アトピー性皮膚炎の治療 ●眠ってしまい何も覚えていない。女性 33 歳。 会社の送別会で久し振りにイタリア料理を食べ 数年前に他の治療院でアトピーの鍼灸にかかっ たことがある。筆者の治療にかかったところ、最 初、仰向けで15分くらい治療してうつ伏せにな たら、アトピーは少し悪化しただけで、それより も左鼻の脇に吹き出物ができた。 患者さん 「アトピー体質でなくなったのかしら?」 ったら、すぐに眠くなってどんな治療をされたか と聞くので、 「食べた物がたまたま免疫に影響しな ほとんど覚えていないという。 いで、腸に負担をかける物だったと思うよ」と説 患者さん 「以前は他の治療でこんなことはなかっ 明した。 たのに、こんなに眠くなるのは、どうしてでしょ うか」 ●ラーメンを久し振りに食べたら鼠径部にアトピ 筆者: 「普段、睡眠不足があるので治療すると「眠 ーが出た 男性 44 歳 れば治る」いう体の反応が起きるのですよ」 鼠径部の経絡は主に胃経と脾経である。 ● 上風池の指圧で額のアトピー患部に響いた。 女 ラーメンなど脂っこくて消化の悪い食べ物は、膵 性 29 歳。 液を大量に分泌して膵臓を弱らせる。下腿・脾経 に診断按摩を行うと地機穴に圧痛があった。 腹臥位で、 後頭部の上風池に横揉捏を行ったとこ このツボに刺鍼して置鍼し、鼠径部のアトピー患 ろ激痛があった。少し圧をゆるめて揉捏を続ける 部は下着の上から2つの温灸で温めた。 と、額のアトピー患部(陽白)に痛痒い感じで響 うつ伏せになってもらって背腰部に診断按摩を行 いた。 うと、やはり脾兪穴に硬結・圧痛があったが、そ さらに続けると痛痒い感じが起こらなくなった。 の外側部の意舎穴に強い圧痛があった。 額の陽白と後頭部の上風池は胆経のツボである。 しかしこの患者さんは右の肝兪に最も硬結・圧痛 1寸3分・00番鍼を刺鍼して温灸をすると鼠径 部のアトピー患部に響いた。 がある。 肝の弱りが額の胆経に症状が現れている。 ●日焼けして小腸経にアトピーが出た 女性 26 歳 ●顔の火照りに照海と合谷に刺鍼して温灸をした ら火照りが治まった 女性 38 歳 お正月休みに日焼け止めを塗らないで外出したら、 日焼けして左頬が少し腫れて、今までアトピーが 頸と顔にアトピーがひどくて今日は顔が火照る というので、足の腎経・照海穴と手の大腸経・合 谷穴に刺鍼して温灸をしたところ、顔の火照りが スーッと引いた。 頸と顔には温灸をしないで接触鍼と四指圧迫を 行った。 出たことのなかった左小指背側部にアトピーが発 症した。 小指と頬に症状が出たことで、 小腸経と小腸の弱 りを予想した。 背臥位で、 左小指のアトピー患部に接触鍼をする と腹鳴が起こった。 頬は接触鍼を軽く行い、 熱感があるというので温 ●イタリア料理を食べたらアトピーは悪化せずに、 左鼻の脇に吹き出物ができた 女性 27 歳 灸は行わず四指揉捏をした。 腹臥位になってもらい、 小腸経に関係の深い肩甲 間部の膀胱経・神堂穴を調べると小さな硬結があ ① 牛乳と乳製品(ヨーグルト) って持続圧すると左小指に響いた。 ②肉 次に仙腸関節部の小腸兪穴を左右同時に指圧す ③脂 ると、右側も少し痛いが左側がはっきり痛いとい 動物性タンパク質は腎臓を弱らせていると推測 う。 される。 左小腸兪穴を母指持続圧すると、 左神堂穴を指圧 ⑶油 したときよりも小指に響いた。 化学溶剤で抽出した油を高温で調理するとトラ 患者さんは鍼に敏感な人なので直径0・10㎜の ンス脂肪酸が発生し、細胞膜の脂質を変化させて 5分鍼を使って刺鍼し、回旋雀啄を続けると指圧 アレルギー体質を作る。 したときよりも強く小指に響いた。 ⑷ 白砂糖 置鍼して温灸をすると、 指圧と刺鍼では響かなか 白砂糖は腸壁を傷付けて、 未消化のタンパク質を った左頬に響いて、最初熱感が強く感じたが、2 吸収させ、このタンパク質に免疫が過剰に反応す 分間ほど経って熱感がスーッと引いて自覚的にス る。 ッキリした感覚になった。 ●アトピー性皮膚炎改善例 女性 29 歳。仕事:パソコンでイラスト作成 ●改善例 よく噛むことで前腕部・心経、少海穴から神門穴 にかけてのアトピーが改善された 男性 33 歳 アトピー性皮膚炎が最もひどい部位:前頸部(浸出 玄米を一口、200回噛んで食べたら、心経のア 液が出る)、左耳、後頸部、頭部。 トピーが改善したという。 アトピーの原因:睡眠不足、外食(食品添加物や油 推測:心経は心の蔵から発生する。そして心は舌 使用の食べ物など)、甘いものなど。 に関係がある。よく噛むことで舌が動かされて心 身体状況:排尿量少ない、便秘、生理がない、手 を強化したことが前腕部・心経のアトピーを改善 足が冷える。 したと推測される。 治療穴:照海穴、上巨虚穴、左志室穴、左右胃兪 また玄米はビタミンとミネラルが多いのでアレル 穴、肺兪穴。 ギーの改善につながった。 改善の要因:玄米食にして体重が減少した。 南蛮毛、 スイカなど排尿をよくするものを摂った。 ●アトピー性皮膚炎の原因と考えられる事 自分で爪楊枝接触鍼をした。 ⑴ 化学物質 2週間に3回程度の治療を5カ月間、 休まずに行 ① 食品添加物(保存料、着色料、甘味料など) った。 ② 大気汚染物質(ディーゼル排気ガス、工場の煤 煙など) ●日帰りバス旅行で、バスの中の冷房がすごく効 ③ 水道水の塩素 いていてアトピーが悪化した 女性 30 歳 アトピー性皮膚炎を含むアレルギー疾患は、1960 年以降、化学物質が大量に使われるようになって 顔のアトピーがよくなって人前にでても気にな から増えた。筆者は化学物質が免疫異常(ヘルパ らなくなり、日帰りバス旅行に参加した。 ーTh2細胞の増加)を起こしてアトピーが発症す バスの中はとても冷房が強かった。眠って冷える ると考えている。 といけないと思いながら 30 分くらい寝てしまっ ⑵ 動物性食品 た。 2 目的地に着いて降りたとき日が照っていたのに 以前、 3歳の男児が顔面アトピーで治療にかかっ 体が温かい感じがしない。 ていたが、 ほとんど改善しないで治療を終了した。 家に帰ってきてお風呂に入ったが、 いつもより温 母親に聞くと、 「食べ物はものすごく気を付けて まるのに時間がかかった。 います。ただヨーグルトは大好きで、これを与え 寝ている間に頚と顔を掻いてしまったと言う。 ないと泣きじゃくるので食べさせています」とい う。 ●かぜ薬でアトピーが悪化した 男性 39 歳 最近、 ある女性の患者さんから聞いた話しである が、 「自分の家で飼っている犬がアトピーのような 急にのどが痛くなったので、 こじれたら大変だと 湿疹ができて治らない。ヨーグルトが好きで与え 思って医師の治療にかかって抗生物質を飲んだ。 ている。友人からヨーグルトはアレルギーになる のどの痛みは 3 日で治ったが、少しずつよくなっ から与えないと治るよと聞いて、与えないように ていた肘の内側部と前頸部のアトピーが悪化した。 したら、その通り、治った」 この話しを聞いて、乳酸菌を摂り入れることとし ●毎年、梅雨の時期に悪化する 女性 28 歳 てはよいのだが、やはり牛乳からできているので アレルギーの原因になっていると考えられる。 昨年秋に、 ほとんど改善して治療を終了していた。 今年6月になって、 また少し悪化してきたので治 ●夕食で根菜類をスティックにして生でたべるよ 療にかかることになった。 うになった。野菜にシソ油を付けて食べるように 食べ物はすごく気を付けているので、 食べ物が原 なって改善してきた 女性 12 歳 因ではないという。 足と腰を触ると、6月にしては冷えている。 少しずつ改善しているが、 一進一退が続いていた。 女性は冬から春になると薄着になる。冬の間、週 学校給食で食品添加物の入っているおかずや揚げ に2回くらい風呂に入っていたのがシャワーです 物がたまに出て、残すのが嫌いなので食べてしま ませてしまう。 うことが改善できないひとつの原因である。 梅雨で肌の水分が蒸発しないで残っているとこ 家の夕食で、味を付けたおかずを食べないで、生 ろに気温が下がると、冬ほどの寒さを感じなくて 野菜だけを味を付けないで食べるように勧めた。 も、肌の水分が冷やされて身体に冷えが入るので どうしても味を付けるときは、減塩味噌かお酢を はないかと思われる。 少量使うこと、 またシソ油が良いことを説明した。 予防法としての対策は、 あまり薄着をしないこと、 風呂に入ること、肌が汗ばんでいるとき冷房の効 この夕食を1週間続けると、 少し良くなってきた。 2週間続けたら、さらに良くなってきた。 いていることころにいないこと、ビールなど冷え ●腕の滲出液がひどい 女性 33 歳 た飲み物を摂らないことなどをアドバイスした。 ●ヨーグルトはアトピーを改善させない。 女性 上腕部・前腕部・手部と頸部にアトピーがひどく、 30 歳 この部位から滲出液が大量に出る。手と足が非常 に冷えている。 ヨーグルトが好きで、食べると便通もよいといっ 排尿は1日に3~4回で少ない。 て摂り続けているが、なかなかアトピーが改善し 医師との話しで、 風呂に入ると痒くなると言うと、 ない。 風呂には入らない方がよいと説明されている。 3 風呂に入らないことで特に内臓の腎が冷えて尿 量が少なくなり、溢れた水分がステロイド軟膏を 昼食は近所に出かけると、 洋食的なファーストフ たくさん塗ったアトピー患部から滲出液として出 ードしかなくて、ピザやハンバーグなどを食べて ているものと推測された。 