. Case 3: 一般の f ∈ P4 について考える.P4 において,R+ · g∞ 上の点 と点 f を通る直線と ∂P4 の交点を考えると,ある δ = 0 が一意的に存在 して,f0 := f − δg∞ ∈ ∂P4 となる. f0 = S4 + pS3,1 + qS1,3 + (r − δ)S2,2 + (v + δ)U S1 なので,αf0 = αf , δf0 = δf − 3δ, ϕf0 (x) = ϕf (x) − δ(3 − x2 ) が成り立つ. Case 3-1: f0 ∈ Ls,t の場合.Case 1 の結果から,ϕf0 (x0 ) = 0 を満たす √ √ x0 ∈ (− 3, 3 ) が存在する.すると,ϕf (x0 ) = ϕf0 (x0 ) + δ(3 − x20 ) = 0 である.よって,条件 (1) が成立する. Case 3-2: f0 ∈ Q4 , f0 ∈ / F0+ 4 の場合. Case 2 の結果から,ϕf0 (0) > 0 で ある.よって,ϕf (0) = ϕf0 (0) > 0 で,(ii) が成立する. なお,Case 3-1 の場合も,Case 3-2 の場合も,f ∈ / F0+ 4 ならば,ϕf (x0 ) > 0 √ √ であるので,ϕf (x) = 0 を満たす x ∈ (− 3, 3 ) は複数存在する. 定理 2.3.9a. (P+ 4 の構造定理) 定理 2.3.3a, 定理 2.3.4a, 定理 3.3.8a の 記号を用いる.さらに, gs (a, b, c) := gp(0,s),q(0,s) (a, b, c) = (1/s2 )ks,1 (a, b, c) µ ¶2 s 2 2 2 es (a, b, c) := ek(0,s) (a, b, c) = (a + b + c ) − (ab + bc + ca) s2 + 1 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 51 とおく.P+ 4 は 5 次元の凸錐であって,以下が成立する. [ + (1) F+ Ls,t である.特に,F+ 4 = 4 = F4 ∩ ∂P4 が成り立つ. (s,t)∈R2+ −{(1,1)} ¯ ª ¯ (2) E+ 4 = α1 es + α2 gs + α3 hs + α4 U S1 s = 0, αi = 0 である. © +∞ である. = L+ (3) P+∞ 4 0,0 = R+ · U S1 + Q4 + + + +∞ (4) ∂P+ の和集合である. 4 は 4 つの面成分 F4 , E4 , Q4 , P4 + (5) F+ 4 の主判別式は定理 2.3.8d で与えた disc4 であり,E4 の端判別式 0+ 0+ disc+ 4 は E4 の端判別式 disc4 と一致する. + 証明. (1) 定理 2.3.8a より,s > 0, t > 0 のとき L+ s,t = Ls,t なので,F4 [ は Ls,t の閉包である.s → 0, あるいは t → 0 としたときの Ls,t s>0,t>0 の極限は L0,t あるいは Ls,0 = L0,1/s であるので,(1) の結論を得る. (2) f = α1 es + α2 gs + α3 hs + α4 U S1 は f (0, s, 1) = 0 を満たすので, s = 0, αi = 0 のとき f ∈ L+ 0,s である. + 逆に,s > 0 のとき dim L+ 0,s = 3 なので,L0,s の任意の元 f は,ある α1 , α2 , α3 , α4 ∈ R により,f = α1 es + α2 gs + α3 hs + α4 U S1 と表せる. この表し方は一意的ではないが,α1 , α2 , α3 , α4 ∈ R+ と選べることを示す. (s2 + 1)2 es + 3shs = s2 gs + 3(s2 − s + 1)2 U S1 に注意する.よって,f において,(i)「 α2 = 0 かつ α4 = 0 」または,(ii) 「 α2 = 0 かつ α4 = 0 」と仮定してもよい. (i) の場合に,f = α1 es + α2 gs + α3 hs が f ∈ P+ d ならば,α1 = 0, α3 = 0 であることを示す. f (1, 1, 1) = α1 es (1, 1, 1) だから,α1 = 0 でなければならない. α1 = 0, α2 = 0 より α1 es + α2 gs ∈ F+ / F+ 4 であるが,hs ∈ 4 と補題 2.2.4f を用いると,α3 = 0 がわかる. (ii) の場合に,f = α1 es + α3 hs + α4 U S1 ∈ P+ d ならば α1 = 0, α3 = 0 であることを示す. f (0, 0, 1) = α1 es (0, 0, 1) だから,α1 = 0 でなければならない. 52 2.2b 3次斉次不等式 es (0, 1/s, 1) = 0, U S1 (0, 1/s, 1) = 0, hs (0, 1/s, 1) = (s−1)2 (s+1)2 s3 6= 0 に 注意すると,f (0, 1/s, 1) = α3 hs (0, 1/s, 1) より,α3 = 0 が得られる. 以上より,s > 0 のとき, ¯ ª © ¯ L+ 0,s = α1 es + α2 gs + α3 hs + α4 U S1 αi = 0 が証明された.あとは簡単である. (4) は定理 2.2.9a よりわかる. + + + ∞ ∞ (3) 命題 2.2.5c より,∂P+∞ = (F+ 4 4 ∪E4 ∪Q4 )∩H4 である.F4 ∩H4 = +∞ 0+ +∞ ∞ L0,0 ⊂ L0+ , Q+ である. 0,0 ⊂ Q4 4 ∩ H4 = L0,0 = Q4 + ∞ ∞ E+ 4 ∩ H4 を決定しよう.f = α1 gs + α2 es + α3 hs + α4 U S1 ∈ E4 ∩ H4 をとる.gs , es , hs , U S1 の中で,S4 の項を持つのは gs と es だけなので, S4 の係数を比較して,α1 (s2 + 1)2 + α2s2 = 0 でなければならない. (s2 + 1)2 es + 3shs = s2 gs + 3(s2 − s + 1)2 U S1 であったから, ¶ ¶ µ µ 3(s2 − s + 1)2 3α1 hs + α4 − U S1 f = α3 + s s2 ∞ と書ける.そこで,最初から,f ∈ E+ 4 ∩ H4 を,f = αhs + βU S1 の形 に書いておく.f (0, 1, 1) = αhs (0, 1, 1) で hs (0, 1, 1) > 0 だから,α = 0 で ある.hs (0, 1, 1) ∈ Q+ / Q+ 4 , hs ∈ 4 だから,補題 2.2.4f より β < 0 ならば f∈ / P+ 4 である. 以上より,(3) がわかる. (5) は定理 2.2.9e よりわかる. 定理 2.3.9b. 定理 2.3.8g と同じ記号を用いる. f (a, b, c) = S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 + vU S1 ∈ H̆4 をとるとき,任意の a, b, c ∈ R+ に対して f (a, b, c) = 0 が成り立つため の必要十分条件は,以下の (1)∼(4) のいずれかが成立することである. √ √ (1) αf = 0 かつ,ある x ∈ (− 3, 3 ) が存在して ϕf (x) = 0 が成り 立つ. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 53 (2) p = q かつ p2 − 4p = 4r かつ p2 + 2p = 2v が成り立つ. (3) 2s4 + ps3 − qs − 2 = 0 の実数解 s = 0 で, γ3 := r + 3s2 + 2ps − 1 s2 δ3 := v + (2s + p)(s − 1)(s2 + 1) + p s とおくとき,γ3 = 0, γ3 + δ3 = 0 を満たす s が存在する. (4) 2s4 + ps3 − qs − 2 = 0 の実数解 s = 0 で, t := 2s2 + ps 1 s2 2s5 − 3s4 + s2 − 2s + 1 δ4 := v + (s − 1)2 p + s2 γ4 := r + 3s2 + 2ps − とおくとき,t = 1, γ4 = 0 かつ γ4 = δ4 が成り立つようなものが存在する. p p p2 + 8 − p q2 + 8 + q この s は (自動的に ) 5s5 を満たす. 4 2 + 証明. 必要条件であることを示す.f ∈ P̆+ 4 であると仮定する.∂P4 = + + +∞ F+ であった.点 f と点 g∞ = S2,2 −U S1 ∈ ∂P+ 4 ∪E4 ∪Q4 ∪P4 4 を通る直 線 ` をとり,`∩(∂P+ 4 ) に属する g∞ 以外の点 f1 をとる.f = uf1 +(1−u)g∞ (0 < u 5 1) と書ける.f0 = uf1 とおくと f0 はモニックである.f0 ∈ F+ 4 + または f0 ∈ E+ 4 または f0 ∈ Q4 である. + (I) f0 ∈ F+ 4 の場合を考える.すると,f0 ∈ F4 ⊂ F4 ⊂ P4 , g∞ ∈ P4 な ので f ∈ P4 となる.よって,条件 (1) または (2) が成立する. (II) f0 ∈ E+ 4 の場合を考える.f0 = α1 gs + α2 es + α3 hs + α4 U S1 (∃s, αi ∈ R+ ) と書ける.ところで, (s2 + 1)2 es + 3shs = s2 gs + (s2 − s + 1)2 U S1 であった.