災害時の要援護者支援対策に関する要望書

平成 27 年 4 月
調布市長
長友 貴樹 様
飛田給福祉のまちあるき実行委員会
実行委員長 石川
浩
災害時の要援護者支援対策に関する要望書
平素より高齢者や障害者福祉にご尽力賜りありがとうございます。また当実行委員会の活動にご
指導・ご協力頂き重ねて御礼申し上げます。
当実行委員会では設立時から災害時の要援護者対策をテーマの一つに掲げ、2007 年に福祉の災
害対策意識アンケートを実施した際に福祉の災害対策マニュアル作成を提言してきました。その後
も全国の事例を調査し、調布市が進めている災害時要援護者支援事業について、市の担当部局の方、
協定を結ばれている自治会の方々にお話を伺い、昨年夏には実際に東日本大震災で要援護者の支援
にあたった方のお話を伺い、問題点とその対策を探ってきました。
当該者周辺の地域住民の方々の支援が必要であることは変わりませんが、調布市災害時要援護者
支援事業では避難支援までは検討されていません。実際の避難にあたっては要援護者の症状に応じ
た設備と医療・介護の専門家の協力が必要であり、そのために予め個別の避難計画を作成すること
が必要であると考えます。また情報のとりまとめや展開には公的機関がとりまとめる必要があると
いう認識を私達は深めてきました。
東日本大震災で要援護者に起こったように、いまこの地域で災害が起きた場合、このままでは多
くの要援護者が孤立し、また不適切な環境の中、症状を悪化させることを危惧しています。
「地域で
取り残される要援護者の方を出さずに適切な場所に避難させる」体制を構築するために要望をとり
まとめましたのでご検討のほど宜しくお願い致します。
1.要援護者台帳について
1)関係諸機関ごとの複数の名簿を整理・統合しておらず、また転居や死亡などの情報も随時更新
することが必要です。要援護者の安否確認以前に、対象人数の把握、災害時に迅速に必要なケア
ができる介護・医療施設と要援護者との事前マッチング、災害時の照合のために正確さが求めら
れています。
〇部局を超えた相互の情報の随時更新と名簿統一を早期に図って欲しい。
2)災害時の要援護者支援事業制度がよく分からなかったり、当事者に不安感があったり、家族が
対応して当事者に伝わらなかったりして、登録数が少なくなることが被災地だけでなく全国で起
こっています。調布市では要援護者登録は同意方式で行っているとの説明がありました。
〇少しでも多くの方を支援できるように「登録の必要がないという」意思表示の逆手あげ方式の
導入を図ると共に、不同意者に対して医療・介護などの専門家との連携を図りつつ、情報管理
や活用方法の説明をしっかり行い、登録の必要性を説明して欲しい。
2.個別避難計画の策定
1)調布市で避難所として指定されている小中学校や福祉避難所には要援護者の症状に応じた必要
機材や介護士などの人員配置、環境配慮が十分に計画されていません。東日本大震災の事例では
避難することで症状の悪化や生命の危機につながったケースも指摘されています。また自宅から
避難所まで遠かったり、ハケなどの高低差のある避難路が障害となったり、物理的な要因や家族
では運びきれないなどの理由により指定避難場所に避難できないケースも想定されます。
〇災害時にどこに避難すれば一番適切なのか個別避難計画の早期策定を要望します。
2)能登半島地震や中越地震では社会福祉協議会が調整役を担いました。介護施設や医療施設、特
別支援学校などとの調整も必要となり、ノウハウを持ち専門の人員配置をしている地域包括支援
センターが担っているところもあります。
〇調布市に要援護者との相談機能や介護施設や医療施設、特別支援学校などとの調整機能を果
たす部署を明確にして欲しい。
3.福祉避難所の増設と機能充実
1)一次避難所として指定されている学校や福祉避難所として指定されている地域福祉センターに
も必要な機材も介護士や保健士などの人員配置も計画されていません。また協定を結んだ施設や
医療機関などから情報を得るための通信施設も未整備です。一方で特別支援学級が整備された学
校も増えてきており、施設環境は徐々に整ってきています。
〇事前に避難計画を作成できずに一次避難所や福祉避難所に避難した要援護者を適切な施設に
紹介する機能を果たすために、特別支援学級のある学校や地域福祉センターに最低限必要な機
