〔実 12 頁〕 特 許 公 報(B2) (19)日本国特許庁(JP) (12) (11)特許番号 特許第5771203号 (45)発行日 (P5771203) (24)登録日 平成27年7月3日(2015.7.3) 平成27年8月26日(2015.8.26) (51)Int.Cl. FI A61K 31/609 (2006.01) A61K 31/609 A61P 33/10 (2006.01) A61P 33/10 A01K 61/00 (2006.01) A01K 61/00 B A23K 1/18 (2006.01) A23K 1/18 102A A23K 1/16 (2006.01) A23K 1/16 303B 請求項の数9 (21)出願番号 特願2012-522639(P2012-522639) (全18頁) (73)特許権者 000004189 (86)(22)出願日 平成23年6月28日(2011.6.28) 日本水産株式会社 (86)国際出願番号 PCT/JP2011/064795 東京都港区西新橋一丁目3番1号 (87)国際公開番号 WO2012/002379 (87)国際公開日 平成24年1月5日(2012.1.5) 審査請求日 平成26年3月17日(2014.3.17) (31)優先権主張番号 特願2010-146072(P2010-146072) (32)優先日 平成22年6月28日(2010.6.28) (33)優先権主張国 日本国(JP) (73)特許権者 591047970 共立製薬株式会社 東京都千代田区九段南1丁目5番10号 (74)代理人 100140109 弁理士 小野 新次郎 (74)代理人 100075270 弁理士 小林 泰 (74)代理人 100096013 弁理士 富田 博行 (74)代理人 100092967 弁理士 星野 修 最終頁に続く (54)【発明の名称】魚類の寄生虫駆除剤及び駆除方法 1 2 (57)【特許請求の範囲】 キシネ科ヘテラキシネ(Heteraxineheterocerca)、ゼ 【請求項1】 ウクサプタ(Zeuxapta japonica)、ミクロコチレ科ビ サリチルアニリド系薬剤を有効成分として含有する魚類 バギナ(Bivaginatai)、ミクロコチレ(Microcotylese の寄生虫駆除剤であって、寄生虫が、ベネデニア亜科、 bastis、Microcotylesebastisci)、ディクリドフォラ ヘテラキシネ科、ミクロコチレ科、ディクリドフォラ科 科ヘテロボツリウム(Heterobothriumokamotoi)、ネオ 、ダクチロギルス科、ギロダクチルス科又はサンギニコ ヘテロボツリウム(Neoheterobothriumhirame)、ダク ラ科のいずれかに属する寄生虫であり、サリチルアニリ チロギルス科ダクチロギルス(Dactylogyrusextensus、 ド系薬剤が、ブロモキサニド、ブロチアニド、クリオキ Dactylogyrusvastator)、シュードダクチロギルス(Ps サニド、クロサンテル、オキシクロザニド、ラフォキサ eudodactylogyrusbine、Pseudodactylogyrusanguillae ニド、ニクロサミド、ジブロムサラン又はトリブロモサ 10 )、ギロダクチルス科に属するギロダクチルス(Gyroda ランのいずれかである、前記寄生虫駆除剤。 ctylus)、サンギニコラ科パラデオンタシリックス(Pa 【請求項2】 radeontacylixgrandispinus、Paradeontacylixkampachi 寄生虫がベネデニア・セリオレ(Benedenia seriolae)、 )、又はカルジコラ(Cardicola sp.)のいずれかであ ベネデニア・エピネフェリ(Benedenia epinepheli)、 る請求項1に記載の寄生虫駆除剤。 ベネデニア・ホシナイ(Benedenia hoshinai)、ベネデ 【請求項3】 ニア・セキイ(Benedenia sekii)を含むベネデニア(B サリチルアニリド系薬剤がオキシクロザニド、ラフォキ enedenia)、ネオベネデニア・ギレレ(Neobenedeniagir サニド又はクロサンテルである請求項1又は2に記載の ellae)、ネオベネデニア・コンゲリ(Neobenedenia con 寄生虫駆除剤。 geri)を含むネオベネデニア(Neobenedenia)、ヘテラ 【請求項4】 ( 2 ) JP 3 5771203 B2 2015.8.26 4 魚類がスズキ目、カレイ目、フグ目、ニシン目、ウナギ 【0001】 目、コイ目、又はナマズ目の魚類である請求項1∼3の 本発明は、魚類(特に、養殖魚)の寄生虫の駆除剤及び いずれかに記載の寄生虫駆除剤。 寄生虫駆除方法に関する。詳細には、ハダムシ、エラム 【請求項5】 シと呼ばれる単生虫および吸虫の寄生を経口投与により 魚類にサリチルアニリド系薬剤を投与することを特徴と 駆除する薬剤及び駆除方法に関する。 する魚類の寄生虫駆除方法であって、寄生虫が、ベネデ 【背景技術】 ニア亜科、ヘテラキシネ科、ミクロコチレ科、ディクリ 【0002】 ドフォラ科、ダクチロギルス科、ギロダクチルス科又は 魚類養殖において寄生虫症は安定した生産の妨げとなる サンギニコラ科のいずれかに属する寄生虫であり、サリ ために、非常に大きな問題となっている。寄生虫症の中 チルアニリド系薬剤が、ブロモキサニド、ブロチアニド 10 でもとりわけ扁形動物門単生綱に属する単生虫や扁形動 、クリオキサニド、クロサンテル、オキシクロザニド、 物門吸虫綱に属する吸虫感染症は多くの養殖魚で発生し ラフォキサニド、ニクロサミド、ジブロムサラン又はト 最も大きな問題の一つとされる感染症である。単生虫で リブロモサランのいずれかである、前記寄生虫駆除方法 は一般的にハダムシと呼ばれているものとエラムシと呼 。 ばれているものがある。ハダムシと呼ばれている寄生虫 【請求項6】 は、単後吸盤類カプサラ科ネオベネデニア(Neobeneden 寄生虫がベネデニア・セリオレ(Benedenia seriolae)、 iagirellae)やベネデニア(Benedeniaseriolae)等で ベネデニア・エピネフェリ(Benedenia epinepheli)、 あり、カンパチ、ブリ、ヒラマサ、ヒレナガカンパチ等 ベネデニア・ホシナイ(Benedenia hoshinai)、ベネデ のブリ類や、シマアジ、スズキ、マダイ、キイロハギ、 ニア・セキイ(Benedenia sekii)を含むベネデニア(B キジハタ、クエ、ヒラメ、トラフグ、スギ等多くの魚種 enedenia)、ネオベネデニア・ギレレ(Neobenedeniagir 20 に寄生することが知られている。