2章 酸・塩基 問題解答

A. 反応中の酸、塩基はどれか名称(化学式、日本語)を記す
酸
a NH4+(アンモニウムイオン),
H3O+(オキソニウム)
b H2O(水), HCO3-(炭酸水素イオン)
c H2O(水), HPO42-(リン酸水素イオン)
塩基
H2O(水), NH3(アンモニア)
CO32-(炭酸イオン), OH-(水酸化物イオン)
PO43-(リン酸イオン)、OH-(水酸化物イオ
ン)
ブレーンステッドの酸・塩基の問題である。H+(プロトン)を出す物質が酸、受け入れる
物質が塩基である。酸+塩基⇌塩基(左辺の酸の共役塩基)+酸(左辺の塩基の共
役酸)であり、必ず2種類の酸と塩基が酸・塩基反応に関与する。
a) 左辺でH+はNH4+からH2Oへ移動しているので、酸はNH4+, H3O+, 塩基はH2OとNH3で
ある(アンモニウムイオン、オキソニウムイオン、水、アンモニア)。
b)左辺でH+はH2OからCO32-に移動しているので、酸はH2O, HCO3-、塩基はCO32,OH-である(水、炭酸水素イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン)。
c)左辺でH+はH2OからPO43-に移動しているので、酸はH2O, HPO42-、塩基は
PO43-,OH-である(水、リン酸水素イオン、リン酸イオン、水酸化物イオン)。
平衡が、ほとんど右に偏っている場合、左辺の酸は右辺の酸より強い。また、左辺の
塩基は右辺の塩基より強い 強い酸 + 強い塩基 → 弱い共役塩基 + 弱い共
役酸
B)反応式を記述せよ
a) 希硫酸に水酸化ナトリウム水溶液を加える
b) 希塩酸に水酸化バリウム水溶液を加える
c) 水酸化ナトリウム水溶液に炭酸ガス(二酸化炭素)を吸収させる
d) 炭酸カルシウムに希塩酸を十分に加えると、気体を発生して溶ける
e) 石灰水(水酸化カルシウム水溶液)に炭酸ガスを通じると、水溶液が白濁する
f) 上記の白濁水溶液にさらに炭酸ガスを通じると、無色水溶液となる
a H2SO4 + 2NaOH → Na2SO4 + 2H2O (等モルでの反応によるNaHSO4の生成
も可とします H2SO4 + NaOH→NaHSO4 + H2O)
b 2HCl + Ba(OH)2 → BaCl2 + 2H2O
c 2NaOH + CO2 → Na2CO3 + H2O(等モルでの反応によるNaHCO3の生成も可
としますNaOH + CO2 → NaHCO3)
d CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2
e Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
f CaCO3 + H2O + CO2 → Ca(HCO3)2
a) H2SO4 + NaOH → NaHSO4 + H2O, NaHSO4 + NaOH → Na2SO4 + H2Oより
H2SO4 + 2NaOH → Na2SO4 + 2H2O
NaHSO4はNa2SO4に濃硫酸を加え冷却して得られる。Na2SO4 + H2SO4 → NaHSO4
b) 2HCl+Ba(OH)2 → BaCl2 + 2H2O 水酸化バリウムの水溶液(バリタ水
バリタ水)は強アルカリで、
バリタ水
空気中の炭酸ガスを吸収してBaCO3の沈殿を生じる。
c) NaOH +CO2→NaHCO3 (重曹
重曹、重炭酸ソーダ
重曹 重炭酸ソーダ:
重炭酸ソーダ 弱いアルカリ性、洗剤、フクラシ粉),
NaHCO3 + NaOH → Na2CO3 + H2O
2NaOH +CO2→Na2CO3+H2O 重曹はNa2CO3+H2O+CO2→2NaHCO3で作成
d,e) ガスの発生や沈殿の生成を↑、↓で示すほうが良い
e,f) Ca(OH)2 消石灰、水溶液は石灰水
石灰水 強アルカリ。
消石灰
炭酸カルシウム(CaCO3)は、炭酸ガスを含む水に溶解して炭酸水素カルシウム
Ca(HCO3)2となる。
実験室で炭酸ガスを製造するには、炭酸カルシウムに酸を加える。
天然石灰石は多量の炭酸カルシウムをふくみ、鍾乳石の母体である。
C) 次の塩の種類(正塩、酸性塩、塩基正塩、複塩、錯塩)およびその水溶液は何性(酸性、
塩基性、中性)か
化 学 NaCl BaCl2 Na2CO NH4NO3 Ca(NO3)2 Cu(OH)NO AlK(SO4)2 NaHS [Ag(NH3)2]Cl
O4
式
3
3
種類 正 正塩 正塩 正塩
正塩
塩基性塩 複塩
酸 性 錯塩
塩
塩
液性 中 中性 アルカ 酸性
中性
酸性
酸性
酸性 酸性
性
リ性
説明
加水分解によって生じる酸、
加水分解によって生じる酸、塩基の強さを判定する。
塩基の強さを判定する。
