58 神戸大学皮膚科学教室 スタッフ 歴代教授 4代教授 准教授 岡 昌宏 初代 佐野榮春 錦織千佳子 講 師 尾藤利憲 2代 三嶋 豊 講 師 永井 宏 3代 市橋正光 (2013 年 4 月 1 日現在) 教室の歴史 おもな業績 神戸大学医学部の前身は 1869 年 ( 明治 2 年 ) に日本で 3 番目の病院として設立され た神戸病院にはじまります。その後 1926 年に兵庫県立神戸病院に皮膚科が設けられ、設 光皮膚科学の研究と診療 海外でも見られる変異 置当初は皮膚科と称していましたが 1929 年に皮膚泌尿器科と改称し、1962 年に皮膚科、 光線過敏症の診断を的確に行うこ 泌尿器科がそれぞれ独立しました。さらに 1964 年に国立移管され神戸大学医学部が設 とと基礎研究から得られた理論に基 置されました。神戸大学医学部皮膚科の初代教授には佐野榮春教授を迎え、その後三嶋 づき、安全性と有効性のバランスを 豊教授、市橋正光教授を経て、2003 年より現在の錦織千佳子が第 4 代の教授として就任 し、今日に至っています。当教室は患者さんの診断・治療を中心とした臨床現場を大切にし た医療を実践する一方で、臨床に根ざした質の高い基礎研究を行うことにより、その成果 を臨床に還元することを目指しています。特に皮膚悪性腫瘍、光生物学、皮膚免疫学に関 する研究を長年にわたり教室のテーマとして行っています。臨床・研究の全般にわたり、幅 広い視野を持つ皮膚科専門医の育成を目指しています。 日本人XP-V患者に見られるPOLHの変異部位 考えた光線治療を行うことを目指して います。2003 年に“ 色素性乾皮症 の遺伝子診断 ”を開始し、症例を積 G349C A117P G490T aberrant splicing G916T E306 stop C725G S242 stop C1066T del1661A A1766C R356 FS554 stop K589T stop At 584 {5} {2} ホモ ホモ {8} ホモ ホモ {6} {1} 12/54 ヘテロ {2} ホモ {1} ヘテロ {1} ホモ {2} ヘテロ {2} ヘテロ ヘテロ {1}(22.2%) 11/54 6/54 18/54 (33.3%) (11.1%) (20.3%) ゲノムDNA E1 アミノ酸コドン 40kbp E2 E3 1 46 91 E4 163 E5 E6 220 E7 E8 E9 E10 255 295 336 358 Exon 11 415 713aa Masaki T, Ono R, Tanioka M, Funasaka Y, Nagano T, Moriwaki S, Nishigori C: J Dermatol. Sci. 2008; 144-148. み重ね、2008 年より“ 色素性乾皮症の遺伝子診断 ”が先進医療と認められました。そ れらを踏まえて、2012 年 4 月から色素性乾皮症の遺伝子診断は保険収載となり、患者 さんにとって大きな福音となりました。研究をベースに臨床の診断につなげることができ たことは意義深いと考えています。色素性乾皮症以外の稀少遺伝性光線過敏症について も、日本各地の専門家とネットワークを作って診断を進めています。研究については、 教室の特色 DNA 修復異常である XP の病態の解明、特にその神経症状発症の機序などについて、 神戸大学医学部附属病院は神戸の中央に位置し、北に六甲山、南に神戸港と広がる て、癌化を引き起こす外因的な要因について動物モデルで検討するとともに、宿主側の 開放的な風土と、港町としての国際性の上に発展してまいりました。病床数 920 床の兵 要因も遺伝疫学的な手法で解析を行っています。 細胞生物学的、分子生物学的なアプローチを用いて研究を進めています。光発癌につい 庫県の拠点病院であり、地域がん診療連携拠点病院、災害拠点病院、へき地医療拠点と して地域医療に貢献しています。皮膚科では1日 120 人の外来、27 名の入院患者の診 療を行っており、教室員は総勢約 100 名、皮膚科常勤医を派遣している病院が 25 と全 皮膚腫瘍学 国最大級の規模を誇ります。地域性に富んだ関連病院と多彩な症例によりオールマイ 当教室には現在まで約 40 年にわたって連綿と ティーな高い臨床診断能力を養うことができる環境を整えています。光皮膚科学のメッカ して続く色素細胞研究の歴史があります。現在は、 として光線、紫外線関連の基礎・臨床研究を精力的に行い、この分野におけるオピニオ 悪性黒色腫の癌化進展機構をシグナル伝達機構 色素細胞におけるSTAT3燐酸化の特殊性 Polypeptide-induced STAT3 phosphorylation Tyr705 P STAT3 Tyr705 P STAT3 Ser727 P STAT3 Constitutive STAT3 phosphorylation in melanocytic cells Ser727 P STAT3 Tyr705 P or Ser727 P STAT3 ンリーダーとしての役割を果たしています。日常診療につながるトランスレーショナルリサー の面から解析するグループと、悪性黒色腫の治療 チを意識し、悪性黒色腫などの皮膚悪性腫瘍、蕁麻疹などの皮膚アレルギー疾患、乾癬 法開発を腫瘍免疫の面から目指しているグループ の分野でも神戸からの情報発信を目指しています。 があります。前者のグループの最近の成果としては、転写因子 STAT3 についての色素 melanocytes and primary melanoma cell lines advanced melanoma cell lines 細胞における新規の活性化機序及び機能の発見があげられます。後者のグループは、 interleukin-12 ファミリーの治療応用や腫瘍免疫抑制機構に関する研究を行っています。 皮膚アレルギー疾患における基礎臨床研究の融合 コリン性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎における汗アレルギーの関与を報告し、この分野にお けるパイオニア的な役割を果たしています。食物依存性運動誘発アナフィラキシーに対して 積極的に誘発試験を行い、その病態 解明、予防に関する臨床研究を行って います。日光蕁麻疹などの物理性蕁麻 大学データ 所 在 地 疹における減感作療法の確立を目指 して臨床研究を行っています。このよ 〒650-0017 兵庫県神戸市中央区楠町7-5-1 うに神戸大学皮膚科では「臨床と直結 電 話 番 号 F A X 番 号 078-382-5111(代表) 内線6134(医局) 078-382-6149(医局) した皮膚アレルギー」に関する臨床研 医局メールアドレス 医 局 長 [email protected] 福永 淳 究を行い、患者さんへの情報の還元 を意識した診療を行っています。 Horikawa T, Fukunaga A, Nishigori C: Curr Allergy Asthma Rep 2009; 9: 273-279.
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