上記寄生虫が発生した ellae)、ネオベネデニア・コンゲリ(Neobenedenia con 現場での症状としては、腹部の表皮発赤や鰭のスレ、眼 geri)を含むネオベネデニア(Neobenedenia)、ヘテラ 球の白濁などの症状を伴うへい死のほかに、多量の寄生 キシネ科ヘテラキシネ(Heteraxineheterocerca)、ゼ を受けた魚では、粘液の大量分泌により体表が白濁して ウクサプタ(Zeuxapta japonica)、ミクロコチレ科ビ 見えることなどがあげられる。また、生簀網に体をこす バギナ(Bivaginatai)、ミクロコチレ(Microcotylese りつけるような異常遊泳が頻繁に見られる場合もある。 bastis、Microcotylesebastisci)、ディクリドフォラ 生簀網などに体をこすりつけることから症状が悪化し、 科ヘテロボツリウム(Heterobothriumokamotoi)、ネオ 寄生部位から病原菌の感染機会が増えるため、被害が拡 ヘテロボツリウム(Neoheterobothriumhirame)、ダク 大することもある。本虫の寄生が確認された場合は、水 チロギルス科ダクチロギルス(Dactylogyrusextensus、 温に注意しながら1∼3分間程度の淡水浴もしくは過酸 Dactylogyrusvastator)、シュードダクチロギルス(Ps 30 化水素水浴を行うことによって駆虫できる。しかし、魚 eudodactylogyrusbine、Pseudodactylogyrusanguillae の移し変え等処理に要する労力及び魚に与えるストレス )、ギロダクチルス科に属するギロダクチルス(Gyroda が大きいため、経口投与できる薬剤による治療が強く望 ctylus)、サンギニコラ科パラデオンタシリックス(Pa まれている。 radeontacylixgrandispinus、Paradeontacylixkampachi 【0003】 )、又はカルジコラ(Cardicola sp.)のいずれかであ エラムシと呼ばれている単生虫は、ブリ類に寄生する扁 る請求項5に記載の寄生虫駆除方法。 形動物門多後吸盤類ヘテラキシネ科ヘテラキシネ(Hete 【請求項7】 raxineheterocerca)、ゼウクサプタ(Zeuxaptajaponic サリチルアニリド系薬剤がオキシクロザニド、ラフォキ a)、マダイに寄生する同ミクロコチレ科ビバギナ(Biv サニド又はクロサンテルである請求項5又は6に記載の 寄生虫駆除方法。 aginatai)、クロソイに寄生する同ミクロコチレ科ミク 40 ロコチレ(Microcotylesebastis)、カサゴに寄生する 【請求項8】 同科ミクロコチレ(Microcotylesebastisci)、トラフ 魚類がスズキ目、カレイ目、ニシン目、フグ目、コイ目 グに寄生する同ディクリドフォラ科ヘテロボツリウム( 、ウナギ目、又はナマズ目の魚類である請求項5∼7の Heterobothriumokamotoi)、ヒラメに寄生する同科ネオ いずれかに記載の寄生虫駆除方法。 ヘテロボツリウム(Neoheterobothriumhirame)、コイ 【請求項9】 やキンギョに寄生する単後吸盤類ダクチロギルス科ダク 1日当たり、サリチルアニリド系薬剤を1∼1000m チロギルス(Dactylogyrusextensus、Dactylogyrusvast g/kg魚体重経口投与することを特徴とする請求項5 ator)、ウナギに寄生する同科シュードダクチロギルス ∼8のいずれかに記載の寄生虫駆除方法。 (Pseudodactylogyrus bine、Pseudodactylogyrusangui 【発明の詳細な説明】 llae)などである。また、その他の単生虫で養殖上問題 【技術分野】 50 となっているのは、単後吸盤類ギロダクチルス科に属す ( 3 ) JP 5771203 B2 2015.8.26 5 6 るギロダクチルス(Gyrodactylus)があり、多くの魚類 て駆虫効果があることが記載されているが、単に、オキ から500を超える種が確認されている。現場での症状と シクロザニドを溶解した海水で培養して効果判定したも しては、鰓の退色、魚の貧血、肥満度の低下などが挙げ のであり、実際に魚類に寄生した原虫に対して効果をみ られる。また、生簀網に体をこすりつけるような異常遊 たものではない。 泳が頻繁に見られる場合もある。生簀網などに体をこす 【0008】 りつけることから体表のスレ部位から病原菌の感染機会 特許文献1には、オキシクロザニドを家畜の肝吸虫に用 が増えるため、被害が拡大することもある。本虫の寄生 いることが記載されている。特許文献2には、その他の が確認された場合は、水温に注意しながら3分間程度の サリチルアニリド系薬剤を動物の肝吸虫に用いることが 過酸化水素水浴を行うことによって駆虫できる。しかし 記載されている。特許文献3には、その他のサリチルア 、魚の移し変え等処理に要する労力及び魚に与えるスト 10 ニリド系薬剤を温血動物の吸虫、線虫に用いることが記 レスが大きいため、経口投与できる薬剤による治療が強 載されている。特許文献4には、ビチオノールを魚類の く望まれている。 寄生虫駆除に用いることが記載されている。 【0004】 【先行技術文献】 吸虫はカンパチに寄生するサンギニコラ科パラデオンタ 【特許文献】 シリックス(Paradeontacylixgrandispinus、Paradeont 【0009】 acylixkampachi)、マグロ属の魚に寄生するカルジコラ 【特許文献1】米国特許第3976784号 (Cardicolasp.)などがある。カンパチ以外のブリ類に 【特許文献2】米国特許第3914418号 もサンギニコラ科と考えられる吸虫が寄生するが未同定 【特許文献3】米国特許第3927071号 である。吸虫は血管内に寄生する。現場での症状として 【特許文献4】国際公開WO2008/013235 は、血行障害による酸欠が挙げられる。本虫の駆虫法は 20 【非特許文献】 確立しておらず、魚が酸欠になりやすいため給餌を控え 【0010】 る、選別を控えるなど、本虫が寿命で死ぬまで待つ以外 【非特許文献1】Diseases of Aquatic Organisms, 49, の対処方法は知られていない。従って、薬剤による治療 191-197, 2002. ”Antiprotozoals effective in vitr が強く望まれている。 o against the scuticociliate fish pathogen Philast 【0005】 erides dicentrarchi” ハダムシに経口投与で用いることができる薬剤としては 【発明の概要】 、一般名プラジクアンテル(イソキノリン・ピラジン誘 【発明が解決しようとする課題】 導体)がスズキ目魚類の体表に寄生するハダムシの駆除 【0011】 用にバイエルメディカル株式会社と協和醗酵工業株式会 本発明は、魚類(特に、養殖魚)における単生虫及び吸 社から販売されている。