濾胞性ヘルパーT細胞分化および関節リウマチの病態生理におけるBcl3

#OP0120
Oral Session
The EUuropean League Against Rheumatism 20
2015
15
欧州リウ
リウマチ
マチ学会
学会 NE
2015
20
15年 欧州
NEWS
WS FLA
LASH
SH
June 10-13,2015
in Rome,Italy
濾胞性ヘルパー T細胞分化および
関節リウマチの病態生理におけるBcl3の役割
Roles of B cell leukemia/lymphoma 3 in the development of T follicular helper cells and the pathogenesis of rheumatoid arthritis
目黒 和行 先生 千葉大学大学院医学研究院 アレルギー・臨床免疫学
Quick
i k Review
i
我々は、
トシリズマブ(TCZ)
に良好な臨床反応を示した関節リウマチ(RA)患者のCD4+T細胞※1において、DNAマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝
子発現解析を行った1)。今回の研究では、TCZ投与後に大きく発現が低下するB cell leukemia/lymphoma 3(Bcl3)
に注目した。その結果、RA患
者におけるCD4 +T細胞中Bcl3発現上昇は、濾胞性ヘルパー T細胞※2の分化に関与している可能性が示唆され、TCZ臨床効果の機序のひとつとして
本シグナル伝達経路の阻害が推察された。
・Bcl3は、
リンパ組織で発現している転写因子※3である。
・RA患者のCD4+T細胞中のBcl3発現レベルは、健康対照に比べ有意に高かった(図1)。また、RA患者のCD4+T細胞中Bcl3発現レベルはTCZ投与
12週後にベースラインと比べ有意に低下(p<0.01)
したが、TNF阻害薬およびアバタセプトでは有意な変化はみられなかった。
・RA患者のCD4+T細胞中のBcl3発現レベルは、血清IL-6レベルと相関した(図1)。
・IL-6刺激により、Bcl3はSTAT3※4依存的に発現誘導された(マウスCD4+T細胞)。
・Bcl3強制発現により、Bcl6
(図2)。またBcl3強制発現は、
濾
(濾胞性ヘルパーT細胞分化の主要制御因子)の発現は有意に上昇した
(マウスCD4+T細胞)
胞性ヘルパー T細胞の分化(
)、IL-21産生濾胞性ヘルパー T細胞様細胞への分化を促進した
(
)
。一方、
Bcl3サイレンシング※5により、
IL-21産生濾胞性ヘルパーT細胞様細胞への分化は減弱した。
・RA患者のCD4+T細胞において、Bcl3発現レベルは、濾胞性ヘルパー T細胞関連遺伝子(CXCR5、ICOS、ASCL2など)の発現レベルと正の相関を示した。
・RA患者においてCD4+T細胞中のBcl3は、Bcl6の発現上昇を介して濾胞性ヘルパー T細胞の分化を促進し、RAの病態形成に関与している可能性が
示唆された(図3)。
1)Saito et al.: Arthritis Rheum. 2014; 66: 1185-1194.
※1:CD4 + T細胞:CD4タンパク分子を細胞表面に発現するT細胞。細胞傷害性T細胞の機能発現、B細胞の分化成 ※4:STAT(Signal Tranducer and Activator of Transcription)
3:IL-6シグナル下流の
主要転写因子
熟・抗体産生、貪食細胞の活性化を誘導する。
T細胞領域から濾胞へ移動してB細胞の働きを補助できるように分化した細胞。 ※5:遺伝子サイレンシング法:特定の遺伝子発現を人為的に抑制する手法。通常環境下で発現する特定
※2:濾胞性ヘルパー T細胞:T細胞の中でも、
産物の遺伝子スイッチを切ることで、
その遺伝子機能を解明する実験レベルのアプローチ法である。
※3:転写因子:遺伝子の発現を調節するタンパク質。DNAを鋳型として、
RNAが産生
(転写)
される時期や量を調節する。
7
A
Bcl3(DNAマイクロアレイシグナル強度)
健康対照およびRA患者におけるBcl3の発現(A)、および血清IL-6との相関(B)
Bcl3(DNAマイクロアレイシグナル強度)
図1
p<0.01
6
5
4
3
2
1
0
健康対照
(n=11) RA患者(n=20)
7
B
r=0.710
p=0.010
6
5
4
3
2
1
0
0
2
4
6
8
IL-6(log 2に対数変換)
・ CD4+T細胞におけるBcl3発現レベルは、
健康対照に比べ、
未治療のRA患者で有意に高値を示した。
・ RA患者のCD4+T細胞中のBcl3発現レベルは、血清IL-6レベルと相関した。
RNA シークエンス解析結果
5.0
WT C57BL/6 マウス
レトロウイルス
による感染
0.020
Bcl6
MIT-Bcl3-MIT(log 2)
抗原刺激を受けて
いないCD4 + T細胞
A
p<0.01
0.016
2.5
上昇
0
低下
-2.5
0.012
0.008
0.004
-5.0
RNAシークエンス解析
B
Bcl3
相対的なBcl6発現
図2
0
5
10
15
(MIT-Bcl3+MIT)/2(log 2)
0
MIT
MIT-Bcl3
RNAシークエンス解析において、
Bcl3の強制発現により発現が有意に上昇する遺伝子のひとつとして、
Bcl6が抽出され、定量的PCR法によっても確認された。
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濾胞性ヘルパー T 細胞分化および関節リウマチの病態生理におけるBcl3の役割
図3
濾胞性ヘルパーT細胞分化、およびRAの病態生理におけるBcl3の役割
IL-6
TCZ
RA
IL-21による
自己抗体産生
(RF、ACPA)
CD4+ T 細胞
STAT3
濾胞性ヘルパー
T細胞の分化
P
Bcl3
STAT3
STAT3
Bcl6
?
Bcl3
p50
濾胞性ヘルパー
T細胞様細胞の分化
P
BCL3 遺伝子
BCL6 遺伝子
・ Bcl3はIL-6/STAT3シグナルにより誘導され、
さらにBcl3はBcl6発現を誘導することで濾胞性ヘルパー T細胞の分化を促進し、RAの病因に関与していると考えられる。
・ TCZによるBcl3発現低下は、濾胞性ヘルパー T細胞の分化およびIL-21産生の抑制につながり、
これがTCZ臨床効果の機序のひとつと推察される。
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