いる。 手が冷えているので冬の間は手袋をはめるよう 自分で玄米を炊いておにぎりを持っていって食 に勧めたが、手の甲もアトピーで滲出液が出るの べるように勧めたが、なかなかできない。そこで で手袋がくっつくのではめられないという。 りんごやバナナなどの果物を食べるよう勧めて、 ・改善方法として説明したこと それにしたら痒みが少なくなってきた。 ①かゆくなっても風呂に入ること。何回か繰り返 しているうちに身体が芯から温まるようになると ●塩分を控え身体を温めたら改善してきた 男性 痒みが軽減する。 28 歳 ②ご主人の味の好みでおかずは塩分が強いという ので、塩分を使わない自分だけのおかずを作って 全身がアトピー性皮膚炎で特に左腎経・太谿穴に 食べること。 湿疹がひどい。 食事では好きな塩分を控えてもらった。 冷えに対 ●足浴をするようになって、よく眠れて寝ていて して徹底的に温めるようにした。下半身の下着を 掻かないので改善してきた 女性 33 歳 重ね着し、靴下も2枚履き、寝る前に必ず風呂に 入って身体を温めるようにした。 朝、シャワーだけの習慣で風呂には、たまにしか すると小便が多く出るようになった。 入りませんという。 塩辛が大好きだったが、 最近は味が濃く感じて食 そこで足浴を勧めた。 べられなくなった。 寝る前にテレビを見ながら 15 分間くらいすると 全身の痒みが軽くなって、 太谿穴の湿疹が顕著に 体が温まってきて、それで寝ると深く眠れて、あ 改善してきた。 まり掻かないという。 ●治療の最後に寒気と震えが起こった 男性 27 ●海草をお酢味で食べるようにしたら眠れるよう 歳 になって改善してきた 女性 34 歳 全身がアトピー性皮膚炎で、 全身の皮膚に赤味が 野菜を中心に食事するようなってアトピーが少 強い。 長年のアトピーで薬もたくさん使ってきた。 しずつ改善してきた。 下肢のアトピーのひどい部位はちょうど、 内臓の しかし、なかなか眠れないという。食事の内容を 弱りとしても重要な肝経・曲泉穴、腎経・太谿穴、 聞くと海草類はあまり摂っていないというので、 脾経・公孫穴であった。上肢では大腸経・合谷穴、 お酢味で白砂糖を入れないで、ハチミツなどで甘 肺経・太淵穴であった。 い味を付けて食べるように勧めた。 これらのツボに置鍼して、顔面部と頸部、上肢・ ミネラルを摂ぅたことが良かったのか、以前より 下肢のアトピー患部に接触鍼と温灸をした。 も眠れるようになった。 腹臥位で背腰部に硬結・圧痛のあった志室穴、脾 兪穴、肝兪穴、肺兪穴に置鍼して、肩部、後頸部 ●昼食をピザやハンバーグを食べないで果物にし に接触鍼と温灸を行った。 て改善してきた 男性 33 歳 「先生、お腹が空いた感じがして、足が温かくな 4 りました」と言う。 を説明して服用を止めてもらった。 これは改善が望めると思った。 飲まなくなってから2週間を経過して、 グッとよ しかし治療の最後に、 「先生、寒気を感じます」と くなってきた。 言って震えだした。 治療が終って帰るときも、 「寒い感じがします。 」 ●アトピーの治療で月経が楽になった 女性 28 歳 と言うので、 「一時的なことだと思うので、帰って すぐに寝るようにして下さい」と言って帰っても らった。 アトピーの治療をして3回目で月経になった。今 2回目の治療で、痒みが軽減したというので、寒 まで1日目に痛みが強いので鎮痛剤を飲んでいた 気は治るための改善反応と判断した。 が、今回は楽で薬を飲まなかった。 推測:身体の表面のアトピー患部にあった血液が、 アトピーの治療を中心に行って、特別に月経痛の 腎や肝などの深部の臓器に移動して、身体の表面 予防の治療はしていなかったが、腎を強化する目 に寒さを感じたものと考えられる。 的で刺鍼した腎経・照海穴の治療がよかったのだ と思う。 ●パスタを食べて悪化 男性 33 歳 ●虫刺されのような湿疹 男性 35 歳 カーレースを見に行った。昼食で和食的な食事を 副腎皮質ホルモンの軟膏と飲み薬を 20 年間、使 探したがなく、パスタを食べた。 この中の油がよくなかったのか、その夜、痒くな ってきたという。 った。 湿疹は、普通のアトピーの湿疹ではなく、虫に刺 されて赤く腫れたように丸くブツブツになってい ●台風が来て悪化 女性 28 歳 る。 初診時に、左下腿・脛骨粗面の肝経・蠡溝・中都 治療回数と共に症状が改善してきた。 穴にアトピーがあったので、肝の弱りと判断して 台風の影響で風雨がひどくなったとき、 寝ていて 左肝兪穴を重点的に治療して、少しずつはよくな 冷えを感じて痒みが強くなり、少し掻き傷が多く ってきたが、なかなか改善しない。 なった。 そこで副腎皮質の弱りを予想して、三焦兪穴の外 側の肓門穴を指圧すると圧痛があったので、この ●漢方薬をやめてから改善した 女性 27 歳 ツボに鍼・温灸をすると腰が楽になると同時に、 湿疹の痒みが顕著に軽減してきた。 下肢のアトピー性皮膚炎が 50%程度改善した。 食生活において、 アトピーを悪化させる内容の物 ●かぜの点滴でアトピー性皮膚炎が悪化した 男 性 33 歳 はほとんど食べていない。 しかし、下肢の胆経・懸鐘穴と肝経・太衝穴のア トピーがなかなか治らない。この 1 年間、アトピ 風邪をひいて点滴を受けたら、 いつも出ている胆 ー改善のための漢方薬(健康保険で出してもらっ 経の額と大腿外側部のアトピーが悪化した。 ている)を毎日服用している。 化学物質によって肝が弱り、 肝の弱りが胆経に現 肝経と胆経のアトピーが治らない原因は、 漢方薬 れたものと考えられる。 以外に考えられないと思い、患者さんに、この事 5 ●アトピー性皮膚炎が治っても再発しますか? ・顔面部の額にアトピーが起こる。 女性 27 歳 ・肝が弱っている人は、期門穴、曲泉穴、足の母 指や指先が冷えていることが多い。 食生活で甘いものや脂っこいもの、 化学物質を含 ・副腎皮質ホルモンなどの薬を長い間使用した人 んだものを食べると再発します。 は、肝兪穴・魂門穴に硬結・圧痛がある。 しかしアトピーが治ると、そのような悪化させる 食べ物は自然と欲しくなくなります。アトピーが ●肝兪穴の刺鍼で額のアトピー患部に響いた 男 ひどくて体調が悪い人ほど、さらに悪化させる食 性 28 歳 べ物が好きになっています。 内臓が丈夫になって身体が健康になり、 ストレス アトピーは下腿脛骨部の肝経・蠡溝穴と中都穴、 をあまり感じなくなると内臓を弱らせる食品は避 顔面部の額にあった。 けるようになり、さらに健康になる食品が美味し 最初は耳の上の側頭部から痒みが始まったとい く感じられて摂るようになります。 う。 肝兪穴に硬結・圧痛があるので、このツボを重点 ●眠っていて滲出液が出るのは、改善反応と考え 的に治療している。 られる 女性 29 歳 アトピーの治療を始めて5回目のとき、思い当た ることがないのに左鼠径部から大腿内側部にかけ 滲出液は、日中、アトピーの患部を掻くと出る。 て鈍い痛みが起こって歩いていて気になるという。 鍼治療を受けるようになってから、 寝ているとき 症状は肝経の流注部位なので、 腹臥位で左肝兪穴 も掻かないのに滲出液が出て困るという。 を強く母指持続圧すると鼠径部から大腿内側部の 寝ているときというのは、 いろいろな症状が改善 痛みの部位に響いた。 しようとする働きが起こっているときなので、滲 この肝兪穴の治療で改善することが分かったので、 出液が自然に出るのは治ろうとしている反応であ 1寸3分・00番鍼を刺鍼して雀啄を繰り返した。 ると考えられる。 今まで左肝兪穴に刺鍼して軽く響かせていた治 患者さんによってさまざまであるが、 1~2カ月 療の、2倍くらい時間をかけて行うと、最初、左 間、治療を続けると滲出液の出方が少なくなって 大腿部に響きが起こったあと、額のアトピー患部 アトピーが改善していく。 にもはっきり響いた。 アトピーの原因となっている内臓のツボは、 ア ●肝が弱っている人のアトピーの特徴 トピー患部に響くまで雀啄と温灸を行うことが大 切だと思った。 ・肝経の流注部位にアトピー性皮膚炎が起こる。 ・腹部の期門穴、下肢の曲泉穴、蠡溝・中都穴、 ●やや肥満 アトピーは肘内側部、 頚部、 額部 女 中封穴、太衝穴など。 性 24 歳 ・背部の肝兪穴から肩甲骨部・肩部(三焦経・小 腸経) ・ 上肢後側部・手関節背側部(三焦経・外 初回目の治療のあと、ひどく体がだるくなって、 関穴、大腸経・合谷穴)にかけてアトピー性皮膚 電話で「大丈夫でしょうか」と問い合わせがあっ 炎が起こる。 た。 ・頸部の横側(耳の下あたり)にアトピーが起こ 肝兪穴に硬結のある患者さんで、 肝兪を治療する る。 と特に治療後、だるさがでる。 6 「内臓の弱りが改善する反応ですから、大丈夫 ルギー剤で、以前は副腎皮質ホルモンの軟膏を使 です」と説明した。 っていた。 初回の治療から、 肘内側部のアトピーが改善して、 頸部と額も少しずつ改善した。 北京で仕事をしたことがあって、その時は、アト ピーはかなりよかった。乾燥した空気と、食事で 現在は休職して自炊しているので、 食事としては お酢を摂ったのがよかったとのこと。 アトピーになるものをほとんど食べていないが、 ・治療穴 仕事中は外食が多かった。 