シンポジウム 「21 世紀の臨床検査の自動化はどうあるべきか」 3. 検査方法から 琉球大学医学部臨床検査医学分野 山根 誠久 21 世紀の臨床検査を、21 世紀になって未だ 3 年しか経過していない現時点で想像することは極めて困 難、不可能に近いことです。5 年後の臨床検査すら、確固たるイメージがもてない私です。このシンポジ ウムでは、時代の流れとは不連続に、私の夢、想像を語ってみたいと思います。いくつかのキー・ワー ドが浮かびます。 Size Technology・・・人間が造り出した多くの物は、その当初は玩具のような代物ですが、技術が進歩 するにつれてそれが次第に大型化されていきます。しかしある一定の時代が経過すると、逆にその機能 を保持したまま (時には機能をさらに拡充して) ミニアチュア化されます。臨床検査においても、このよ うな大型化の後のミニアチュア化現象が急速に進むであろうと想像しています。広い検査室に縦横無尽 にはり巡らされたベルト・コンベアーのイメージが旧石器時代の遺物になると・・・細菌検査の自動機 器は有人宇宙飛行計画の一部として開発が着手され、それが大型化して機能を拡充してきました。再び 宇宙 (火星) を見る時、さらに生命探索という機能を拡充してミニアチュア化されています。そこに必要 な技術は、限られた空間に、如何にコンパクトに機能を濃縮できるかという“Size Technology”のよう に思われます。 Logical Single-Multi Assay・・・限られた空間で検査機能を濃縮するためには、assay 系のミニアチュ ア化も勿論必要ですが、むしろその空間を多目的に、多様に利用できる検査環境が求められるでしょう。 ここで考えられるアプローチは、“Single-Multi Assay”にコンピュータの自動判断能力を利用した “Logical Single-Multi Assay”だと思います。例えば現在、細菌の菌種同定では 20~30 の異なる酵素 反応を同時に行い、その(+)/(-)の判定から確率論的に数値同定を行うものですが、これを昔ながらの “枝分かれ同定―まずグルコースが陽性なら、次には・・・”に、しかも累積していく反応消費時間の 総計は数値同定と同じか、それより早い検査をイメージしています。ミニアチュア化による微量化と不 必要な検査の削減は、地球的規模での資源消費の節約をも意味しています。 Signal Detection ・・・究極的に、1 分子の変化に起因するシグナルを如何に検出するかというシグナ ル検出の技術革新が求められます。最も慣れ親しんだ反応系、凝集反応による抗原・抗体反応の検出系 では、反応系に添加する既知プローブの量 (濃度) を少なくすればする程、検出感度は上がります。しか し、ヒトの目がそれを検知できないだけです。どのような技術革新がこれを解決できるのかは定かであ りませんが (むろん、特許に係ることですから、誰も完成するまで口を閉ざすでしょう)、神経疾患の診 断や急性発症の超迅速診断などで、検出感度の飛躍的な向上から新たに見えてくる生命現象が期待され ます。
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