この関係式を使うと f0 は次の ° 1 , ° 2 のいずれかの形に書ける. f0 = αgs + βes + γU S1 , (∃s, α, β, γ ∈ R+ ) ° 1 f0 = αgs + βhs + γU S1 , (∃s, α, β, γ ∈ R+ ) ° 2 2.2b 3次斉次不等式 54 (II-1) ° 1 の場合を考える. ° 1 の両辺の S4 , S3,1 , S1,3 の係数を比較す ると, 1=α+β p=α (s2 s2 , + 1)2 1 − 2s2 2βs − 2 , s (s + 1) q=α s2 − 2 2βs − 2 s (s + 1) である.この 3 式から α, β を消去すると,2s4 + ps3 − qs − 2 = 0 が得ら れる.この 4 次方程式のある実数解 s = 0 が ° 1 を満たす s と一致するは ずである.その s を固定して考える.このとき, α= 2s2 + ps + 2 , 3 β=− (s2 + 1)2 (2s2 + ps − 1) 3s2 が成り立つ.f に q = 2s3 + ps2 − 2/s を代入して q を消去した後に数式 処理ソフトで計算すると, 2s2 + ps + 2 (s2 + 1)2 (2s2 + ps − 1) f= gs − es 3 3s2 + γ3 (S2,2 − U S1 ) + (γ3 + δ3 )U S1 ° 3 が成り立つことがわかる.ここで, f0 = (s2 + 1)2 (2s2 + ps − 1) 2s2 + ps + 2 gs − es + (γ3 + δ3 )U S1 3 3s2 で,γ3 (S2,2 − U S1 ) = γg∞ である.f = f0 + (1 − u)g∞ (0 < u 5 1) で あったから, ° 1 とあわせて,γ3 = 0, γ3 + δ3 = 0 がわかる.よって,(3) が成立する. (II-2) ° 2 の場合を考える.ある t = 1 により gs + β 0 hs = ks,t と書ける ことに注意し,S4 の係数に注意すると, ° 1 は f0 = 1 ks,t + δU S1 , s2 (∃s = 0, ∃t = 1, ∃δ = 0) ° 4 と変形できる. ° 4 の両辺の S4 , S3,1 , S1,3 の係数を比較すると, t p = −2s + , s q = st − 2 s である.この 2 式から t を消去すると,2s4 + ps3 − qs − 2 = 0 が得られ る.この 4 次方程式の解の中に適切な s が存在するはずである.以下,そ の適切な解 s について考える. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 55 p 2 t = 2s + ps = 1 であるから,s = 0 に注意すると,s = p2 + 8 − p で 4 ないといけない.また, 0 = 2s4 + ps3 − qs − 2 = (2s2 + ps)s2 − qs − 2 = s2 − qs − 2 p q2 + 8 + q である.ちょっと面倒な計算を頑張って行 であるから,s 5 2 うと, 1 f − 2 ks,t = γ4 S2,2 + δ4 U S1 s が得られる.他方 f= 1 ks,t + δU S1 + (1 − u)g∞ s2 (δ = 0, 0 < u 5 1) であったので,γ4 = 1 − u = 0, δ4 − γ4 = δ = 0 が成り 立つ.よって,(4) が得られる. + (III) f0 ∈ Q+ 4 の場合を考える.g∞ ∈ Q4 より,g∞ と f1 ∈ Q4 を通 + る直線 ` は ∂Q+ 4 と g∞ 以外の点で交わる.よって,f0 ∈ ∂Q4 である. + + +∞ ∂Q+ なので,上で扱った場合に帰着される. 4 ⊂ F4 ∪ E4 ∪ P4 十分条件であることは,上の証明から容易にわかる. 系 2.3.9c. H̆04 の元 f (a, b, c) = S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 − (1 + p + q + r)U S1 について,任意の a, b, c ∈ R+ に対して f (a, b, c) = 0 が成り立つための 必要十分条件は,以下の (1), (2) のいずれかが成立することである. (1) p2 + pq + q 2 5 3r + 3 が成り立つ. (2) 2s4 + ps3 − qs − 2 = 0 が以下の条件を満たす実数解 s = 0 を持つ. t := 2s2 + ps, γ4 := r + 3s2 + 2ps − 1 s2 とおくとき,t = 1, γ4 = 0 が成り立つ.とおくとき,t = 1, γ = 0 が成り p p p2 + 8 − p q2 + 8 + q 立つ.この s は (自動的に ) 5s5 を満たす. 4 2 56 2.2b 3次斉次不等式 証明. 必要条件であることを示す.f ∈ Q+ 4 であると仮定する.定理 2.3.4a 0+ 0+ +∞ より,∂Q+ である.点 g∞ = S2,2 − U S1 ∈ ∂Q+ 4 = F4 ∪ E4 ∪ Q4 4 と + 点 f ∈ Q+ 4 を通る直線 ` をとり,` ∩ (∂Q4 ) に属する g∞ 以外の点 f1 を とる.f = uf1 + (1 − u)g∞ (0 < u 5 1) と書ける.f0 = uf1 とおくと f0 0+ +∞ のいずれ における S4 の係数は 1 である.f0 ∈ F0+ 4 , f0 ∈ E4 , f0 ∈ Q4 かが成立する.Q+∞ の元は S4 の項を持たないから,f0 ∈ Q+∞ となるこ 4 4 とはない. 0+ 0+ f0 ∈ F0+ 4 の場合は,disc4 の形から,(1) の条件が成立する.f0 ∈ E4 の場合を考える.定理 2.3.9c の f0 ∈ E+ 2 の考察から,(2) が成 4 の場合の ° り立つことがわかる. 十分条件であることは,上の証明から容易にわかる. 命題 2.3.9d. (R4 の構造定理) R4 は 4 次元の凸錐であって,以下が成 り立つ. (1) ∂R4 = F4 ∪ S4 であり, ¯ © ª Lss,t = αgp(s,t) + βek(s,t) ¯ α = 0, β = 0 [ Fs4 = Lss,t (s,t)∈R2 −{(1,1)} である. (2) f = S4 + pT3,1 + rS2,2 + (v − 1 − 2p − r)U S1 ∈ H̆s4 と表すとき,R4 の判別式は,disc4 (p, p, r, v) である. 証明. Lss,t の決定だけが問題であるが,βek は対称式なので,gp,q が対称 式になるのは p = q の場合なので,結論を得る.また,disc4 (p, p, r, v) は 既約多項式なので,これが主判別式になる.これは,印刷するとかなり長 い式になる. + 命題 2.3.9e. (R+ 4 の構造定理) R4 は 4 次元の凸錐であって,以下が成 り立つ. s+ s+ + +∞ (1) ∂R+ であり, 4 = F4 ∪ E4 ∪ S4 ∪ R4 [ s+ s F4 = Ls,t (s,t)∈R2+ −{(1,1)} 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 57 ¯ © ª ¯ Es+ 4 = α1 g1 + α2 es + α3 (T3,1 − 2S2,2 ) + α4 U S1 αi = 0 R+∞ = R+ · U S1 + S+∞ 4 4 (2) f = S4 + pT3,1 + rS2,2 + (v − 1 − 2p − r)U S1 ∈ H̆s4 と表すとき,Rs4 の主判別式は disc4 (p, p, r, v) で,端判別式は r + 1 − p2 である. s+ + s 証明. Fs+ 4 の決定については,R4 の場合と同様である.E4 = E4 ∩ H4 を決定する.α1 gs + α2 es + α3 hs + α4 U S1 ∈ E+ 4 が対称式になる条件を考 える.es と U S1 は対称式なので,α1 gs + α3 hs が対称式であればよい.そ れは定理 2.3.7b と同様 s = 1 の場合に限る. 2 disc+ 4 (p, p, r, v) = 3(r + 1 − p ) であった. 補題 2.3.9f. √ √ g(x, t) := 108 3t3 + 36(10 − 3x)t2 − 3(x + 2)2 (4x + 47)t + 6(x + 2)4 h(x, v) = (4v + x2 − 44x + 52)2 + 128(x − 4)3 とおく. √ (1) 0 < t < 3 3, x < 12 のとき g(x, t) > 0 である. (2) v > 27 のとき,任意の x ∈ R に対して h(x, v) > 0 である. 証明. (1) g(x, t) を t についての 3 次関数と考える. √ √ ∂g(x, t) = 324 3t2 + 72(10 − 3x)t − 3(x + 2)2 (4x + 47) ∂t ∂g(x, t) = 0 の小さくないほうの実数解 ∂t は,g1 (x) := 12x3 + 225x2 + 372x + 964 として, p g1 (x) − 2(10 − 3x) √ t1 (x) := 18 3 なので,t についての 2 次方程式 である. Case 1: g1 (x) < 0 の場合.g(x, t) の t3 の係数は正なので,t = 0 にお いて g(x, t) > g(x, 0) = (x + 2)4 = 0 である. Case 2: g1 (x) = 0, x < 12 の場合.g(x, t) の t3 の係数は正なので,t = 0 においては g(x, t) = max{g(x, t1 ), g(x, 0)} である.g(x, 0) = (x + 2)4 = 0 58 2.2b 3次斉次不等式 なので,g(x, t1 ) = 0 を示せばよい.g(x, y) を ∂g(x, t) で割った余りを利 ∂t 用して計算すると, ¢ 1¡ g(x, t1 ) = g2 (x) − g1 (x)3/2 81 ただし g2 (x) = 378x4 + 2331x3 + 13986x2 + 21636x + 32696 が得られる. g2 (x)2 − g1 (x)3 = 108(12 − x)3 (x + 2)4 (16x2 + 25x + 58) なので,x < 12 のとき g(x, t1 ) > 0 である. √ Case 3: 0 < t < 3 3, x = 12 の場合. p g1 (x) − 2(10 − 3x) √ t1 (x) := 18 3 とするとき,x = −2 で t1 (x) は単調増加なので,x = 12 のとき t1 (x) = √ √ t1 (12) = 499 3 > 3 3 である. √ g(x, 3) = 3(2x4 + 4x3 − 141x2 − 1520x11456) > 0 の確認は容易である.