〔背臥位〕 花粉が飛んだ初期に、少し悪化したが、現在 70% 照海穴、合谷穴、左府舎穴に1寸3分・00番鍼 程度改善している。 を刺鍼して運鍼し、響きを得て置鍼。百会穴に1 肘が痒いときは、爪楊枝接触鍼をしている。 寸・00番鍼で刺鍼・運鍼・響きを得て置鍼。 この患者さんには「体重を減らすと治りますよ」 前頸部と顔面部のアトピー患部に接触鍼と温灸。 と説明したが、体重が減少しなくても改善した。 〔腹臥位〕 背腰部の治療穴は大腸兪穴と肝兪穴。 志室穴、三焦兪穴、肝兪穴、肺兪穴に置鍼。 後頸部のアトピーに接触鍼と温灸。 ●アトピー性皮膚炎は頸部と顔面部 女性 41 ・治療経過 歳 2週間で3回の治療回数を2カ月間継続して、 約 50%改善している。 甘いものが好きで便秘症。 ご主人が酒を飲まない 第1回、 2回目の治療の後、 ひどくだるくなった。 人なので、食後二人で甘いものを食べる。甘いも 治療の次の日、 患部が赤くなってガサガサになっ のは別腹ですと言う。 たが、 治療回数に応じて次第に起こらなくなった。 食後の甘いものを食べないようして、 体重が2㎏ 赤味と痒み、 皮膚のゴワゴワが少なくなってきた。 ほど減少した。痒いとき、指先で叩くようにして 鼻の下(水溝穴)のアトピーが治って、鼻汁が出 いて、現在約80%改善している。 なくなった。 背腰部の治療穴は志室穴と胃兪穴。 甘いものは少なくして改善した ●接触鍼と温灸でアトピーがなぜ治るか ①爪を立てて掻くと患部を悪化させるが、接触鍼 ●女性 46 歳 と温灸は患部を悪化させることなく血液循環をよ くする アトピー歴、20年。社会人になってから発症し ②アトピーの患部に接触鍼や温灸をすると、腹鳴 た。 が起こる。アトピーの患部を改善しながら、患部 アトピーの患部は、 最初、 膝の裏側と肘の内側部、 と関係する内臓の弱りを改善できる。 薬指であった。その後、膝の裏側には出なくなっ ③アトピーの患部は赤くなっていることが多い。 て、頸と顔に出るようになった。 これは血液が充満して流れない状態と思われる。 アトピーを発症される食べ物は、甘いもの。他、 接触鍼と温灸で血液が流れるようになるので改善 犬の毛。アルコールを飲まないのに、肝機能数値 する。 「痒いところをなぜ掻くか」を考えると、ア のγー GTP が高い。 月経の前に便秘がひどくなる。 トピーの患部は「血行をよくしてほしい」という 3年前から玄米食にして、便秘はだいぶ改善して 要求を現していると思われる。患部にキズをつけ いる。 ないような治療を行えばよい。 現在、 使っている薬はプロトピック軟膏と抗アレ 7 ●アトピー性皮膚炎改善例/女性 33 歳 が入っていて、これがアトピー性皮膚炎によくな いと思われる。 ・治療の要点 アトピーが最もひどいところ:右頸、左額、左季 ●セルフ爪楊枝接触鍼ですっかり治った 女性 肋部、左膝窩部。 33 歳 アトピー患部は全体にカサカサしている。 治療穴:アトピー患部に接触鍼と温灸。次のツボ アトピーは肘の内側部と膝の裏にあった。初回、 に 00 番鍼を刺鍼。 治療をして帰るとき爪楊枝接触鍼を教えた。2 週 (背臥位)膻中穴、左照海穴 間後に治療にかかったとき、すごくよくなってい (腹臥位)右厥陰兪穴、左肝兪穴、左腎兪穴 るので聞くと、 「爪楊枝を輪ゴムで束ねて接触鍼を ・生活と食事の改善 作って、いつも持ち歩いて、痒くなったら接触鍼 自分で爪楊枝接触鍼をした。 をしています。指で搔いていたときは、悪くなる 母親のところにあった足温浴器をかりてきて足 という罪悪感があっても搔いていたけど、爪楊枝 を温めた。 は気持ちよくて、全然、悪くならないので、すぐ ドクダミ茶を飲んで便が出るようになった。玄米 にやりたくなります」とのこと。 を 50 回噛んで食べるようにした。体重が 5 ㎏減 私の治療に 3 回かかって 90%改善したが、ほと った。好きなアイスクリームと肉(夫が好き)を食 んど患者さんが自分で治した症例であった。 べないようにした。 ●ドクダミ茶で大量の排便があった 女性 29 歳 家族歴:母親が若いとき軽いリウマチ。 既往歴:右耳中耳炎。 治療の途中で、一度、日光過敏症で悪化した。 アトピーは顔面部と左下腿内側部である。下腿内 側部は腎経なので腎の弱りが予想された。 ●ゴボウが便秘にいいと食べたが、油炒めの油が 排尿の効果があるドクダミ茶を勧めたところ、 す よくなかった 男性 29 歳 ぐに買ってきて、毎日、2リットルずつ飲んだと いう。 便通が毎日ないということで、 繊維質の食品を摂 びっくりするほど排便があって、体重が2kg 減っ るようにすすめたところ、ゴボウを食べるように た。 なった。 なかなか改善しないのでゴボウの食べ方を聞くと、 ●顔の頬に1 円玉くらいの湿疹がでる 女性 35 キンピラゴボウで油を使っていた。完全に治るま 歳 で、油料理を食べないことが大切である。 顔に一ヵ所だけ湿疹ができて困っていますとの ●アイスクリームを毎日 1 個食べて、なかなか改 訴え。 善しない 女性 30 歳 一ヵ所だけに限って頑固に湿疹ができるのは、 大 抵、薬かアルコール、その他、嗜好品で味の濃い 脂っこい物や甘いものを極力控えるようになっ ものを摂り続けていることが原因である。 たが、アイスクリームだけは、どうしても食べて この患者さんはビールが大好きであったので、お しまうという。 そらく原因はビールと思われる。 アイスクリームには、防腐剤などの添加物と脂肪 8 ●行間穴の接触鍼で胃が動いた 女性 36 歳 ●6 カ月の娘が夜泣きをして眠れず、アトピーが 改善しない/女性 26 歳 アトピーがあった肝経の行間穴に接触鍼をしたと 最近、なぜか赤ちゃんが夜泣きをして眠れない。 ころ、胃がゴロゴロと音をたてて動いた。胃の弱 考えたら、少し太りすぎになってきたのでミルク りが肝経の行間穴に湿疹になって現れていた。 を薄くしたことに気が付いた。これだと思って、 また元の濃さにもどして飲ませると眠るようにな ●治療例 った。 男児 3 歳 ●治療中断例 最もアトピー性皮膚炎がひどい部位は、 顔面部の 男性 38 歳 額(肝・胆の弱り)である。他、後頸部(膀胱経)、腹 部、膝窩部(腎・膀胱経)、大腿内側部(肝経)である。 アトピーは顔面のまぶたの所がひどい。腫れてい 腹部がふくれている。足が非常に冷たいので、腎 て滲出液がにじみ出ている。 ステロイドを長い間、 と肝の弱りが考えられる。 塗ってきたという。接触鍼と温灸の治療を受けた 腎、肝が弱いと老廃物が排泄されず、血液に入っ 夜は、 寝ていてジクジクと汁が出て熟睡できない。 て全身を巡る。 それでも治療を続けて、 少しずつよくなっていた。 足が冷たいので血液が顔に充満して赤く、 湿疹が ところが友人と久し振りに焼肉を食べたら、一気 起こっている。 に悪化した。 ・治療 目を開けられないほど腫れて滲出液がひどく、 病 アトピーの患部には中国鍼で接触鍼を行う。ある 院の治療を受けることになって中断した。 いは鍼の代わりに清潔な指先でリズムよく叩く。 推測:アトピーが春に悪化するのは、空気中の化 足の冷えに対して、 下腿部と足部に手指で把握圧 学物質が、花粉や黄砂などと一緒に呼吸器から体 迫を行う。 内に入って、体内の化学物質が多くなるからでは 5 分間ほど行うと、足が温まってくる。 ないかと、推測される。 背腰部では志室穴に硬結があるので、 このツボに 母指圧を行う。 ●花粉症のマスクをしたらグッとよくなってきた ・治療経過 /男性 36 歳 治療を開始して 3 回目から棒状の便が出るよう になった。 アトピー治療で薬を処方してもらっている医師か 排尿はまだ勢いよく出ていないようであるとい ら、花粉症のマスクをするように勧められて付け う母親の話。 ることにした。 アトピーはやや軽減している。 その直後から、ひどかった左肘のアトピーの痒み ・飲食 が軽減した。 食べ物はずいぶん注意していて、 動物性食品はほ アトピー性皮膚炎の原因は化学物質であると推測 とんど食べさせていないが、ヨーグルトが好きで される。マスクによって花粉とともに体内に入る よく食べる。 化学物質が減少したので、アトピーが改善したと ◎今後、さらによくなる方法 考えられる。 ・現在、週 1 回の治療回数を週 2~3 回にするこ と(30 分治療)。 9 ・もっと厚手の靴下を履いて足を温めること。 に軽減した。 ・ヨーグルトを食べないこと。 ・塩分を少なくすること。 ●自分でアトピーの痒みを止める方法 ●鍵で接触鍼の代用をして改善した 65 歳の按摩 ①痒いところを指先で強く圧迫する。 治療師 痒みが痛みに変化して不快感が紛れる。 ②痒いところを指先で叩く。 右下腿の脛骨粗面、肝経の蠡溝穴・中都穴に湿疹 痒みが叩打痛に変化して不快感が紛れるのと、 叩 が出来ていた。 打によって血行がよくなり痒みが軽減する。 「鍼で接触鍼をすると治りますよ」 と説明したと ③自分の身体で、指圧して最も痛みの感じるツボ ころ、鍼はなかったので、持っている部屋の鍵の を強く指圧する。 先で毎日、3 分位ずつ叩いた。 すると 2 週間です 百会穴、合谷穴、外関穴、三陰交穴、照海穴、足 っかり治った。 臨泣穴、他。 1 カ月振りで見ると皮膚が薄茶色になっているだ ④痒いこところを熱いタオルで温める。 けで、湿疹はまったくなくなっていた。 血行をよくすることで痒みが軽減する。 