受賞者(PDF)

第11回石井進記念棚田学会賞受賞者(2015年8月)
受賞者:うきは夢酔塾、つづら棚田保全協議会、つづら棚田を守る会(福岡県うきは市)
業績名:多様な担い手による棚田・景観の保全とこれらを活かしたまちおこし
業績理由:本件ではうきは市長から3団体が合わせて推薦されている。各団体とも10年近くあるいはそれ以上
の活動実績を有し、一部メンバーは重複しており相互の連携した活動により業績が達成されている。3団体が
一括して推薦されていることは、この地域の棚田の保全を多様な担い手が支えている現状を踏まえたものと考
えられる。
まず、うきは夢酔塾は、1994年から21年間にわたり、町民有志をメンバーに棚田に咲き乱れる彼岸花を愛
でるイベントを主催し、ピーク時には3万人を超える来場者を得て地域の活性化に貢献しているほか、早春に
開催される棚田の段差を活用したお雛様めぐり、豪雨で被災した棚田の石垣の復旧作業などの活動実績がある。
次に、つづら棚田保全協議会は、1998年より17年間にわたり、約400年前の室町期から手作業で作られてき
た棚田を活用し、棚田オーナー制度による都市との交流に取り組み、当初75組であったオーナーは最近では
120組前後に増加している。そしてつづら棚田を守る会は、2006年から9年間にわたり、高齢化が進み耕作放
棄の発生が懸念された棚田70枚、約11,000nfを耕作するとともに、自治組織と共同で様々な景観・文化の保
全活動を実施するほか、広域で組織される耳納風景街道に参画して筑後地域の景観保全に尽力している。
このように、推薦された3団休はつづら棚田の保全と活用、景観の保全に長年にわたり大きく貢献しており、
その社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致するものであり、棚田学会賞を授賞するに相応しいも
のと認められる。
受 賞者:特定非営利活動法人鴨川現代バレエ団(千葉県鴨川市)
業績名:里舞の創作・発展による棚田保全の啓発と新たな棚田文化の発信
授賞理由:鴨川現代バレエ団は、2002年の第8回全国棚田(千枚田)サミット鴨川大会の際に初演して以来、
大山千枚田保存会と連携して14年にわたり「里舞」を上演している。以来、鴨川現代バレエ団はNPO法人とし
て認証を受け、多くのダンサーを指導する中で「里舞」の新たな作品の創作を続け、営農など棚田に対する人々
の行為を歌い上げた舞に、棚田を舞台とする生命の連鎖と相互作用の不思議、すぼらしさを構成に加え、棚田
物語として発展、完成させてきた。
バレエは、文化庁が文化曹舌動のうち舞台芸術に分類しているように、本来は室内のステージで舞う芸術と理
解されてきたが、r里舞」はこの限界を超え棚田をステージとし、里山をテーマとした日本では他に例を見ない
舞踊として、ダンサーによる舞と棚田及び多様な植物、生物、大地、水などの自然と景観が共鳴し合う、共生
型のナチュラル・ステージ芸術を作り出している。
大山千枚田など棚田以外の都市部のホール等での講演の際にも、冒頭に棚田のスライドを上映するなど棚田の
魅力を最大限に伝えることに注力し、棚田の保全活動の啓発に貢献している。棚田とは一見ミスマッチな現代
バレエという表現手段で、中山間地域の棚田から都市への文化を発信し、人々を棚田へといざなう活動手法は、
広く他の棚田地域の参考と成り得るとともに、今後、日本はもとより世界へ向けて棚田文化を発情してゆく可
能性をも秘めている。
棚田を直接に保全する活動以外にも、写真撮影、芸術創作、映像制作などによる啓発活動を対象とした授賞
は過去にも多数あるが、「里舞」は物質的な形として残らない舞踏であり、それ故にそのさらなる発展が無限に
期待しうるものである。「里舞」は棚田の保全と活用、景観の保全にこれまでも貢献するとともに将来の発展の
可能性を有しており、その社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致するものであり、棚田学会賞を
授賞するに相応しいものと認められる。
受 賞者:いこま棚田クラブ(奈良県奈良市)
菓組名:多様な人々への学習・体験環境の提供とそれを支える組織運営手法
授賞理由:いこま棚田クラブは、2003年の設立以来12年間にわたり、定例活動としてほぼ毎週欠かさずに棚
田の保全活動を実施している。その12年間の平均実施密度は4.2回/月×30名であり、定例活動以外の特別
活動も含めた2014年度の実績は、年間活動回数89回、のべ参加人数5,300名に及んでいる。特別音舌動として
は、伝統行事「西畑の大とんど」の復活、近畿大学農学部の棚田・里山体験講座の実施、JICA東南アジア研修
生の受入、いこま棚田通信の発行、菜の花エコプロジェクトの実施、関西テレビ番組の収録、奈良NPOフォー
ラム2014での発表など多岐にわたる。
本会の会員は、自然環境重視型のアグリライフの実践、都市住民の新しい居場所づくり等の理念を共有する
ことで結びついているが、規約上入会及び退会の概念はなく、会費は無料でいわゆる会員名簿も存在しない。
クラブの目的である「私たちの宝物である棚田の大切さを認識し棚田などの保全のための情報収集や普及啓発、
保全活動の実践を通して、棚田などを活用して地域の活性化や歴史文化の発掘、技術の伝承などに寄与する」
に賛同する者をもって組織し、その運営体制として運営幹事13名が置かれ、担当業務を割り振っているが、総
会や幹事会の規定はない。
本会の定例活動は定期(第1,3,5日曜日と第2,4月曜日)に必ず開催し、計画及び準備作業を立案した担
当幹事の下、参集した会員数に応じてグループ活動が割り当てられ、参集者はその場で好きな活動内容を選べ
る。本会の安定・充実した活動は、徹底した定期開催、自由と自律を重視した活動方針、柔軟な組織体制を特
徴とする組織運営手法によるものである。これは、全国各地の棚田保全団体に大いに参考となるもので、その
社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致するものであり、棚田学会賞を授賞するに相応しいものと
認められる。
なお、同一地区に存在する地区住民の自治会「西畑棚田を守る会」は、地元の共同作業、懇親会やイベント
を実施しているが、定例の棚田保全活動には参加していないため、今回、いこま棚田クラブが単独で本件に応
募することに同意している。