エラムシに経口投与で用いるこ 30 虫の経口投与薬剤による駆除方法を提供することを課題 とができる薬剤としては、一般名フェバンテル(ベンズ とする。 イミダゾール化合物)がフグ目魚類の鰓に寄生するヘテ 【課題を解決するための手段】 ロボツリウムの駆除用に明治製菓株式会社から販売され 【0012】 ている。これらは養殖魚用の餌料に混合して投与して用 発明者らは、カンパチ、ハマチ等のブリ類の養殖におい いられる。 て重要な問題となっている単生虫や吸虫に有効な経口投 【0006】 与薬剤を求めて、既存の動物用各種抗寄生虫薬や天然物 サリチルアニリド系薬剤は、家畜用薬剤として、内寄生 由来物質等を探索した。その結果、動物用抗吸虫薬とし 生物(特に、Fasciolahepatica、およ て販売されているサリチルアニリド系薬剤に効果が認め び線虫(例えば、Haemonchus種))の制御の られることを見出し、本発明を完成させた。 ために用いられている。サリチルアニリドオキシクロザ 40 【0013】 ニド(オキシクロザニド)は、ウシの腸に移動している 本発明は、以下の(1)∼(4)の魚類の寄生虫駆除剤 成体肝臓吸虫類(Fasciola hepatica を要旨とする。 )および未成熟Paramphistone、ならびに (1)サリチルアニリド系薬剤を有効成分として含有す 瘤胃および第二胃における若い吸虫類に対して有効であ る魚類の寄生虫駆除剤。 ることが報告されている。オキシクロザニド(オキシク (2)寄生虫が単生虫又は吸虫に属する寄生虫である( ロザニド)は、水に非常に不溶性であるので動物に対し 1)に記載の寄生虫駆除剤。 ては水性懸濁処方物として経口投与される。 (3)サリチルアニリド系薬剤がオキシクロザニド、ラ 【0007】 フォキサニド又はクロサンテルである(1)又は(2) 非特許文献1には、オキシクロザニドが魚類に寄生する に記載の寄生虫駆除剤。 原虫スクーチカ(Philasterides dicentrarchi)に対し 50 (4)魚類がスズキ目、カレイ目、フグ目、ニシン目、 ( 4 ) JP 7 5771203 B2 2015.8.26 8 ウナギ目、コイ目、又はナマズ目の魚類である(1)∼ )において、カルジコラsp.は瞬時に萎縮して運動が停 (3)のいずれかに記載の寄生虫駆除剤。 止した。試験開始10分後の対照区のカルジコラsp.は 【0014】 伸縮を繰り返した(右)。 また、本発明は、(5)∼(9)の寄生虫駆除方法を要 【図5】図5は実施例8において、オキシクロザニド溶 旨とする。 液により脱落したカリグスsp.の写真である。試験開始 (5)魚類にサリチルアニリド系薬剤を投与することを 60分後のオキシクロザニド1ppm処理区の写真(左 特徴とする魚類の寄生虫駆除方法。 )において、カリグスsp.は鰓弓から脱落し運動が停止 (6)寄生虫が単生虫又は吸虫に属する寄生虫である( した。試験開始60分後の対照区のカリグスsp.は鰓弓 5)に記載の寄生虫駆除方法。 に寄生した状態を保ち運動を繰り返した(右)。 (7)サリチルアニリド系薬剤がオキシクロザニド、ラ 10 【発明を実施するための形態】 フォキサニド又はクロサンテルである(5)又は(6) 【0017】 に記載の寄生虫駆除方法。 本発明においてサリチルアニリド系薬剤とは、サリチル (8)魚類がスズキ目、カレイ目、ニシン目、フグ目、 アニリドを基本骨格として有する薬剤であって、ブロモ コイ目、ウナギ目、又はナマズ目の魚類である(5)∼ キサニド(bromoxanide)、ブロチアニド(brotianide (7)のいずれかに記載の寄生虫駆除方法。 )、クリオキサニド、クロサンテル(closantel、5’ (9)1日当たり、サリチルアニリド系薬剤を1∼10 −クロロ−4’−(4−クロロ−α−シアノベンジル) 00mg/kg魚体重経口投与することを特徴とする( −3,5−ジヨードサリチル−o−トルイジド)、オキ 5)∼(8)いずれかに記載の寄生虫駆除方法。 シクロザニド(oxyclozanide、3,3',5,5',6-ペンタクロ 【発明の効果】 ロ-2'-ヒドロキシサリチルアニリド)、ラフォキサニド 【0015】 20 (rafoxanide、3’−クロロ−4’−(4−クロロフェ 本発明によれば、養殖魚、特にカンパチ、ハマチ等のブ ノキシ)−3,5−ジヨードサリチルアニリド)、ニク リ類やマグロ類の養殖魚に寄生し重要な問題となってい ロサミド(niclosamide、2’,5−ジクロロ−4’− る単生虫及び吸虫を経口投与で効果的に駆除することが ニトロサリチルアニリド)およびジブロムサランおよび できる。 トリブロモサラン(tribromosalan)などが例示される 【図面の簡単な説明】 。 【0016】 【0018】 【図1】図1はオキシクロザニド100mg投与の4時間後か オキシクロザニドは、化学名2,3,5-トリクロロ-N-(3,5- ら飼育水中に観察された宿主から脱落したネオベネデニ ジクロロ-2-ヒドロキシフェニル)-6-ヒドロキシベンズ ア成虫(左)及び正常な成虫(右)の写真である。正常 アミド、別名ザニロックス、サウシラニリドなどとも呼 な成虫と比較して、脱落した成虫では体全体の萎縮及び 30 ばれる化合物である。欧州などで牛、羊などの吸虫薬と 固着盤の萎縮が確認された。 して販売されている。 【図2】図2は実施例6において、オキシクロザニド投 【0019】 与により脱落した寄生虫ゼウクサプタ・ヤポニカ(左) 本発明のサリチルアニリド系薬剤の抗寄生虫効果が認め 及び対照魚区のゼウクサプタ・ヤポニカ(右)の写真で られる寄生虫としては、魚類の扁形動物門単生綱に属す ある。対照魚区のものと比較して、脱落したものは体の る単生虫(一般的にハダムシやエラムシと呼ばれる)や 一部の萎縮及び吸着盤の萎縮が確認された。 扁形動物門吸虫綱に属する吸虫などが挙げられる。ハダ 【図3】図3は実施例8において、オキシクロザニド溶 ムシと呼ばれる寄生虫は単生虫類ベネデニア亜科等の海 液により萎縮したゼウクアプタ・ヤポニカ、ダクチロギ 水魚に寄生するものが挙げられる。ベネデニア亜科とし ルスsp.の写真である。試験開始10分後のオキシクロ ては、例えばベネデニア・セリオレ(Benedeniaseriolae ザニド5ppm処理区の写真(左上)において、ダクチ 40 )、ベネデニア・エピネフェリ(Benedeniaepinepheli) ロギルスsp.は瞬時に鰓から脱落し萎縮して運動が停止 、ベネデニア・ホシナイ(Benedeniahoshinai)、ベネ した。試験開始10分後のオキシクロザニド1ppm処 デニア・セキイ(Benedeniasekii)等のベネデニア(Be 理区の写真(左下)においてダクチロギルスsp.