超電導 Web21 - 国際超電導産業技術研究センター

2014 年 8 月 1 日発行
超電導 Web21
(公財)国際超電導産業技術研究センター
〒213-0012 神奈川県川崎市高津区坂戸 3-2-1 KSP
Tel: 044-850-1612
特集:SQUID 応用
「回転方式 2-SQUID 磁場偏差計の開発」
(公財)国際超電導産業技術研究センター
超電導工学研究所 物性・デバイス研究部
主管研究員 塚本 晃
地下の磁性金属鉱床は地磁気によって磁化されており、地表で観測される地磁気に影響を与える。
地磁気の分布(変化)を調べることで地下の情報を得る探査方法は磁気探査と呼ばれている。地磁気
は一日に数十nT(静穏日)から数百nT変動(磁気嵐)するため、地磁気の値そのものではなく、2点
間の差(磁場偏差)を測定する必要がある。今回、2つのSQUIDを回転させることで磁場偏差の絶対
値測定が可能な磁場偏差計の試作を行った。
SQUIDはフィードバック制御で動作させており、磁場の絶対値ではなく、ある基準値からの相対的
な変化しか測定できない。異なるSQUIDではこの基準値が異なるため、単純に差分を求めるだけでは
磁場偏差の絶対値を得ることができない。地磁気のグローバルな変動の影響を避け、SQUIDの絶対値
の問題を解決するため、図1に示すような2つのSQUIDで離れた2点の磁場を交互に測定する方式を検
討した。同じSQUIDを移動させて2カ所の磁場を測定するため、磁場偏差を求める際に基準値がキャ
ンセルされ、磁場偏差の絶対値を求めることができる。さらに、同時刻に測定している2つのSQUID
の出力の差を求めることで、グローバルな地磁気変動の影響をキャンセルできる。
Bn(t1)
Bn(t1)
Φ2
Φ1
ΔB+Offset
B2
B1
ΔB
Bn(t2)
Bn(t2)
‐ΔB+Offset
Φ2
Φ1
B1
B2
図1 測定原理説明図
図2に試作した装置の構成を示す。SQUIDの位置を入れ替えるために2つのSQUIDを同心円上に連
続回転させる方式を採用した。垂直方向(回転軸方向)に向いた2つのHTS-SQUIDマグネトメータ(検
出コイルサイズ13.5x13.5 mm)がそれぞれのデュワーで冷却されている。各デュワーは自公転機構
により面内の方位を維持したまま公転ステージ上を移動する機構となっている。回転には磁気雑音が
少ない超音波モータを使用し、赤外線リモコンで外部から制御可能となっている。デュワーの上には
無線LAN対応のFLL回路(日立製)が搭載されており、公転位置情報とSQUIDの信号がPCに逐次転送
され、PC上でリアルタイムに差分処理を行うことができる。連続回転させることで、dBz/dxおよび
dBz/dy成分の同時測定と加算処理が可能である。
2014 年 8 月号
© ISTEC 2014 All rights reserved.
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2014 年 8 月 1 日発行
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本研究は、経済産業省の資源探査技術開発事業として、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
の委託により実施したものである。
図 2 試作した回転方式 2-SQUID 磁場偏差計
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