ノーベル平和賞のあり方

ノーベル平和賞のあり方
2012年11月26日 1186503c 荒山柚季
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目次
• 1,問題提起
• 2,ノーベル平和賞とは
• 3,過去の事例
• バラク・オバマ
• EU
• 中国
• 4,問題点と提言
• 5,展望
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問題提起
• オバマ大統領、EUのノーベル平和賞受賞
• これまでの成果を認める授賞ではなく、新しい形の授賞
• 中国内部での平和賞の受け止め方
• 文学賞授賞者が出たことで、政府の立場は?
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ノーベル平和賞
• 1901年 創設
• 対象
• 人権、国際紛争の調停、軍縮などの分野で活躍した人と団体
• 選考方法
• 一度に3人まで
• 5人のノーベル賞委員会が選考
• ノルウェー議会が任命
• 2つの考え方
• 活躍後押し型
• 実績ご苦労様型
“The said interest shall be divided
into five equal parts, which shall be
apportioned as follows: /- - -/ one
part to the person who shall have
done the most or the best work for
fraternity between nations, the
abolition or reduction of standing
armies and for the holding and
promotion of peace congresses.”
Nobelprize.org(http://www.nobelprize.org/nob
el_prizes/peace/)より引用
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最近の主な平和賞授賞者
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2012 欧州連合
2011 エレン・ジョンソン・サーリーフ、レイマ・ボヴィ、タワックル・カルマン
2010 劉 暁波 (リウ シアオポー) 中国における基本的人権のための長く非暴力的な闘争
2009 バラク オバマ 国際的な外交と民族間の協力の強化のための驚異的な努力
2008 マルティ アハティサーリ 複数の大陸で30年以上にわたり、国際的な紛争問題の解決に注
がれた重要な努力
2007 気候変動に関する政府間パネル 人為的に起こる気候変動についての知識を広め、その変
動を打ち消すために必要な処置の基盤を築く努力
アルバート アーノルド (アル) ゴア
2006 グラミン銀行 下層からの経済的・社会的発展を創造する努力
ムハマド ユヌス
2005 国際原子力機関 核エネルギーの軍事利用を防ぎ、平和利用を可能な限り確実にしてきた
努力
モハメド エルバラダイ
2004 ワンガリ マータイ 持続可能な発展、民主主義、および平和への貢献
2003 シリン エバディ 民主主義と人権擁護への努力
2002 ジミー カーター 数十年間にわたり、国際紛争の平和的解決への努力を続け、民主主義と人
権を拡大させたとともに、経済・社会開発にも尽力した
2001 国際連合
コフィ アッタ アナン
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過去の事例 1,バラク・オバマ
• 2009年授賞
• 授賞理由
• 「国際的な外交と諸国民の協力を強めることに対して並外れた努力をし
た。特に『核なき世界』を目指すとする理念と取り組みを重視する。」※
• 単独行動主義から多国間協調重視へ
• 京都議定書離脱から温暖化対策に乗り出して国際交渉にも復帰
• 授賞に関してのオバマ大統領のコメント※
• 「これは私が成し遂げたことに対してではなく、すべての国の人びとの希
望を代表して米国の指導力に与えられたものと考えている。」
• 「この賞を行動への呼びかけとして受け入れる。」
※朝日新聞2009年10月10日朝刊1ページより引用
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1-2 世界の反応
称賛
批判
• サルコジ(仏)・・・正義、平和、
• タリバーン・・・アフガンへの
地球の大きな調和を守るため
の決意
• メルケル(独)・・・短期間で成
功、全面的に支持すべき
• バローゾ欧州委員長・・・世界
最強の軍事国の指導者が核
なき世界のビジョンを国際的
に呼びかけたことの反映
追加派兵は戦争悪化
• イラン・・・核開発問題をめ
ぐって協議、時期尚早
• キューバ・・・平和賞を受け
た以上、通商戦争を終わら
せるべき(制裁解除)
→欧州各国では称賛の声が
強い
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1-3 委員会の思惑、問題点
• この平和賞を世界最強の声明として根付かせたい、という思
惑
• 授賞式12月10日は、米ロ核軍縮交渉、COP15が佳境を迎える時期
だった
• 「核なき世界」への軍縮路線や、気候変動問題で国際社会全体を変え
たい
• 平和賞の意義は今後次第
• オバマ大統領が抱える問題点は解決困難なものが多い
• 今後の動向次第で評価が変わる
• 授賞時期の問題
• 大統領に就任してわずか9ヶ月ほどでの授賞、業績ほぼなし
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過去の事例 2,EU
• 2012年授賞
• 授賞理由
• 戦火を交えてきた国々、特にフランスとドイツが、民主主義や人権保護
という共通の価値観をもとに一つのヨーロッパというものを戦争以外の
方法、つまり話し合いで地域共同体を作りあげてきたこと
• 統合の60年を評価
• ユーロ危機のもとで加盟国が反発し合うことに対する警告
• フィンランド、ギリシアでの反EU政権→EUへのエール?
