実践事例

実践事例1
「ほるとでてくる
不・思・議!」(小学校4年)
題材について
本題材は、5年生の彫り進み版画へ発展する活動である。ここでは2版目を重ねて刷ると、「彫ったところに1
版目の下地の色が出てくる」ことを予想しながら、彫刻刀による彫りの違いを楽しむことに重点を置いて取り組ま
せたい。そして、画面構成を下絵の段階で綿密に計画することよりも、彫った線や形から想像をふくらませて、
「次
はどんな彫り方で絵をつなげていこうか」と考えながら版をつくる活動を通して、つくる喜びを味わわせたい。
指導計画
次
第1次
第2次
第3次
(8時間扱い)
学年
学習活動
内容
発想
1時間
製作
6時間
鑑賞
1時間
提案1
作品の思いを伝え合う指導の工夫
○版木にインクをつけて刷り、 ・小グループでどんな色を、版木のどの部分に使うか
下紙をつくる。
相談し合う。
○様々な線や彫り方で彫って版 ・製作途中に小グループで作品を見せ合い、よいとこ
をつくり、下紙に重ねて刷る。
ろやさらによくするためのアドバイスをし合う。
○作品の線や形、色の重なりに ・鑑賞カード(きらきらカード)を手渡し、思いを言
よる美しさを見付け合う。
葉で伝え合う。
2枚目を刷る前に、≪アドバイス会≫ を開こう。
い
る
の
が
い
い
ね
!
背景をもっと
彫った方がい
いと思うよ。
提案2
マ
ワ
リ
の
花
に
出
て
黄
色
が
ち
ょ
う
ど
ヒ
・版画を1枚刷った後、小グループで作
品を見せ合い、製作途中の悩みを相談
し合ったり、
「さらによくするためにど
うしたらよいか」をアドバイスカード
に書いて伝え合ったりした。
・アドバイスカードを基にして、もう一
度彫り直したり、紙の向きを変えて刷
るなどの工夫をしたりした。
「きらきらカード」で伝え合おう。
き
れ
い
だ
ね
。
出
て
く
る
色
が
彫
っ
た
線
か
ら
アドバイスし
てもらったよ
うにもう少し
彫ってみよう。
きらきらカードを
もらえて嬉しいな。
大切にしよう。
・アドバイス会で助言をした友達の作品が、どのように
よくなったかに視点を置いて鑑賞し、「きらきらカー
ド」に書いて直接手渡した。
・「鑑賞で使うとよい言葉」のプリントを手元に置きな
がら、友達の作品を鑑賞した。
お花をもっと彫ったか
ら、きれいになったね。
成果と課題(○成果 ●課題)
○版画を1枚刷った後、お互いの作品をもっとよくするためにと行った「アドバイス会」では、友達の作品も自分
の作品のように愛着をもって、アドバイスをし合っていた。また、鑑賞会では、アドバイスをした作品がどのよ
うによくなったか、という視点についても意識しながら褒め合えていた。
○日頃から、鑑賞会の時に「鑑賞で使うとよい言葉」のプリントを手元に置きながら鑑賞することにより、語彙が
広がり、自然と鑑賞の視点も絞られ、伝え合う内容の質が高まってきた。
●「アドバイス会」を開いた後に再び刷る活動を入れたので、活動時間が少なくなってしまった。活動時間の確保
ができるように展開を工夫したい。
実践事例2
「てで さわってかくの きもちいい!!」~どろどろねんどで 大はっけん~
(小学校1年)
題材について
本題材は、
「液体粘土の感触を味わいながら思いついたものを画用紙にかく」活動と、「クレヨンやペンなどで形や
色をかき加え、イメージをよりはっきりと表す」活動である。初めて触れる「液体粘土」との出会いを大切に、その
心地よさを十分に味わう時間を確保する。また、絵の具を混ぜることで変化する色の様子や凸凹とした線の面白さな
ども体感させ、表現の幅を広げていく活動につなげていく。そして、鑑賞の時間を通して、児童どうしや児童と教師
間での言語活動の充実を図りたい。
指導計画
次
内容
第1次
発想
1時間
第2次
製作
2時間
第3次
鑑賞
1時間
提案1
(4時間扱い)
学年
学習活動
言語活動の充実を図り、イメージを広げ、進んで
造形活動を行う指導の工夫
○自分の手で液体粘土の感触を楽しみ、 ・液体粘土の感触を主に触覚で味わうことを大切
素材の特性を見付け、描きたいこと
にする。液体粘土に手を入れて感触を楽しみ、
のイメージをもつ。
感じたことを話し合わせる。
○絵の具と混ぜてできた色や触り心地 ・指や手のひらで思いのままに描いたり塗ったり
からイメージを広げて絵に表し、発
することから想像を広げて絵に表現させる。
想を広げながら、ペンやクレヨン等 ・意図的に紹介し合う場を設けて話し合わせた
で付け足す。
り、友達との自然な会話を見守ったりする。
○友達との表現の違いやそのよさを味 ・友だちにメッセージカードを記入し、互いにア
わう。
ドバイスや感想を伝え合い、認め合えるように
する。
液体粘土の感触を楽しみ、作品づくりへのイメージを広げよう。
・初めて出会う素材と十分にかかわる時間を設け、体全体を使って、
液体粘土の触り心地や心地よさを感じとれるようにした。
・
「色」「感触」「温度」などの感じたことを自由に話し合い、素材の
特性を全体で確認した。また、今後どのように作品に表現していき
たいのか見通しをもたせた。
・冷たい。
・ソフトクリーム
みたい。
・どろどろ。
提案2
様々な表現方法を見付け、表現の違いやよさなどの思いを伝え合おう。
う
い て
! 次 な も た
も 。 ら く
が
え さ
ん
て ん
ば
嬉 ほ
し め
ろ
成果と課題(○成果 ●課題)
・太い線や細い線、色の濃淡、か
すれ具合などを表現した。
・指や手、腕の使い方をいろいろ
試すようにアドバイスをした。
・「色」「形」「イメージ」に分け
て記入する鑑賞カードの他に、
作品のよさや感じたことなど
をメッセージカードに記入し
て、班の中で交換し合った。
ら
ぴ
っ
た
り
!