また,g(x, 0) > 0 であった.g(x, t) は t に関する 3 √ 次関数で t3 の係数は正で,極小値をとる点は t = t1 (x) > 3 3 であるの √ で,x > 12, 0 < t < 3 3 において g(x, t) > 0 となる. (2) x > 4 であれば (x − 4)3 > 0 なので,h(x, v) > 0 である.x 5 4 の ときは, h(x, y) ¡ ¢ ¡ ¢ = (x − 4)2 (x + 24)2 + 512 + 8(v − 27) 2(v − 27) + (x − 4)(x − 40) = 16(v − 27)2 > 0 である. 定理 2.3.9g. f = S4 + pT3,1 + rS2,2 + (v − 1 − 2p − r)U S1 ∈ H̆4 につ いて,任意の a, b, c ∈ R に対して f (a, b, c) = 0 が成り立つための必要十 分条件は,v = 0 であって,次の条件 (1) または (2) または (3) が成り立つ ことである. (1) v = 0 かつ r = p2 − 1. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 59 √ (2) 0 < v 5 27 かつ disc4 (p, p, r, v) = 0 かつ r = p2 − (v + 2 3v + 1). (3) v > 27 かつ disc4 (p, p, r, v) = 0 かつ r = p2 + 2. 4 証明. f (1, 1, 1) = 3v なので,v = 0 は f ∈ R4 であるための必要条件で ある.v = 0 のときは,(1) が必要十分条件であることは,定理 2.3.5a か ら従う.以下,v > 0 の場合を考える. 変数と定数を区別するため,H̆4 の座標系を (p, r, v) の代わりに (x, y, z) を用いる.v > 0 を定数とし,H̆4 内で平面 z = v 定まる平面を Hv と し,Tv := R4 ∩ Hv , Fv := F4 ∩ Hv とおく.また,disc4 (x, x, y, v) = 0 で 定まる Hv 上の曲線を Cv とおくと,Fv ⊂ Cv であって,曲線 Cv は,パ ラメーラ表示 x=t+ v(2t + 1) , (t + 2)3 y = t2 − 1 + v(−t3 + 2t2 + 3t + 2) (t + 2)3 (t ∈ P1R − {−2}) で定まる有理曲線である.このパラメータ表示を用いて Cv のグラフを描くと,下図のようになる.Tv の境界 Fv は,図の太線で 示した曲線である.v > 27 か 0 < v 5 27 によって,グラフの特徴が若干 異なる. y Fv Pv y 6 Fv Tv Fv Fv Tv Fv Qv x 図 1. v > 27 Pv 図 2. 0 < v < 27 v > 0 のとき,曲線 Cv は点 à Pv : (x, y) = 6 ! √ r v v + 2 3v + 9 −2 − 2, 3 3 x - 2.2b 3次斉次不等式 60 に結節点を持つ.さらに,v > 27 のとき à r ! √ v − 2 3v + 9 v Qv : (x, y) = 2 − 2, 3 3 も結節点である.Qv は 0 < v < 27 のとき Tv 内の孤立零点として現れる. Pv , Qv はいずれも ek に対応する点である. (2) 0 < v 5 27 の場合を考える.曲線 disc4 (x, x, y, v) = 0 と放物線 √ y = x2 − (v + 2 3v + 1) の交点を求める. √ v = 0 なので,ある t = 0 により v = t2 と書ける.y = −(t2 + 2 3t + 1) を disc4 (x, x, y, t2 ) に代入すると,以下のようになる. à !2 √ ³ √ √ ¡ 2 ¢ 2´ 2 3 2 disc4 x, x, x − (t + 2 3t + 1) , t = − 3t x + t + 2 g(x, t) 3 ただし √ √ g(x, t) := 108 3t3 + 36(10 − 3x)t2 − 3(x + 2)2 (4x + 47)t + 6(x + 2)4 √ 前補題より,0 < t < 3 3, x < 12 のと き g(x, t) > 0 で あ るので , √ ³ √ ¡ 2 ¢ 2´ 2 3 2 disc4 x, x, x − (t + 2 3t + 1) , t = 0 ならば x = − t − 2 である. 3 √ よって,放物線 y = x2 − (v + 2 3v + 1) と曲線 disc4 (x, x, y, v) = 0 の交 √ 点は,点 Pv のみである.したがって,y = x2 − (v + 2 3v + 1) によって, disc4 (x, x, y, v) = 0 で定まる領域から,Tv に属さない部分だけが切り落と されていることがわかる. (3) v > 27 の場合を考える.放物線 y = x2 /4 + 1 は 2 点 Pv , Qv を通る. この放物線と disc4 (x, x, y, v) = 0 の交点は Pv , Qv の 2 点のみであること を証明する.交点の x 座標は, ¡ ¢2 µ ¶ 3(x + 2)2 − 4v h(x, v) x2 disc4 x, x, + 2, v = − 4 256 の根である.ここで,h(x, v) は前補題に登場した多項式である.h(x, v) > 0 であったから,disc4 (x, x, x2 /4+2, v) = 0 の実数解は,3(x+2)2 −4v = 0 の r v 解,すなわち,x = ±2 − 2 のみであり,これは曲線 disc4 (x, x, y, v) = 0 3 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 61 の特異点 Pv および Qv であった.したがって,y = x2 /4 + 1 によって, disc4 (x, x, y, v) = 0 で定まる領域から,Tv に属さない部分だけが切り落と されていることがわかる. ● p.77, 例題 2.3.12 から第 3 章の最後まで. 上の変更に伴い,以下の原稿と差し替えて下さい. [差し替え原稿] f = S4 + pS3,1 + qS1,3 + rS2,2 + sU S1 が f ∈ Q+ / Q4 である場 4 かつ f ∈ 合,係数 p, q, r, s の関係式だけで g = 0 であることを判定する簡明な方法 がないので,f = 0 の証明は若干面倒である.基本的には s, t の連立方程式 t 2 − 2s = p, st − = p s s を解いて s = 0, t = 1 となる解を見つけ,f と hs,t を比較することになる. 例題 2.3.12. a = 0, b = 0, c = 0 のとき,以下の不等式を証明せよ. (1 ) a(a2 − b2 )(a − 2b) + b(b2 − c2 )(b − 2c) + c(c2 − a2 )(c − 2a) = 0 (2 ) (a − b)(3a + 2b)3 + (b − c)(3b + 2c)3 + (c − a)(3c + 2a)3 = 0 (3 ) S4 + 5S3,1 = 6S2,2 √ √ S4 + 2 2S3,1 = 2 2S1,3 + U S1 (4 ) 解答. 定理 2.3.4a, 定理 2.3.7a の記号を用いる. (1) 例題 2.3.11(5) より,(左辺) = S4 − 2S3,1 + 2S1,3 − S2,2 = 0. (2) 例題 2.3.11(3) より,S4 + 2S2,2 − 3S1,3 = 0 なので,19S4 + 27S3,1 − 28S1,3 −18S2,2 = (S4 −S1,3 )+18(S4 +2S2,2 −3S1,3 )+27(T3,1 −2S2,2 ) = 0. (3) 例題 2.3.11(4) からすぐわかるが,次のような別解もある. a = c, b = c と仮定して,x := a − c = 0, y := b − c = 0 とおく. S4 + 5S3,1 − 6S2,2 © ª = 9c2 (x2 − xy + y 2 ) + 3c 3x(x − y)2 + y(7x2 − 7xy + 3y 2 ) + (x − y)4 + xy(3x − 2y)2 = 0 √ √ 2+ 6 (4) s0 = とおく.(左辺) − (右辺) = ks0 ,2 (a, b, c) = 0. 2 2.2b 3次斉次不等式 62 次の例題は,定理 2.3.8g を用いる問題を集めた. 例題 2.3.13. 