No.15 No. 1) 1) 2) 3) 1) 河原直人 、向出智美 、德永章二 、岸本淳司 、中西洋一 九州大学 1)九州大学病院ARO次世代医療センター 2)九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター 3) 九州大学医学研究院 次世代医療研究開発講座 ■日本計量生物学会「統計家の行動基準」(概要) (2013年提出、同年5月7日改訂、同年11月5日再改定。なお、2013年9月10日には「臨床研究に関する日本計量生物学会声明」も発表) I. 前文: 1)行動基準を策定した目的、2) 統計家の業務と責任(社会的責任と自らの行為の公共 性の認識)、3) 職能集団と行動基準策定の必要性 II. 統計家の使命と守るべき価値: 1)人間の生命や尊厳、それをとりまく環境を尊重、2) 責任と能力を持つ、3) 誠実に 行動する(捏造や改ざんなどの不正行為は行わず、不正行為に荷担することもしない。 自らの活動や成果について、それらの根拠とともに説明する。使用したデータや解析 結果はできるかぎり明らかにし、解析に用いた手法についてはそれを採択した理由な ども含めて明らかにする。また、同僚や他者の成果に対しては、適切な評価や健全な 批判を行い、積極的に意見交換を行う。誤りなどを指摘された場合は、前向きに対応 する等) III. 行動: 1. プロフェッショナリズムを有する、2. 業務を適正に行う ─ (1) 意義のある計画を 立案する、(2) 適切なデータを収集する、(3) 適切な手法を用いて結論を導く、(4) 成 果を公表・説明する、3. 他者への責任と役割を明確にする、4. 業務や成果を公開・説 明する、5. リスクを評価し、予防する 、6. 情報を適切に扱う 、7. 法やガイドライン を遵守する 、8. 人権を尊重する 、9. 不正行為を予防する、10. 利益相反による弊害 を防ぐ ※ルールでなく、能動的な姿勢を促す自律的なプリンシプルの基軸を策定。American Statistical Association (ASA) の Ethical Guidelines for Practice、International Statistical Institute (ISI)の Declaration on Professional Ethics等との整合性を考慮。 出典:日本計量生物学会「 「臨床研究に関する日本計量生物学会声明」および「統計家の行動基準」の公開につきまして」 ▶良質な臨床試験に繋げるために、基礎研究からの信頼性保証に係るルールとその運 用のあり方が重要となる。基礎研究や非臨床試験も、最終的に人に応用されることが 意識されるならば、GLP、GMP、GCP等の基準にいかに準拠していけるかが今後の 課題となると考えられる。 例)九州大学 研究不正行為への対応 【準拠ガイドライン】 ▶「研究活動における不正行為への対応等に 関するガイドライン」 ▶「厚生労働科学分野の研究活動における不 正行為への対応等に関するガイドライン」 【九大内の関連する取組】 ■九州大学 e 教員ハンドブック「研究不正の 防止」 ■九州大学研究不正防止委員会規則 ・告発者に対する保護措置と配 慮が注視されるが、通常は組織 の内部に一定の中立性をもった 窓口を設けておくことが前提と なる。 ・告発側の保護もさることなが ら、適切な調査の方法・手順等 を踏まえた公正な峻別・対応が 用意されている必要があり、そ れに耐えうる体制が必要となる。 ・既に十分な議論が尽くされた 上での告発対応体制が組織内に 設けられているならば、臨床研 究の俎上でも当該体制を準用し て活かす方策を考えることが望 ましいと考えられる。 ▶臨床研究におけるインテグリティの問題領域は、研究実施・管理体制、データの取 扱、論文・学会発表等の結果公表のあり方、さらに、告発受付・処理のあり方まで広 範に及ぶ。新倫理指針においても、このような研究不正に対する組織的な配慮が一層 求められるようになったため、注意が必要である。 ▶研究のインテグリティの主要テーマの一つでもある「COIマネジメント」は、開示 のみならず、役割の分担等の人的体制、データ利使用許諾、帰属等の契約問題にも関 わる。それゆえ、倫理審査事務と利益相反マネジメント事務との連絡、契約・知財関 連部署との連絡強化も今後重要となるように考えられる。 ▶臨床研究のインテグリティを期すためには、コンプライアンスとともに、価値共有 型の運用のあり方を検討していくことも求められると考えられる。 例えば、不正行為対応(特に告発受付・処理)については、問題が起こった後の ホットラインのみに依拠するのみならず、事前、柔軟に処理しうる窓口対応の充実化 をはかるなどの措置を講じることで、終局的には、全体的なリスク回避につながるの ではないだろうか。 ▶今後、臨床研究の俎上においても、 コンプライアンス型の対応が継続的 に必要となると考えられるが、適宜、 部署横断型の価値共有の機会を設け ていくことで、研究実施・管理体制 の適正化のための調整をはかること も求められよう。
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