第 55 回 国際理解・国際協力のための全国中学生の作文コンテスト東京

第 55 回 国際理解・国際協力のための全国中学生の作文コンテスト東京都大会
特 賞
「
「核兵器のない世界」にするために国連の中で日本がすべきこと」
開成中学校 3 年
佐川 弘晃
「われわれは潜在的な敵を脅かして抑圧するために、毎日核兵器を使い、われわれが防
衛を提供している同盟国に保証を与えている。」米国のシュレジンジャー元国防長官が『ウ
ォールストリートジャーナル』のインタビュー記事「なぜわれわれは、核のない世界を望
まないのか」で述べた見解である。これは今世界に、「核廃絶」という考えよりも皮肉なこ
とに強く定着しているとされている「核抑止論」に基づいている。「核廃絶抑止論」とは、
核兵器の保有によって対立している国家間で核兵器の使用が躊躇される状況を作り出し、
結果として重大な核戦争を回避しているという考えである。
さて、核廃絶は本当に正しいことなのか。私は、核抑止論を踏まえたとしても正しいと
考える。
私は中学二年生から模擬国連という活動に参加してきた。模擬国連とは、文字通り「国
連」を「模擬」する活動で、様々な国家の大使になりきって、お互いの国家の利害関係を
考えつつ、国際的な問題への決議案をつくるものである。そのテーマの中には「核軍縮」
というも当然ある。そしてそのテーマについて議論した時、私はグルジア(今のジョージ
ア)の大使となった。その国には核抑止論が根付いていた。そしてグルジアの国益につい
て考えていくにつれて、核抑止論への個人的な反対意見を持つようになった。
そもそも核抑止論は、核を使用することを前提とした考えである。その考えは国家同士
の平和はもたらすかもしれないが、国民同士の真の平和をもたらすと言えるだろうか?唯
一の被爆国である日本の国民としてこの考えに賛同するわけにはいかない。この考えは詭
弁である。だから日本は、まず核廃絶の考えを更に世界に発信しなければならない。
さて、核廃絶のために何をすればいいか。それは単純である。世界の核を完全に凍結さ
せ教育によりその考えを後世まで残せばいい。そこで日本は唯一の被爆国、原子力発電問
題を持っている国家として国連で何をすべきなのか。私は以下の二つを集中的にやるべき
であると考えた。
一つ目は、核廃絶の重要性を強調し、その教育を世界的に施すことを奨励することであ
る。核抑止論へ反対し、そして核廃絶の考えを根強く世界の人々に持たせることは日本人
の義務だと考える。全世界の人に核廃絶の考えが定着することは核兵器の消滅を意味する。
これは最も重要なことである。また、核の問題は今の世代だけの問題ではなく、永遠に続
く問題であると考えていいかもしれない。だから後の世代まで核兵器の残虐さ、恐ろしさ
を伝えなければならない。
二つ目はカットオフ条約を強化した条約を発効することである。カットオフ条約とは核
兵器用の核分裂性物質(高濃縮ウラン等)の生産を禁止し、核兵器の数量増加を止めるこ
とを目的とする条約である。それに生産済の備蓄核物質の廃棄を加えた平等性を高めた条
約が必要である。核廃絶の考えが世界的に定着することは、困難かつ時間がかかる。だか
ら世界的な条約を早期に出すことはとても重要である。そしてこの条約の発効は核兵器廃
絶の実現に向けた最優先の事項でありこの条約を核兵器の完全廃絶を前提として早期に発
効させないと核兵器の完全廃絶は難しくなると考える。
以上の二点は全世界で唯一被爆し、原子力発電所の事故を起こし、核の恐ろしさを最も
よく知っている日本だからこそ説得力を持って行えると私は考える。
「核が存在する限り平和は訪れない。
」これは私達日本人が最もよくわかっていることだ。
その平和が訪れるその時を希求する。