任意の実数 a, b, c に対し以下の不等式が成立することを 証明せよ. (1 ) ( 3) S4 + 3S3,1 + 3S2,2 + S1,3 = 0 8 S4 + 2S2,2 + √ S3,1 = 0 7 √ √ S4 + (16 − 8 3 )U S1 = (14 − 8 3 )S2,2 ( 4) p = 1.4894111804 · · · を 5 次方程式 ( 2) 7p5 + 17p4 + 16p3 + 16p2 − 64p − 128 = 0 ° 1 の解とするとき,S4 + pS3,1 = 0 √ √ 解答. (1) 定理 2.3.8g の記号で,ϕf (x) = 4 2x3 − 24x2 + 20 2x − 9 とな √ √ る.3 次方程式 ϕf (x) = 0 は開区間 (− 3, 3 ) 内に 2 つの解 x = 0.518 · · · と x = 1.231 · · · を持つ.よって,定理 2.3.8g より結論を得る. b+c c+a a+b 別解: x = , y = , z = とおくと,a = −x + y + z, 2 2 2 b = x − y + z, c = x + y − z なので, S4 + 3S3,1 + 3S2,2 + S1,3 = a(a + b)3 + b(b + c)3 + c(c + a)3 © ª = 8 x3 (−x + y + z) + y 3 (x − y + z) + z 3 (x + y − z) © = 8 (x2 − xy − y 2 )2 + (y 2 − yz − z 2 )2 + (z 2 − zx − x2 )2 ª + x2 y 2 + y 2 z 2 + z 2 x2 = 0 (2) 定理 2.3.8g の記号で,ϕf (x) = (x − x1 )2 (x − x2 ) となる.ただし, p √ √ 12 + 6 7 − 2 6 7 + 16 · p √ x1 = =· 0.715 3 8 7 + 21 p √ √ 12 + 6 7 + 4 6 7 + 16 · p √ x2 = =· 2.45 3 8 7 + 21 である.よって,定理 2.3.8g より結論を得る.この不等式は P4 の境界上 にある. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 63 √ √ (3) 定理 2.3.8g の記号で,p = q = 0, r = 8 3−14, v = 16−8 3 の場合で, √ √ √ √ √ ¡√ ¢ ϕf (x) = 2 3x3 +(3−2 3)x2 + 3x+12 3−21 = 2 3(x− 3 )(x−2+ √ 2 √ 3 ) となるので,定理 2.3.8g より結論を得る.(a : b : c) = (1 : 1 : 1 − 3 ) を等号成立条件としてもつ. (4) 一般に k を実数として fk (a, b, c) = S4 + kS3,1 とし ,k ∈ ∂P4 とな るための条件を考える.定理 2.3.8g の記号で,p = k, q = r = s = 0 で, √ ϕf (x) = 2 k + 1x3 − (3k + 6)x2 + 2(k + 1)3/2 x + (1 − k)(2 + k) となる.f (x) が重根をもつ条件を考える. √ d ϕf (x) = 6 k + 1x2 − (6k + 12)x + 2(k + 1)3/2 = 0 dx と ϕf (x) = 0 から x を消去する (数式処理ソフトを使え ) と, ° 1 が得られ る.そして, ° 1 の解の 1 つ p = 1.4894111804 · · · を ϕf (x) に代入し,3 次 √ 方程式 ϕf (x) = 0 を解くと,重根として x = 0.47891627529 · · · ∈ (− 3, √ 3 ) が得られる.したがって S4 + pS3,1 ∈ ∂P4 である. ● p.79∼81. 定理 2.4.1. この部分は,最近,新しい結果が得られていますので,以下の原稿と差 し替えます. 補題 2.4.1a. r)U S1,1 ∈ H̆s0 5 f (a, b, c) := S5 + pT4,1 + qT3,2 + rU S2 − (1 + 2p + 2q + に対し, f (x, 1, 0) = 0 (∀x = 0) であるための必要十分条件は,次の (1), (2) のいずれか一方が成立するこ とである. (1) p = −3 かつ p + q + 1 = 0 (2) p < −3 かつ 4q = (p + 1)2 + 4 証明. まず,f (1, 1, 0) = 2(p + q + 1) なので,p + q + 1 = 1 は必要条件 である. f (x, 1, 0) = (x5 + 1) + p(x4 + 1) + q(x3 + x2 ) 64 2.2b 3次斉次不等式 = (1 + x)(1 + (p − 1)x + (1 − p + q)x2 + (p − 1)x3 + x4 ) なので,α := p − 1, β := 1 − p + q とし, g(x) := (1 + (p − 1)x + (1 − p + q)x2 + (p − 1)x3 + x4 ) = x4 + αx3 + βx2 + αx + 1 õ ! ¶2 µ ¶2 1 1 2 =x x+ +α x+ + (β − 2) x x を考察する.y = x + 1/x とおくと, 「 f (x, 1, 0) = 0 (∀x = 0) 」 ⇐⇒ 「 g(x) = 0 (∀x = 0) 」 ⇐⇒ 「 h(y) := y 2 + αy + (β − 2) = 0 (∀y = 2) 」 ³ α ´2 4β − 8 − α2 が成立する.h(y) = y + + に注意して,この 2 次関数 2 4 の y = 2 における最小値を考察する. α = −4 (つまり p = −3) のときは, h(2) = 2α + β + 2 = p + q + 1 = f (1, 1, 0) が最小値であるので,(1) の条件を得る. なお,p + q + 1 = 0 のとき,f (x, 1, 0) = (x − 1)2 ((x − 1)2 + (p + 3)x) なので,f (x, 1, 0) = 0 となるのは x = 1 の場合に限る. α < −4 (つまり p < −3) のときは, ³ α ´ 4β − 8 − α2 4q − (p + 1)2 − 4 h − = = 2 4 4 が最小値であるので,(2) の条件を得る.ここで,4q = (p + 1)2 − 4 ならば p + q + 1 = 1 であることに注意する. なお,4q = (p + 1)2 + 4 のとき, (2x2 + (p − 1)x + 2)2 4 p 1 − p ± (1 − p)2 − 16 なので,f (x, 1, 0) = 0 となるのは,x = の場合 4 に限る. f (x, 1, 0) = 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 補題 2.4.1b. 65 f (a, b, c) := S5 + pT4,1 + qT3,2 + rU S2 − (1 + 2p + 2q + r)U S1,1 ∈ H̆s0 5 に対し, d(p, q, r) := 4(p + 1)(p − 2)(2p − 1) − 9(q(2p − 1) + r(p + 1)) ¡ ¢3/2 − (2p − 1)2 − 3(2q + r + 2) とおく.このとき, f (x, 1, 1) = 0 (∀x = 0) であるための必要十分条件は,p + q + 1 = 0 かつ,次の (1)∼(4) のいずれ かが成立することである. (1) p = −1 かつ 4p + 2q + r + 3 = 0 (2) p < −1 かつ (2p − 1)2 < 3(2q + r + 2) (3) 4p + 2q + r + 3 < 0 かつ d(p, q, r) = 0 (4) p < −1 かつ (2p − 1)2 = 3(2q + r + 2) かつ d(p, q, r) = 0 証明. f (0, 1, 1) = 2(p + q + 1) なので,p + q + 1 = 1 は必要条件である. ¡ ¢ f (x, 1, 1) = (x − 1)2 x3 + 2(p + 1)x2 + (4p + 2q + r + 3)x + 2(p + q + 1) なので, g(x) := x3 + 2(p + 1)x2 + (4p + 2q + r + 3)x + 2(p + q + 1) とおく,g 0 (x) = 3x2 + 4(p + 1)x + (4p + 2q + r + 3) である. Case 1: 2 次方程式 g 0 (x) = 0 が正の実数解を持たない場合を考える. 2(p + 1) であることを考えると,2 次方 放物線 y = g 0 (x) の軸が x = − 3 程式 g 0 (x) = 0 が正の実数解を持たないための必要十分条件は, 「p + 1 = 0 かつ g 0 (0) = 0 」または「 p + 1 < 0 かつ g 0 (−2(p + 1)/3) > 0 」である.こ こで, µ ¶ 2(p + 1) 3(2q + r + 2) − (2p − 1)2 g0 − = 3 3 である.g 0 (x) = 0 が正の実数解を持たない場合には,x > 0 で g 0 (x) > 0 なので,x = 0 で g(x) = 0 であるための必要十分条件は g(0) = 0 である. よって,条件 (1), (2) を得る. Case 2: 2 次方程式 g 0 (x) = 0 が正の実数解 x0 を持つ場合を考える. 2.2b 3次斉次不等式 66 そのためには,g 0 (0) < 0 または「 p + 1 < 0 かつ g 0 (−2(p + 1)/3) 5 0 」で あることが必要十分である.ただし,g 0 (0) < 0 ならば g 0 (−2(p + 1)/3) < 0 なので,g 0 (x) = 0 が正の実数解 x0 を持てば ,3(2q + r + 2) < (2p − 1)2 である.