平成 26~28 年度厚生労働科学研究 「精神障害者の就労移行を促進するための研究」 分担研究報告書 リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化に関する研究 分担研究者:五十嵐良雄(メディカルケア虎ノ門) 研究協力者:横山太範(さっぽろ駅前クリニック) 福島南(メディカルケア虎ノ門) 片桐陽子(栄仁会京都駅前メンタルクリニック) 前田佐織(不知火病院) 冨松由香(小石川メンタルクリニック) 研究要旨: 全国の医療機関で様々なリワークプログラムが行われている。平成 22,23 年度の厚生科学 研究でリワークプログラムの標準化をテーマに研究し、5 つのカテゴリーに分けた標準化 リワークプログラムを作成した。うつ病リワーク研究会では所属する全国の医療機関で基 礎調査を実施しているが、プログラムに関する調査項目も含まれている。その結果、各施 設は様々な工夫を行い、年々その内容が変化していることが判明している。そこで本研究 では、初年度には独自に行っている工夫について、その内容を 1.性別、2.年代、3.利用時 期、4.疾患、5.職業、6.就労状況、7.生活状況、8.業務内容、9.その他、の 9 項目に分類し、 うつ病リワーク研究会会員施設に対し各施設で独自の取り組みと考えるプログラムに関す るアンケート調査を実施し、その結果を取りまとめる。2 年度目には初年度の結果を踏ま え、モデルプログラムとなりうるプログラムを実施しているリワーク施設への実地調査を 行い、対象の焦点化の理由と方法、プログラム内容と構成、施設背景における必然性を説 明する要素、アウトカムなどに関してまとめる。3 年度目には 2 年度目の結果を今後のプ ログラムを行う関係者に資するため、書籍化をおこなうこととした。 本報告は初年度の取り組みとして行った 2 度にわたるアンケート調査の結果であり、様々 な独自に工夫されたプログラムについて情報を収集することが出来た。今後、各施設への 詳細な電話インタビューなどを行い、2 年度目の中心課題である実地調査実施に向けて、 調査するに値するリワーク施設の絞り込みを行う。 1 研究1 く、それぞれが行っているプログラムが独 A.研究目的 自のものであるという自覚が持てなかった 全国の医療機関で医療リワークプログラ のではないかと考えられた。 ムが広く行われるようになり、それぞれの 実施医療機関が地域の実情や参加者の構成 研究2 などにより工夫をこらしながら実践を続け A.研究目的 ている。そこで今回はリワーク研究会会員 研究1では回答率が低く、質問内容の不 医療機関に対し毎年行われているリワーク 備が考えられた。そこで、質問内容を変更 プログラム基礎調査に合わせてアンケート し、より多くの独自なプログラムの情報収 調査を行い各施設が行っている独自に工夫 集を行う。集められた内容に関して研究1 しているプログラムについて情報を収集し、 で得られた結果とともに分析する。 分析を行う。 B.研究方法 B.研究方法 独自に行っている工夫について、質問項 独自に行っている工夫について、その内 目を変更し、a)作業能力向上、b)集団プロ 容を 1.性別、2.年代、3.利用時期、4.疾患、 グラム、c)体力向上、d)特定の職業を対象、 5.職業、6.就労状況、7.生活状況、8.業務内 e)自慢のプログラム、f)職業別、g)就労状況、 容、9.その他、の 9 項目に分類した表への h)生活状況、i)業務内容、j)その他、の 10 記載を依頼し、回収した。 項目に分類した表への記載を依頼し、回収 C.研究結果 した。 うつ病リワーク研究会会員医療機関 179 C.研究結果 カ所に対して調査用紙を配布し 113 施設が 研究1で回答のなかった 34 施設から新 基礎調査に対し回答をした。そのうち 19 施 たに回答が寄せられた。研究1との重複部 設から 38 のプログラムについて回答が寄 分を除いた 189 プログラムについてワーキ せられた。回答率は 10.6%であった。1.性 ングチーム内の基準に従い、研究1の分類 別 4 件、2.年代 1 件、3.利用時期 13 件、4. に割り振られた。研究 1,2 を合わせて、全 疾患 11 件、5.職業 0 件、6.就労状況 2 件、 会員施設の 29.6%にあたる 53 施設から 227 7.生活状況 1 件、8.業務内容 1 件、9.