マイスター11期通信 第20号 多祢寺山と舞鶴自然文化園

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20
01
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((H
2
6
)
H26)年
年
11月1日
20号
“多祢寺と舞鶴自然文化園の植物観察” 講師案内人 マイスター講座生 吉川悟氏
以下、吉川悟氏が前調査され作成されたレジュメをもとに掲載させていただきました。
1. 舞鶴市
今日訪ねる多祢寺山は舞鶴市にありますが、舞鶴市は京都府
の北部、日本海に面した港湾都市です。人口は30年ほど前が最
高で10万人近くあったのですが、年々減少して、今年は85000
人位となっています。市域は西舞鶴と東舞鶴の二つに大きく分
かれおり、西舞鶴は戦国末期には細川氏が支配していましたが、
江戸期に入ると牧野氏が入城し、36000石の城下町(田辺城)と
して発展してきました。一方、東舞鶴は明治になって軍港が開
かれ海軍の町として発展してきました。東舞鶴港には今も海上
自衛隊の基地があり、日本海に面した唯一の基地として、我が
国5大海上自衛隊基地の一つとなっています。因みに町の名前の舞鶴は田辺城の別名を舞鶴城といったこと
からつけられたと言われていますが定かでないそうです。観光地としての舞鶴は西が田辺城跡を中心に、東
は赤レンガ建物群があげられます。舞鶴引揚記念館も訪れたいところの一つです。
2. 多祢寺山概観
多祢寺山は標高556.3mとそれほど高い山ではありませんが、
一等三角点が設置され、天測点も設けられていて、地理や天文
観測の基地として重要な位置を占める山です。この山の名前は
通称多祢山たねやまと表記されていますが、地理院の点名とし
ては多祢寺山たねじやまとなっています。山頂は広い台地になってい
ますが、かつてここに軍事基地が設置され、今も砲台跡が残っ
ています。山頂からの視界は一等三角点(右写真)が設けられて
いるだけあって展望がよく、東には若狭富士の青葉山、西には
丹後半島、南には丹波富士と呼ばれる弥仙山、そして北にはオ
オミズナギドリで有名な冠島を望むことができます。
3. 三角点について
国土の位置(緯度、経度、標高)を正確
三角点の設置数と柱石の大きさ
大阪府の 京都府の
に表すために設置されているのが三角
三角点
三角点
等級 設置数 設置間隔 柱石の一辺
点です。これは明治になって先進国に学
1等
974
約25km
18㎝
4
7
ぼうと、最初は外国人技師を雇って測量
2等
5048
約8km
15㎝
26
69
を開始しましたが、その後国土の測量は
3等
31970
約4km
15㎝
186
416
国にとって非常に大事な事項であると
4等
71431
約2km
12㎝
290
769
いうことから、軍の参謀本部の中に陸地
合計
109423
506
1261
測量部を置いて三角点網を整備してい
きました。戦後軍隊が解体されてからは、国土地理院に移管さ
れ現在に至っています。
三角点は重点標識ごとに1等から4等まで全国で約11万か所
位設置されています。最近ではこれ以外にGPSによる測量点と
して電子基準点が全国に張り巡らされてより正確な国土表示
がなされています。明治の初期は陸地測量部だけではなく、国
有林地などには当時の農商務省山林局によって設置された三
角点や御料地に設置された三角点もありました。信州の八方尾
根には今も山林局の三角点が残されています。一等三角点に当
たるものは主三角点、二等は次三角点、三等は補点と表してい
たとのことです。
* 天測点について…星(恒星)を観測して経度、緯度を決め
る測量を天文測量といいますが、天測点とはこの天文測量を行う測量標識のことです。この天文測量は三角
点測量で得られた値を規定するために行われたものです。昭和26年から昭和33年の5年間にわたり、国土地
理院が全国に48か所の天測点を設置しました。天測点が設置された当時の観測機器は重く、特別の観測台を
必要としました。そのため、八角形や四角形の頑丈な台座が設置されたとのことです。しかし、現在ではGPS
などの方法により求められるようになり、今は天測点での観測は行われていません。
4. イヌシデの巨木林について (右写真)
シデ類3種の見分け方
多祢寺山を有名にしている一つ
種名
側脈数
果苞の形
果実の形
その他
としてイヌシデの巨木林がありま
アカシデ
7~15
基部の両側に突起
花穂は疎らで果実は多い
葉の先端はとがる
す。巨木といってもイヌシデ自体
イヌシデ 12~15 ナイフ形
花穂は疎らで果実は少ない
葉の付け根に毛が多い
は直径30cm、高さ15m 位が平均
クマシデ 20~25 円型で鋸歯有
花穂は密で果実は多い
的な大きさですから、スギやブナのように巨大にはなりませ
