News Release 平 成 2 7 年 6月 3日 財務省北陸財務局 平成26年度の地方公共団体に対する 財務状況等の把握結果について 北陸財務局では、公的資金である財政融資資金の貸し手としての立場から、借り手である 地方公共団体や地方公営企業の債務償還能力や資金繰り状況及び資金の使用状況や事 業の成果等の実態を確認しています。また、社会構造の変化が財政運営や経営にどのよう な影響があるのか(内在するリスク)、どのような財政運営や経営が望まれるのかといった点に も着目して分析を行い、健全な財政運営や経営により、将来にわたり安定的・継続的な住民 サービスの提供が行われるよう、具体的なアドバイスなどを行っています。 平成26年度は、北陸3県の51市町村のうち、10市町の財務状況及び地方公営企業21 事業の経営状況について調査を行いましたので、その概要をお知らせします。 主な事例 ○ A団体の財務内容等 人口減少や少子高齢化が進む中、企業誘致助成金や定住促進奨励金による地域 活性化に取り組んでいる。 内在するリスク ①税収が減少している一方、下水道事業や一部事務組合への補 助が高額、②後期高齢者医療や介護保険の負担が増加、③助成額に比べ税収増 加額が少ないなど。 ⇒ 「施策の費用対効果の検証を踏まえた財政運営」をアドバイス。 ○ B団体が運営する地方公営企業(下水道事業)の経営内容等 事業開始後40年が経過しているものの面的整備の途上であり、終末処理場の耐震 化対策が急務となっている。 経営上の問題点 ①下水道への未接続先が多く処理場の稼働率が低い、②投資 額が事業計画に見合っておらず普及率が低い、③処理場耐震化費用が将来の収支 計画に計上されていないなど。 ⇒ 将来を見据えた「収支計画の策定」と「接続率の向上策」などを要請。 ※ 他の主な事例は、資料2「財務状況把握における事例」及び資料4「公営企業の経 営状況における事例」を参照 【お問い合わせ先】 北陸財務局 理財部融資課 中山、辻 ℡ 076-292-7857 財務局における地方公共団体の財務状況把握 財政融資資金の貸し手の立場から・・・ 財務局は、借り手である地方公共団体の債務償還能力や資金繰り状況を 把握するため、決算関係書類を基にヒアリング・分析を行っています。 「財政融資」 とは・・・ 国債の一種である財投債の発行等により調達された財政融資資金を 活用し、政策的に必要な分野へ資金を供給するため、地方公共団体など に対して長期・固定・低利で行う融資のこと。 資料1 【財務状況把握の流れ】 決算統計 データ等 の入手 行政キャッシュ フロー計算書 の作成 分析方法・着眼点 各種指標等 の活用・分析、 ヒアリング 診断結果の 交付、アドバ イス等 石川県内 11市8町 ○ 地方公共団体の歳入・歳出決算を基に、キャッシュフロー分析による債務の償還確実性を確認。 ○ 月収の何ヶ月分の債務や積立金があるか、収入からどの程度の償還原資を生み出しているか、 1年間に生み出す償還原資(キャッシュフロー:CF)で債務を返済するのに何年かかるか 等 福井県内 9市8町 富山県内 10市4町1村 主なポイント! ➢ 人口動態や産業構造・・・人口の増減とその内訳(年少人口・生産年齢人口・老年人口)、主な産業は何か。 ➢ 財政力指数 ・・・地方公共団体の財政力を示し、指数が大きいほど地方交付税に頼らず財源に余裕があることを表す。 ➢ 収入面の特徴・・・自主財源はどの程度か、主な税収は何か(個人・法人住民税、固定資産税 等)、税収以外の財源は何か。 ➢ 支出面の特徴・・・主な支出科目は何か、一過性のものか恒常的なものか、その要因・背景は何か。 ➢ 当該団体の強みと弱み(SWOT分析)、外的要因と内的要因 etc 内在リスクの把握 ・ 人口減少による税収減、高齢化に伴う社会保障関係費(扶助費等)の増大 ・地域産業の動向による法人税の増減、特定業種・特定企業への依存によるリスク ・ 料金収入で費用を賄えない公営企業会計に対する財政負担 ・ 公共施設の再編・統廃合に係る解体撤去費、改修費、維持管理費の増大 ・ その他、収支計画に反映されていない下振れ要因 等 地方公共団体への結果通知 健全な財政運営に向けたアドバイス ・ 各種施策の効果の検証と反映 ・ 実効性ある財政計画の策定と実行 など 財務状況把握における主な事例 事例① ・ 人口減少が続き、高齢化が進んでいる。 ・ 企業誘致(助成金)や定住促進策(奨励金)に取り組む。 ☞ 人口動態による財政面への影響は? 施策の効果はどうか。 事例② 資料2 ・ ベッドタウンとして人口は増加傾向。 ・ 現状において 債務の水準、収支状況ともに問題ない。 ☞ 人口が増加していれば、財務上も問題ないか。将来的にも大丈夫か。 