超電導 Web21 - 国際超電導産業技術研究センター

2015 年 8 月 3 日発行
超電導 Web21
(公財)国際超電導産業技術研究センター
〒213-0012 神奈川県川崎市高津区坂戸 3-2-1 KSP
Tel: 044-850-1612
特集:SQUID / 医療機器
「SQUID 特集にあたって」
公益財団法人 国際超電導産業技術研究センター
超電導工学研究所
所長 田辺圭一
磁気センサの中で最も高い磁場感度と広帯域特性を併せもつ SQUID に関しては、ニオブ系低温
SQUID と酸化物系高温 SQUID を用いた応用開発が国内外で精力的に続けられている。マルチチャ
ンネルの低温 SQUID を用いた脳磁計は製品化されて久しく、国内でも 20 台程度が稼働している。
ただ、臨床応用には普及しておらず、現在は欧州の Elekta AB 社のみが製品を販売している。一方、
近年注目されてきたのが超低磁場 NMR/MRI への応用である。超低磁場 MRI は、超電導マグネット
を使った高磁場 MRI に比べ画像分解能は劣るが、マグネットシステムが簡易・軽量になる、また緩
和時間の違いを利用したガン組織の判別ができるなどの利点がある。最近の開発動向の一部につい
ては本誌今月号の「ISEC2015 報告」で紹介している。
国内では、金沢工大グループが自前のニオブ系プロセスにより超高感度 SQUID を作製し、主と
して生体応用に向けた開発を精力的に行っている。本特集では、超低磁場 MRI 装置、特に神経活動
を画像化する機能的 MRI 技術の開発について紹介して頂いた。金沢工大グループは、他にも、ラン
ニングコストを低減し普及を図るための液体ヘリウム再凝縮装置付脳磁計や、岩石磁気計測のため
の SQUID 顕微鏡システム(これらは ISEC2015 で発表)など幅広い開発を行っている。
一方、簡易な液体窒素冷却で使用できる高温 SQUID に関しては、資源探査装置など野外使用の
応用開発が進んでいる。金属資源用の電磁探査装置については、オーストラリアの CSIRO やドイ
ツの IPHT などの国研が製品化している。国内では、JOGMEC の委託により、ISTEC の薄膜積層
型高温 SQUID を用いた電磁探査装置実用機(SQUITEM 3)が開発され、海外での金属資源実探査
や国内での地熱資源探査に利用されている。さらに、改良実用機の開発が平成 26 年度から 27 年度
にかけて行われている。金属資源探査装置には、磁性体資源による地磁気の乱れを移動しながら計
測する磁気探査装置がある。IPHT は低温 SQUID 磁場偏差計(磁場の勾配を計測)を用いたヘリコ
プター牽引型の磁気探査装置を最近実用化している。ISTEC では、JOGMEC の委託により、平成
21 年度から高温 SQUID 磁場偏差計を用いた磁気探査装置の開発を進め、平成 26 年度には可搬型
の小型探査装置を開発し、旧鉄鉱石鉱山での磁気異常の観測に成功している(7月号の超電導技術
動向報告会2015 の記事を参照されたい)。
国内では、その他にも、ISTEC の薄膜積層型高温 SQUID を用いた様々な応用開発が進んでいる。
JOGMEC のプロジェクトでは、石油分野への応用を目指した油層モニタリング技術の開発を、
ISTEC が三井金属資源開発と共同で進めている。
また、
JST の S-イノベプロジェクトでは九州大学、
日立、ISTEC が共同で磁気免疫検査プロトタイプ装置の開発を行っている。九州大学、岡山大学は
本特集で紹介するように、ISTEC の SQUID を用い、それぞれ体内診断用の磁気粒子イメージング
システム、太陽電池等への適用をねらいとした磁気特性分布計測装置の開発を進めている。SQUID
や MR(磁気抵抗)センサなどの高感度磁気センサを用いた橋梁等の社会インフラ用の非破壊検査
装置の開発が、昨年度 JST-SIP プロジェクトの一部としてスタートした。詳細は岡山大学・塚田教
2015 年 8 月号
© ISTEC 2015 All rights reserved.
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2015 年 8 月 3 日発行
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授による超電導技術動向報告会 2015 報告(7 月号)を参照されたい。本プロジェクトには、岡山
大学、ISTEC、発電技検、九大が参画しているが、本特集では九大グループによる超電導コイルを
用いた鋼材の減肉評価の試みについて紹介して頂いた。今後は、ISTEC の高温 SQUID と組み合わ
せた高精度評価装置の開発を進める計画である。国内では、他に、豊橋技科大グループによる食品
異物検査装置や阪大グループによる SQUID 顕微鏡/STM 複合評価装置の開発が、海外から購入した
高温 rf-SQUID を用い進められており、ISEC2015 でもその進展が報告された。
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