いすれにせよ,一般に,3(2q + r + 2) < (2p − 1)2 の場合,2 次方 程式 g 0 (x) = 0 の小さくないほうの根は, p (2p − 1)2 − 3(2q + r + 2) − 2(p + 1) x0 = 3 である.g(x) は x = x0 のとき極小になり,x = x0 で単調増加である. よって,g(0) = 0 かつ g(x0 ) = 0 であることが,任意の x = 0 に対して g(x) = 0 となるための必要十分条件である.27g(x0 ) = 2d(p, q, r) なので, 条件 (3), (4) を得る. 定理 2.4.1c. r)U S1,1 ∈ f (a, b, c) := S5 + pT4,1 + qT3,2 + rU S2 − (1 + 2p + 2q + H̆s0 5 に対し, ³ ´2 d5 (p, q, r) := 4(p + 1)(p − 2)(2p − 1) − 9q(2p − 1) − 9r(p + 1) ³ ´3 − (2p − 1)2 − 3(2q + r + 2) とおく.このとき,任意の a = 0, b = 0, c = 0 に対して f (a, b, c) = 0 が成 り立つための必要十分条件は,次の (1)∼(4) のいずれかが成立することで ある. (1) p = −1 かつ p + q + 1 = 0 かつ 2p + r + 1 > 0 (2) p = −1 かつ p + q + 1 = 0 かつ 2p + r + 1 5 0 かつ d5 (p, q, r) = 0 (3) −3 5 p < −1 か つ p + q + 1 = 0 か つ d5 (p, q, r) = 0 か つ (q, r) 6= (−p − 1, −2p − 1) (4) p 5 −3 かつ 4q = (p + 1)2 + 4 かつ d5 (p, q, r) = 0 証明. 定理 2.3.1 より,補題 2.4.1a, 補題 2.4.1b の条件を同時に満たす (p, q, r) の範囲 S̆+ 5 を考えればよい.いま,p を定数として固定して,p に おける S̆+ 5 の切り口 ¯ © ª + S5,p = (q, r) ∈ R2 ¯ (p, q, r) ∈ S̆+ 5 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 67 を考える. + (q, r)-平面 S5,p (2p − 1)2 = 3(2q + r + 2) (−p − 1, −2p − 1) 4p + 2q + r + 3 = 0 p+q+1=0 d5 (p, q, r) = 0 p > −1 の場合 + (q, r)-平面 S5,p 上において,曲線 d5 (p, q, r) = 0 はパラメータ表示 µ ³ 1 q= · − 36 t3 + (p + 1) 4(8p2 − 65p + 116)t3 3 27(2t + 1) ´¶ + 6(8p2 − 38p − 19)t2 + 3(8p2 − 11p − 73)t + (4p2 + 8p − 23) r= ³ 1 · − 8(2p − 1)3 t3 − 3(2p − 1)2 (8p + 23)t2 27(2t + 1)3 ´ − 6(2p − 1)(p + 4)(4p + 7)t − (p + 4)2 (8p + 5) を持つ 3 次有理曲線で,点 µ 3 ¶ 4p + 12p2 − 15p − 23 (2p − 1)3 (q, r) = , − 27 27 に単純尖点を持っている.この尖点は直線 (2p − 1)2 = 3(2q + r + 2) 上に ある.曲線 d5 (p, q, r) = 0 と直線 p + q + 1 = 0 の接点は (q, r) = (−p − 1, −2p − 1) で,接点でないほうの交点は (q, r) = (−p − 1, p2 ) である.この ことに注意して,p > −1, p = −1, p < −1 の場合に分けてグラフを描いて みる. 68 2.2b 3次斉次不等式 + (q, r)-平面 S5,p 4p + 2q + r + 3 = 0 (2p − 1)2 = 3(2q + r + 2) p+q+1=0 d5 (p, q, r) = 0 p = −1 の場合 p の値によって,尖点と直線 p + q + 1 = 0 の位置関係が変化することに 注意しよう. p+q+1=0 4q = (p + 1)2 + 4 + (q, r)-平面 S5,p (2p − 1)2 = 3(2q + r + 2) 4p + 2q + r + 3 = 0 d5 (p, q, r) = 0 p < −1 の場合 p < −1 の場合,点 (q, r) = (−p − 1, −2p − 1) は条件 4(p + 1)(p − 2)(2p − 1) − 9(q(2p − 1) + r(p + 1)) = 0 + より S5,p に属さない.あとは,細かい説明を要しないであろう. 上の定理の証明から,S+ 5 の境界の構造は以下の通りであることがわかる. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 69 定理 2.4.1d. S5 + pT41 + qT3,2 + rU S2 − (1 + 2p + 2q + r)U S1,1 ∈ S̆+ 5 3 に対して (p, q, r) ∈ R3 を対応させることにより,S̆+ 5 ⊂ R とみなす.こ s0+ s0+ のとき,∂ S̆+ 5 は,以下のようにして定義される 3 つの面成分 Q5 , E5 , Fs0+ の合併集合である. 5 ¯ © ª 0 Q1 := (p, q, r) ∈ R3 ¯ p + q + 1 = 0, −3 5 p 5 −1, r = p2 ¯ © ª Q02 := (p, q, r) ∈ R3 ¯ p + q + 1 = 0, −1 5 p, 2p + r + 1 = 0 Qs0+ := Q01 ∪ Q02 5 ¯ © ª Es0+ := (p, q, r) ∈ R3 ¯ 4q = (p + 1)2 + 4, p 5 −3, d5 (p, q, r) = 0 5 ¯ © ª F01 := (p, q, r) ∈ R3 ¯ d5 (p, q, r) = 0, p < −3, 4q = (p + 1)2 + 4 ¯ ¯ d5 (p, q, r) = 0, ¯ ¯ F02 := (p, q, r) ∈ R3 ¯ −3 5 p 5 −1, p + q + 1 = 0, ¯ ¯ (q, r) 6= (−p − 1, −2p − 1) ¯ ¾ ½ ¯ d (p, q, r) = 0, −1 5 p, p + q + 1 = 0, 0 3 ¯ 5 F3 := (p, q, r) ∈ R ¯ 2p + r + 1 5 0 Fs0+ := F01 ∪ F02 ∪ F03 5 + s0+ + s0+ + なお,Qs0+ = Q+ = E+ = F+ 5 5 ∩ S̆5 , E5 5 ∩ S̆5 , F5 5 ∩ S̆5 である. + L+ 0,0 に対応する面成分は無限遠にあるので,S̆5 中には現れない.また,上 2 の定理より,d5 (p, q, r) が S+ 5 の主判別式で,4q − (p + 1) − 4 が端判別式 である. s0+ s0+ s0+ 次に,∂S+ 上にある不等式を決定しよう. 5 の面成分 Q5 , E5 , F5 Qs0+ は平面 p + q + 1 = 0 上の領域なので,f ∈ Qs0+ は, 5 5 f = S5 + pT41 − (p + 1)T3,2 + rU S2 + (1 − r)U S1,1 という形になる.ここで, 「 −3 5 p 5 −1 かつ r = p2 」または「 −1 5 p, 2p + r + 1 = 1 」である. Es0+ は 2 次曲面 4q = (p + 1)2 + 1 上の領域なので,f ∈ Es0+ は, 5 5 f = S5 + pT4,1 + p2 + 6p − 2v + 7 p2 + 2p + 5 T3,2 − U S2 − vU S1,1 4 2 という形に整理できる.ここで,(p, v) は p 5 −3 かつ (32p3 + 51p2 + 114p + 203 − 36pv − 36v) = 4(4p2 + 2p − 3v − 2)3/2 70 2.2b 3次斉次不等式 で定まる領域上を動く. f (0, x, 1) = 1 (x + 1)(2x2 + (p − 1)x + 2)2 4 であるので,2x2 + (p − 1)x + 2 = 0 を満たす正の実数 x = x0 に対して, f (0, x0 , 1) = 0 が成り立ち,f ∈ Ls0+ 0,x0 であることに注意する. 面成分 Fs0+ 上の不等式は,少し複雑である. 5 命題 2.4.1e. a, b, c, s, t を実数とし, Qs,0 (a, b, c) := S5 + (s3 + s2 − 1)T3,2 − (2s3 + 5s2 + 4s + 1)U S2 + (3s2 + 4s + 2)U S1,1 Qs,∞ (a, b, c) := T4,1 + (s2 − 1)T3,2 − 2(s + 1)2 U S2 + (4s + 2)U S1,1 Qs,t (a, b, c) := Qs,0 (a, b, c) + tQs,∞ (a, b, c) とおく.このとき,以下が成り立つ. (1) 任意の Fs0+ の元 f に対してある s, t ∈ R が存在して f = Qs,t と書 5 ける. (2) Qs,t (s, 1, 1) = 0 である. (3) Qs,t ∈ F01 となる必要十分条件は,t < −3 かつ (t + 3)2 5 4s2 (s + t + 1) である. (4) Qs,t ∈ F02 となる必要十分条件は,−3 5 t 5 −1 かつ s + t + 1 = 0 で ある. (5) Qs,t ∈ F03 となる必要十分条件は,t = −1 かつ s = 0 である. 