グラフ理論・組み合わせ論 第1回レポートについて

グラフ理論・組み合わせ論
第1回レポートについて
情報学部門 瀧本 英二
http://www.i.kyushu-u.ac.jp/~eiji
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レポート
1. Hall の結婚定理の必要性の証明を与えよ.
【必要性】
2部グラフ (𝐴∪𝐵,𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, |𝑁(𝑆)| ≥ |𝑆|.
2. 2部グラフの任意の最大マッチング𝑀に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
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1. Hall の結婚定理の必要性の証明を与えよ.
【必要性】
2部グラフ (𝐴∪𝐵,𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, |𝑁(𝑆)| ≥ |𝑆|.
残念ながら,多くのレポートの証明は不完全
もしくは論理展開に誤りがあった.
いくつか事例を見ていきましょう.
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事例1
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, |𝑁(𝑆)| ≥ |𝑆|.
∀𝑆 ⊆ 𝐴, |𝑁(𝑆)| ≥ |𝑆| が成立しない時ある 𝑆 の部分集合 𝐴 が
存在して, ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 < |𝑆| となる.
よって 𝐴 をカバーするようなマッチングは存在せず,
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が 𝐴 のマッチングを持つという条件は
成り立たない.よって,対偶が証明されたため必要性は示された.
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事例1
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, |𝑁(𝑆)| ≥ |𝑆|.
𝑆
𝐴 ある
∀𝑆 ⊆ 𝐴, |𝑁(𝑆)| ≥ |𝑆| が成立しない時ある 𝑆 の部分集合 𝐴 が
存在して, ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 < |𝑆| となる.
よって 𝐴 をカバーするようなマッチングは存在せず,
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が 𝐴 のマッチングを持つという条件は
成り立たない.よって,対偶が証明されたため必要性は示された.
もっとも肝心な部分.
「対偶が成り立つのは明らかなので,必要性が示された」
と言っていることと同じで,レポートの趣旨に反する.
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事例2
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, |𝑁(𝑆)| ≥ |𝑆|.
|𝑁(𝑆)| < |𝑆| と仮定すると,鳩の巣原理より,𝐵 の同じ頂点に
接続する 𝐴 の頂点が存在する.これは2部グラフが 𝐴 の全ての
頂点に接続するマッチングを持つことに矛盾する.
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事例2
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, |𝑁(𝑆)| ≥ |𝑆|.
∃𝑆 ⊆ 𝐴
|𝑁(𝑆)| < |𝑆| と仮定すると,鳩の巣原理より,𝐵 の同じ頂点に
接続する 𝐴 の頂点が存在する.これは2部グラフが 𝐴 の全ての
頂点に接続するマッチングを持つことに矛盾する.
鳩の巣原理をどこに適用したのか不明.また,
「𝐵 の同じ頂点に接続する 𝐴 の複数の頂点」
の意味としても,そのような辺が2部グラフに存在したからと
いって,矛盾を導けない.
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事例2
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, |𝑁(𝑆)| ≥ |𝑆|.
∃𝑆 ⊆ 𝐴
|𝑁(𝑆)| < |𝑆| と仮定すると,鳩の巣原理より,𝐵 の同じ頂点に
接続する 𝐴 の頂点が存在する.これは2部グラフが 𝐴 の全ての
頂点に接続するマッチングを持つことに矛盾する.
おそらく,任意の関数 𝑓: 𝐴 → 𝐵 (ただし, (𝑎, 𝑓(𝑎) ∣ 𝑎 ∈ 𝐴 ⊆ 𝐸)
が単射(1対1対応)ではないことを示そうとしていると思われる.
𝑓 の 𝑆 への制限
𝑓𝑆 : 𝑆 → 𝑁 𝑆 𝑓𝑆 𝑎 = 𝑓 𝑎 , ∀𝑎 ∈ 𝑆
が鳩の巣原理により単射ではないので.