は体全 nedenia)及びネオベネデニア・ギレレ(Neobenedeniagi 体が萎縮しており、試験開始5∼10分後で鰓上で萎縮 rellae)、ネオベネデニア・コンゲリ(Neobenedeniacon し、試験開始15分後で運動を停止した。試験開始60 geri)等のネオベネデニア(Neobenedenia)が挙げられ 分後の対照区のダクチロギルスsp.は伸縮を繰り返した る。エラムシと呼ばれている単生虫は、多後吸盤類に属 (右上、右下)。 するヘテラキシネ科ヘテラキシネ(Heteraxineheteroce 【図4】図4は実施例8において、オキシクロザニド溶 rca)、ゼウクサプタ(Zeuxaptajaponica)、ミクロコ 液により萎縮したカルジコラsp.の写真である。試験開 チレ科ビバギナ(Bivaginatai)、ミクロコチレ(Micro 始5分後のオキシクロザニド5ppm処理区の写真(左 50 cotylesebastis、Microcotylesebastisci)、ディクリ ( 5 ) JP 9 5771203 B2 2015.8.26 10 ドフォラ科ヘテロボツリウム(Heterobothriumokamotoi サルチルアリニド系薬剤を寄生虫駆除のために用いる場 )、ネオヘテロボツリウム(Neoheterobothriumhirame 合の投与量は、例えば、いずれの魚においても1日当た )、単後吸盤類ダクチロギルス科ダクチロギルス(Dact り魚体重1kgに対して1mg∼1g、好ましくは50 ylogyrusextensus、Dactylogyrusvastator)、シュード ∼200mgの範囲で経口投与する。経口投与の場合の ダクチロギルス(Pseudodactylogyrusbine、Pseudodact 投与量の下限としては、例えば、1日当たり魚体重1k ylogyrusanguillae)などである。また、その他の単生 gに対して1mg、5mg、10mg、25mg、50 虫で養殖上問題となっているのは、単後吸盤類ギロダク mg、75mg、100mgなどが挙げられる。経口投 チルス科に属するギロダクチルス(Gyrodactylus)が挙 与の場合の投与量の上限としては、例えば、1日当たり げられる。吸虫はサンギニコラ科パラデオンタシリック 魚体重1kgに対して1000mg、750mg、50 ス(Paradeontacylixgrandispinus、Paradeontacylixka 10 0mg、400mg、および300mgなどが挙げられ mpachi)、カルジコラ(Cardicolasp.)などが挙げられ る。投与期間は1∼10日間、好ましくは1∼3日間と る。特にネオベネデニア、ベネデニア等に有効である。 する。 【0020】 【0024】 本発明において魚類には、海産魚、淡水魚のいずれの魚 また、飼育水に駆除剤を溶解し、これに魚体を浸漬し、 種も含まれる。実用上は寄生虫を駆除する必要が生じる 直接接触させることもでき、その場合、有効成分の濃度 養殖魚や観賞魚として取り扱われている魚種に本発明を が0.5∼500ppm、好ましくは0.5∼10pp 適用することができる。中でも特に産業上重要なのは、 mとなるように溶解させた飼育水に、対象魚を1分間∼ 養殖魚であり、例えば、フグ目フグ科のトラフグ、スズ 1日間、好ましくは30分間∼6時間浸漬する。注射の キ目ハタ科のハタ、スズキ目シクリッド科のティラピア 場合は、1回に0.01∼100mg/kg、好ましく 、ナマズ目ナマズ科あるいはコイ目ナマズ科のナマズな 20 は0.5∼10mg/kgを投与する。なお、この場合 ど、ハダムシやエラムシ、吸虫などの魚類寄生虫の寄生 の投与期間は1∼6日間が適当である。 が知られている魚種、あるいは魚類寄生虫の寄生の可能 【0025】 性がある魚種において本発明の薬剤を予防的あるいは治 本発明の寄生虫駆除剤は、有効成分である前記化合物を 療的に用いることができる。 単独で用いる他、必要に応じて他の物質、例えば担体、 【0021】 安定剤、溶媒、賦形剤、希釈剤などの補助的成分と組み 本発明の対象となる魚種には、淡水および海水の中で生 合わせて用いることができる。また、形態も粉末、顆粒 存している全ての年齢の養殖魚、水族館や商業の鑑賞魚 、錠剤、カプセルなど、通常これらの化合物に使用され が含まれる。特に、養殖魚では、スズキ目、カレイ目、 ている形態のいずれでもよい。化合物の味や臭いに敏感 フグ目、ニシン目、ウナギ目、コイ目、ナマズ目の魚類 な魚の場合は、コーティングなどの方法により、飼料の であり、ブリ類、ハタ類、タイ類、ヒラメ類、フグ類、 30 嗜好性の低下を防止し、化合物が漏出しにくくすること サケ類、ウナギ類、コイ類、ナマズ類の魚である。具体 ができる。 的には、カンパチ、ヒレナガカンパチ、ブリ(ハマチ) 【0026】 、ヒラマサ、マアジ、シマアジ、マサバ、スズキ、マダ 魚類の場合、経口投与の薬剤は飼料に添加して用いるの イ、イシダイ、イシガキダイ、ティラピア、スギ、キジ が通常である。本発明の寄生虫駆除剤を飼料に添加する ハタ、クエ、マハタ、チャイロマルハタ、ヤイトハタ、 場合、それぞれの魚種用に必要とする栄養成分や物性が サラサハタ、スジアラ、タマカイ、カサゴ、クロマグロ 考慮された飼料を用いるのが好ましい。通常、魚粉、糟 、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナ 糠類、でんぷん、ミネラル、ビタミン、魚油などを混合 ガマグロ、ヒラメ、マツカワ、ホシガレイ、ターボット してペレット状にしたもの、もしくは、イワシなどの冷 、オヒョウ、トラフグ、カワハギ、キイロハギ、ウマヅ 凍魚と魚粉にビタミンなどを添加した粉末飼料(マッシ ラハギ、ニジマス、大西洋サケ、ギンザケ、ベニザケ、 40 ュ)とを混合してペレット状にしたものなどが使用され アユ、日本ウナギ、ヨーロッパウナギ、コイ、アメリカ ている。魚の種類、サイズによって、1日の摂餌量はほ ナマズ、サバヒー(Milkfish)などが例示される。特に ぼ決まっているので、上記の用法用量となるよう換算し カンパチ、ブリ、ハタ類、コビア、スナッパー、バラマ た量の本寄生虫駆除剤を飼料に添加する。本寄生虫駆除 ンディ、ティラピア、スズキなどで、ハダムシの被害が は1日量を1回で投与しても、数回に分けて投与しても 多く報告されている。 かまわない。 【0022】 【0027】 本発明の寄生虫駆除剤は経口投与で効果を発現すること 以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに ができる。また、薬剤を溶解した液に魚を漬ける薬浴に 何ら限定されるものではない。 よる投与や注射による投与も可能である。 