ん。それと群生することが珍しいので、直径1m にもなるイ
ヌシデの群生は大変珍しく、ここのイヌシデ巨木林は舞鶴市
の天然記念物に指定されています。
シデの仲間にはアカシデ、イヌシデ、クマシデ等がありま
すが、ここで少しシデの仲間の見分け方について、おさらい
しておきます。平均して葉の一番小さいのがアカシデで、こ
の葉は先が尖っています。イヌシデは特徴が少なく葉の裏や
葉柄に毛が多いのが特徴といえますが、これも色々で識別の
判断の一つに過ぎません。クマシデは葉脈の数が 20 以上と
なっていますから一目瞭然です。アカシデとイヌシデは果苞
があれば簡単に区別できます。
5. 多禰寺について
大浦半島の山中に多禰寺という立派なお寺がありますが、こ
のお寺の創建は古く、用明天皇の時代の 585 年に聖徳太子
の弟である麻呂子皇子によって開基されたとのことです。蘇
我馬子が我が国最初の仏教寺院である飛鳥寺を建てたのが
587 年であることを考えると、
こんなに都から離れた土地で
仏教寺院の建立が始まっていたと考えると、何とも不思議な
感じがします。現在は真言宗東寺派の寺院で、木造金剛力士
立像は重要文化財に指定されています。
6. 舞鶴自然文化園について
舞鶴自然文化園は舞鶴市の植物園として開園されていま
すが、以前は大きな農場でした。それを西部グループが買取
り、総合リゾート施設として運営していたものです。
西武が撤退した跡地を舞鶴市が買い取り現在は市の植
物園として運営しています。この園で特に有名なもの
はツバキで、種類の多さ(1500 種、3 万本)では全国有
数ということです。もう一つアジサイ(50 種、5 万本)
も見逃すことができないくらい見事です。
今回訪ねるのは晩秋で、ツバキもアジサイもありま
せんが、メタセコイアの並木道は見事です。それとモ
ミジも何種類か見ることができます。特にイロハモミ
ジとよく似ているヤマモミジは、大阪周辺には野生で
は見られないので、ぜひじっくりと観察してください。
オオキンレイカ(オミナエシ科) … 先日の瀬戸口
先生の講義で京都府カテゴリーでは絶滅寸前種である
青葉山のオオキンレイカをこの施設で育てられている
とお話されていましたが、網越しに見学することがで
きます。
7. 今回見られる主な植物
今回の多祢寺山では何と言ってもイヌシデ巨木林が一
番の見どころですが、それ以外にもいくつかあげるこ
とができます。
① ミヤマシキミ … 登山道に入ると足元に赤い実を
つけた小低木が現れますが、これがミヤマシキミです。
この木は雌雄異株で実をつけていない木も多いです。よ
く似た名前のシキミはシキミ科ですが、こちらはミカン
科です。しかし、これもシキミほどではありませんが有
毒で食べると痙攣を起こすとのことです。ということで
シカが食べないので残っているということです。
また、我が国ではあまり観賞用とされませんが、欧米
では観賞用によく栽培されているとのことです。
② ミズナラ … これも山道に入って間もなくすると、
足元にかなり大きなドングリが落ちているのに気が付
きます。このドングリを落とした木はミズナラです。寒
冷地のナラ類で大阪周辺では金剛山の山頂付近で見ら
れるぐらいです。コナラと比べて成長が遅く、その分材
が固いので家具材としてよくもちいられます。明治期に
は北海道のミズナラがジャパニーズオークとして大量
に西欧に輸出されたそうですが、今アンティークなヨー
ロッパ家具として輸入しているものの中にはこの材が
用いられているものがあるとか。ウイスキーの樽にも用
いられています。
③ 山頂の周りで見られる樹木 … 山頂は裸地となっ
ていますが、その周りは樹木に覆われています。参考ま
でに何種類くらいの木が生えているのかを数えてみま
したが、タニウツギ、ヤマボウシ、サルトリイバラ、ア
ズキナシ、クリ、クマノミズキ、ヌルデ、ウメモドキ、
ウリハダカエデ、カラスザンショウ、コナラ、イヌシデ、
ウツギ、ノブドウ、キブシ、ノイバラ、ナガバモミジイ
チゴ、マユミ、タンナサワフタギ、コブシ、カナクギノ
キ、クマシデ、サツキ、イヌツゲ、ヤマモミジ、クロモ
ジ、ドウダンツツジ、クサギ、サンショウ、ヒサカキ等
30種ほどもありました。
④ 紅葉し始めている木々 … 舞鶴は近畿でも最北端
ですが、眼下に見える海には暖流が流れていて暖かく、
内陸部ほど紅葉は進んでいません。それでもシラキ、ウ
リハダカエデ、ウリカエデ、ヤマウルシ、ハゼ、ツタ、
ヌルデ、サンカクヅル等の紅葉を楽しめます。
⑤ 草本類 … ヤマシロギク(右写真)、シラヤマギク、
ゲンノショウコ、ワレモコウ、オミナエシ、オトコエシ、
ツリガネニンジン、アキノキリンソウ、ノコンギク、リ
ンドウ、ヒヨドリバナ、アケボノソウ、ナギナタコウジ
ュ、キンミズヒキ、ツルリンドウ、アキノタムラソウ等
が見られます。
一口メモ