当院では、爪楊枝の接触鍼を勧めているが、鍵の 先で叩いて治った例は初めてであった。 ●アトピーはこうすれば治る ●酢を摂ってアトピー改善 ①集中的に鍼・温灸治療にかかる ・週 2~3 回の治療を 1~2 カ月間かかる。 最近、 当院のインターネットを見て治療にかかっ ・1 回治療すると、1~2 日は痒みが軽減して夜、 てくれた男性患者さん 2 名。二人とも、酢を摂り 患部を掻かないで眠れる。寝ていて掻かなけれ 入れてアトピーが急速に改善した。 ば治る。 二人に共通して硬結・圧痛のあったツボは肝兪穴 ②アトピーを悪化させる食品を摂らない。 であった。 ・化学物質を含んだ物、脂っこい物、チョコレー 不眠、飲酒の習慣あり。排便は 2 日に 1 回。副 トなど甘い物を摂らない。 腎皮質ホルモンを使用している。 ③便通をよくする物を摂る。 酢をあまり摂っていないというので、 ドリンクや ・繊維質の食品、玄米、海草など。味噌、酢など 食事の味付けで摂るように説明した。 の発酵食品。 ④体重を 3~5kg 減らす。 肝兪穴に硬結・圧痛のある場合、肩甲間部の厥陰 兪穴にも硬結・圧痛が現れることが多い。また上 ・脂っこい物、甘い物を摂らない。間食、夜食を 肢のアトピーは肘の内側部・心包経・曲沢穴に出 しない。薄味の和食がよい。 ることが多い。 刺鍼した主な治療穴は、大腸兪穴、志室穴、胃兪 ●アトピー性皮膚炎の鍼・温灸の基本治療 穴、肝兪穴、厥陰兪穴、肺兪穴であった。 接触鍼の部位は、背臥位で肘内側部、前頸部、顔 ①アトピー患部に接触鍼 中国鍼の鍼先を 1 ㎜ほど出してつまみ、両手に 面部、腹臥位で膝窩部、肩部、後頸部であった。 これらのツボを重点的に治療したところ、眠れる 持ってアトピーの患部に接触鍼を行う。 ようになり、便が毎日出るようになり痒みが急激 皮膚を傷つけることなく、 血行をよくしてアトピ 10 ーを改善することができる。 (肺の弱り) 、手の甲、顔が赤い、耳の周囲からこ アトピーの患部は内臓の弱りを現している部位な めかみ部、後腋窩部(これらは肝・胆の弱り) 、腰 ので、ここに接触鍼と温灸を行うと、腹鳴の起こ 部の大腸兪穴の周囲(大腸の弱り)である。 ることが多い。 背腰部に診断按摩を行うと、背兪穴、肝兪穴、胃 ②アトピー患部に温灸 兪穴、志室穴、大腸兪穴に硬結・圧痛がある。便 通は週に 3~4 回である。 接触鍼の後、患部に温灸を行うと、さらに血行が よくなってアトピーが改善される。 本人も油料理をやめようと思っても、 家族が好き 血行がよくなって、治療中、一時、痒みが起こる なのでつい作ってしまう。 が、治療を終了したとき痒みは収まっている。 ●お正月の食べ過ぎで悪化した/女性 25 歳 ・この治療によるアトピーの治り方の特徴として、 治療にかかったその日か次の日に皮膚の落屑がた 暮れから正月の 1 週間、実家に帰って料理を手 くさんある。 伝いながら、大勢で楽しく食べているうちに、2kg 皮膚をキズつけないように落屑を落とすと (シャ ワーで洗い流すのがよい) 、 下から健康的な皮膚が 体重が増えた。しかも便秘になった。 盛り上がってきてアトピーが改善される。 前頸部から顔面部が悪化した。 ③アトピー患部と経絡的に関係する臓腑の治療 原因がはっきりしているので、少食・便通改善と アトピーの患部が、肘の内側・肺経・尺沢穴であ 鍼灸治療で改善すると思われる。 れば、肺の募穴・中府穴に圧迫不快感と冷えが現 れていて、背部・兪穴・肺兪穴に硬結・圧痛があ ●年末の 12 月は忘年会続きで中華料理を食べて る。 悪化した/男性 33 歳 また、膝窩部・膀胱経・委中穴にアトピーがあれ ば、下腹部・中極穴に圧迫不快感と冷えがあり、 アトピー性皮膚炎が 80%近く改善していた男性。 背部・膀胱兪穴に硬結・圧痛がある。 忘年会はなぜか中華料理が多く、食べ続けている 肺兪穴と膀胱兪穴が治療穴となる。 うちに顔が真っ赤になって悪化した。 他、背腰部全体に診断按摩を行って、硬結・圧痛 脂っこい料理で胃腸に熱がこもったのと、 冬で手 のあるツボは治療の対象となる。 肝兪穴、 脾兪穴、 足が冷えたことで身体上部の顔面に熱を伴ったア 腎兪穴は、アトピーの治療で重要である。 トピーが起こったものと考えられる。 ●アトピーがなかなか改善しない原因は、油を使 ●アルカリ単純泉の温泉で、アトピー性皮膚炎が った料理と思われる/女性 28 歳 改善した/女性 28 歳 週 1 回の治療回数で治療にかかっているが、一 正月に帰省して近くの温泉に入ったところ、 アト 進一退である。 ピーが少し良くなった。泉質はアルカリ単純泉だ 治療の翌日は皮膚の落屑があって、 皮膚がツルッ った。 として痒みも少ない。家庭の料理はご主人も子供 も油を使った料理が大好きであるという。 東京に帰ってきて自宅の水道水のお風呂に入る 勿 と、お湯が肌にきつく感じるというので、お風呂 論、本人も好きでさらに、甘い物も好きでやや肥 に炭を入れるように勧めた。 満である。 最もアトピーの酷い部位は、鎖骨の下の上胸部 ●右薬指が冷えて痺れる感じがした後、眉毛の外 11 側が痒くなった/女性 35 歳 ●ワインを飲みすぎるとアトピーが出る アトピー性皮膚炎が、 だいぶ治っている患者さん。 ワインが大好きで、 飲みすぎると右肝兪穴にアト 年末、 仕事が忙しくなって疲れが溜まってきたら、 肩が凝って冷えを感じるようになった。 ピー性皮膚炎が起こる。 肝臓の弱い人のアトピー性皮膚炎の起こる部位 その後右薬指が冷えて痺れるようになり、今まで は、背部の肝兪穴、上腹部の期門穴(足の背側部) はなかったのに右眉毛の外側が痒くなった。 が多い。その他、頸部や顔面に起こる。 治療の回数毎に改善していたが、 何かの会合など ●爪楊枝接触鍼 でワインを飲むとすぐに肝兪穴にアトピー性皮膚 爪楊枝を 10 本、輪ゴムで束ねて接触鍼する。 炎が起こるので、私には飲んだことがすぐに分か 患者さんが自分で行う時、子供に行う時、あるい る。 は夫や友人に行ってもらう時安全な方法である。 爪楊枝の先は汚れるので、1 回毎に使い捨てにす ●アトピーが改善したら副腎ホルモンの数値が正 る。 常化した 一ヵ所のアトピー患部に 30 秒から60 秒間行う。 痒みが軽減するまで行う。 気管支喘息で副腎皮質ホルモン入りの吸入を長年 爪楊枝接触はアトピーの皮膚を傷つけることな 使用していた。喘息があまり起こらなくなった頃 く血液循環を良くするので、痒みを軽減して健康 から、アトピー性皮膚炎が出てきた。アトピーの な皮膚の再生を促すことができる。 最もひどく現れている部位は、右背部の三焦兪穴 の周囲と、右前腕部の三焦経である。 ●耳の湿疹が酷いのは、塩辛いものが好きで腎の 私が質問するよりも先に患者さんの方から 「私は 弱り/女性 26 歳 血液検査で副腎のホルモンが少ないので大怪我や 大手術をしないよう言われています」と説明があ 志室穴に硬結・圧痛が強くあり、腰が冷えていて った。 足にむくみがある。 鍼灸治療でアトピーがほとんど改善した時期に、 塩辛いものを食べないで鍼灸治療を続けると、 もう一度血液検査を行ってもらうと副腎ホルモン 3kg ほど体重が減ってアトピー性皮膚炎が改善し の数値は正常であった。 た。 ●ステロイド軟膏を使っていたが、なかなか治ら なかった/女性 38 歳 ●膝窩部のアトピー性皮膚炎は腎・膀胱の弱りで 塩辛いものが原因/10 歳 女児 35 歳のときに卵巣のう腫の手術をし、子供の時は 喘息があった患者さん。20 歳を過ぎたころからア 膝窩部の腎経・陰谷穴と膀胱経・委中穴にアトピ ー性皮膚炎がある。 トピー性皮膚炎が起こった。ステロイド入りの軟 子供でありながら塩辛い漬物が大好きで、 漬物を 膏を塗っているがなかなか治らない。 出すといくらでも食べるという。 アトピーが最もひどい部位は手の甲の部分で、あ 塩辛いものを極力食べないで鍼灸治療を続けて とは心窩部から季肋部(肝の弱り)にかけてと、 改善した。 前頸部、背部の大椎穴の周囲(陽経の気の虚) 、右 肩甲骨部(肝の弱り)にあり、足がむくんだり、 12 左足の裏がつる(腎の弱り) 。 昔、 朝起きてチョコレートを主食のように食べる 全身にアトピーが出ていたが、 特に前頸部と顔面 時期があった。現在は玄米を食べている。 部に強かった。足が冷えて浮腫み、顔が赤い。会 [治療] 社はコンピュータを冷やすために、強冷房にして 背臥位で硬結・圧痛のあった左太谿穴と右曲泉穴 いるという。仕事で帰宅が遅くなり、夜の食事が に、1 寸 3 分・00 番鍼を刺鍼して響きを得て置鍼 いつも午前 1 時頃で食べたらすぐに寝るという生 した。 活である。 アトピー患部は乾燥しており、以前、馬油を塗っ 冷えによる腎の弱りと食事の不摂生で改善しな ていたことがあったというのでアトピー患部に薄 かった。 く塗った。 中国鍼を指先から鍼先を約 1mm 出して持ち、ア ●飲食の不摂生で改善しない独身営業マン/男性 28 歳 トピー患部に気持ちよいチクチク感を与える接触 鍼を行った。 鍼治療は初めてであるが痛みは感じないという。 アトピーの出ている部位は、右肝兪穴の周囲と前 腹臥位で背部の大椎穴周囲から後頸部と右肩甲 頸部・顔面部の額(陽白穴)と、下腿前面部(脛 骨部のアトピー患部に馬油を塗った。接触鍼と温 骨部・肝経)であった。 灸を行った。