材や人員配置を検討して欲しい。
〇また各福祉避難施設や避難所に医療機関や介護施設からアドバイスが受けられるような通信
機材などの機材を設置して欲しい。
2)中越沖地震を教訓に中越地震では介護施設ごとに受け入れることができる人員を調査し、社会
福祉協議会が要援護者を各施設に紹介しました。調布市では協定を結んでいる施設はまだ限定さ
れています。
〇地域ごとにある程度設備の整った介護施設や病院、特別支援学校などの受入れ態勢と資機材、
受け入れ可能人数を調査し、希望者全員を収容しきれる施設との協定締結をお願いするととも
に提携・協力施設も増やして欲しい。
4.安否確認について
1)災害時には行政や介助者による安否確認は交通・通信手段の限界から困難が予想されており、
安否確認は隣近所のネットワークで行うことが最も効果を発揮すると考えます。
〇安否確認を行う母体については、公的機関が関与して、情報管理を徹底し、組織的に行う体
制を作って欲しい。
2)一方で介護施設や、特別支援学校などでも利用者の安否確認が震災時に並行して行われていま
す。また民生委員による高齢者の安否確認も行うことになっていますが調布市では報告規定や
集約体制もありません。複数ルートで確認することは取り残される方をなくすために必要と考
えますが、調布市では情報集約ルールがまだ決まっていません。
〇災害時に集まってくる情報を管理・集約し、相互に情報交換ができる体制を早期に構築して
もらいたい。
〇集まってくる膨大な量の情報を市の一つのセクションで判断・処理することは不可能と考え
ます。地域ごとの核となる公的なセンターに機能を分散して、要援護者台帳との照合や、関係
者が確認・照会できる体制とシステム構築をして頂きたい。
3)東日本大震災では家族がいたり、手を上げなかったため名簿から漏れた人や一旦避難しても
環境上の理由から戻ったりした自宅待機の方が何の支援もなく孤立した事例が多数報告されて
います。
〇物資・情報が集中する避難所からの継続的な安否確認と食料を含む生活必需品の配給などの
支援体制をつくることを要望します。
〇要援護者の状況を確認するための標識掲示など、当事者を安全に認識してもらえるような発
信方法を工夫して欲しい。
5.避難所運営について
1)避難所にどのくらいの要援護者が来るか分からないため、避難所運営マニュアルには要援護者
専門の班設置は検討されていません。特別支援学級が設置されている学校には必然的にそこに
通う生徒が避難してくる可能性も高く、来ることを前提に考えていた方が対処しやすいと考え
ます。
また実際には障害に応じた対応が必要になります。視覚障害者は壁沿いでないと生活が難しく、
誰か付く必要があります。聴覚障害者は見かけではわかりづらく手話が必要です。重度の要援
護者の場合、緊急の時に居室から連絡を取れるようにするなどより配慮が必要となります。
〇個々の障害に合わせた対応が必要であり、要援護者のタイプ別に誰が見ても分かるような対
応マニュアルを運営マニュアルに添付して欲しい。
2)災害時に避難所に設立される避難所運営委員会は避難所に集まった方で組織運営されることに
なります。そのため個人情報の取り扱いの制約も運営委員全てに及ばない可能性があります。
〇避難所運営委員会に受皿となる福祉部会を設けるとともに、行政職員が関与して情報管理を行
って欲しい。
3)避難所にもたらされる被災者情報は要援護者数に比べて非常に多くなることが見込まれ、要援
護者情報の埋没が懸念されます。また介護施設や医療施設による通所者への安否確認や核施設
への個別避難も想定されます。
〇要援護者の取りこぼしが起きないように、避難所に集約される情報については市担当部局へ
提供するとともに、介護施設や医療施設に集約される情報と相互に情報交換できる体制を構築
して欲しい。
6.避難におけるシミュレーションの実施
1)東日本大震災でも高齢者や障害を持った方への配慮の問題、避難場所の問題が多々ありまし
た。
〇避難経路も含めて避難するためのシミュレーションと避難所内の導線計画や配置などのチ
ェックのためのシミュレーションを早期に実施し、マニュアルに取り込んで欲しい。
7.支援体制の構築
1)全国各地の自治体で災害時に効果的に機能した事例が多くあります。
〇市独自のシステムに拘ることなく、有効なシステムがあれば、積極的に参考にして取り込ん
で欲しい。
以上