【内在リスク】 ➢ 人口減少に伴い地方税の減少が続く一方で、下水道事業や事務 組合への補助費等の負担が依然大きい。⇒ 経常収支(CF)圧縮 【内在リスク】 ➢ 税収は安定しているものの、子どもの増加による保育所運営費 負担金など扶助費が大幅に増えている。⇒ CF(償還原資)減少 ➢ さらに、高齢化の進展により、後期高齢者医療や介護保険への 繰出金が増加する見込み。 ➢ 人口増加に伴い必要となる公共施設整備等により、地方債残高 及び償還額は増加する見通し。 ➢ 企業誘致については、一定の実績はあるものの、多額の助成金 支払額に比べ税収に反映されにくい面あり。 ➢ 生産年齢人口は鈍化傾向。⇒ 人口増に比例した税収増は困難。 (①租税減免措置、②企業は売上が良ければ投資に回す傾向あり) ※ 企業の声「助成金があるから進出を決める訳ではない」 ◎ 今後も人口減少とともに厳しい収支状況が見込まれることから、 施策の費用対効果の検証を踏まえた財政運営が求められる。 事例③ ・ 第2次産業の割合が高く、納税上位企業の大半が製造業。 ・ 合併に伴い、旧町単位で類似した公共施設を多数保有。 ☞ 産業構造に伴うリスクは何か。公共施設の再編は進んでいるか。 ➢人口増加の大半が転入増で、若年世帯が多く、持ち家率が低い。 ⇒ 転出増加による税収減という将来的なリスクを内包。 ◎ 人口増加に伴う収支両面における影響を正確に把握・分析し、 収支計画に反映することが重要! 事例④ ・ 大規模事業が続いており、地方債発行額・残高が増加。 ・ ただし、財政健全化法に基づく健全化判断比率(実質公債 費比率、将来負担比率など)は基準に抵触していない。 ☞ キャッシュフロー・ベースでみた場合、債務償還能力に問題ないか。 【内在リスク】 ➢ 法人住民税の割合が高いことや特定企業の進出など、税収面で 景気変動や企業の動向による影響を受けやすい。〔外的要因〕 ➢ ①高福祉・高サービスの独自施策の実施による扶助費の増加、 ②旧町意識の名残りから統廃合が進まない公共施設の経年劣化 に伴う維持管理費や改修費の増大。〔内的要因〕 ◎ 公共施設等総合管理計画の早急な策定と着実な実施とともに、 施策の効果の事後検証と評価結果の財政運営への反映が必要。 【内在リスク】 ➢ 社会保障関係費の増大等により行政収支が悪化している中で、 元金償還額の増加が続き、地方債の償還を行政収支で賄えない 状況(行政収支-元金償還額 ⇒ 大幅赤字)が続いている。 ➢ 今後も継続的事業を予定しており、地方債残高は増加見込み。 ◎ 事業の優先順位を踏まえた選択投資など、明確なビジョンを持った 実効性ある財政計画の策定と着実な実行が求められる。 地方公共団体に対する実地監査 資料3 実地監査では、公的資金の貸し手の立場から、 ① 貸付の対象とした事業が、効果的かつ効率的に実施されているか ② 病院・上下水道などの地方公営企業が、社会構造が変化する中で将来を見据えた経営を行っているか を確認し、把握したリスク等をアドバイスしています。これにより、地方公共団体が事業リスクを認識し適切に対処 することで、将来にわたり適切な住民サービスを維持していくことを支援しています。 事業の実施状況 地方公営企業の経営状況の実態把握 地方公営企業は受益者負担の原則に基づき、 一般会計から独立して経営しています。 ポイント! ポイント! ➣貸付の対象とした事業が、その目的 に沿って効果的かつ効率的に実施 されているか、関係書類や現地確認 により検証。 ➣人口減少や事業環境の変化など、将来を見据えた経営を行っているか 【分析方法】 ・キャッシュフローと債務残高を中心とした分析、 ・施設維持更新も含む収支計画の把握 により、 中長期的な債務の償還状況、経営上の問題点や将来的なリスクを確認。 【着眼点】 ・計画どおりに実施されているか ・予定された効果が発揮されているか ・施設等が適正に管理されているか 【着眼点】 ・地域の特性、建設投資の状況といった経営状況の背景 ・収益・費用の状況、他会計からの繰入金の内容などの収支構造 ・人口減少等による施設設備の縮小・維持更新への対応状況 ≪債務償還可能年数※から見た管内地方公営企業の現状≫ 結果通知 ・把握した問題点や経営上のリスクを文書により通知 することで、監査先と認識を共有します。 ・必要に応じて、具体的な改善策や収支計画の策定 を求めています。 下水道事業は、約7割の団体で平均的な設備の耐用年数(45年)を超過 ☞ 料金収入だけでは債務の返済ができない状況 病院 32 上水 45 下水 53 17 6 3 1 38 9 9 ~15年 4 18 ~30年 5 ~45年 1 2 17 45年~ キャッシュマイナス ※ 債務残高をキャッシュフローで除したもので、債務返済能力を表している。