背腰部に診断按摩を行うと、硬結・ 朝は食事を取らない、昼食はコンビニの弁当、夜 圧痛穴は、肺兪穴、右肝兪穴、左志室穴であった。 は接待で居酒屋で飲食。食品添加物の入った食べ これらのツボに 00 番鍼で刺鍼して響きを得て置 物や味の濃い食べ物、夜遅くの飲食で肝臓を弱ら 鍼し、温灸をした。 せて、肝に関係する部位にアトピーが出ていた。 [治療 2 回目] 鍼・温灸治療をすると、2 日間は痒みがなくて眠 1 回目の治療の後、アトピー患部からたくさんの れるが、その後は眠っている間に無意識に掻いて 皮膚の落屑があり、月経になったが、いつもより しまう。 も軽かったという。 飲食の不摂生で改善しなかった。 2 回目の接触鍼では、落屑の部位を掻き過ぎたせ ●ステロイド軟膏を止められない/女性 25 歳 いか、前頸部と大椎周囲の皮膚が敏感になって接 触鍼が痛いというので、鍼を持たず指先で軽く叩 いて、その後温灸を行った。 ホテルのフロント係をしている。常にお客さんに [治療 3 回目] 接しているので、顔面のアトピーが少しでも悪化 3 回目の治療で聞くと、指先接触でも、皮膚の落 するとステロイド軟膏を塗ってしまう。 屑がたくさんあったという。 鍼・温灸治療をすると、2~3 日はステロイドを [治療経過] 塗らないで過ごせるのだが、治療回数は 1~2 週 現在 2 ヶ月経過して、週 1 回から 2 回の治療を 間に 1 回である。 継続し、約 30%程度アトピーが改善している。 週 2 回ペースで治療にかかると、ステロイドを 友人と夜更かしして飲食したり、 身体を冷やすと 使わなくても改善すると思われる。 悪化する。 ●ステロイド軟膏を止められない/女性 25 歳 ●冷えによる腎の弱りと食事の不摂生で改善しな かった/男性 32 歳 ホテルのフロント係をしている。常にお客さんに 13 5 ヵ月間でほぼ改善した。 接しているので、顔面のアトピーが少しでも悪化 するとステロイド軟膏を塗ってしまう。 機内食とコンビニ弁当でアトピーが悪化するこ 鍼・温灸治療をすると、2~3 日はステロイドを とが分かり、食べないようにしてもらった。 塗らないで過ごせるのだが、治療回数は 1~2 週 ・改善のポイント 間に 1 回である。 ①アトピー性皮膚炎の原因になっている食品を食 週 2 回ペースで治療にかかると、ステロイドを べないこと。 使わなくても改善すると思われる。 ②肥っている人は勿論、痩せている人でも体重を 減らすこと ●妊娠 7 ヵ月。顎・顔と上肢内側部がひどかった ③排尿と排便をよくすること /女性 30 歳 ●アレルゲンテストでは原因となるアレルゲンが ない/女性 34 歳 妊娠後期になって便秘がひどくなり、 妊娠以前か らアトピーがあったのが次第にひどくなった。 薬は飲みたくないということで、週 2~3 回の治 アトピー性皮膚炎患部の最も痒くて悪化している 療を出産直前まで 3 ヵ月間続けた。 部位は、膝窩部・背部・前頸部で、そのほか大腿 治療すると浮腫みがとれて排便もよくなり、 出産 後側部、腹部、上肢内側部・肩部にある。 前にほぼ 90%改善した。しょっぱい物と脂っこい アトピーのアレルゲンテストでは原因となるアレ 物が好きであったので、食べないようにしてもら ルゲンはないという。 ったことがよかった。 ステロイド軟膏は顔の痒いところだけチョコンと つけるだけにしている。寝ていて夜間に排尿が 2 ●大学を卒業して社会人になり、顔にお化粧をし 回ある (年齢から判断して腎・膀胱の弱りがある) 。 たことから悪化した/女性 23 歳 風呂上りは痒くなく、寝ていて痒くなる。足指と 下腹部・臍の下に冷えがある。 お化粧は口紅と眉毛に少しだけするようにしても 膝窩部の湿疹と夜間排尿があることから、腎・膀 らった。 胱の弱りがアトピー性皮膚炎の原因と考えられる。 お昼の食事は外食を避けて、自宅から弁当を作っ 膝窩部(陰谷穴・委中穴)と、腹部・上肢・前頸 て行って食べるようにした。 部・背部のアトピー患部に接触鍼と温灸をし、圧 週 1 回の治療を 4 ヵ月間続けて改善した。 痛のある膀胱兪穴と硬結のある志室穴に刺鍼して 少し痩せ気味の体型であったので減量をするこ 響かせ、置鍼して温灸。治療 4 回目でアトピーの とは特に指示しなかったが、自然に 2kgほど痩 赤味が薄くなって痒みが軽くなってきた。掻いて せた。 もひどいがキズにならない。夜間排尿が 2 回から 1 回になってきた。 ●頸部と胸、上肢内側部にひどかった/女性 29 アトピー改善の養生をアドバイス。足・腰に厚着 歳 して身体を温めること。甘い物・脂っこい物・化 国際線の客室乗務員。 学物質が含まれたものを食べないこと。 日本国内にいるときは、4~5 日間、毎日治療に ●会社の冷房と風邪を引いたことでアトピーが悪 かかってもらった。治療にかかれないときは 2 週 化した/女性 33 歳 間くらい空くときもあった。 この夏、会社で足の冷えを感じていた。冷房のせ 14 いである。昨年は寝るとき腹巻をしていたが、今 ると、また少し悪化した。 年はしなかった。夏の間、風呂に入らないでシャ ●社会人になってからアトピー性皮膚炎になった ワーにしていた。 /女性 31 歳 のど風邪を引いたことをきっかけに、上胸部と前 頸部、後頸部にいっきにアトピーが発生した。 顔(額の部位)から、頸、腹部、上肢(腋窩部か 後頸部のアトピーは、 冷えによる腎の弱りから発 ら上腕前面部) 、腰部、下肢(膝窩部)と身体全体 生、上胸部・前頸部のアトピーは、風邪による肺 にアトピー性皮膚炎がある。ステロイド軟膏を長 の弱りから起こったものと考えられる。 く使用しており、特に腹部に色素沈着があって黒 背腰部に診断按摩を行うと、 現れた症状から推測 ずんでいる。 した通り、 肺兪穴と志室穴に硬結・圧痛があった。 排尿が 1 日 2 回くらいのことがある。足が冷え アトピー患部に接触鍼と温灸をしたあと、このツ てむくむ。 排便は 2 日に 1 回程度で不眠症である。 ボに刺鍼して硬結をやわらげた。 飲食では、アルコール、甘い物、辛い物が好き。 タバコは吸わない。朝食はほとんど食べない。早 ●なかなか改善しない/女性 28 歳 食いである。 自宅では冷房はほとんどかけないが、 会社はすごく冷房がきいている。 週 1 回の治療を 8 回行ったが、症状は一進一退 ・治療 である。鍼・温灸治療を行うと、皮膚の落屑がた (1)背臥位 くさんあって皮膚が滑らかになる。今までいろい ①奇経治療としてその主治穴を指圧して調べると、 ろな治療をしてきたが、こんなに皮が剥けるのは 陰蹻脈・左照海穴と任脈・右列缺穴に圧痛があっ ないという。治療すると確実に皮膚は良くなるの たので、寸 3・00 番鍼を置鍼した。 だが、なかなか改善しない。 ②腹部・上腕部・額部のアトピー患部も和製中国 最近仕事が変わった。 新しい会社は冷房がひどく 鍼で接触鍼を行い、次に温灸で温めた。 効いている。今まで頭が痒くなったことがなかっ (2)腹臥位 たのに痒くなった。新しい会社で事務作業とパソ ①腰部・膝窩部のアトピー患部に接触鍼と温灸を コンを長時間行って頭脳が疲れているためである 行った。 と思われる。 ②背腰部に診断按摩を行うと、右肺兪穴と左右胃 また法事や歓迎会があって過食した。排尿と排便 兪穴、 左腎兪穴に硬結・圧痛があったので刺鍼し、 が悪くなっている。 響きを得て置鍼して温灸を行なった。 冷え対策を十分に行って仕事の疲労を少なくし、 ・生活指導として、排尿の効果があるどくだみ茶 飲食の節制をしなければ改善しない。 と、ダイエットと排便の効果があるリンゴを勧め た。 ●無農薬野菜を食べて改善した/女児 11 歳 ・1 回目の治療の後、よく眠れて皮膚の落屑がた くさんあり、排便は特に改善していないが、排尿 鍼・温灸治療で 80%程度、アトピー性皮膚炎が は治療を受ける前よりもあったという。顔の赤み 改善していた女児が、夏休み中に 1 週間、千葉の が薄くなって、顔色が少し白っぽくなっていた。 農家にホームステイをした。 ステロイドは特に痒くなったところだけ付けるよ うに指示した。週 1 回の治療を続けている。 農薬の少ない野菜を食べたところ、 アトピーがほ とんど改善するまでに回復した。 しかし東京に帰ってお菓子などを食べる生活に戻 15 ●乾癬の改善例/男性 50 歳 その内側の左脾経・地機穴に 5 円玉くらいの大き さで湿疹ができていた。 この数年、乾癬がひどくなって病院をいろいろ変 地機穴は膵臓に関係したツボなので、 「何か脂っ えて治療を受けているが、どこもステロイドを使 こいものを食べませんでしたか?」と聞くと「きっ う治療で治らず、なんとか治したいとのこと。 と、あれだわ」と言って話してくれた。 全身に湿疹がある。 診ると最も酷い湿疹の部位は 「主人の分と二人前、鰻を買ってあって、夜、二 背臥位では顔面部と季肋部の肝臓の募穴・期門穴 人で食べようと思っていたら、主人は町内会の用 の周囲である。腹臥位では腰部の腎兪穴から大腸 事で急に出かけたの。行くといつも飲んで遅くな 兪穴にかけてである。 るので、多いかなと思ったけど一人で二人前を食 飲食の傾向を聞くと、ビールが好きで、飲むと期 べてしまったの」 門穴の辺りが痒くなるという。またラーメンなど 次の日から、 脚に湿疹ができて変だなと思ってい 脂っこい物が好きである。 たという。 ・治療 ・治療 (1)背臥位 ①和製中国鍼で、湿疹患部に接触鍼を行った。 ①湿疹の酷い部位、顔面部と季肋部に和製中国針 ②湿疹患部に温灸を行った。 で接触鍼を行った。 ③背部・膀胱経 2 行線の意舎穴(脾兪穴の外側) ②老眼が急に進んだということで、左右の足背 に刺鍼 部・肝経・太衝穴と期門穴に寸 3・00 番鍼で刺鍼 2 週間後、治療にかかったとき聞くと、あれから して響かせ、置鍼して温灸を行った。 脂っこい物を控えたら、3 日後に治ったとのこと。 (2)腹臥位 ①湿疹の酷い部位の腰部に接触鍼を行った。 ●赤ちゃんの時からのアトピー性皮膚炎/男児 3 ②背腰部に診断按摩を行うと、肝兪穴、腎兪穴、 歳 大腸兪穴に硬結・圧痛があった。これらのツボに 生後 3 ヶ月で、顔の頬の部位からアトピー性皮 置鍼し、腎兪穴を重点的に温灸を行った。 治療はいつも夜なので、 治療直後患者さんは眠だ 膚炎が起こった。 るくなり、家に帰って熟睡できるという。 今までステロイドは使わず、 漢方薬で悪化を抑え 週 1 回の治療を 2 ヶ月続けて、真っ赤だった湿 てきた。 疹の赤みが薄くなってきた。また盛り上がってい 左季肋部、肝の募穴。期門穴に掻き傷がある。 た湿疹が少し平らになってきた。 手がすごく冷たい。 鍼灸治療を始めてからビールは完全にやめ、 脂っ ・アトピー性皮膚炎の症状 こい食べ物も極力食べないようにしたら、便通と 主に上半身で、 肩部と前腕部の背側面にアトピー 排便が以前よりもよくなって 5kg痩せた。 がある。 今後、 鍼灸治療の継続と飲食の改善で順調に回復 顔面部、頚部、背部、下肢にはない。 していくと思われる。 風呂に入ったり、寝て温まると痒くなる。 ・アトピーを悪化させる食品 ●湿疹の改善例/女性 50 歳 小麦粉、大豆、牛乳、肉類などのタンパク質や脂 っこいもので悪化するので食べさせたことがない。 ・治療(時間 20~30 分) 定期的に治療にかかっている患者さん。 (a)背臥位 いつも足の三里穴に刺鍼するのでツボを見たら、 16 ①前腕部・下腿部に両手把握圧迫 置鍼と温灸 ②左期門穴の掻き傷の部位に、寸 3.00 番鍼で置 左右志室穴、大腸兪穴 鍼して温灸 1 寸 3 分 00 番鍼を 1cm刺入して置鍼して温灸を ③前腕部、肩部のアトピー患部に接触鍼と温灸 行なった。 ・治療中、手足が温かくなって気持ちよくなるせ 接触鍼と温灸 いか、目がトロンとしてウットリしている。 膝窩部、臀部 ・治療経過 ・治療経過 3 回の治療で、アトピー性皮膚炎が 50%改善して 2 回治療して排尿量が多くなって、膝窩部のアト きた。 ピーが改善してきた。排便が硬いというので、乳 今まで風呂に入ると熱がってすぐに出ていたの 酸菌飲料のヤクルトをすすめた。 4 回治療して便通がよくなってきて、肩部や肘部 が、ずっと入っているようになった。 夜、寝ていても痒くないようで、途中で目を覚ま のアトピーが改善してきた。 すことなく朝まで寝ている。 治療継続中。 ●アトピー性皮膚炎/女児 6 歳 ●アトピー性皮膚炎の改善/22 歳 学生 以前からあったアトピー性皮膚炎が、1 年前から ①膝窩部(腎経・陰谷穴、膀胱経・外委中穴) ②臀部 悪化した。ステロイド軟膏を使用して症状を抑え ③肩関節前部 ていたが、人に会うのが嫌になって、学校も休み ④上前腸骨棘部 がちになり、夜中にコンビニに行くのが精一杯と ⑤肘内側部(肺経・尺沢穴) いうウツ的精神状態になった。 ⑥前頸部 [症状] ・問診(好きな食べ物がアトピーを悪化させてい ・アトピー性皮膚炎は腹部と大腿内側部に出てい ることが多い) る。 (1)大好きな食べ物は何ですか? ・上腹部、胃の募穴・中脘穴に圧痛があり、腹部 ①漬物などの塩辛いもの 全体が冷えている。 塩分の摂り過ぎで、腎を弱くしてオシッコが十分 ・足部胆経に自覚的な冷えあり、足部全体が冷え に出てこない。腎の弱りが膝窩部のアトピーにな ている。 っている。 ・背部・肝兪穴周辺を触れられるとくすぐったい。 ②甘い物 ・背腰部全体、触られると嫌な感じという。 排便は硬くて困難。 [飲食] 甘い物が大腸を弱らせて便秘になり、 さらに陰陽 ・外食が多い。ノドが渇くので、お茶やオレンジ の関係で肺を弱くして肺経の部位にアトピー性皮 ジュースを多飲している。 膚炎を発生させている。 [治療] ・治療(30 分治療) ・背臥位 (1)背臥位 左右曲池穴と右足三里穴・陽陵泉穴に寸 3・00 接触鍼と温灸 番鍼を刺鍼して響きを得て置鍼し、 温灸を行った。 上前腸骨棘部、肘内側部、肩関節前部、前頸部。 腹部と足の冷えが改善した。 (2)腹臥位 腹部と右大腿内側部のアトピー患部に、 和製中国 17 鍼をつまんで、接触鍼を行った。 鍼。 ・腹臥位 ・右陰谷穴、外委中穴に置鍼。 この 3 穴に温灸を行った。 硬結・圧痛のあった肝兪穴と腎兪穴に刺鍼して温 灸を行った。 鍼灸治療を続けながら、 養生法として体を温める 抜鍼して背部を触ると、 くすぐったさが無くなっ 必要があると判断し、毎日お風呂に入ることをア ていた。 2 回治療したところ、少し元気がでて ドバイスした。 最近、 頭の痒みがなくなっている。 学校に行けるようになった。現在、治療継続中で あるが、治療して 2~3 日はアトピーの痒みがな ●アトピー性皮膚炎悪化の症例/女性 31 歳 いと言っている。 [養生法] 会社の同僚と夜、 焼肉とニンニクをたくさん食べ ・できるだけ自炊をして、化学物質を含んだ物を た。次の日、朝から胃がもたれ、だいぶ良くなっ 食べないこと。 ていた左頸部と左肘内側部・尺沢穴のアトピー性 ・腹部が冷えているので、冷たいものを極力飲ま 皮膚炎が、寝ているときに痒くなって掻いて悪化 ないこと。 した。 ・厚手の靴下を履いて、足を温めること。 胃の弱りからこの部位のアトピーが悪化すると いうことで、アトピーの原因は飲食の不節制が原 ●アトピー性皮膚炎の鍼灸治療 因と思われる。 治療はアトピー患部の接触鍼と温灸が痒みの軽 スギ花粉の時期はクシャミ・鼻水、目の痒みであ 減に最も効果がある。 った。 アトピーが悪化したとき鍼灸治療を行うと、帰っ 4 月後半、ヒノキ花粉になってから鼻や目の症状 てから患部から皮膚がボロボロとむける。 が無くなって頭が痒くなったという。 皮下から健康な皮膚ができてきて、 表面の古いア 右下肢膝窩部の陰谷穴と外委中穴に湿疹がでて トピーの皮膚が剥がれ落ちるものと考えられる。 いた。 下腿内側アキレス腱部を指圧すると指の痕がつ ●最近のアトピー性皮膚炎の悪化の例 いた。 (1)犬を飼っている人の車を運転して悪化した。 腰部に診断按摩を行うと、右腎兪穴に硬結・圧痛 があった。腎の弱りから足の浮腫みと右膝窩部の 80%アトピー性皮膚炎が改善している女性。32 湿疹、さらに頭部は膀胱経の流注部位(膀胱経は 歳。 腎経と陰陽の関係)なので痒みが出たものと考え られた。 子供の頃から犬や猫に近づくとアトピーや喘息 【治療】 がでていた。 1.背臥位 最近、 アトピーがよくなってからは犬や猫に近づ 頭部に和製中国鍼を鍼先 1cm 出るようにつまん いてもひどく症状は出ていなかった。 犬を飼っている友人の車を 1 時間ほど運転する でリズミカルに叩打して接触鍼を行った。この接 触鍼は痒みの軽減に効果絶大である。 ことになった。 2.腹臥位 運転中から何か空気が嫌だなーと思い、 肘に腫れ 右腎兪穴に 1 寸 3 分 00 番鍼で刺鍼して呼吸に合 ぼったい感じが起こった。終って家に帰って来た わせて雀啄すると右足底部に響いた。そのまま置 ら、急にまぶたと唇が腫れてきて頸と肘が痒くな 18 り、悪化してしまった。 行い、その後、温灸を行った。 ②腹の季肋部と肘内側部に診断按摩を行い、硬 (2)この 2 年間、症状は改善していた女性。 結・圧痛が強くあった腹部の期門穴と肘の曲沢穴 今年は夏が暑かったせいか、 秋から花粉が飛んで に置鍼して温灸を行った 花粉症の発症と同時に、治っていた頸のアトピー (2)腹臥位 性皮膚炎が少し痒くなってきた。 ①膝の膝窩部に接触鍼と温灸を行った。 ②背腰部に診断按摩を行うと、肝兪穴、胆兪穴、 (3)主婦湿疹の患者さん。 胃兪穴、志室穴に硬結・圧痛があったので、寸 3・ 冬の時期は冷たい水を使うことが多く、 また空気 00 番鍼で刺鍼して響きを得て置鍼し、温灸を行っ が乾燥しているので、どうしても手が荒れてハン た。 ドクリームを塗っても手に湿疹が出てしまう。 ・接触鍼をして温灸をすると、数分間、痒みが起 こるが、 治療終了した時点では痒みは消えている。 (4)忘年会続きで飲み過ぎ食べ過ぎが多くなっ ・治療前にアトピー患部に赤味があったのが、治 て、前頸部のアトピーが悪化した患者さん。 療後は赤味が消えて白っぽくなっていた。 接触鍼と温灸治療を行うと、次の日、ボロボロと ・寝ていて無意識に掻いていることがなくなった 皮が剥けたという。鍼灸治療を行うと、すぐに下 といっている。 から健康な皮膚ができてくるので、表面の古い皮 ・夜の食事を少なくして、2kgほど体重が減っ 膚が押し出されて落屑する。 た。 ・週 1 回の治療回数で、3 ヶ月間治療して約 60% 当院のアトピー性皮膚炎の基本的鍼灸治療は、 和 製中国鍼による接触鍼と温灸である。 改善した。 ●最近のアトピー性皮膚炎の改善例 ●最近のアトピー性皮膚炎の改善例と悪化例 17 歳の頃からアトピー性皮膚炎があって、ステロ (1)今年、4 月から週 1 回の治療回数で治療に イドをずっと使ってきた。