1. NaCl + H2O ≠> HCl + NaOH 強酸と強塩基であり、
強酸と強塩基であり、加水分解しない。
加水分解しない。溶液は中性
2. BaCl2 + 2H2O ≠> 2HCl + Ba(OH)2 強酸と強塩基であり、
強酸と強塩基であり、加水分解しない。
加水分解しない。溶液は中性
3. Na2CO3 + 2H2O → H2CO3 + 2NaOH 弱酸と強塩基であり、
弱酸と強塩基であり、溶液は塩基性
4. NH4NO3+H2O→ HNO3 + NH4OH 強酸と弱塩基であり、
強酸と弱塩基であり、溶液は酸性
5. Ca(NO3)2 + 2H2O ≠> 2HNO3 + Ca(OH)2 強酸と強塩基であり、
強酸と強塩基であり、加水分解しない。
加水分解しない。溶液は中
性
6. Cu(OH)NO3+ H2O →Cu(OH)2+HNO3強酸と弱塩基であり、
強酸と弱塩基であり、溶液は酸性
7. AlK(SO
AlK(SO4)2+ 2H2O → Al(OH)3+KOH+H2SO4
8. NaHSO4+ H2O ≠>強酸と強塩基であり
≠>強酸と強塩基であり、
強酸と強塩基であり、加水分解しない。
加水分解しない。酸性塩で溶液は酸性
9. [Ag(NH3)2]Cl+
]C + H2O →[Ag(NH3)2]OH+ HCl
酸
強酸
弱酸
HCl, HNO3, H2SO4
CH3COOH, H2S, H2CO3, H3PO4
塩基
強塩基
弱塩基
NaOH, KOH, Ca(OH)2, Ba(OH)2
NH3
D)次の反応は水溶液中で右に偏った酸塩基反応である
a) H2O + NaOH ⇌ Na+(H2O) + OH−
b) HCl + H2O ⇌ H3O+ + Cl−
c) H3O+ + HCO3− ⇌ H2CO3 + H2O
d) HCO3− + OH− ⇌ H2O + CO32−
e) H2CO3 + CO32− ⇌ HCO3− + HCO3−
①. 酸と塩基はどれか,
反応
A
B
C
D
E
酸
H2O, Na+(H2O)
HCl, H3O+
H3O+, H2CO3
HCO3−, H2O
H2CO3, HCO3−
塩基
NaOH, OH−
H2O, Cl−
HCO3−, H2O
OH−, CO32−
CO32−, HCO3−
2. それらを強いものから順に並べよ
酸の強さ HCl > H3O+ > H2CO3 > HCO3− > H2O > Na+(H2O)
塩基の強さ 共役塩基は酸の強さの逆の関係にあるので
Cl− < H2O < HCO3− < CO32− < OH− < NaOH なので、
順を逆(NaOH > OH−>・・)に記す
NaOH> OH− > CO32− >HCO3− > H2O> Cl−
E)次の反応で得られる塩の構造と種類(酸性塩、塩基性塩、正塩)を記す
a) H2SO4 + NaOH →,
b) b) H3PO4 + 3KOH →,
c) c) HNO3 + NH3 →,
d) d) HCl + Ca(OH)2→,
e) CH3COOH + NaOH →,
f) H2SO4 + Ca(OH)2→,
g) H2CO3 + NaOH →,
h)H2CO3 + 2NaOH→
反応での係数に忠実に従って生じる塩を記す(溶液2種類を混ぜたとの記述ならば、
最も安定な塩を与える、a: Na2SO4, d: CaCl2, g: Na2CO3)
反応 構造式
a
NaHSO4(等モル反応なのでNa2SO4は不可 0.5Na2SO4+0.5H2SO4+H2Oを
経てNaHSO4)
b
K3PO4
c
NH4(NO3)
d
CaCl(OH)(等モル反応なのでCaCl2は不可, 2HCl+Ca(OH)2→CaCl2+H2Oな
ら正塩)
e
CH3COONa
f
CaSO4
g
NaHCO3( 等モル反応なのでNa2CO3は不可)
h
Na2CO3
種類
酸性塩
正塩
正塩
塩基性塩
正塩
正塩
酸性塩
正塩
F) 次の化学反応式を記す(酸塩基反応では、強酸、強塩基が反応して弱酸、弱
塩基を生成する。従って、弱酸と弱塩基を混合しても反応は生じないことに注意)
a)炭酸カルシウムに希塩酸を十分に加えると、気体を発生して溶ける
b)亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)水溶液に希硫酸を加えると気体が発生する
c)炭酸水素ナトリウム水溶液に酢酸をくわえた
d)酢酸ナトリウム水溶液に塩化アンモニウムを加えた
a
b
c
d
化学反応式
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2↑
2NaHSO3 + H2SO4 → Na2SO4 + 2H2O + 2SO2↑
NaHCO3 + CH3COOH → CH3COONa + H2O + CO2↑
CH3COONa + NH4Cl
反応しない