【0028】 【0023】 50 以下の実施例で使用したハダムシ(ネオベネデニア、Ne ( 6 ) JP 11 5771203 B2 2015.8.26 12 obenedeniagirellae)はホシガレイを宿主として飼育維 【0034】 持しているもので、成虫から産卵された卵を回収し培養 寄生数の結果を表1に示した。オキシクロザニド100mg し、得られた孵化幼生を試験に用いた。本発明において 投与区のネオベネデニア・ジレレ寄生数は、対照区と比 、オキシクロザニドは製剤化されていない原末を使用し べ有意に少なく(P < 0.01、t-検定)、その駆虫率は幼 た。 虫で78%、成虫で90%であった。さらに、200mg投与区 【実施例1】 では本虫の寄生は認められず、駆虫率は100%であった 【0029】 。また、投与4時間後から飼育排水中に萎縮した本虫が <カンパチのネオベネデニア・ジレレ寄生に対するオキ 多数観察された(図1)。 シクロザニド経口投与の駆虫効果−1> 試験方法: 【0035】 10 以上の結果からオキシクロザニドはハダムシに対し、駆 平均魚体重約150gのカンパチ30尾を500リットル水槽で 虫効果を有することが示された。 約7日間飼育し、25℃の水温に馴致した。その間の給餌 【0036】 は市販飼料を与え、給餌率を魚体重の3%とした。注水 【表1】 は4.8リットル/分とした。魚への本寄生虫の暴露を試 験開始時(第1回暴露)と開始4日目(第2回暴露)の2回 実施した。本寄生虫の暴露は、ネオベネデニア・ジレレ 孵化幼生約6000固体を500リットル水槽に投入し、1時 間止水とすることで行った。試験開始4日目の本寄生虫 暴露後、10尾ずつ200リットル水槽3基に収容した。飼育 【実施例2】 期間中の注水は2.4リットル/分とした。試験開始から6 20 【0037】 日間は市販飼料を給餌し、給餌率を魚体重の3%とした <カンパチのネオベネデニア・ジレレ寄生に対するオキ 。試験開始7日目は薬剤を含まないモイスト飼料を給餌 シクロザニド経口投与の駆虫効果−2> し、給餌率を魚体重の2%とした。試験開始8∼10日目に 試験方法: 各区試験飼料(モイスト飼料)を給餌した。試験飼料の 平均魚体重約210gのカンパチ73尾を500リットル水槽で 給餌率は魚体重の2%とした。試験開始11日目に市販飼料 約7日間飼育し、25℃の水温に馴致した。その間の給餌 を給餌し、各区の食欲を観察した。試験開始12日目に全 は市販飼料を与え、給餌率を魚体重の3%とした。注水 ての魚をサンプリングし、体表に寄生しているネオベネ は4.8リットル/分とした。魚への本寄生虫の暴露を試 デニア・ジレレを数えた。 験開始時(第1回暴露)と開始4日目(第2回暴露)の2回 【0030】 実施した。本寄生虫の暴露は、ネオベネデニア・ジレレ 試験区:試験開始8日目から100mg、200mg/kg魚体重/ 30 孵化幼生約14000固体を500リットル水槽に投入し、1時 日で3日間オキシクロザニドを経口投与する2区および薬 間止水とすることで行った。試験開始4日目の本虫暴露 剤無添加飼料を給餌する対照区(0mg)の計3区を設定し 後、10尾ずつ200リットル水槽7基に収容した。また、薬 た。 剤投与開始時の寄生虫体長を調べるために、残りの3尾 【0031】 を200リットル水槽に収容した。飼育期間中の注水は2.4 試験飼料:所定量の薬剤を添加したモイスト飼料を用い リットル/分とした。試験開始から6日間は市販飼料を た。 給餌し、給餌率を魚体重の2.5%とした。試験開始7日目 【0032】 は薬剤を含まないモイスト飼料を給餌し、給餌率を魚体 効果の判定:食欲推移、寄生数を比較することで行った 重の2%とした。試験開始8∼10日目に各区試験飼料(モ 。 結果と考察 イスト飼料)を給餌した。試験飼料の給餌率は魚体重の 40 2%とした。試験開始11日目に全ての魚をサンプリング 試験飼料給餌開始時に寄生している本虫の大きさとステ し、体表に寄生しているネオベネデニア・ジレレを数え ージは、第1回暴露のものが2.5mm前後の成虫、第2回暴 た。 露のものが0.6mm前後の幼虫であった。試験終了時の対 【0038】 照区の本虫の大きさは第1回暴露のものが3.80±0.24mm 試験区:試験開始8日目に25mg、50mg、75mg、100mg、15 、第2回暴露のものが2.12±0.22mmであり、正常に成長 0mg/kg魚体重/日でオキシクロザニドを単回経口投与 していた。 する5区、試験開始8日目から150mg/kg魚体重/日でプ 【0033】 ラジクアンテル(市販されているブリ類用抗ハダムシ剤 オキシクロザニド投与区の摂餌活性は、対照区と比べ同 )を3日間経口投与する陽性対照区、および薬剤無添加 等であり、本剤を添加した飼料は魚の食欲に悪影響を及 飼料を給餌する対照区(0mg)の計7区を設定した。さ ぼさなかった。 50 らに、投与区とは別に、薬剤添加飼料投与時の寄生虫の ( 7 ) JP 13 5771203 B2 2015.8.26 14 大きさとステージを把握する区を設定した(200リット 約7日間飼育し、25℃の水温に馴致した。その間の給餌 ル水槽に3尾収容)。 は市販飼料を与え、給餌率を魚体重の2%とした。注水 【0039】 は4.8リットル/分とした。魚への本寄生虫の暴露を試 試験飼料:所定量の薬剤を添加したモイスト飼料を用い 験開始時に実施した。本寄生虫の暴露は、ネオベネデニ た。 ア・ジレレ孵化幼生約7400個体を500リットル水槽に投 【0040】 入し、1時間止水とすることで行った。本虫暴露後、5 効果の判定:寄生数を比較することで行った。 尾ずつ200リットル水槽7基に収容した。また、薬剤投 結果と考察 与開始時の寄生虫体長を調べるために、残りの2尾を500 試験飼料給餌開始時に寄生していた本虫の体長とステー リットル水槽に残し飼育した。 ジは、第1回暴露のものが2.42±0.28mmで成虫、第2回暴 10 飼育期間中の注水は2.4リットル/分とした。試験開始 露のものが0.89±0.09mmで幼虫であった。試験終了時の から6日間は市販飼料を給餌し、給餌率を魚体重の2% 対照区の本虫の体長は第1回暴露のものが3.45±0.27mm とした。試験開始7日目は薬剤を含まないモイスト飼料 、第2回暴露のものが1.76±0.17mmで幼虫であり、正常 を給餌し、給餌率を魚体重の2%とした。試験開始8∼1 に成長していた。 0日目に各区試験飼料(モイスト飼料)を給餌した。試 【0041】 験飼料の給餌率は魚体重の2%とした。試験開始11日目は オキシクロザニド投与区の摂餌活性は、対照区と比べ同 各区の食欲を調べるため、薬剤を含まないモイスト飼料 等であった。一方、陽性対照区であるプラジクアンテル を給餌した。試験開始12日目に全ての魚をサンプリング 投与区の摂餌活性は、対照区と比べ2日目から明らかに し、体表に寄生しているネオベネデニア・ジレレを数え 低下した。 