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事例3
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が 𝐴 のマッチングを持っているとする.
マッチングによって 𝑆 ⊆ 𝐴 とマッチングしている 𝐵 の頂点 𝑡 は
𝑆 = 𝑡
である.このとき 𝑁 𝑆 ≥ 𝑡 であるので
𝑁 𝑆 ≥ 𝑆.
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事例3
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
𝑀⊆𝐸
つ
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が 𝐴 のマッチングを持っているとする.
マッチングによって 𝑆 ⊆ 𝐴 とマッチングしている 𝐵 の頂点 𝑡 は
𝑆 = 𝑡
を満たす.
集合
である.このとき 𝑁 𝑆 ≥ 𝑡 であるので
(𝑡 は大文字
の方がよい)
一方,𝑡 ⊆ 𝑁(𝑆) より 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
任意の 𝑆 ⊆ 𝐴 に対し,𝑀
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事例4
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
𝐴 のすべての頂点に接続するマッチングを 𝑀 ⊆ 𝐸 とする.
𝐴 の部分集合 𝑇 について,
𝑁 ′ 𝑇 = 𝑣 ∈ 𝐵 ∃𝑢 ∈ 𝑆, 𝑢, 𝑣 ∈ 𝑀
とする.このとき,任意の 𝑆 ⊆ 𝐴 について,𝑁 𝑆 ⊇ 𝑁′(𝑆).
よって,
𝑁 𝑆 ≥ 𝑁′ 𝑆 = 𝑆 .
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事例4
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
𝐴 のすべての頂点に接続するマッチングを 𝑀 ⊆ 𝐸 とする.
𝐴 の部分集合 𝑇 について,
𝑇
′
𝑁 𝑇 = 𝑣 ∈ 𝐵 ∃𝑢 ∈ 𝑆, 𝑢, 𝑣 ∈ 𝑀
とする.このとき,任意の 𝑆 ⊆ 𝐴 について,𝑁 𝑆 ⊇ 𝑁′(𝑆).
よって,
𝑁 𝑆 ≥ 𝑁′ 𝑆 = 𝑆 .
おしい.𝑁 ′ 𝑇 より 𝑁𝑀 𝑇 の方がよさそう.𝑇 ではなく 𝑆 としても
問題ない.また,「マッチングの定義より,任意の 𝑇 ⊆ 𝐴 に対し,
𝑁𝑀 𝑇 = 𝑇 に注意.」のような一文があると,親切.
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事例5
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
𝐴 がマッチングを持つので,頂点 𝑎 ∈ 𝐴 に対し,辺で繋がって
いる頂点 𝑏 ∈ 𝐵 が少なくとも1つ存在する.従って,
∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
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事例5
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
任意の
𝑎 と隣接して
𝐴 がマッチングを持つので,頂点 𝑎 ∈ 𝐴 に対し,辺で繋がって
いる頂点 𝑏 ∈ 𝐵 が少なくとも1つ存在する.従って,
∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
不十分.各頂点 𝑎 ∈ 𝐴 に対し,相異なる頂点 𝑏 ∈ 𝐵 が存在
ことを示す必要がある.
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事例6
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
対偶を示す.
∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 < 𝑆 が成り立つとする.
ここで,𝑆 が 𝑠 という集合だと考えると,𝑁(𝑆)は空集合となる.
この場合,𝐴 のマッチングは存在しない.
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事例6
【証明したいこと】
2部グラフ (𝐴 ∪ 𝐵, 𝐸) が,𝐴 のマッチングを持つ
⇒ ∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 ≥ 𝑆 .
∃ 対偶を示す.
∀𝑆 ⊆ 𝐴, 𝑁 𝑆 < 𝑆 が成り立つとする.
ここで,𝑆 が 𝑠 という集合だと考えると,𝑁 𝑆 は空集合となる.
この場合,𝐴 のマッチングは存在しない.