グラフ内数字は団体数。 公営企業の経営状況における主な事例 病院事業 事例 ・過疎地域における中核的医療機関 ・院内処方による薬価差益により収益を確保 【経営上の問題点】 ➢ 医師の多くを派遣に依っており、専門性の違いによる患者の増減 が、病院経営の不安定要因。 ➢ 高齢患者の減少による収益減、施設の余剰発生。 ◎ 高収益の医療提供による収益確保策の着実な取り組みとともに、 将来的には病床数の適正化が必要。 水道事業 事例① ・経常黒字だが、人口減により減収傾向 ・ダム建設に伴い、水源の切り替えを予定 【経営上の問題点】 ➢ 市の推計を下回って人口減少が進展。 ➢ 多額の建設投資を計画しているが、これを踏まえた収支計画が なく、経営への影響が不明。 ◎ 収支計画策定にあたり、人口動態や建設投資による経営への影響を 勘案する必要。 水道事業 事例② ・契約により割高な水源を利用 ・環境変化を踏まえ、計画の見直しを予定 【経営上の問題点】 ➢ 水道料金軽減のためとして市税により補てんしているが、 結果として受益者以外の市民に負担が発生。 ➢ 将来の資金繰り悪化により、施設更新にかかる費用が未定。 ◎ 事業費を把握し、適切な費用負担について留意が必要。 下水道事業 事例① 資料4 ・事業開始後40年が経過するも、整備途上 ・処理場施設の地震対策が急務 【経営上の問題点】 ➢ 下水道の未接続先が多く、施設が有効に活用されていない。 ➢ 事業計画に見合った投資額となっておらず、普及率が低い。 ➢ 大規模事業にかかる費用が収支計画に反映されていない。 ◎ 下水道への接続向上のための積極的な取り組みとともに、 投資見通しを反映した収支計画の策定が必要。 下水道事業 事例② ・コストに比較して低い料金水準 ・農村下水道を公共下水道に順次統合予定 【経営上の問題点】 ➢ 統合に伴い、処理場の増設工事を予定している。 ➢ 料金改定が必要と認識しているが、実施に踏み切れていない。 ◎ 処理区域の人口動態を勘案して統合事業を進めるとともに、 一般会計との費用負担の在り方について留意が必要。 下水道事業 事例③ ・人口密度が低く、高コスト体質 ・料金水準が高く、利用者の負担は大 【経営上の問題点】 ➢ 料金収入の2倍を超える繰入金により下水道経営を維持。 ➢ 借入金返済による繰入金の増加が一般会計に影響。 ◎ 今後の需要予測、事業計画を適切に把握し、繰入金の動向を 市の財政計画に反映させることが求められる。 今後の財務状況把握 ~北陸新幹線開業を踏まえて~ 資料5 ■ 北陸新幹線開業による自治体財政への影響 【プラス面 (上振れ要因)】 ① 新幹線関連事業(駅周辺整備、関連公共施設の整備 等)に よる「まちづくり」の進展、 建設業・製造業の受注増 ② 観光客・ビジネス客など交流人口増加による地元消費の増加 ③ 移動時間短縮による首都圏からの企業の進出・移転 税収増 法人・個人住民税 固定資産税 等 【マイナス面 (下振れ要因)】 ➊ 新幹線関連の大規模建設事業に係る地方債発行による地方債残高の増加 ⇒ 元利償還金の増加による収支圧迫、将来負担の増大 ➋ 首都圏から日帰り可能 ⇒消費単価縮小、定住人口を期待した税収増には限界 ➌ ストロー現象の懸念 ⇒ ヒト・モノ・カネが吸い取られ財政基盤が縮小するリスク 北陸管内市町村の 実質債務月収倍率※の推移 ■ 新幹線沿線自治体の債務水準の動向 25.0月 駅開業済み (4団体) 20.0月 駅開業予定 (6団体) 15.0月 停車駅なし (41団体) 10.0月 5.0月 管内全団体 (51団体) ※ 実質債務月収倍率 = 実質債務 ÷(行政経常収入÷12ヶ月) 1ヶ月の収入の何ヶ月分の債務があるか - H21 H22 H23 H24 H25 出典:石川県 企画振興部 新幹線・交通対策監室 (左グラフ参照) ・ 北陸管内全体としては、債務水準は緩やかに低下傾向。 ・ 平成27年3月開業済み停車駅を有する自治体の債務は、高い水準で推移 してきたものの、平成25年度末には低下。 ・ 一方で、今後開業予定の停車駅を有する自治体については、やや上昇。 ◎ 今後 想定されるリスク ➢ 今後開業予定の沿線自治体については、関連事業の本格化に伴い、 地方債残高と償還額の増加が懸念。⇒ 債務償還能力や資金繰りの悪化 ➢ 停車駅がない自治体については、駅を有する沿線自治体への人口・産業 の集中により、財政基盤の格差が拡大する危険性。 ➢ 開業効果の持続性によっては、地域全体への影響度合いが変化。 北陸新幹線開業が自治体財政に与える影響を今後の財務状況把握に反映!
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