Annual Report No.29 2015 急冷プロセスを伴うスパッタ法で堆積した Si基板上のc軸配向単結晶チタン酸ジルコン酸鉛系薄膜 Highly c-Axis Oriented Monocrystalline Pb(Zr, Ti)O3 Based Thin Film on Si Wafer by Sputter Deposition with Fast Cooling Process H26海自40 派遣先 2014年 IEEE国際超音波学会(米国・シカゴ) 期 間 平成26年9月2日~平成26年9月8日(7日間) 申請者 東北大学 大学院 修士課程2年 半 澤 弘 明 まず、Si基板とPMnN-PZTの間の格子定数 海外における研究活動状況 の差を段階的に緩和するために、PMnN-PZT/ 研究目的 SrRuO3/LaSrCoO3/CeO2/YSZ/Siというバッファ 圧電MEMSセンサが広く用いられているが、 層構成にした。また、SiとPMnN-PZTの間の熱 その中でもジャイロセンサは様々な分野に用い 膨張係数の差による配向性劣化を抑制するた られている。このジャイロセンサを高性能化す めに、冷風での急速冷却を行った。成膜され るためには、良質なPZT薄膜が求められる。こ た薄膜は、X線回折によって結晶配向性を評価 のような圧電薄膜は、MgO基板上にはすでに成 した。その結果、90%程度のc軸配向PMnN- 膜が行われているが、MgO基板は高価であり加 PZTの成膜が確認された。その後、誘電率の 工も難しく、量産には向かない。そこで本研究 評価およびカンチレバーによる圧電定数の評価 では、このような高性能なPZT薄膜(c軸配向単 を行った。誘電率は250程度、圧電定数e 31 は 結晶)をSi基板上に成膜することを目的とする。 -14 C/m 2 程度の値を得ることができた。従来 先行研究で実証された急冷プロセスに加え、 の膜に比べて性能指数は向上しており、実デ MnやNbをドープすることで、性能の向上を目 バイスへの応用が期待される。 指す。また、DeepRIEやWetエッチング等、プ 以上の流れで発表を行った。私個人として ロセスを実際に行い、プロセスの実証を行う。 は、初めての学会参加という事で、非常に緊 張したが、何とか発表を終えることができた。 海外における研究活動報告 本派遣では、I E E E 国際超音波学会に参加 発表終了後には、質疑応答の時間があった。 をし、急冷プロセスを用いた、c軸配向単結晶 その内容としては、以下の2点があった。 PZT系薄膜のSi基板上へのスパッタリング成膜 ① 4μmより厚い膜を付けることは可能か。 についての発表を行った。発表形態は、口頭 ② 誘電率が小さい理由はなにか。 であり、12分間の発表と3分間の質疑応答を であった。それぞれに回答を行った。 行った。発表した研究内容について簡単に紹 ①に関しては、現在の所、4μm成膜に15時 介する。 間程度かかるため、必要以上に厚い膜は成膜 ─ 426 ─ The Murata Science Foundation していない。500nm、1μm、2μm、4μmと成膜 は興味深く、重要な要素であると考えられるた した経験からは、膜厚が大きくなるほど、c軸の め、次回の課題としたい。現在すでに、ヒー 割合は小さくなるが、4μmにおいても、75%程 ターと熱電対を用いたセットアップを構築し、 度のc軸割合が存在するため、おそらくそれ以 実験を開始しており、高キュリー点など、良 上厚い膜でも、c軸配向は成功すると考えられ 好な温度特性が観測されている。 るとお答えした。 他にも、非鉛系圧電材料についての発表も ②に関しては、薄膜中に欠陥や転位などが あり、非常に勉強になった。特にKNNの研究 存在する場合に誘電率が上がるという報告を についてのポスターセッションでは、村田製作 例に挙げ、本研究における薄膜では欠陥が少 所の研究者の方とお話しさせて頂き、KNNの ないため、誘電率が低いのではないかという内 現状について詳しく教えて頂いた。圧電材料 容をお答えした。 の評価方法について、これまで疑問だったこと を質問させて頂き、大変勉強になった。 また、発表終了後、意見交換を行った。そ の際に、②に対する追加の意見として、円形 以上のように、この学会では、口頭発表する キャパシタの電極面積が、誘電率測定用の電 ことを経験させて頂いたり、他の方々の発表を 極サイズよりも、実際は大きく見積もられてい 通して勉強させて頂いたりと、非常に有意義な る可能性があるとの言葉を頂いた。我々として 経験であった。今回の経験を生かして、さら は、500μmの円形白金電極を用いて、1~2μm に研究を進めていき、論文にまとめたり、企業 のPZT薄膜を挟み、キャパシタを作成している の方と連携をして実用化をしたりしていきたい。 ため、電極からの漏れの影響は極めて小さいと このような経験を援助頂いた貴財団には大 考えてきた。しかし、この影響は無視できない 変感謝をしております。 可能性もあり、シミュレーションを用いた補正 この派遣の研究成果等を発表した が必要であるとのことだった。次回の課題とし ては、FEMTETなどシミュレーションソフトを 用いて、実際に本効果の影響がどれほどあるか 著書、論文、報告書の書名・講演題目 [学会プロシーディング] Highly c-Axis Oriented Monocrystalline Pb(Zr, Ti)O3 Based Thin Film on Si Wafer by Sputter Deposition with を検討する。 Fast Cooling Process また、他の研究の中にも学ぶべき点が多々 存在した。その一つに、温度特性の調査であ る。圧電材料の発表はいくつか存在したが、 多くの発表の中で、キュリー点の測定や、誘 電率の温度依存性などを調査していた。実デ バイスに応用するにあたって、やはり温度特性 [著者] Hiroaki Hanzawa, Shinya Yoshida, Kiyotaka Wasa, Shuji Tanaka [学会名] 2014 IEEE International Ultrasonics Symposium ─ 427 ─
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