た。 【0042】 20 【0046】 寄生数の結果を表2に示した。オキシクロザニド投与区 試験区:試験開始8日目から100mg、150mg、200mg、300m の寄生数は投与量依存的に少なくなり、オキシクロザニ g、400mg/kg魚体重/日で3日間オキシクロザニドを経 ド 75mg/kg魚体重投与以上の区で対照区と比較し有意に 口投与する5区、試験開始8日目から150mg/kg魚体重 (t-検定)減少した。オキシクロザニド投与区の駆虫率 /日でプラジクアンテル(市販されているブリ類用抗ハ は、75mg投与区で約29%、100mg投与区で約63%、150mg ダムシ剤)を3日間経口投与する陽性対照区、および薬 投与区で84.4%であった。一方、陽性対照区であるプラ 剤無添加飼料を給餌する対照区(0mg)の計7区を設定 ジクアンテル投与区の駆虫率は約45%であり、その駆虫 した。さらに、投与区とは別に、薬剤添加飼料投与時の 率は3日間連続投与であるのにもかかわらず、オキシク 寄生虫の大きさとステージを把握する区を設定した(50 ロザニド100mg、150mg単回投与区より低い値となった。 0リットル水槽に2尾収容)。 【0043】 30 【0047】 以上の結果からオキシクロザニドはハダムシに対し、経 試験飼料:所定量の薬剤を添加したモイスト飼料を用い 口投与で駆虫効果を発揮すること、経口投与量依存的に た。 駆虫効果を発揮すること、その効果は市販されているプ 【0048】 ラジクアンテルより優れていることなどが示された。 効果の判定:寄生数を比較することで行った。 【0044】 結果と考察 【表2】 試験飼料給餌開始時に寄生していた本虫の体長とステー ジは、2.73±0.20mmで成虫であった。試験終了時の対照 区の本虫の体長は4.08±0.22mmであり、正常に成長して いた。 40 【0049】 オキシクロザニド投与区の摂餌活性は、対照区と比べ同 等であった。一方、陽性対照区であるプラジクアンテル 投与区の摂餌活性は、3日目の投与時に所定量の飼料を 食べるのに対照区の10倍ほどの時間を要した。 【実施例3】 【0050】 【0045】 寄生数の結果を表3に示した。全てのオキシクロザニド <カンパチのネオベネデニア・ジレレ寄生に対するオキ 投与区でネオベネデニア・ジレレ寄生数は、対照区と比 シクロザニド経口投与の駆虫効果−3> べ有意に少なく(P<0.01、t-検定)、その駆虫率は、10 試験方法: 0mg投与区が93.7%、150mg投与区が99.3%、200mg以上 平均魚体重約328gのカンパチ37尾を500リットル水槽で 50 の投与区ではいずれも100%であった。一方、陽性対照 ( 8 ) JP 15 5771203 B2 2015.8.26 16 区であるプラジクアンテル投与区の駆虫率は52.4%であ 虫を回収し体長を測定した。試験飼料給餌開始時に寄生 った。従って、オキシクロザニドはネオベネデニアに対 していたネオベネデニア・ジレレの体長は2.97±0.25mm し、経口投与で駆虫効果を発揮すること、その効果は市 で成虫であった。試験終了時の対照区の本虫の体長は4. 販されているプラジクアンテルより優れていることなど 91±0.23mmであり、正常に成長していた。 が再現された。 【0055】 【0051】 オキシクロザニド投与区の摂餌活性は、対照区と比べ同 【表3】 等であった。 【0056】 寄生数の結果を表4に示した。全てのオキシクロザニド 10 投与区でネオベネデニア・ジレレ寄生数は、対照区と比 べ有意に少なく(P<0.01、t-検定)、その駆虫率は、75 mg投与区が57.9%、100mg投与区が92.6%、200mg以上の 投与区ではいずれも100%であった。従って、30℃での 高水温時においてもオキシクロザニドは、ハダムシに対 して経口投与で駆虫効果を発揮することが示された。現 【実施例4】 在行われているカンパチのハダムシ駆虫法は淡水浴や過 【0052】 酸化水素を主成分とする薬剤での薬浴である。しかし、 <カンパチのネオベネデニア・ジレレ寄生に対するオキ これらの処理は、夏場の高水温時に鰓に障害を与えるた シクロザニド経口投与の駆虫効果−4> め、薬浴中に魚を死亡させたり、魚の状態を悪くして数 試験方法: 20 日間食欲を低下させたりすることがある。オキシクロザ 魚の飼育は、飼育水を浄化する濾過槽と飼育水を殺菌す ニドの投与は、高水温でもこのような悪影響が観察され る紫外線殺菌機を備えた陸上循環式水槽で行った。平均 ず、しかも魚類寄生虫に対し高い駆虫効果を発揮するこ 魚体重約321gのカンパチ30尾を200リットル水槽に各5 とから、非常に優れた化合物である。 尾収容し、7日間飼育して30℃の水温に馴致した。その 【0057】 間の給餌は市販飼料を与え、給餌率を魚体重の2%とし 【表4】 た。注水は12リットル/分とした。魚への本寄生虫の暴 露を試験開始時に実施した。本寄生虫の暴露は、ネオベ ネデニア・ジレレ孵化幼生1000個体を各200リットル水 槽に投入し、30分止水とすることで行った。試験開始か ら5日間は市販飼料を給餌し、給餌率を魚体重の2%と 30 した。試験開始6日目は薬剤を含まないモイスト飼料を 給餌し、給餌率を魚体重の2%とした。試験開始7∼9 日目に各区試験飼料(モイスト飼料)を給餌した。試験 飼料の給餌率は魚体重の2%とした。試験開始10日目は各 区の食欲を調べるため、薬剤を含まないモイスト飼料を 【実施例5】 給餌した。試験開始11日目に全ての魚をサンプリングし 【0058】 、体表に寄生しているネオベネデニア・ジレレを数えた <カンパチのベネデニア・セリオレ寄生に対するオキシ 。 クロザニド経口投与の駆虫効果> 試験区:試験開始7日目から75mg、100mg、200mg、250m g、300mg/kg魚体重/日で3日間オキシクロザニドを経 試験方法: 40 平均魚体重約420gのカンパチ25尾を500リットル水槽で 口投与する5区、および薬剤無添加飼料を給餌する対照 約7日間飼育し、25℃の水温に馴致した。その間の給餌 区(0mg)の計6区を設定した。 は市販飼料を与え、給餌率を魚体重の2%とした。注水 【0053】 は4.8リットル/分とした。魚への本寄生虫の暴露を試 試験飼料:所定量の薬剤を添加したモイスト飼料を用い 験開始時に実施した。本寄生虫の暴露は、ベネデニア・ た。 セリオレ孵化幼生約5300個体を500リットル水槽に投入 【0054】 し、1時間止水とすることで行った。本虫暴露後、5尾 効果の判定:寄生数を比較することで行った。 ずつ200リットル水槽5基に収容した。飼育期間中の注 結果と考察 水は2.4リットル/分とした。試験開始から6日間は市販 試験飼料給餌開始時に寄生していた本虫の体長を調べる 飼料を給餌し、給餌率を魚体重の2%とした。