• 授賞に対する批判
• 親EUのヤーグラン氏の政治的立場を表明しただけ
• 経済的問題はこの賞では解決できない
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過去の事例 3,中国
人権活動家 劉暁波(リウシアオポー)氏
国家政権転覆扇動罪で服役中
• 授賞理由
• 中国の民主主義化に向けた非暴力的運動
• 08憲章→2010年2月に懲役11年の実刑判決
• 中国共産党の一党独裁見直し
• 言論・宗教の自由
• 委員会の意図
• ヤーグラン氏「中国は大国として基本的な人権を守る責任がある。目を
そらしてはいけない。」
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3-2 ノーベル平和賞に対する中国の反応
• 中国政府「犯罪者への授賞」と批判※
• 「一国の裁判所が判断を下した重要犯罪人にノーベル賞を与えることは、
粗暴な内政干渉」
• 「社会の安定」を理由に、人権活動家などを厳しく取り締まる
• 民主活動家の海外との自由な行き来制限
• 海外で活動する人々の帰国認めず
• 授賞式欠席
• 家族(妻)も軟禁状態、代理人なしの異例事態
• 出国を封じ、経済力を背景に各国に欠席するよう圧力
• 共産党から見れば
• 一党独裁廃止や言論の自由を一度認めれば、中国の体制を揺るがし
かねないという危機感
※朝日新聞2010年10月9日朝刊2ページより引用
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3-3 ノーベル文学賞授賞者
莫言(モーイエン)氏
• 2012年授賞
• 農民の視点から一人っ子政策による中絶や権力の腐敗など
を批判
• 一方で、政治に関わる発言は控える
中国の反応
初の自国の国籍作家として歓喜
政府(共産党)は政治経済のみならず、ソフトパワーでの国際競争力強
化も視野に入れている?
今後この授賞を国内外にどうアピールするか
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3-4 中国の2つの事例から
• 民主活動家の劉暁波氏について
莫氏「一刻も早く自由を回復することを望む」
• 莫氏は「体制内作家」とも言われる
• 中国政府公認の中国作家協会の副主席を務める
• 本人は、「体制側」との見方に反論
「私は中国共産党のために作品を送り出してきたわけではない」※
• 体制派の莫氏の授賞は称賛、莫氏は劉暁波氏の自由要求
→中国政府はどういう対応をとるか?
莫氏を称賛するならばその発言も無視できず
この展開を委員会は予測済みか
※日本経済新聞2012年10月13日朝刊6ページより引用
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問題点と提言
問題点①活躍後押し型
まだ成果のあがっていない事柄に対する授賞
授賞した、という事実だけで終わってしまう危険性
成果があったか、という検証が必要
平和賞授賞式での具体的目標の提示
数年後にノーベル賞委員会からの評価
問題点②「平和」「人権」という概念
「中国を筆頭に人権という西側諸国の価値観に挑戦するイデオロギー
圏が現れてきたのではないか」(オスロ国際平和研究所)※
アウンサンスーチーさんの例からも、人権活動家等の国際社会へのアピー
ルとして必要
平和、人権といった考え方の見直しの機会
※朝日新聞2010年12月11日朝刊2ページより引用
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展望 平和賞のあり方
今後も「活躍後押し型」の授賞は増える
現在起こっている事柄の授賞には、政治的判断が入る可能性はある
しかし、授賞によってその事柄をプラス面へ推進できる
現在の問題が授賞することで、問題を未然に防ぐことができる
授賞だけで終わってしまわないように、その後の対策をするべき
「人権」や「平和」が侵されている国への内政干渉
活動推進のきっかけとして行うべき
ただし政府等によって拘束されている場合などは、逆に弾圧を受けると
いう可能性を考慮する
平和賞の価値観がほんとうに授賞者の国、地域で通用するか
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参考文献
• 浜田和幸『ノーベル平和賞の虚構』2009年、宝島社
• 「聞蔵Ⅱビジュアル 朝日新聞記事データベース」
http://database.asahi.com/library2/main/start.php
朝日新聞
2009年10月10日朝刊1,2ページ、2010年10月9日朝刊2ページ、2010年12
月11日朝刊2ページ、2012年10月13日朝刊2ページ
• 「日経テレコン21」
http://edu21.nikkeimm.co.jp/g3
日本経済新聞
2012年10月13日朝刊6ページ
• 「ノーベル賞受賞者」
http://www.ylw.mmtr.or.jp/~gifu-cea/data/nobel/nobel.htm
(最終閲覧2012年11月25日)