あ
!
手
首
を
使
っ
た
う
し
よ
う
…
。
く
じ
ゃ
く
の
羽
は
ど
○素材と直接触れ合って活動する中で、自然と五感を使い出した。全員が楽しめる題材だったので、つくり出す喜び
を味わい、イメージを広げることができた。
○思いを伝え合う活動を多く取り入れたことで、自分の作品に自信をもつ児童が増えた。また、校内美術展を利用し、
展示することで、作品について他学年の児童や保護者の方々からもたくさんメッセージカードを記入していただく
ことができ、次時への意欲につなげることができた。
●鑑賞活動では、「アドバイス」が難しく、褒めたり、自分との相違点や共通点を記入したりする言葉になかなか広
がり見られない。今後、アドバイスの方法については、鑑賞言葉の掲示をするなど指導を工夫していきたい。
実践事例3
題材について
「夢の叶う缶づめ」をつくろう(中学校1年)
新製品開発
本題材は、紙粘土や様々な素材で制作する立体作品と、パッケージデザインで描く平面作品の両面で表
現する題材である。生徒は『開けたら夢が叶う』というテーマのもと、開けた瞬間のわくわくする気持ち
を思い浮かべながら、夢の世界のイメージを広げる。紙粘土、針金、発泡スチロール、色紙等幅広く素材
を扱い、土台となる缶に思いを詰めて制作していく。また缶づめのパッケージデザインでは、レタリング
やロゴタイプを取り入れながら、作品のテーマをより分かりやすく伝える方法を考えさせる。
指導計画
次
第1次
(立体)
第2次
(平面)
第3次
提案1
(9時間扱い)
学年
イメージを広げ、つくり出す喜びを味わう指導の工夫
内容
学習活動
発想/制作
○作品のテーマを考え、企画 ・どんな夢が叶う缶づめがあったら欲しいか、
1時間/4時間
書を書く。アイデアをもと
対象や原材料・使用方法等、細かい企画を立
に制作する。
てて、アイデアを発表し合う。
発想/制作
○立体の作品をより分かりや ・お菓子のパッケージのデザインを参考とし
1時間/2時間
すく伝えるような缶のパッ
て、ロゴタイプやキャッチコピーを工夫し、
ケージを考え制作する。
印象的なパッケージを考える。
鑑賞
○製品発表(鑑賞会)を行う。 ・鑑賞会を通してお互いの作品のよさを伝え合
1時間
い、つくり出す喜びを味わう。
「夢缶企画書」を考え、様々な材料で表現しよう。
缶を開けたら
宇宙が広がる缶
がいいな♪
・自分のやってみたいことや、叶えたい
夢をもとに『夢缶』のテーマをしぼる。
・「企画書」に製品名や原材料など、缶
の中身について細かく考えさせる。
・缶を開けた瞬間の飛び出す様子をイメ
ージしてアイディアスケッチをする。
提案2
夢缶をよりよく見せるパッケージをデザインしよう。
・お菓子のパッケージにはど
のような工夫があるかを鑑
賞する。
・ロゴタイプ・イラスト・キ
ャッチコピーや色づかいの
工夫を感じ取らせる。
成果と課題(○成果 ●課題)
製品名の他に、バーコードや
使用方法、キャンペーンなど
工夫あふれる作品ができた。
完成作品
○「夢の叶う缶づめ」をテーマに、自由な発想で自分のテーマを考えて表現することができた。
○企画書やアイデアスケッチ・材料計画をよく練らせることで、各自でスムーズに制作に取り組めた。
○立体作品が苦手な生徒も、パッケージの制作で作品をよく見せることができ、自分の作品に愛着をもつ
ことができた。
●頭の中でアイデアを構築できていても、いざ制作になるとうまくいかず手が止まってしまうことがあっ
たので、適切な材料の選択や細かな声かけ等、教師側の支援も必要である。