試験開始 ため、オキシクロザニド投与区のカンパチから脱落した 50 7日目は薬剤を含まないモイスト飼料を給餌し、給餌率 ( 9 ) JP 17 5771203 B2 2015.8.26 18 を魚体重の2%とした。試験開始8∼10日目に各区試験 約7日間飼育し、25℃の水温に馴致した。その間の給餌 飼料(モイスト飼料)を給餌した。試験飼料の給餌率は は市販飼料を与え、給餌率を魚体重の2%とした。注水 魚体重の2%とした。試験開始11日目は各区の食欲を調べ は4.8リットル/分とした。魚への本寄生虫の暴露は、 るため、薬剤を含まないモイスト飼料を給餌した。試験 ゼウクサプタ・ヤポニカ孵化幼生を500リットル水槽に1 開始12日目に全ての魚をサンプリングし、体表に寄生し 1日間投入することで行った。最初の本虫暴露から26日 ているベネデニア・セリオレを数えた。 後に、5尾ずつ200リットル水槽5基に収容した。また 【0059】 、薬剤投与開始時の寄生虫体長を調べるために、残りの 試験区:試験開始8日目から75mg、100mg、150mg、200mg 2尾を500リットル水槽に残し飼育した。飼育期間中の /kg魚体重/日で3日間オキシクロザニドを経口投与す る4区、および薬剤無添加飼料を給餌する対照区(0mg 注水は2.4リットル/分とした。 10 試験開始から2日間は薬剤を含まないモイスト飼料を給 )の計5区を設定した。 餌し、給餌率を魚体重の2%とした。試験開始3∼5日 【0060】 目に各区試験飼料(モイスト飼料)を給餌した。試験飼 効果の判定:寄生数を比較することで行った。 料の給餌率は魚体重の2%とした。試験開始6日目は各区 結果と考察 の食欲を調べるため、薬剤を含まないモイスト飼料を給 試験飼料給餌開始時に寄生していた本虫の体長を調べる 餌した。試験開始7日目に全ての魚をサンプリングし、 ため、オキシクロザニド投与区のカンパチから脱落した 鰓に寄生しているゼウクサプタ・ヤポニカを数えた。 虫を回収し体長を測定した。試験飼料給餌開始時に寄生 【0065】 していたネオベネデニアの体長は2.08±0.15mmで、幼虫 試験区:試験開始3日目から50mg、75mg、100mg、150mg と成虫が混在していた。試験終了時の対照区の本虫の体 /kg魚体重/日で3日間オキシクロザニドを経口投与す 長は4.66±0.42mmであり、正常に成長していた。 20 る4区、および薬剤無添加飼料を給餌する対照区(0mg 【0061】 )の計5区を設定した。さらに、投与区とは別に、薬剤 オキシクロザニド投与区の摂餌活性は、対照区と比べ同 添加飼料投与時の寄生虫の大きさとステージを把握する 等であった。 区を設定した(500リットル水槽に2尾収容)。 【0062】 【0066】 寄生数の結果を表5に示した。全てのオキシクロザニド 効果の判定:寄生数を比較することで行った。 投与区でベネデニア・セリオレ寄生数は、対照区と比べ 結果と考察 有意に少なく(P<0.01、t-検定)、その駆虫率は、75mg 試験飼料給餌開始時に寄生していたゼウクサプタ・ヤポ 投与区が31.1%、100mg投与区が89.8%、150mg投与区が ニカの体長は3∼4.5mmで、幼虫と成虫が混在していた 99.8%、200mg投与区が100%であった。従って、オキシ 。 クロザニドはベネデニア・セリオレに対して駆虫効果を 30 【0067】 発揮することが示された。オキシクロザニドは、ネオベ オキシクロザニド投与区の摂餌活性は、対照区と比べ同 ネデニア・ジレレとベネデニア・セリオレの両方に高い 等であった。 駆虫効果を発揮したことから、ハダムシ全般に対し、経 【0068】 口投与で駆虫効果を安定的に発揮すると考えられた。 寄生数の結果を表6に示した。全てのオキシクロザニド 【0063】 投与区でゼウクサプタ・ヤポニカ寄生数は、対照区と比 【表5】 べ有意に少なく(P<0.01、t-検定)、その駆虫率は、50 mg投与区が79.2%で、75mg以上の投与区ではいずれも10 0%であった。さらに、投与後に本剤投与区の飼育排水 をメッシュに通し脱落した本虫を回収し調べたところ、 40 咽頭部の崩壊と消化管のある咽頭側の体が萎縮していた (図2)。これらの結果は、オキシクロザニドがエラム シに対し経口投与で駆虫効果を発揮することを示してい る。従って、オキシクロザニドは、ハダムシやエラムシ などの単生虫に対し、経口投与で駆虫効果を発揮するこ 【実施例6】 とが明らかとなった。また、オキシクロザニドの駆虫効 【0064】 果を発揮する投与量は、寄生虫の種類や寄生部位によっ <カンパチのゼウクサプタ・ヤポニカ寄生に対するオキ ても若干異なることが考えられた。 シクロザニド経口投与の駆虫効果> 【0069】 試験方法: 【表6】 平均魚体重約314gのカンパチ27尾を500リットル水槽で 50 ( 10 ) JP 19 5771203 B2 2015.8.26 20 0.05、t-検定)。ブリにおいても本剤の投与効果が認め られたことから、どの魚種においても本化合物を投与す ることでハダムシやエラムシなどの魚類寄生虫に対して 駆虫効果が得られることが示された。 【0076】 【表7】 【実施例7】 【0070】 10 <ブリのネオベネデニア・ジレレ寄生に対するオキシク ロザニド経口投与の駆虫効果> 【実施例8】 平均魚体重約82gのブリ22尾を500リットル水槽で約7 【0077】 日間飼育し、25℃の水温に馴致した。その間の給餌は市 <オキシクロザニドを含むハロゲン化サルチルアニリド 販飼料を与え、給餌率を魚体重の4%とした。注水は4.8 化合物の魚類寄生虫に及ぼす影響> リットル/分とした。魚への本寄生虫の暴露を試験開始 供試した魚類寄生虫:試験には、ハダムシ2種(ベネデ 時に実施した。本寄生虫の暴露は、ネオベネデニア・ジ ニア・セリオラBenedenia seriolae、ネオベネデニア・ レレ孵化幼生約5600個体を500リットル水槽に投入し、 ジレレNeobenedenia girellae)とエラムシ3種(ヘテ 1時間止水とすることで行った。本虫暴露後、10尾ずつ ラキシネ・ヘテロセルカHeteraxine heterocerca、ゼウ 200リットル水槽2基に収容した。また、薬剤投与開始 20 クサプタ・ヤポニカ Zeuxapta japonica、ダクチロギル 時の寄生虫体長を調べるために、残りの2尾を200リッ スに属する寄生虫 Dactylogylus sp.)、血管内吸虫1 トル水槽に収容した。飼育期間中の注水は2.4リットル 種(カルジコラに属する寄生虫 Cardicola sp.)、甲殻 /分とした。試験開始から6日間は市販飼料を給餌し、 類1種(カリグスに属する寄生虫 Caligus sp.)の計7 給餌率を魚体重の2%とした。試験開始7日目は薬剤を 種類の魚類寄生虫を供試した。