発酵生理及び醸造学分野

発酵生理及び醸造学分野
- 微生物に無限の可能性を求めて -
教授:小川 順、助教:岸野重信、特定助教:安藤晃規
www.hakko.kais.kyoto-u.ac.jp; TEL 075-753-6113; 総合館N-432室
これからの地球社会が目指している持続的社会は、健やかな物質循環と、授受関
係にある生物間の健全な相互作用が保たれている社会と言えます。このような社会
の実現に、地球上に広く存在し多様な働きを担う微生物が果たす役割はとても大き
いのです。私たちの研究室では、微生物が持つユニークな潜在能力を探索・開発し、
それらを産業や暮らしに役立てる研究を行っています。自然界から様々な微生物を
収集し、健康・食料生産・環境保全・石油からバイオマスへの原料転換・有用物質生
産プロセス開発などに役立つ能力を見いだし、磨き上げ、実際に使われる形で世の
中に送り出すことを目標に研究に取り組んでいます。
微生物は21世紀の化学工業を変える(環境への貢献)
20世紀における石油を原料とする化学工業の発達によ
り、人々の暮らしは飛躍的に豊かになりました。その反面、
資源浪費・環境汚染・地球温暖化などの諸問題が発生し
ています。これらの問題を解決していく手段のひとつとして、
微生物を利用した物質生産法が注目されています。化学
触媒に代わり微生物を触媒として物質変換反応を行うこと
により、環境への負荷が大幅に低減されます。私達の研
究室で生まれた生産プロセスは数多く実用化され(右図)、
石油依存の従来技術からバイオ技術による未来型生産技
術への転換例として、世界的にも注目されています。
微生物は我々の食を支える(健康への貢献)
発酵醸造食品の生産プロセスは、微生物機能利用技
術の原型とも言えます。この発酵醸造技術のサイエンス
を、現代の健康増進を支える食品素材の開発に展開し
ています。油脂を蓄積する微生物の探索を行ったところ、
体脂肪率70%という驚異的なカビを発見しました。この
超肥満のカビを顕微鏡で観察すると、油滴が細胞内に
びっしりと詰まっています(右写真)。実はこの油は「高
度不飽和脂肪酸」と呼ばれる油脂で、我々の健康維持
に役立つ栄養補助食品などとして非常に高い利用価値
があります。このカビの作る油は「発酵油脂」として産業
的にも注目を集めています。このように予想もつかない
能力を秘めた微生物の活用は、これからの社会を支え
る技術の核として、大いに期待されています。
有用油脂を生産するカビの顕微鏡写真(上)
寒天培地上に生育した油脂生産性カビ(左下)と精製油脂(右下)