証明. (2) は直接的計算でわかる. p = t, q = t(s2 − 1) + (s3 + s2 − 1), r = −2t(s + 1)2 − (2s3 + 5s2 + 4s + 1) とおく.d5 (p, q, r) = 0 であることも,直接的計算で確認できる.(3) は, 4q − (p + 1)2 − 4 = 4s2 (s + t + 1) − (t + 3)2 よりわかる.(4) は, p + q + 1 = s2 (s + t + 1) ° 1 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 71 よりわかる.(5) について考える.d5 (p, q, r) = 0, p + q + 1 = 0 という 条件下では,条件 2p + r + 1 5 0 は定理 2.4.1c の証明中のグラフより, 4p + 2q + r + 3 5 0 と同値であることがわかる.s = 0, t = −1 のとき, 4p + 2q + r + 3 = −s(3s + 4(t + 1)) 5 0 であるので, ° 1 とあわせて,f ∈ F03 が確認できる.(1) は以上の議論より 得られる. 命題 2.4.1f. f (a, b, c) = T4,1 + pT3,2 + qU S2 − (2 + 2p + q)U S1,1 とおく。任意の非負実数 a, b, c に対して f (a, b, c) = 0 となるための必要 十分条件は,次の (1) と (2) が成立することである. (1) p = −1. (2) 2p + q + 4 = 0 または (2p + q)2 + 8q 5 0. + 3 3 3 証明. S̆+ 5 ⊂ R ⊂ PP と考え,実射影空間 P における S̆5 の閉包をとる と,それは自然な全射 (R4 − {0}) −→ P3 による S+ 5 の像と一致する.そこ で,補題 2.4.1a, 2.4.1b に登場する条件式を,p = α/k, q = β/k, r = γ/k とおいて斉次化 g1 (k, α, β, γ) = k(p + q + 1) = α + β + k g2 (k, α, β, γ) = k 2 (4q − (p + 1)2 − 4) g3 (k, α, β, γ) = k(4p + 2q + r + 3) = 4α + 2β + γ + 3k ¡ g4 (k, α, β, γ) = k 2 (2p − 1)2 − 3(2q + r + 2) g5 (k, α, β, γ) = k 4 d5 (α/k, β/k, γ/k) を考える.α 6= 0 のとき, g2 (0, α, β, γ) = −α2 < 0, g4 (0, α, β, γ) = 4α2 > 0, g5 (0, α, β, γ) = −27α2 ((2β + γ)2 + 8αγ) である.よって,k = 0, α = 1, β = p, γ = q の場合,補題 2.4.1a に対 応する条件は g1 (0, 1, p, q) = p + 1 = 0 であり,補題 2.4.1b に対応する 条件は ,g3 (0, 1, p, q) = 2p + q + 4 = 0, かつ g5 (0, 1, p, q) = 0 すなわち (2p + q)2 + 8q 5 0 である. 72 2.2b 3次斉次不等式 上の命題の証明で,k = 0, α = 0, β = 1, γ = q とおくと,次の命題が得 られる. 命題 2.4.1g. f (a, b, c) = T3,2 + qU S2 − (2 + 2p + q)U S1,1 とおく.任 意の非負実数 a, b, c に対して f (a, b, c) = 0 となるための必要十分条件は q = −2 である. 上の命題の証明で,k = 0, α = 0, β = 1, γ = q とおくと,次の命題が得 られる. 命題 2.4.1g. f (a, b, c) = T3,2 + qU S2 − (2 + 2p + q)U S1,1 とおく.任 意の非負実数 a, b, c に対して f (a, b, c) = 0 となるための必要十分条件は q = −2 である. ● p.82, 定理 2.4.3. 以下の原稿と差し替えて下さい. [差し替え原稿] + 3 次と 4 次の巡回不等式の場合は,Q+ 3 , Q4 , Q4 の境界を決定することに よって,強力な定理が得られたが,5 次巡回不等式については,第 2.2.3 項 で導入した凸錐 Q+ 5 の境界はまだ決定できていない.しかし,定理 2.2.10b や定理 2.3.4a の真似をして,ある程度有用な考察をすることはできる. 定理 2.4.3a. 正則写像 Φ5 : P2 −→ P6 を ¡ ¢ Φ5 (a : b : c) := S5 : S4,1 : S3,2 : S2,3 : S1,4 : U S2 : U S1,1 で定め,P6 の斉次座標を,(x0 : · · · : x6 ) とし, F1 := 3s4 x0 − (4s5 − 1)x1 + (s8 − 4s3 )x4 − (s8 − 4s5 + 3s4 − 4s3 + 1)x5 F2 := 2x1 − 3sx2 + s3 x4 − (s3 − 3s + 2)x5 F3 := x1 − 3s2 x3 + 2s3 x4 − (2s3 − 3s2 + 1)x5 F4 := x5 − x6 + + とおく.このとき,F1 ,. . ., F4 ∈ L+ 0,s ⊂ E5 ⊂ ∂P5 であって,F1 , F2 , F3 , F4 と基底とするベクトル空間が L+ 0,s のザリスキー閉包である. 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 73 証明は,定理 2.2.10b や定理 2.3.4a の前の説明のように,行列式を数式 処理ソフトを使って計算するだけである.上の形にまとめるのは面倒であ るが,それを検証するのは容易である. F4 に対応する不等式は U S2 − U S1,1 = 0 で,これは,S2 = S1,1 より, 任意の (a : b : c) ∈ P2+ に対して成立している.残りの F1 , F2 , F3 に対応 する不等式を順に調べよう.まず,F2 に対応する不等式から始める. 定理 2.4.3b. f = S5 + xS4,1 + yS1,4 + zS3,2 + wS2,3 + uU S2 − (1 + x + y + z + w + u)U S1,1 ∈ H05 に対して (x, y, z, w, u) ∈ R5 を対応させて, + H̆05 = R5 と考える.このとき,Q+ 5 と P5 の端判別式は以下の通りである. disc+ 5 (x, y, z, w) := − 27x4 y 4 − 4x3 y 2 w3 − 4x2 y 3 z 3 + 18x3 y 3 zw + x2 y 2 z 2 w2 + 144x4 y 2 w + 144x2 y 4 z − 6x3 y 2 z 2 − 6x2 y 3 w2 + 16x3 w4 + 16y 3 z 4 − 80x3 yzw2 − 80xy 3 z 2 w + 18x2 yz 3 w + 18xy 2 zw3 − 4x2 z 2 w3 − 4y 2 z 3 w2 − 36x3 y 3 − 192x4 yz − 192xy 4 w − 128x4 w2 − 128y 4 z 2 + 24x2 yw3 + 24xy 2 z 3 − 27x2 z 4 − 27y 2 w4 − 746x2 y 2 zw + 144x3 z 2 w + 144y 3 zw2 − 72xzw4 − 72yz 4 w + 356xyz 2 w2 + 16z 3 w3 + 256x5 + 256y 5 + 160x3 yw + 160xy 3 z + 1020x2 yz 2 + 1020xy 2 w2 + 560x2 zw2 + 560y 2 z 2 w − 630xz 3 w − 630yzw3 + 108z 5 + 108w5 − 50x2 y 2 − 1600x3 z − 1600y 3 w − 900xw3 − 900yz 3 − 2050xyzw + 825z 2 w2 + 2000x2 w + 2000y 2 z + 2250xz 2 + 2250yw2 − 2500xy − 3750zw + 3125. 証明. 以下の連立方程式から α2 , α3 , s を消去する. −(4s5 − 1) + 2α2 + α3 , 3s4 z = −3sα2 , w = −3s2 α3 . x= y= s8 − 4s3 + s3 α2 + 2s3 α3 , 3s4 すると,disc+ 5 = 0 が得られる. 2 S+ 5 の端判別式 4q − (p + 1) − 4 は, 3 2 2 disc+ 5 (p, p, q, q) = (p + q + 1)(5 − 3p + q) (4q − (p + 1) − 4) 2.2b 3次斉次不等式 74 + の中に 2 乗の因数として現れる.このことは,Es+ 5 ⊂ Sing(E5 ) であるこ とを意味する. ● p.82, 下から 5 行目. 定理 2.4.4 の 3 行前. 誤: これは,U2 = U1,1 より, 正: これは,S2 = S1,1 より, ● p.83, 3 行目. 定理 2.4.4 の証明の 1 行目 誤: F (a, b, c, s) = (与式の左辺) とするとき. 正: F (a, b, c, s) = (与式の左辺) とするとき, ● p.75, 2 行目. 定理 2.4.4 の証明の最後から 3 行目 誤: ψ6 (k) := k 4 (1 + k 2 − k 3 + k 5 ) 正: ψ6 (k) := k 4 (2 + k 2 − k 3 + k 5 ) ● p.86, 1 行目. 定理 2.4.7 の証明の 1 行目 誤: 与式の左辺を f˜(a, b, c, s) とし. 