この 2~3 年は比較的 かかって、約 70%改善した女性。 おさまっていた。 やや肥満があったのだが、自然にやせることがで 他に喘息とか蕁麻疹などのアレルギーはない。 きた。 本人は特別にダイエットしたつもりはなく、 今年の春から就いた仕事が、 夜遅くまで勤務する 5 ヶ月経って自然に 5kg ほど体重が減っていた。 ことと、上司がひどく乱暴な言葉で作業の指示を アトピーの改善として、背腰部の消化器関係のツ するので、疲労とストレスが重なってアトピーが ボに鍼・灸を続けたことが、同時に体重減少につ 再発した。 ながったものと考えられる。 最もひどい部位は、腹部で季肋部の肝の募穴・期 門穴の周囲、肘内側部、膝の膝窩部である。 (2)アトピーがほとんど治っていた女性、29 肘内側部と膝膝窩部はアトピーのよく発症する 歳 部位であるが、腹部の季肋部に出ているのは、ス 肩甲間部の右神道穴と右肘の心経・少海穴にアト トレスが肝臓に影響したと考えられる。 ピーが発生した。平常から脈拍が少なめで、1 分 ・治療 間に 50 拍台である。非常に疲れると 40 台に下が (1)背臥位 ることがあるという。 最近、残業が続いて毎日帰宅が夜 10 時から 12 ①腹の季肋部と肘内側部に和製中国鍼で接触鍼を 19 時になっている。 ●最近のアトピー性皮膚炎の悪化例と改善例 最初、右肘内側部の心経、少海穴にアトピーが現 れた。1 週間後、右肩甲間部の神道穴から肩甲骨 (1)週 1 回のペースで治療にかかっている男性。45 の天宗穴に発生した。この夏、ひどく暑かったの 歳。 で、心臓に負担がかかっているのではないかと思 い、 「最近、特に動悸や息切れがありませんか」と 年末から年始にかけて、 いつもより飲食の機会が 聞いた。 「それはないけど、電車に遅れそうになっ 多く、今年の 1 月になって左頚部の小腸経・肩中 て急ぎ足で歩くと、すごく汗をかいて会社に行っ 兪穴から側頚部にかけてアトピーが発生した。特 て困る」という。 に汗ばんだり、寝ると痒くなるという。 中医学に「汗は心の液」とあり、汗をかきすぎる アトピー患部に接触鍼と温灸を毎回行っていたが、 ことと、心臓に関係する肩甲間部や肘にアトピー 2 月になって夜の飲食の機会が減ったと同時に、 がでたことで、夜遅くまでの仕事が心臓に負担を みるみる改善して 3 月に治った。 かけていると考えられる。 (2)アトピーが再発した例。女性。33 歳 (3)アトピー90%くらい改善 2 年前にアトピーを治療して完全に治っていた。 膝窩部の委中穴と陰谷穴にアトピーが発生した。 また来院したのでいろいろ聞くと、仕事先でスト 最近、足がむくむという。長く治療にかかってい レスが多くてアトピーの原因になることが分かっ る患者さんなので、ある程度、生活状況が分かっ ている砂糖入りコーヒーやチョコレート、脂っこ ている。 い物を食べてしまったという。 ご主人が暑がりで、寝ていて冷房を強くかけるの 現在、 これらの食べ物を止めて治療を受けて回復 で、 寝ている間に体が冷えて腎が弱り、 その結果、 に向かっている。 足のむくみと腎と膀胱に関係の深い膝窩部にアト ピーが発生したと考えられる。 ●アトピー性皮膚炎の治療 ●ステロイド軟膏を止めて急速に改善してきた例) 仕事がハードでストレスの多い女性。28 歳 (1)アトピー患部の硬結・圧痛穴が重要な治療 穴である。 アトピー性皮膚炎の患部に、診断按摩を行うと必 週 1 回の治療を 2 年続けているが、少しは良く ず硬結・圧痛がある。 なっているものの、なかなか完治しない。 湿疹の患部がグジュグジュしていなければ指圧 詳しく生活状況を聞くと、 ちょっと痒くなるとス でもよい。 テロイド軟膏を塗っていたという。 一番の硬結・圧痛部位に刺鍼して置鍼し、温灸を 痒くても手で強く圧迫するとか指先で叩くとか 行うとより効果的である。 して、絶対にステロイドを塗らないで我慢するよ 治療して腹鳴の起こることが多い。 う指導した。 ステロイドは一時的に痒みを解消して皮膚を改善 (2)アトピー患部の硬結・圧痛穴に経絡的に関 するように見えるが、鍼灸治療をしてもなかなか 係する背腰部兪穴が重要な治療穴である。 治らないアトピーになってしまう。塗らなくなっ アトピー性皮膚炎の患部のツボから、経絡的に臓 てから 2 ヶ月くらいたって、 急速に改善してきた。 腑の弱りと背腰部兪穴の関係を予想することがで きる。 20 4)好きな食べ物はチョコレート、辛い味のもの 例:肘関節部の尺沢穴の湿疹から肺兪穴の硬結・ 圧痛を、また募穴・中府穴にも硬結・圧痛のあるこ 5)就寝中、痒くて掻き、熟睡ができない とが予想できる。 6)汗をかくと悪化する 7)アレルゲンは、ダニ、ハウスダスト、猫の毛 (3)アトピー患部が関節部であれば、その関節 など の AKA も治療に重要である。 8)自覚的冷えは、足部 AKA を行うと気持ち良く感じて、治療のあと赤 9)触診により、冷えは右中府穴、膻中穴、中脘 みが軽減している。 穴部である。 例:肘関節部の尺沢穴の湿疹に対して、腕橈関節 ・経過観察 1 回目 の離開法を行う。刺激量は、響きや痒みが半減す るまで行う。 治療前に肘に痒みがあったのが、治療後、痒みが なくなった。1 回の治療で痒みが軽減したので、 (4)手のアトピーは、胸肋関節・脊椎椎間関節 治療を継続することを決めた。 の AKA が重要である。 3 回目 例:肘関節部の尺沢穴の湿疹に対して、第 2 胸 結婚式に出席して、 化学繊維のストッキングをは 肋関節あるいは第 3/4 椎間関節の AKA が有効で いたところ、大腿内側部に痒みが起こったが、ひ ある。 どく掻き壊さずに済んだ。 5 回目 ●アトピー性皮膚炎の治療 汗をかくと、肘と頚に痒みが起こるが、治療に かかってからひどく痒くならない。 肘内側部と頚部の慢性的なアトピーが、週 1 回 6 回目 の治療を 4 ヶ月続けて 70%ほど改善した。 ステロイド入り軟膏の使用量が少なくなった。 8 回目 改善の主な要因は、鍼灸・AKA 治療を休むこと なく継続してかかったことと、治療を始めてから 唇の周囲に少し吹き出物があったのが、 ほとん 食事に気をつけて、2 ヶ月ほどで 3.5 キロ体重を ど無くなった。 減らしたことである。 11 回目 ・患者 体重が減って、アトピーが大分改善してきた。 女性 30 歳 無職 13 回目 治療にかかって、2 回目の月経だったが、楽だ ・症状 肘内側部(曲沢穴、尺沢穴)と頚部(前・側部) った。 のアトピー。 ・現在も治療継続中で、治療経過とともに順調に 10 数年来の慢性アトピーで、皮膚が厚くゴワ 改善に向かっている。 ゴワして黒ずんでいる。 初診は 6 月で、アトピー患部はジュクジュク ●アトピー性皮膚炎の鍼灸治療の要点 していた。 ・身体症状および生活状況 (1)痒みを止める治療 1)過食気味で、やや肥満 ・痒い部位に接触鍼を行なう。 2)足にむくみがある ・痒い部位と経絡的に関係する、背腰部の経穴(ツ 3)塗り薬は、ステロイド入り軟膏を使っている ボ)を治療する。 21 (2)皮膚炎を改善する治療 すると小便が多く出るようになった。 ・皮膚炎の部位に接触鍼を行なう。 塩辛が大好きだったが、 最近は味が濃く感じて食 ・皮膚炎の部位と経絡的に関係する、背腰部の経 べられなくなった。 穴(ツボ)を治療する。 全身の痒みが軽くなって、 太谿穴の湿疹が顕著 (3)アトピーの体質を改善する に改善してきた。 ・免疫正常化の経穴の治療 関元兪穴、大腸兪穴、三焦兪穴、肝兪穴、膈兪 ●昼食をピザやハンバーグを食べないで果物にし て改善してきた。男性 33 歳。 穴、厥陰兪穴、肺兪穴、百会穴など。 ・冷えのある部位の治療 京門穴など 昼食は近所に出かけると、洋食的なファーストフ ・排便排尿を正常にする治療 ードしかなくて、ピザやハンバーグなどを食べて 志室穴、腎兪穴、大腸兪穴、膀胱兪穴など。 いる。 (4)痒みを軽減する自己治療 自分で玄米を炊いておにぎりを持っていって ・痒い部位を指先で叩く 食べるように勧めたが、なかなかできない。そこ ・痒い部位を手の平で圧迫する でりんごやバナナなどの果物を食べるよう勧めて、 ・爪楊枝接触鍼を行なう それにしたら痒みが少なくなってきた。 ・痒い患部に包帯を巻く ・痒い患部に使い捨てカイロを貼る ●海草をお酢味で食べるようにしたら眠れるよう なって改善してきた。女性 34 歳 (5)痒みの発生を抑える生活 ・アトピーを悪化させる食品を摂らない(チョコ レート、砂糖、油脂など) 野菜を中心に食事するようなってアトピーが少し ・便通を正常にする食事 (玄米食) と生活習慣 (朝、 ずつ改善してきた。 トイレに坐る) しかし、なかなか眠れないという。食事の内容を ・身体に冷えの部位がないようにする(厚着をす 聞くと海草類はあまり摂っていないというので、 る、冷房にかからない) お酢味で白砂糖を入れないで、ハチミツなどで甘 ・精神的ストレスは、夢中になれる趣味で解消 い味を付けて食べるように勧めた。 ・化学物質を摂取しない(薬、飲食、水道水、空 ミネラルを摂ることが良かったのか、以前よりも 気、シャワーなど) 眠れるようになった。 ・化粧をしない ・ダニのいない清潔な部屋にする ●足浴をするようになって、よく眠れて寝ていて ・ペットを飼わない 掻かないので改善してきた。女性 33 歳。 ●全身がアトピー性皮膚炎で特に左腎経・太谿穴 朝、シャワーだけの習慣で風呂には、たまにしか に湿疹がひどい男性 28 歳。 入りませんという。 そこで足浴を勧めた。 食事では好きな塩分を控えてもらった。冷えに対 寝る前にテレビを見ながら 15 分間くらいすると して徹底的に温めるようにした。下半身の下着を 体が温まってきて、それで寝ると深く眠れて、あ 重ね着し、靴下も2枚履き、寝る前に必ず風呂に まり掻かないという。 入って身体を温めるようにした。 22 ●腕の滲出液がひどい 女性 33 歳 うになった。野菜にシソ油を付けて食べるように なって改善してきた。 女性 12 歳 上腕部・前腕部・手部と頸部にアトピーがひどく、 この部位から滲出液が大量に出る。 少しずつ改善しているが、 一進一退が続いていた。 手と足が非常に冷えている。 学校給食で食品添加物の入っているおかずや揚 排尿は1日に3~4回で少ない。 げ物がたまに出て、残すのが嫌いなので食べてし 医師との話しで、 風呂に入ると痒くなると言うと、 まうことが改善できないひとつの原因である。 風呂には入らない方がよいと説明されている。 家の夕食で、味を付けたおかずを食べないで、生 風呂に入らないことで特に内臓の腎が冷えて尿 野菜だけを味を付けないで食べるように勧めた。 量が少なくなり、溢れた水分がステロイド軟膏を どうしても味を付けるときは、減塩味噌かお酢を たくさん塗ったアトピー患部から滲出液として出 少量使うこと、 またシソ油が良いことを説明した。 ているものと推測された。 この夕食を1週間続けると、 少し良くなってきた。 手が冷えているので冬の間は手袋をはめるよう 2週間続けたら、さらに良くなってきた。 に勧めたが、手の甲もアトピーで滲出液が出るの で手袋がくっつくのではめられないという。 ●ヨーグルトはアトピーを改善させない。女性 ・改善方法として説明したこと 30 歳。 ①痒くなっても風呂に入ること。何回か繰り返し ているうちに身体が芯から温まるようになると痒 ヨーグルトが好きで、食べると便通もよいといっ みが軽減する。 て摂り続けているが、なかなかアトピーが改善し ②ご主人の味の好みでおかずは塩分が強いという ない。 ので、塩分を使わない自分だけのおかずを作って 以前、 3歳の男児が顔面アトピーで治療にかかっ 食べること。 ていたが、 ほとんど改善しないで治療を終了した。 母親に聞くと、 「食べ物はものすごく気を付けて ●腎の弱いアトピーの患者さんが、冬の寒い時期 います。ただヨーグルトは大好きで、これを与え に改善してきた。 男性 33 歳。女性 32 歳。 ないと泣きじゃくるので食べさせています」とい う。 腎に弱りがあって尿量が少なく、志室穴に硬結・ 最近、 ある女性の患者さんから聞いた話しである 圧痛のある男性と女性の患者さん。 が、 「自分の家で飼っている犬がアトピーのような 昨年の9月から治療にかかって少しずつ改善し、 湿疹ができて治らない。ヨーグルトが好きで与え 今年の1月、非常に気温が下がったが、足は冷え ている。 冷えではなくなって、男性は約 50%、女性は約 友人からヨーグルトはアレルギーになるから与 80%改善した。 えないと治るよと聞いて、 与えないようにしたら、 男性患者さんは主に食生活に注意して外食をほ その通り、治った」 とんどしないようにした。 この話しを聞いて、乳酸菌を摂り入れることとし 女性患者さんは、冬でも毎日1~2時間、歩くよ てはよいのだが、やはり牛乳からできているので うにした。 アレルギーの原因になっていると考えられる。 鍼灸の治療回数は週2回ペースである。 ●かぜ薬でアトピーが悪化した。男性 39 歳。 ●夕食で根菜類をスティックにして生でたべるよ 23 急にのどが痛くなったので、 こじれたら大変だと ● アトピー性皮膚炎の原因と考えられる事 思って医師の治療にかかって抗生物質を飲んだ。 のどの痛みは 3 日で治ったが、少しずつよくなっ 女性 29 歳。仕事:パソコンでイラスト作成 ていた肘の内側部と前頸部のアトピーが悪化した。 アトピー性皮膚炎が最もひどい部位:前頸部(浸出 液が出る)、左耳、後頸部、頭部。 ●毎年、梅雨の時期に悪化する。女性 28 歳。 アトピーの原因:睡眠不足、外食(食品添加物や油 使用の食べ物など)、甘いものなど。 昨年秋に、 ほとんど改善して治療を終了していた。 今年6月になって、 また少し悪化してきたので治 身体状況:排尿量少ない、便秘、生理がない、手 足が冷える。 療にかかることになった。 治療穴:照海穴、上巨虚穴、左志室穴、左右胃兪 食べ物はすごく気を付けているので、 食べ物が原 穴、肺兪穴。 因ではないという。 改善の要因:玄米食にして体重が減少した。 足と腰を触ると、6月にしては冷えている。 南蛮毛、 スイカなど排尿をよくするものを摂った。 女性は冬から春になると薄着になる。冬の間、週 自分で爪楊枝接触鍼をした。 に2回くらい風呂に入っていたのがシャワーです 2週間に3回程度の治療を5カ月間、 休まずに行 ませてしまう。 った。 梅雨で肌の水分が蒸発しないで残っているとこ ろに気温が下がると、冬ほどの寒さを感じなくて ● アトピー性皮膚炎の原因と考えられる事 も、肌の水分が冷やされて身体に冷えが入るので はないかと思われる。 ⑴ 化学物質 予防法としての対策は、 あまり薄着をしないこと、 ① 食品添加物(保存料、着色料、甘味料など) 風呂に入ること、肌が汗ばんでいるとき冷房の効 ② 大気汚染物質(ディーゼル排気ガス、工場の煤 いていることころにいないこと、ビールなど冷え 煙など) た飲み物を摂らないことなどをアドバイスした。 ③ 水道水の塩素 アトピー性皮膚炎を含むアレルギー疾患は、1960 ●日帰りバス旅行で、バスの中の冷房がすごく効 年以降、化学物質が大量に使われるようになって いていてアトピーが悪化した。女性 30 歳。 から増えた。筆者は化学物質が免疫異常(ヘルパ ーTh2細胞の増加)を起こしてアトピーが発症す 顔のアトピーがよくなって人前にでても気になら ると考えている。 なくなり、日帰りバス旅行に参加した。 ⑵ 動物性食品 バスの中はとても冷房が強かった。眠って冷える ① 牛乳と乳製品(ヨーグルト) といけないと思いながら 30 分くらい寝てしまっ ②肉 た。 ③脂 目的地に着いて降りたとき日が照っていたのに 動物性タンパク質は腎臓を弱らせていると推測 体が温かい感じがしない。 される。 家に帰ってきてお風呂に入ったが、 いつもより温 ⑶油 まるのに時間がかかった。 化学溶剤で抽出した油を高温で調理するとトラ 寝ている間に頚と顔を掻いてしまったと言う。 ンス脂肪酸が発生し、細胞膜の脂質を変化させて アレルギー体質を作る。 24 肓門の指圧で改善した。女性 28 歳。 ⑷ 白砂糖 白砂糖は腸壁を傷付けて、 未消化のタンパク質を 吸収させ、このタンパク質に免疫が過剰に反応す 手のアトピーは右肘内側部・心包経・曲沢と右手 る。 関節背側部・三焦経・陽池であった。 このアトピーに対して、肩甲間部・右厥陰兪の硬 結・圧痛に 30 秒間くらい母指持続圧をしたら、 ● 改善例 曲沢が温かくなった後、痒みが一時増した。持続 ⑴ よく噛むことで前腕部・心経、少海穴から神門 圧を続けると温かみも痒みも消失した。陽池に対 穴にかけてのアトピーが改善された。男性 33 歳。 して腰部・肓門の指圧でも同じ反応が起こって改 玄米を一口、200回噛んで食べたら、心経のア 善した。 トピーが改善したという。 この患者さんは⑴の関節運動法であごのアトピー 推測:心経は心の蔵から発生する。そして心は舌 が軽減した症例と同じ患者さんである。 に関係がある。よく噛むことで舌が動かされて心 治療の手技が違っても、 響き的な感覚は同じであ を強化したことが前腕部・心経のアトピーを改善 った。 したと推測される。 ●上唇の痒みは便秘が原因だった。女性 34 歳。 また玄米はビタミンとミネラルが多いのでアレル ギーの改善につながった。 焼肉を食べて便秘になったら上唇の真ん中、 水溝 穴が痒くなった。 ●あごの下のアトピーが頸椎1/2椎間関節の回 水溝穴は大腸経が左右から交わるところで、 大腸 旋・前方滑り法の手技で痒みが軽減した。女性 経の反応の出る部位である。 28 歳。 治療を継続している患者さんで、 手の合谷の筋が、 いつもより硬くなっていたので鍼・温灸を十分に アトピーは前頸部の、のどとあごの屈曲の部位で 行った。 ある。 この部位に関係する関節は頸椎1/2椎間関節で ある。 背臥位で第2頸椎棘突起の変位を調べた。 片手を 後頭骨から足方に滑らせると後方に変位(出っ張 っている)していて、両手で左右から触診すると 右に変位していた。 手技は左手で左顎を軽く固定し、 右手の人指し指 と中指で第2頸椎棘突起を右側からタッチして左 側に圧迫して回旋変位を矯正し、次に前方・天井 側に圧迫して後方変位を矯正した。 持続的に30秒間くらい行うとアトピーの患部 が温かく感じて、痒みが一時増した。さらに手技 を続けると痒みが軽減した。 ●曲沢のアトピーが厥陰兪で、陽池のアトピーが 25
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