寄生虫の採取は、ベネデ 含まないモイスト飼料を給餌し、給餌率を魚体重の2% ニア・セリオラ(Benedenia seriolae)がカンパチの体 とした。試験開始8日目に各区試験飼料(モイスト飼料 表、ネオベネデニア・ジレレがホシガレイの体表、ヘテ )を給餌した。試験飼料の給餌率は魚体重の2%とした。 ラキシネ・ヘテロセルカがブリの鰓、ゼウクサプタ・ヤ 試験開始9日目に全ての魚をサンプリングし、体表に寄 ポニカがカンパチの鰓、ダクチロギルスsp.が金魚の鰓 生しているネオベネデニア・ジレレを数えた。 、カルジコラsp.がクロマグロの心臓、カリグスsp.がブ 【0071】 30 リの鰓弓から行った。 試験区:試験開始8日目に100mg/kg魚体重/日でオキシ 【0078】 クロザニドを単回経口投与する区、および薬剤無添加飼 ハロゲン化サルチルアニリド化合物:試験には、オキシ 料を給餌する対照区(0mg)の計2区を設定した。さら クロザニド、ラフォキサニド、クロサンテルの計3薬剤 に、投与区とは別に、薬剤添加飼料投与時の寄生虫の大 を用いた。 きさとステージを把握する区を設定した(200リットル 【0079】 水槽に2尾収容)。 評価試験:各ハロゲン化サルチルアニリド化合物の1ppm 【0072】 および5ppm溶液を準備した。海産魚に寄生していた寄生 試験飼料:所定量の薬剤を添加したモイスト飼料を用い 虫の試験には、これらの化合物を海水に溶解し、淡水魚 た。 【0073】 に寄生していた寄生虫の試験には淡水に溶解して溶液を 40 調整した。採取した寄生虫10個体を各溶液に入れ、3時 効果の判定:寄生数を比較することで行った。 間虫観察した。対照区として、これら化合物を含まない 結果と考察 海水、もしくは淡水に寄生虫を入れて観察した。尚、ゼ 試験飼料給餌時に寄生していた本虫の体長は2.19±0.20 ウクサプタ・ヤポニカとダクチロギルスsp.、カルジコ mmであり、幼虫と成虫が混在していた。 ラsp.、カリグスsp.は採取できた寄生虫の数が少なく、 【0074】 オキシクロザニド溶液でのみ実施した。 オキシクロザニド投与区の摂餌活性は、対照区と比べ同 【0080】 等であった。 効果の判定:対照区の寄生虫と比べ化合物溶液区の寄生 【0075】 虫が萎縮するか、供試した寄生虫全個体が萎縮するまで 寄生数の結果を表7に示した。オキシクロザニド投与区 の時間を判定基準とした。尚、カリグスはオキシクロザ の寄生数は対照区と比べ有意に少ない結果となった(P< 50 ニド溶液の影響を受けて完全に動きが止まるまでの時間 ( 11 ) JP 21 5771203 B2 2015.8.26 22 を判定基準とした。 【0081】 結果と考察 【表8】 結果を表8に示した。ハロゲン化サルチルアニリド化合 物は、ベネデニア・セリオレ、ネオベネデニア・ジレレ 、ヘテラキシネ・ヘテロセルカに対して萎縮効果を発揮 した。これらの結果は、オキシクロザニドを含むハロゲ ン化サルチルアニリド化合物が魚類寄生虫に対して駆虫 効果を発揮することを示している。さらに、オキシクロ ザニドは、ゼウクアプタ・ヤポニカ、ダクチロギルスsp .(図3)、カルジコラsp.(図4)に対して萎縮効果を 10 、カリグスsp.(図5)に対して運動を停止させて宿主 鰓弓から脱落させる効果を発揮した。オキシクロザニド は、単生虫であるハダムシやエラムシだけではなく、魚 類の吸虫や魚類の寄生性甲殻類にも駆虫効果を発揮する 【産業上の利用可能性】 ことから、魚類寄生虫全般に対して駆虫効果を発揮する 【0082】 ことが考えられた。また、先の実施例で示したように、 本発明により、養殖魚等の寄生虫、特に単生虫又は吸虫 本化合物を魚に投与することでこれら寄生虫を駆虫でき を経口投与で駆除することができる抗寄生虫薬を提供す る。 ることができる。 【図2】 【図5】 【図3】 【図1】 【図4】 ──────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き ( 12 ) (74)代理人 平澤 寺地 河野 日本水産株式会社 川上 長谷川 (56)参考文献 大分海洋研究センター内 共立製薬株式会社 先端技術開発センター内 共立製薬株式会社 先端技術開発センター内 賢 勝間田 直美 東京都千代田区九段北1−12−4 審査官 日本水産株式会社 和夫 茨城県つくば市高見原2−9−22 (72)発明者 中央研究所内 文美 茨城県つくば市高見原2−9−22 (72)発明者 2015.8.26 徳高 大分県佐伯市鶴見有明浦508−8 (72)発明者 B2 拓己 東京都八王子市七国1−32−3 (72)発明者 5771203 100122644 弁理士 (72)発明者 JP ▲高▼岡 共立製薬株式会社内 裕美 特開2006−061107(JP,A) 特開2000−281568(JP,A) 特開2002−338538(JP,A) IGLESIAS R, et al.,Antiprotozoals effective in vitro against the scuticociliate fish pathogen Philasterides dicentrarch,Diseases of aquatic organisms,2002年 6月 3日,Vol. 49, No. 3,p. 191-197 TOJO J, et al.,In vitro effect of anthelmintics on Anisakis simplex survival,Japanes e Journal of Parasitology,1992年,Vol. 41, No. 6,p. 473-480 KUMARI YS,Effect of tolzan on carbohydrate metabolism and protein metabolism of an ac anthocephalan parasite Pa,Bulletin of Pure and Applied Sciences, Section A,2006 年,Vol. 25A, No. 1,p. 13-18 OGAWA K. et al.,A new blood fluke of the genus Cardicola (Trematoda: Sanguinicolidae) from Pacific bluefin tuna Thun,Parasitology International,2010年 No. 1,p. 44-48 (58)調査した分野(Int.Cl.,DB名) A61K 31/33−31/80 A61P 1/00−43/00 CAplus/REGISTRY(STN) 3月,Vol. 59
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