正: 与式の左辺を f˜(a, b, c, s) とし, ● p.87, 3 行目. 誤: A2 (k, s) 5 A3 (k, a) だから, 正: A2 (k, s) 5 A3 (k, s) だから, ● p.87, 最後から 2 行目. 誤: 9 X bi (x)(1 − m)mi + b10 m10 i=0 正: 9 X i=0 bi (x)(1 − m)mi + b10 (x)m10 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 75 ● p.88, 9∼11 行目. 誤: b8 (x) := 3 + 16x + 24x2 − 6x4 − 60x5 + 224x6 − 256x7 + 89x8 b9 (x) := 3 + 16x + 24x2 − 6x4 − 60x5 + 224x6 − 264x7 + 98x8 b10 (x) := 3 + 16x + 24x2 − 6x4 − 60x5 + 224x6 − 264x7 + 97x8 正: b8 (x) := 3 + 16x + 24x2 + 8x7 − 8x8 b9 (x) := 3 + 16x + 24x2 + x8 b10 (x) := 3 + 16x + 24x2 ● p.88, 下から 9 行目. c1 (s) の式の前に以下の c0 (s) の式が欠落していました.追加してくだ さい. c0 (s) := 3(1 + 2s + 3s2 + 3s4 + 2s5 + s6 ) ● p.89, 2 行目. 誤: = 7 X di (x)(1 − k)k i + d8 (x)k 8 i=0 正: = 7 X di (x)(1 − m)mi + d8 (x)m8 i=0 ● p.89, 18 行目. 定理 2.4.7 の証明の Step 2 の 3 行目 誤: F (1 − k(1 − b), b, s) 正: F (1 − k(1 − b), b, 1, s) ● p.90, 9 行目. 10 誤: X 1 B1 ((1 − s)x, s) = ei (x)k i 2 (1 − s) i=0 2.2b 3次斉次不等式 76 10 正: X 1 B1 ((1 − s)x, s) = ei (x)si 2 (1 − s) i=0 ついでに 、11∼23 行目に登場する ei (k) の変数 k も x に修正してもう らうほうが綺麗です.数学的には k のままでもいいですが.ただし 、下か ら 4 行明の 「 k + s 5 1 のとき B1 (k, s) = 0 である. 」の部分の k は x に 変更しないでください. ● p.91, 17 行目. Step 2-3 の 3 行目. 10 誤: X 1 B ((1 − s)x, s) = gi (x)k i 2 (1 − s)2 i=0 正: X 1 B2 ((1 − s)x, s) = gi (x)si 2 (1 − s) i=0 10 ● p.92, 例題 2.4.8 √ √ 4 ケ所登場する 4 5 がすべて 5 4 の誤りです.正しくは以下のようにな ります. 例題 2.4.8. a = 0, b = 0, c = 0 のとき,次の不等式を示せ. à √ ! √ 554 554 S5 + − 1 U S2 = S4,1 4 4 √ 5 4 のとき, √ s − 4s + 3s − 4s3 + 1 554 =1− 3s4 4 √ 5 5 4s − 1 5 4 − =− 3s4 4 解答. 定理 2.4.7 において,s = 8 5 4 なので,求める不等式を得る. ● p.103, 例題 2.5.4(6) の 4 行目 誤: 2δ 3 + 2δ − 1 = 0 正: 2δ 3 + 2δ 2 − 1 = 0 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 77 ● p.108, 定理 2.5.5. 以下の原稿と差し替えて下さい. [差し替え原稿] 定理 2.5.5a. 正則写像 Φ6 : P2 −→ P9 を Φ6 (a : b : c) ¢ ¡ := S6 : S5,1 : S4,2 : S3,3 : S2,4 : S1,5 : U S3 : U S2,1 : U S1,2 : 3U 2 で定め,P9 の斉次座標を,(x0 : · · · : x9 ) とし, F1 := s4 x0 − (2s6 − 1)x2 + (s8 − 2s2 )x4 − (s8 − 2s6 + s4 − 2s2 + 1)x9 F2 := 2x1 − 3sx2 + s3 x4 − (s − 1)2 (s + 2)x9 F3 := x2 − 3sx4 + 2s3 x5 − (s − 1)2 (2s + 1)x9 F4 := x2 − 2sx3 + s2 x4 − (s − 1)2 x9 F5 := x6 − x7 F6 := x6 − x8 F7 := x6 − x9 + + とおく.このとき,F1 ,. . ., F7 ∈ L+ 0,s ⊂ E6 ⊂ P6 であって,F1 ,. . ., F7 を 基底とするベクトル空間が L+ 0,s のザリスキー閉包である. 証明は定理 2.4.3a の後に書いた説明の通りである.F1 , F2 , F3 , F4 にお いて,x9 のところは x6 , x7 , x8 のいずれでもよいのだが,次の定理の注意 に書いたように,そうすると対応する不等式が成立しなくなる. 定理 2.5.5b. f = S6 + xS5,1 + yS1,5 + zS4,2 + wS2, 4 + uS3,3 + x6 U S3 + x7 U S2,1 + x8 U S1,2 − 3(1 + x + y + z + w + u + x6 + x7 + x8 )U 2 ∈ H̆06 に 対して (x, y, z, w, u, x6 , x7 , x8 ) ∈ R8 を対応させて H̆6 = R8 と考える. + このとき,Q+ 6 と P6 の端判別式は以下の通りである. disc+ 6 (x, y, z, w, u) := 256x5 y 5 − 27x4 y 2 w4 − 27x2 y 4 z 4 − 192x4 y 4 zw − 6x3 y 3 z 2 w2 − 4x2 y 2 z 3 w3 + 144x4 y 3 w2 u + 144x3 y 4 z 2 u + 18x3 y 2 zw3 u + 18x2 y 3 z 3 wu − 128x4 y 4 u2 − 80x3 y 3 zwu2 + x2 y 2 z 2 w2 u2 − 4x3 y 2 w2 u3 − 4x2 y 3 z 2 u3 + 16x3 y 3 u4 − 1600x5 y 3 w 78 2.2b 3次斉次不等式 − 1600x3 y 5 z − 36x3 y 3 z 3 − 36x3 y 3 w3 + 108x4 w5 + 108y 4 z 5 + 1020x4 y 2 zw2 + 1020x2 y 4 z 2 w + 24x3 yz 2 w3 + 24xy 3 z 3 w2 + 16x2 z 3 w4 + 16y 2 z 4 w3 + 144x2 y 2 z 4 w + 160x4 y 3 zu + 160x3 y 4 wu − 630x4 yw3 u − 630xy 4 z 3 u − 746x3 y 2 z 2 wu − 746x2 y 3 zw2 u − 72x3 zw4 u − 72y 3 z 4 wu − 80x2 yz 3 w2 u − 80xy 2 z 2 w3 u + 560x4 y 2 wu2 + 560x2 y 4 zu2 + 356x3 yzw2 u2 + 356xy 3 z 2 wu2 − 6x2 y 2 z 3 u2 − 6x2 y 2 w3 u2 − 4x2 z 2 w3 u2 − 4y 2 z 3 w2 u2 + 24x3 y 2 zu3 + 24x2 y 3 wu3 + 16x3 w3 u3 + 16y 3 z 3 u3 + 18x2 yz 2 wu3 + 18xy 2 zw2 u3 − 72x3 ywu4 − 72xy 3 zu4 + 320x4 y 4 − 50x4 y 2 z 2 − 50x2 y 4 w2 + 2250xy 5 z 2 + 2250x5 yw2 + 144x3 yw4 + 144xy 3 z 4 + 9768x3 y 3 zw + 160x3 yz 3 w + 160xy 3 zw3 − 900x4 zw3 − 900y 4 z 3 w − 576x2 zw5 − 576y 2 z 5 w − 5428x2 y 2 z 2 w2 − 128x2 z 4 w2 − 128y 2 z 2 w4 − 96xyz 3 w3 + 144x2 y 2 zw4 − 64z 4 w4 + 2000x5 y 2 u + 2000x2 y 5 u − 2050x4 yzwu − 2050xy 4 zwu − 682x3 y 2 w2 u − 682x2 y 3 z 2 u − 192x2 yz 4 u − 192xy 2 w4 u + 3272x2 yzw3 u + 3272xy 2 z 3 wu + 320xz 2 w4 u + 320yz 4 w2 u − 208x3 y 3 u2 + 825x4 w2 u2 + 825y 4 z 2 u2 + 1020x3 yz 2 u2 + 1020xy 3 w2 u2 + 24x2 w4 u2 + 24y 2 z 4 u2 + 144x2 z 3 wu2 + 144y 2 zw3 u2 − 1584xyz 2 w2 u2 + 16z 3 w3 u2 − 900x4 yu3 − 900xy 4 u3 − 630x3 zwu3 − 630y 3 zwu3 − 108x2 yw2 u3 − 108xy 2 z 2 u3 − 72xzw3 u3 − 72yz 3 wu3 − 27x2 z 2 u4 − 27y 2 w2 u4 + 324xyzwu4 + 108x3 u5 + 108y 3 u5 − 2500x5 yz − 2500xy 