高精度・スピーディーな 3次元計測を可能にする 産業用ステレオカメラ 株式会社リコー/岸和田潤 リコーインダストリアルソリューションズ株式会社/森久泰二郎 近年、FA (ファクトリーオートメーション)、物流、セキュリティなどの産業分野で新たな生産プロ セスの開発やサプライチェーン全体の最適化を目指す取り組みが本格化しており、システムの自 動化が加速している。 今回リコーインダストリアルソリューション株式会社より発売された産業用ステレオカメラ 「RICOH SV-M-S1」は、装置の「目」の役割を果たし、対象物を高精度・スピーディーに3次元計 測することでシステムの自動化を可能にする。 1 開発の経緯 とらえることのできる新しいマシンビジョン環境 を構築することで、お客様に「イメージング領域 リコーは 1970 年代後半から、自動化生産設備の の拡大」という新たな価値を提供していく。 自社開発を進め、検査工程でのセンサモジュール たとえば、解像度(空間分解能)と明るさ(透過 実装などを通して、マシンビジョンに関する技術 光量)を犠牲にすることなく被写界深度を拡大す ノウハウを蓄積してきた。社会の様々な分野でマ る「被写界深度拡大カメラ」は、レンズとの距離 シンビジョンの重要性が増していく中、リコーグ や角度などを調整することなく対象物を明瞭に認 ループとして産業向け事業の強化、拡大を図って 識することができる。また、被写体がもつ分光情 いくため、2011 年にマシンビジョン用レンズなど 報を取得することのできる「マルチ分光カメラ」 の光学技術資産を買収により獲得した。さらに は、波長に対する光の強度分布(スペクトル)およ 2014 年 10 月にはリコーグループ内に分散してい び色度をリアルタイムに算出して所望の分光情報 た光学、画像処理、電装などに関する技術や人材 を高精度に認識できるため、これまで見分けにく を集約し、新会社「リコーインダストリアルソ かった被写体はもちろん、経時変化する対象物の リューションズ株式会社」として事業展開を図っ 状態検査や異物検出などに用いることができる。 ている。 近年、製造や物流などの産業分野ではシステム リコーはマシンビジョン展開に向けて、これま の自動化が加速している。たとえば、ロボットアー での幅広い事業領域を支えてきた要素技術である ムで山積みされた部品を掴んで生産ラインに自動 光学・画像処理・電子デバイス・電子実装・材料 で整列して置くためには、対象物の形状を 3 次元 科学の各技術を結集させることで、人の眼に限り でとらえる必要がある。独自のキャリブレーショ なく近い性能をもった光学モジュールを提供して ン技術、および視差演算技術により、高精度かつ いる。また人の能力では及ばない領域の情報をも 高速で 3 次元計測可能な産業用ステレオカメラ eizojoho industrial July 2015︱67
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