Title №14:歯髄細胞の有無によるラット歯根膜細胞のメカ ニカルストレスに対するIL-6とPGE2の発現 Author(s) 森川, 泰紀; 安村, 敏彦; 中島, 啓; 松坂, 賢一; 井上, 孝; 末石, 研二 Journal URL 歯科学報, 114(5): 508-508 http://hdl.handle.net/10130/3499 Right Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/ 508 学 会 講 演 抄 録 №13:ラット象牙芽細胞における電位依存性 Ca2+透過性チャネル発現の検討 小島佑貴,東川明日香,木村麻記,佐藤正樹,澁川義幸,田 雅和(東歯大・生理) 目的:露出した象牙質への刺激は象牙細管内液の移 動による象牙質痛を誘発する。近年,象牙芽細胞が 感覚受容器として歯髄ニューロンと神経伝達を確立 することが報告された。象牙芽細胞は transient receptor potential(TRP)チャネルで象牙細管内液 移動を感知し,pannexin チャネルから歯髄ニュー ロンへ ATP を放出することで,感覚情報をニュー ロンに伝達している。一方,近年新たな ATP 放出 チャネルとして calcium homeostasis modulator1 (CALHM1)が報告された。CALHM1は電位依 存性に Ca2+と ATP を透過させる。そこで象牙芽細 胞における CALHM1の発現について Ca2+透過性 を指標として検討した。 方法:5−7日齢の新生仔ウィスターラット切歯か ら歯髄スライス標本を作製し象牙芽細胞を得た。脱 分 極 刺 激 は 標 準 細 胞 外 液(Krebs 液)か ら50mM Na+を K+に置換した高 K+溶液を 用 い た。細 胞 内 Ca2+濃度([Ca2+] i)は fura-2の二波長蛍光比で記 録した。CALHM1の antagonist として50μM Gd3+ を,電位依存性 Ca2+チ ャ ネ ル の 非 選 択 的 antagonist として50μM Ni2+を用いた。加えて標準細胞外 液から Ca2+を除去した溶液, 細胞外 Ca2+濃度を0. 01 −2. 5mM に調整した細胞外 液 を 用 い て,細 胞 外 Ca2+濃度依存性についても検討した。 結果:象牙芽細胞に脱分極刺激を行うと一過性に 2+ [Ca2+] を除去すると脱 i は増加した。細胞外 Ca 2+ 分極誘発性[Ca ] i 増加は消失した。脱分極誘発性 Ca2+流入は,0. 01−2. 5mM の範囲で細胞外 Ca2+濃 度依存性を示し(KD=0. 9mM) ,50μM Ni2+に影響 されなかったが,Gd3+によって有意に抑制された (p<0. 05;N=3) 。 考察:象牙芽細胞への脱分極刺激が Gd3+依存性選 択的 Ca2+流入を誘発した事から,象牙芽細胞に電 位依存性 Ca2+透過性 ATP 放出経路が存在すると示 唆された。Ni2+は T/R 型電位依存性 Ca2+チャネル の antagonist であるため,象牙芽細胞における両 者の発現は否定された。 №14:歯髄細胞の有無によるラット歯根膜細胞のメカニカルストレスに対する IL-6と PGE2の発現 1) 森川泰紀1),安村敏彦1),中島 啓2),松坂賢一3),井上 孝3),末石研二1)(東歯大・矯正) 2) 3) (東歯大・口科研) (東歯大・臨検病理) 目的:歯科矯正治療中に生じる歯根吸収は代表的な 問題の一つである。近年,歯髄の有無により歯根吸 収程度に差があることが報告され,多くの研究が行 われている。安村らは,メカニカルストレスを付与 した歯根膜細胞に歯髄細胞を共培養し,歯根膜細胞 の RANKL の有意な増加を示した。しかし,メカ ニカルストレス付与した歯根膜細胞と歯髄細胞の関 係性に関する炎症性サイトカインおよび液性因子を 分子生物学的に証明しているものは少ない。本研究 は,メカニカルストレス付与時のラット歯根膜細胞 (PDLC)の反応を,歯髄細胞(DPC)の有無によ る IL-6および液性因子(PGE2)の発現の差異に ついて分子生物学的に検討を行った。 方法:4週齢 SD 系雄性ラットの門歯を抜歯後, PDLC,DPC を 採 取 し 通 法 に 従 っ て 培 養 し た の ち,第4,5継代目の細胞を実験に用いた。PDLC にメカニカルストレスとして2000rpm の遠心力を 20分間付与し,DPC と共培養を行ったものを実験 群とした。対照群として,メカニカルストレスを付 与 し て い な い PDLC 単 独 培 養 群,DPC 単 独 培 養 群,DPC との共培養群,メカニカルストレスを付 与した PDLC 単独培養群の4群を用いた。ストレ ス付与後1,3日における PDLC 中の IL-6の発現 を定量 RT-PCR 法にて解析を行い,3日における PDLC,DPC お よ び 培 養 液 中 の PGE2の 発 現 を ELISA 法にて解析を行った。 結果および考察:定量 RT-PCR 法の結果,ストレ ス付与後3日において実験群は,付与していない群 と比較して IL-6の発現量が有意に高い値を示し た。ELISA 法 の 結 果,PGE2に お い て PDLC と DPC それぞれで PDLC 単独培養群,DPC 単独培養 群と比較し,実験群を含む各対照群で有意に高い値 を示した。また,培養液中の PGE2において実験 群は各対照群より高い傾向を示した。以上の結果よ り,DPC の存在がメカニカ ル ス ト レ ス を 受 け た PDLC の IL-6と PGE2の発現を促進し,歯根吸収 を促進する可能性が示唆された。 ― 98 ―
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