5 w − 1700x2 y 4 z − 1700x4 y 2 w + 248x2 y 2 z 3 + 248x2 y 2 w3 + 256x2 z 5 + 256y 2 w5 + 2000x4 z 2 w + 2000y 4 zw2 − 13040x3 yzw2 − 13040xy 3 z 2 w + 4816x2 z 2 w3 + 4816y 2 z 3 w2 + 512z 5 w2 + 512z 2 w5 − 640xyzw4 − 3750x5 wu − 3750y 5 zu − 12330x3 y 2 zu − 12330x2 y 3 wu − 1600x3 z 3 u − 1600y 3 w3 u − 120x3 w3 u − 120y 3 z 3 u + 560x3 z 2 w2 u + 560y 3 z 2 w2 u + 10152x2 yz 2 wu + 10152xy 2 zw2 u + 768xw5 u + 768yz 5 u − 2496xz 3 w2 u − 2496yz 2 w3 u + 2250x4 zu2 + 2250y 4 wu2 + 1980x3 ywu2 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 79 + 1980xy 3 zu2 − 4536x2 zw2 u2 − 4536y 2 z 2 wu2 − 4464xyz 3 u2 − 4464xyw3 u2 − 576z 4 wu2 − 576zw4 u2 + 3942x2 yzu3 + 3942xy 2 wu3 + 2808xz 2 wu3 + 2808yzw2 u3 + 162x2 wu4 + 162y 2 zu4 + 108z 3 u4 + 108w3 u4 − 486xzu5 − 486ywu5 + 3125x6 + 410x3 y 3 + 3125y 6 + 15600x3 yz 2 + 15600xy 3 w2 + 1500y 4 z 2 + 1500x4 w2 − 192x2 w4 − 192y 2 z 4 − 10560x2 z 3 w − 10560y 2 zw3 + 8748x2 y 2 zw − 640xyz 4 w + 15264xyz 2 w2 − 1024z 6 − 4352z 3 w3 − 1024w6 + 2250x4 yu + 2250xy 4 u + 19800x3 zwu + 19800y 3 zwu + 16632x2 yw2 u + 16632xy 2 z 2 u + 6912xz 4 u + 6912yw4 u − 5760xzw3 u − 5760yz 3 wu + 15417x2 y 2 u2 − 2412x2 y 2 zwu2 − 9720x2 z 2 u2 − 9720y 2 w2 u2 − 22896xyzwu2 + 8208z 2 w2 u2 − 1350x3 u3 − 1350y 3 u3 + 5832xw2 u3 + 5832yz 2 u3 − 6318xyu4 − 4860zwu4 + 729u6 − 22500x4 z − 22500y 4 w − 1800xy 3 z − 1800x3 yw − 21888xyz 3 − 21888xyw3 − 6480x2 zw2 − 6480y 2 z 2 w + 9216z 4 w + 9216zw4 − 31320x2 yzu − 31320xy 2 wu − 3456xz 2 wu − 3456yzw2 u − 27540x2 wu2 − 27540y 2 zu2 − 8640z 3 u2 − 8640w3 u2 + 21384xzu3 + 21384ywu3 + 540x2 y 2 + 43200x2 z 2 + 43200y 2 w2 + 31968xyzw − 17280z 2 w2 + 27000x3 u + 27000y 3 u + 46656yz 2 u + 46656xw2 u + 15552xyu2 + 3888zwu2 − 8748u4 − 32400x2 w − 32400y 2 z − 13824z 3 − 13824w3 − 77760xzu − 77760ywu + 38880xy + 62208zw + 34992u2 − 46656 証明. G1,s + 7 X αi Gi,s と f の係数を比較すると, i=2 x = 2α2 , w= y = 2s3 α3 , z= 1 − 2s6 − 3sα2 + α3 + α4 , s4 s8 − 2s2 + s3 α2 − 3s2 α3 + s2 α4 , s4 u = −2sα4 を得る.これから,α2 , α3 , α4 , s を消去すると,disc+ 6 (x, y, z, w, u) = 0 が 得られる. 2.2b 3次斉次不等式 80 系 2.5.5c. f = S6 + pT5,1 + qT4,2 + rS3,3 + sU S3 + tU T2,1 − 3(1 + 2p + 5 2q + r + s + 2t)U 2 ∈ H̆s0 6 に (p, q, r, s, t) ∈ R を対応させることによい + + 5 H̆s0 6 = R と考える.このとき,S6 , R6 の端判別式は以下の通りである. 4 2 2 3 2 3 discs0+ 6 (p, q, r) := 8p + p q − 4p r − 42p q − 4q + 18pqr + 9p2 + 36q 2 + 54pr − 27r2 − 108q + 108 s0+ 2 証明. disc+ 6 (p, p, q, q, r) = (2p−2q+r−2)(2p+2q+r+2) disc6 (p, q, r) よりわかる. 次の定理では,(1) F1 , (2) F4 , (3) F2 , (4) F4 の順に,対応する不等式を 証明する. ● p.112, 定理 2.5.6 の証明の終わりのほう 誤: ψ6 (k) := 18 + 2k − 48k 2 + 96k 3 + 32k 4 − 402k 5 + 623k 6 − 167k 7 − 466k 8 + 432k 9 + 112k 10 − 360k 11 + 195k 12 − 35k 13 正: ψ6 (k) := 6 + 12k − 18k 2 + 20k 3 + 60k 4 − 60k 5 − 168k 6 + 361k 7 − 54k 8 − 140k 9 + 126k 10 + 48k 11 − 78k 12 + 21k 13 ● p.127, 下から 4 行目 (例題 3.1.3(16) の解答の最後の行) 1 1 1 + + x y x 1 1 1 正: + + x y z 誤: ● p.129, 例題 3.1.4(4) a b c a+b+c + + = a+1 b+1 c+1 a+b+c+1 この問題は簡単すぎてポカです.出題意図は Cauchey の不等式の利用 a a だったのですが, = を使えば簡単に証明できてしまっ a+1 a+b+c+1 て,意図通りの問題になっていませんでした. (4) 第2章 3変数斉次巡回多項式型不等式 81 ● p.150, 11 行目 (例題 3.2.3(8) の解答の 6 行目) x y y 誤: = 3 + + + 1−x 1−y 1−z x y z 正: = 3 + + + 1−x 1−y 1−z ● p.151, 1 行∼11 行目. 例題 3.2.3(9) の解答 解答が完全に間違っていました.この方針では証明できないので,解答 を完全に差し替えるしかありません. [差し替え原稿] √ √ √ √ √ √ √ √ √ (9) x := b + c − a, y := c + a − b, z := a + b − c とおく. √ ¡√ √ ¢2 √ 2 b + c − a > 0 より, b + c − a = (b + c − a) + 2 bc > 0 なので, 1 x > 0 である.同様に,y > 0, z > 0 である.b+c−a = x2 − (x−y)(x−z) 2 なので, r √ b+c−a (x − y)(x − z) √ √ √ = 1− 2x2 b+ c− a (x − y)(x − z) とおく.2x2 − (x − y)(x − z) = 2(b + c − a) > 0 2x2 √ s なので,s 5 1 である.このとき, 1 − s 5 1 − である.よって, 2 ! à r √ X X b+c−a (x − y)(x − z) √ 1− 1− 3− √ √ = 2x2 b+ c− a 3 3 X 1 (x − y)(x − z) 1 X −2 = · = x (x − y)(x − z) = 0 2 2x2 4 3 3 である.s = である.最後のところで,Schur の不等式を用いた. ● p.163, 5 行目. 例題 3.3.5(2) の解答の 3 行目 c2 a2 2(a2 + b2 + c2 )− b2 c2 a2 正: + 2 + 2(a2 + b2 + c2 )− b 誤: + 82 2.2b 3次斉次不等式 ● p.1234, 下から 5 行目. 例題 5.2.1(2) の解答の 4 行目 r a+c b+d a+c b+d 誤: = + =2 · =2 b+d a+d b+d a+d r a+c b+d a+c b+d 正: = + =2 · =2 b+d a+c b+d a+c ● p.272, 定理 5.2.28 の証明の 8 行目. mi + mn+1−i 2mi mn+1−i 誤: = mi mn+1−i (1 + mi )(1 + mn+1−i ) mi + mn+1−i + 2mi mn+1−i 正: = mi mn+1−i (1 + mi )(1 + mn+1−i ) ● p.280, 左の列の 12 行目. 目次 参照するページ番号を以下のように修正して下さい. LCF 定理 179 → 180
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