2014年 経済的事由による 手遅れ死亡事例調査概要報告 2015年4月22日(水) 全日本民主医療機関連合会 問合せ ℡ 03-5842-6451 代表 国民運動部 担当 中岡・山本 調査概要 • 調査期間 :2014年1月1日∼12月31日 • 調査対象 : 全日本民医連加盟事業所の患者、利用者のうち ①国保税(料)、その他保険料滞納などにより、 無保険もしくは資格証明書、短期保険証発行 により病状が悪化し死亡に至ったと考えられる 事例 ②正規保険証を保持しながらも、経済的事由に より受診が遅れ死亡に至ったと考えられる事例 • 調査方法 :各事業所担当者から調査票提出 都道府県別事例数 16 14 12 10 24都道府県連 8 56事例 6 4 2 0 福 北 神 秋 群 埼 山 長 千 東 富 石 愛 三 大 奈 鳥 岡 広 徳 愛 岡・ 長 宮 沖 海 奈 山 川 知 重 阪 良 取 山 島 島 媛 佐 崎 崎 縄 田 馬 玉 梨 野 葉 京 道 川 賀 有効件数 2 1 2 1 5 3 1 3 2 1 1 2 1 2 2 1 1 2 1 2 15 1 1 3 事例数の経年的推移 80 71 67 70 58 60 42 31 29 30 39 29 27 25 24 19 20 10 4 0 33 32 3131 24 5 正規の健康保険証を 所持、または生活保 護利用 42 37 40 0 56 47 50 10 56 23 短期保険証、資格証 明書など健康保険証 の制約あり 合計 性別・年齢分布 男性80%、70歳未満が76%、65歳未満の稼働年齢が55%を占めた 性別 1 1 2% 2% 7 12% 11 20% 年齢分布 6 11% 30代 40代 9 16% 50代 60代 70代 45 80% 男性 女性 32 57% 80代 世帯構成と住居 独居が30件で50%を超え、社会的孤立を生みやすい 借家・アパートが6割近くを占め、定まった家がない、路上・屋外生活者も18% 世帯構成 0 20 住居 40 独居 3 5% 夫婦のみ ひとり親と18歳未満 7 13% ひとり親と18歳以上 夫婦と子18歳未満 夫婦と子18歳以上 二・三世帯同居 その他 4 7% 4 7% 5 9% 持ち家 借家・アパート 社宅/会社の寮 33 59% 定まった家がな い その他(路上・屋 外生活等) 不明 保険種別の特徴 無保険・国保資格証が43%、短期証を含むと59% 無保険 0% 3 5% 3 5% 国保資格証 無保険 20 36% 国保短期証 後期高齢者資格証 後期高齢者短期証 17 31% 国保証 後期高齢者医療 0% 0% 国保短期証 8 16% 生活保護 国保資格証 5 7% その他(協会けんぽ等) 雇用形態 無職が46%、収入が不安定な自営業や非正規雇用をあわせると68% 稼働年齢層の65歳未満では無職が65%、非正規雇用をあわせると88% 雇用形態 65才未満の雇用形態 1 2% 無職 3 5% 2 6% 無職 自営業 自営業 12 21% 26 46% 非正規雇用 正規雇用 2 4% 1 0 1 3% 0% 3% 1 2% 非正規雇用・年金 受給者 その他 正規雇用 20 65% 年金受給者 11 20% 非正規雇用 7 23% 0 0% 年金受給者 非正規雇用・ 年金受給者 その他 保険種別と雇用形態 14 無保険では65%が無職 13 12 10 無職 8 自営業 6 4 2 0 5 4 5 5 非正規雇用 4 3 3 22 正規雇用 2 2 1 1 1 2 1 年金受給者 その他 無保険・資格証・短期証(33事例) の年齢と雇用形態 年齢 4 12% 4 12% 無保険・資格証・短期証の 年齢と雇用 40代 7 21% 50代 無職 非正規雇用 その他 11 70代 18 55% 年金受給者 60代 雇用形態 5 16% 0 0% 2 6% 無職 非正規雇用 5 16% 4 自営業 3 2 正規雇用 20 62% 4 1 年金受給者 1 2 2 2 1 その他 0 0% 40代 50代 60代 70代 無保険・資格証・短期証となった経緯 (33事例) 79%が高すぎる保険料のために無保険に 5 15% 2 6% 9 27% 保険料が高すぎるなどで、 退職、失業後に国保等手続 きをしなかった 国保料滞納で資格証明書 となり、留め置き等のため 事実上未交付 転居手続き等ができず国保 未交付 17 52% 不明 無保険で手遅れとなった事例 社会保険離脱後、国保 未加入 経済的困難から保険料滞 納、国保証が窓口留め置き • 40代男性 • 会社退職で社会保険離脱 後、経済的余裕がなく国保 未加入。母親の年金15万 4千円で生活。具合が悪く なり、そろそろ受診をしなけ ればと思っていた矢先に、 急に悪化。救急搬送で入 院。重症の心不全。8日後 に大動脈解離の疑いで死 亡。 • 60代女性 • 夫死別後、経済的に困窮し 保険証は窓口留め置き。数 か月前から食欲なく体重減 少。給料入れば短期証発行 予定との話だったが保険証 交付されず未受診。3ヶ月後 意識のない状態で来院。市 の収納対策室は「滞納額が 大きく分納の約束も守っても らえなかった」と。入院翌日、 直腸がん末期で死亡。 