𝑆 は任意に選べないので, 𝑆 = 1 と仮定できない.
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2.2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に
対し,𝑀 に関する増大道が存在しない
ことを示せ.
𝑎
𝐴
𝐵
𝑏
𝑀 に関する増大道
• 𝐴 のある頂点 𝑎 から 𝐵 のある頂点 𝑏 への道.
• 𝐸 − 𝑀 の辺(黒い辺)と 𝑀 の辺(赤い辺)を
交互に通る.
• 𝑎 と 𝑏 に接続する 𝑀 の辺は存在しない.
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事例7
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
𝐴
𝐵
真の最大マッチングを 𝑀′とする.
𝑀 と 𝑀′のちょうど片方に属している枝の集合を 𝑀Δ𝑀′ とする.
マッチングの性質より,一つの頂点に隣接している 𝑀Δ𝑀′ の枝は
二本以下なので, 𝑀Δ𝑀′ はサイクルとパスに分解できる.
サイクルについて:𝑀 の枝と 𝑀′ が交互に登場.
パスについて:𝑀′の枝からはじまり𝑀′の枝で終わるパスが存在.
このパスこそが 𝑀 の増加道である.
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事例7
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
𝐴
𝐵
真の最大マッチングを 𝑀′とする.
𝑀 と 𝑀′のちょうど片方に属している枝の集合を 𝑀Δ𝑀′ とする.
マッチングの性質より,一つの頂点に隣接している 𝑀Δ𝑀′ の枝は
二本以下なので, 𝑀Δ𝑀′ はサイクルとパスに分解できる.
サイクルについて:𝑀 の枝と 𝑀′ が交互に登場.
パスについて:𝑀′の枝からはじまり𝑀′の枝で終わるパスが存在.
このパスこそが 𝑀 の増加道である.
「𝑀 が最大マッチングでないならば,𝑀 に関する増大道が存在」
を証明しようとしているようにみえる.(不十分だが.)
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事例8
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
𝐴
マッチング 𝑀 に対して増大道 𝑚 を持つとする.
𝑀Δ𝑚 はマッチングであり,𝑀Δ𝑚 = |𝑀| + 1 となり
𝑀 は最大ではないことになり,つまりマッチング 𝑀 に対して
増大道は存在しないことが示された.
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𝐵
21
事例8
𝐴
𝐵
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
関する
が存在する
マッチング 𝑀 に対して増大道 𝑚 を持つとする.
𝑀Δ𝑚 はマッチングであり, 𝑀Δ𝑚 = |𝑀| + 1 となり となるので,
𝑀 は最大ではないことになり,つまりマッチング 𝑀 に対して 関する
増大道は存在しないことが示された. .よって,最大
マッチング
この部分を,増大道の条件を用いて証明したい.
※増大道が辺の集合として定義されていることを明記する
必要がある.
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事例9
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
𝐴
𝐵
増大道が存在すると仮定する.
増大道にはマッチしていない 𝐴 の頂点と 𝐵 の頂点が存在する.
この2つの頂点を結ぶことでさらにマッチングを増やすことができ
るので,これは最大マッチングではない.
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事例9
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
𝐴
𝐵
増大道が存在すると仮定する.
増大道にはマッチしていない 𝐴 の頂点と 𝐵 の頂点が存在する.
この2つの頂点を結ぶことでさらにマッチングを増やすことができ
るので,これは最大マッチングではない.
この2頂点間に辺があるとは限らない.
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事例10
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
𝐴
任意のマッチング 𝑀′ ⊆ 𝐸 に対し,増大道が存在
するとき, 𝑀′ よりも 𝐸 − 𝑀′ の方が大きく,𝐸 − 𝑀′の方が
マッチ数の多いマッチングとなる.
この時最大マッチング 𝑀 に対し,𝑀 よりもマッチ数の多い
マッチングは存在しないため,増大道は存在しない.