1.天気にも恵まれ、とても気持ちの良い山登りを楽
しむことがで きた。紅葉も始まっていたし。東舞
鶴の景色も素晴らしかった。イヌシデの巨木群に
は圧倒されたし、シデ見分け方も分かった。とっ
ても充実した観察会でした。
2.いつもながらの吉川さんの周到な準備と分かり
やすいガイドで楽しい一日を過ごすことができま
した。・500m程度の山登りで気楽に考えていたの
が思いの外しんどい山登り。いよいよ年かなと・・・。
3 種のシデについて現物も確認でき勉強になりま
した。
3.吉川先生にシデの葉のパウチや実を頂きありが
とうございました。初めての舞鶴、大浦半島。雨
も降らず、良かったです。
4.何とか天気もよく、樹木にキノコ、コケと忙しい
一日でした。文化園はまた花の季節に来られたら
良いなと思います。
5.雨の心配の中、多祢寺山登山ができたこと、シデ
の観察やカエデやドングリ、またイヌシデの群生
など大変良かったです。いつも楽しい企画ありが
たいです。
6.今日も心配していた雨に降られず一日楽しむこ
とができました。登山道も歩きやすく、所々紅葉
が始まっており、頂上からの眺めも最高で癒され
た一日でした。吉川さんありがとうございました。
7.初めて耳にした、
“多祢寺山“イヌシデの巨木
林には感激しました。豊かな自然に出会い、楽
しい観察会ができたましたこと、ありがとうご
ざいました。
8.当初は「雨」の予想であったが幸いにも降ら
れることもなく無事観察会を終えることがで
き良かったです。吉川さん、室山さん、ありが
とうございました。
9.自然文化園のツバキの多さ、多祢寺山のイヌ
シデの巨木林、見事でした。シデ3種の違いもわかり、天気ももち、良い講座でした。幹事さん、
ありがとうございました。
10.シデ3種の葉の
標本はとても分か
りやすく、立派な
物で大感謝です。
落ち葉の道をゆっ
くり歩いて、気持
ちよく過ごすこと
ができました。
11.今日は個人とし
てはめったに行け
ないような舞鶴の
大浦半島の多祢寺
山のイヌシデの巨
木林を訪ねました。
いつもながらの周
到な準備に感謝致
します。
12.心配した雨にも
降られず、ゆった
りと、少し紅葉も
始まった森を歩き、
存分に観察会を楽
しめました。同時
に森歩きも楽しめ
ました。天気の神
様に感謝!!
13.お天気に恵まれ
楽しい一日でした。
久し振りの参加で
した。下見等、大
変だったと思いま
す。ありがとうご
ざいました。
14.心配した天候も
晴れ男の私のお陰
か、雨は降らなか
った。ツバキの種
類の多さには驚い
た.イヌシデの巨
木林には、感動し
た。多祢寺山の登
山は急な登りの連
続で大変疲れまし
た。
15.初めて聞く、多
祢寺山に興味をも
ちました。並木が
きれいだったのに
説明が聞けなくて
残念でした。シデ
の葉の標本に感謝です。落ち葉と見比べてよ
くわかりました。
16.雨覚悟でしたが、何とか天気がもって、素
晴らしい秋気分になりました。吉川さんの話
で一層気分が高揚しました。ありがとうござ
いました。
17.天気に恵まれ(雨が降らず)に良かったで
す。文化園には、3 月のツバキの時期にもう一
度訪れて見たいです。
18.今日は雨の中の行動を覚悟していましたが、
一日大丈夫で幸いでした。紅葉の始まった静
かな多祢寺山散策。舞鶴自然文化園の散策も
大変よかったです。次はアジサイの頃にまた
来てみたいです。企画・案内をしてくださった吉川さん、大変ありがとうございました。
19.吉川さん、下準備からありがとうございました。舞鶴自然文化園は、ツバキが咲いておらず残
念でした。多祢寺山は眺望が素晴らしく、また、イヌシデも見事な巨木でしたが、しんどかった
です。
20.とにかく、雨が止み、
丁度良い天気となった
のが何よりでした。舞鶴
の秋を十分楽しむこと
ができました。いつも吉
川さんありがとうござ
います。
21.雨も降らず本当によか
ったです。ツバキの季節、
アジサイの季節、また来た
いです。
22.雨の予報で心配してい
ましたが最後まで、雨粒
に遭わず、紅葉も目にす
ることができ、心安らぐ
一日でした。
23.舞鶴は初めて来ました。
山頂からの景色も美しく、
色づき始めた木の葉にも
秋の自然からのプレゼン
トをもらった気がします。
思いもよらず、汗まみれ
になりましたが、雨に降
られずにすんでよかった
です。
24.今日の多祢寺山散策は
少しきつかったですが、
三角点の景色が素晴らし
かったですね。雨になら
ず本当に良かったですネ。
25.多祢寺山は静かで美し
い山でした。他のグルー
プに一組も出会わず、貸
し切り状態で、山を楽し
むことができました。
26.紅葉し始めた秋の山を
登りました。アカシデ、
イヌシデ、クマシデの葉
を吉川さんに頂いたパウ
チを見ながら見分けまし
た。実際の葉をそれと決
めるのは難しかったです
が、あれこれ考えるのは楽しかったです。