無料低額診療や生活保護利用の事例(36事例) 19事例が無料低額診療事業を利用、15事例は生活保護を取得 無保険®保険証作成®無低診利用 1 3% 4 11% 2 6% 3 8% 無保険®無低診利用 2 5% 1 3% 資格証®保険証作成®無低診利用 短期証®無低診利用 保険証あり®無低診利用 2 6% 5 14% 無保険®生活保護 資格証®生活保護 8 22% 短期証®生活保護 8 22% 保険証あり®生活保護 その他 最終的な医療費の支払い(全56事例) 受診に間に合わず 5 9% 家族等が支払い 4 7% 国保44条減免利用 0 0% 生活保護 17 31% 国保44条減免利用 生活保護 保険証発行 無料低額診療 無料低額診療 13 23% 家族等が支払い 保険証発行 17 30% 相談を受けたが受診に間 に合わず 経済的理由で受診の遅れた事例 経済的困難で通院を自己中 断した身寄りのない患者 • 60代女性。非正規雇用で独居。 国保短期証 • 10年前に甲状腺腫瘍で通院。経 済的問題から、自己中断してい た。2014年9月より体動困難にな り救急入院となった。夫とは離 婚、息子はすでに他界して独居。 入院時は次兄が付き添う。パート で仕出しなどの仕事をしていた が、非正規で十分な所得ではな かった。両側甲状腺がんで、入 院後8日で亡くなった。 借金返済で無保険。やっと 国保加入するも手遅れに • 60代男性。妻子あり。 • 50代で脱サラして配送業を起こす も、車両購入、経費など出費の方 が多く、借金返済に追われた。60 才以降、本人と妻の年金収入、息 子の収入で生活。息子も手取り月 15万程度で、生活するのがやっと だった。借金返済のため保険料が 払えず、7年間無保険状態。借金 返済、国保料完納できてやっと保 険証を手にするも、十二指腸がん で治療開始後2ヶ月後で死亡。 生保行政のあり方による死亡事例 生活保護廃止の翌月に発症、 就労困難で収入が減り受診が 遅れた肺がん患者 生活保護受給を断られ、受診 が遅れたがん患者 • 40代男性。独居 • 60代男性。年金とシルバー人 材センターの仕事 • 非正規雇用で月13∼20日働 く。生保受給しながら、ハロー ワークで警備の仕事を見つけた が、工事現場などが多く雨天は キャンセルで不安定収入。しか し収入が生保基準を上回り生 保廃止。さらに病気発症で就労 回数減り、医療費の心配から受 診控え。入院後半月足らずで死 亡。 • 母親と2人暮らし。くも膜下血腫 で入院し、退院後生活保護の相 談に行ったが、仕事と車所有を 理由に断られる。年金だけでは 生活できず、受診するお金もなく 無理してしごとを継続。いよいよ 入院で、民生委員、地域包括介 入し生保受給するも、1ヶ月後死 亡。 死亡原因 自覚症状出現、健診で の異常指摘等から受診 までの期間 がんが7割を占める 悪性新生物 12 21% 13 23% 3ヶ月以内 6ヶ月以内 4 7% 2 4% 2 4% 1ヶ月以内 1年以内 6 11% 10 18% 7 12% 1年6ヶ月以内 2年以内 2年以上 不明 2 4% 3 5% 5 9% 6 11% 心疾患 肺・呼吸器 疾患 悪性 新生 物 40 71% 肝疾患 その他感染・ 低栄養・衰 弱・自殺等 正規の保険証があっても、経済的な 理由で受診が遅れた事例 肺がんの診断受けるも借金 等、経済的理由で中断 2年前より乳がん自覚するも、 医療費支払い不安で未受診 • 60代男性。独居。健康保険加入。 • 60代女性。国保。娘、孫4人と同居 • 月20日程度の非正規雇用。2012 年10月に肺がんの診断受けるも カード会社、銀行などに300∼400 万借金あり、仕事しながら生活を継 続。2013年9月頃より、1∼2回/ 月呼吸困難あるも我慢。2014年4 月、苦痛で自制困難となり急性期病 院入院後、緩和ケア目的で転院。 経済的問題を誰にも相談できず病 院も受診できなかったと。8月、永 眠。 • 2年前より乳がんを自覚。しかし医 療費支払い不安で未受診。収入は 月に本人の年金約3万円、娘の パート6万円、児童手当4万円。娘 婿は仕事で実家におり、仕送りは2 0万程度あるが、仕事が不安定で固 定額でない。貯金なし、車のローン 月5万円あり。1ヶ月前より出血する ようになり、弟夫妻、娘に連れられ 受診。入院1ヶ月で亡くなられた。 調査を終えて • 「国民皆保険」というが事実上、無保険者が存在 *保険料が払えないために窓口留め置き *社会保険から国民健康保険へ移行できず ®背景に非正規雇用、リストラの増大、不十分な年金 もともと自営業や退職者など経済的基盤の弱い層が多く加入 する国民健康保険の根本的な制度上の問題 • 保険証があっても手遅れになる *高い窓口負担 *特に高額ながん治療の負担 • 病気や生活困難に陥った時、だれが手をさしのべるのか *独居、親類縁者や地域と疎遠 *保険料未納では行政も相談窓口にならない *生活保護は水際作戦、自己責任論、本人も権利と思えない 調査をふまえての提言 • • • • • • 高すぎる国保料引き下げ 窓口負担の軽減 無料低額診療の充実 生活保護の充実 自治体職員の体制確保と相談窓口 今国会提出の医療保険制度 改革法案は廃案に 国保の都道府県単位化、入院時食事代の 負担増、大病院受診時の定額負担は一層の 経済的困難による手遅れを招きかねない。
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