𝐵
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事例10
𝐴
𝐵
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
関する
任意のマッチング 𝑀′ ⊆ 𝐸 に対し,増大道が存在
するとき, 𝑀′ よりも 𝐸 − 𝑀′ の方が大きく,𝐸 − 𝑀′の方が
マッチ数の多いマッチングとなる.
この時最大マッチング 𝑀 に対し,𝑀 よりもマッチ数の多い
マッチングは存在しないため,増大道は存在しない.
よって,𝑀′ は最大マッチングではない.
増大道を構成する辺の集合 𝑚 に制限した議論をしている
ようにみえる.つまり, 𝑀′ ∩ 𝑚 < 𝐸 − 𝑀′ ∩ 𝑚 ,かつ
𝐸 − 𝑀′ ∩ 𝑚 はマッチング(これは正しい).しかし,𝑀′ − 𝑚
の辺を加えたマッチング同士で比較する必要がある.
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事例11
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
𝐴
𝐵
対偶を示す.対偶は,
マッチング𝑀に関する増大道が存在すれば,𝑀 は最大マッチング.
𝑎1 , 𝑎2 , … ∈ 𝐴, 𝑏1 , 𝑏2 , … ∈ 𝐵 とすると,マッチング 𝑀′ について
増大道は
𝑎1 → 𝑏1 → 𝑎2 → 𝑏2
と書ける.ここでマッチング 𝑀′は 𝑏1 , 𝑎2 であるが,
𝑀′は最大マッチングではない.
なぜなら,𝑀′′ = 𝑎1 , 𝑏1 , 𝑎2 , 𝑏2 ととったほうがマッチングの辺
の数が大きくなるからである.
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事例11
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
𝐴
𝐵
ではない
対偶を示す.対偶は,
マッチング𝑀に関する増大道が存在すれば,𝑀 は最大マッチング.
𝑎1 , 𝑎2 , … ∈ 𝐴, 𝑏1 , 𝑏2 , … ∈ 𝐵 とすると,マッチング 𝑀′ について 関する
増大道は 相異なる頂点 および を用いて
𝑎1 → 𝑏1 → 𝑎2 → 𝑏2
と書ける.ここでマッチング 𝑀′は 𝑏1 , 𝑎2 であるが,
𝑀′は最大マッチングではない.
なぜなら,𝑀′′ = 𝑎1 , 𝑏1 , 𝑎2 , 𝑏2 ととったほうがマッチングの辺
の数が大きくなるからである.
なぜ増大道の長さを3に限定したのか.また,マッチング 𝑀′ で
増大道に含まれない辺集合が考慮されていない.
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模範解答
2部グラフの任意の最大マッチング 𝑀 に対し,
𝑀 に関する増大道が存在しないことを示せ.
𝐴
𝐵
背理法.最大マッチング 𝑀 に関する増大道
𝑃 = 𝑣0 , 𝑣1 , … , 𝑣𝑘 (𝑘 は奇数)が存在すると仮定する.
𝑋 = 𝑣𝑛 , 𝑣𝑛+1 𝑛 = 1,3, … , 𝑘 − 2 ,
𝑌 = 𝑣𝑛 , 𝑣𝑛+1 𝑛 = 0,2, … , 𝑘 − 1
とする.𝑀′ = 𝑀 ∖ 𝑋 ∪ 𝑌 とすれば,𝑀′ もマッチングである.
なぜならば,増大道の定義から,𝑣0 と 𝑣𝑘 は 𝑀 中に接続する
辺をもたず,辺集合 𝑌 中に互いに接続する2本の辺の組が
存在しないためである.
増大道の定義から,𝑋 ⊆ 𝑀, 𝑌 ∩ 𝑀 = ∅ であるから,
𝑀′ = 𝑀 − 𝑋 + 𝑌 .
𝑋 < 𝑌 であるから, 𝑀′ > 𝑀 となり,M の最大性に矛盾.