その他 プログラムについて回答を得て、独自性が 5 件であった。利用時期や疾患別の独自プ 高いと判断された 111 プログラムに関して ログラムがそれぞれ 13 件、11 件と多かっ 分析した。1.性別 4 件、2.年代 2 件、3.利用 た。しかしながら職業ごとに特化した独自 時期 35 件、4.疾患 14 件、5.職業 0 件、6. プログラムの報告は寄せられなかった。 就労状況 6 件、7.生活状況 1 件、8.業務内 D.考察 容 42 件、9.その他 7 件であった。8.業務内 内容はバラエティに富んでいたが、回答 容に関して独自の工夫をしているプログラ 率は全調査対象機関の 10.6%と低かった。 ムが一回目調査時点では 1 つだけであった 回答のなかった医療機関が全く画一的なプ が、二回目の調査では 41 プログラムに増加 ログラムのみを実施しているとは考えにく した。3.利用時期に関する物も 13 から 35 2 に増加した。 プログラム自体を充実させるだけではなく、 D.考察 手薄になってしまう復職後の支援体制のひ 各項目で独自の工夫の見られたプログラ とつとして、土曜日などに復職者対象のプ ムについて考察した。 ログラムを実施するところが増えているの 1.性別 だろう。また、再休職者のみを対象とした 男性のみを対象としたプログラムを提 プログラムを行っている施設もあった。 供している施設が 1 つ、女性のみを対象 リワークプログラムにスムーズに導入す としているものが 3 施設あった。男性の るため、プレプログラムとして心理教育を みのグループでは男性性に関するフリー 行っている施設もあった。その他、利用初 トークなどを通じて生活様式や生活歴を 期に簡単なスポーツやセルフケアの講座な 振り返ると言う構成であった。女性のみ ど、比較的負荷の低いプログラムから導入 のグループでは、同性のみによる安心感 する施設は多いと考えられる。 を謳い、病気に関する悩みなどを自由に 4.疾患 語ってもらうことを目的としているもの が見られた。女性のみを対象としたグル 疾患別のプログラムで多く挙げられてい ープが多かったのは、リワークデイケア たのは、発達障害と双極性障害である。ど においては女性参加者が少数派にとどま ちらも利用者の中でその割合が高くなって っていることなどが影響したものと考え きており、疾患の特性に特化した心理教育 られる。 やトレーニングが求められているという背 景がうかがえる。 2.年代 発達障害患者向けのプログラムでは、心 20 代を対象としたプログラムが 1 つ、 理教育に加えてコミュニケーションのトレ 若手・管理職者のようにやや広い年代で ーニング(サイコドラマ、SSTなど)、心 くくったプログラムが 1 つ見られた。 20 理アセスメントなどが挙げられていた。な 代や若手を対象としたプログラムでは働 かには仕事の段取りや報告・連絡・相談の くことの意味等を考えさせるプログラム 仕方、ビジネス会話など具体的なスキルを が多く見られ、若年休職者が増加してい 学ぶものや、心身両面へのアプローチを行 ることへの対応と思われた。管理職者対 うなどもあった。 象のプログラムは会社組織への関わり方 双極性障害患者向けでは、講義だけでは を考えさせる内容となっていた。 なくディスカッションやワークなどを含む 充実した心理教育を行っているところが増 3.利用時期 えてきている様子がうかがえる。詳しい疾 目立ったのは、復職者を対象に、再休職 病教育が含まれるため、主治医の許可を参 予防を目的としたプログラムである。やは 加の条件としたり、クローズドグループで りリワークプログラムを利用して復職して 実施したりするなど、システムを工夫して も、一定数の再休職者が出るが、リワーク いるようである。 3 その他の疾患では、SAD向けプログラ あった。 ム(人前でのスピーチやロールプレイなど その他はホワイトカラーを対象としたプ をして緊張に慣れる)や、依存症専門病院 ログラムで、コミュニケーションスキルア 併設施設では、当然のことながら依存症の ップと作業スキルアップの 2 種類に大別で 心理教育がおこなわれている。 き、以下のように分析した。 コミュニケーションスキルアップのため 5.職業 のプログラムとしてⅠ.受身のレベル(講 該当プログラムはなかった。8 に示す業 義、発表)、Ⅱ.個人の気づきのレベル(内 務内容別のプログラムは実施されているが、 省、発表)、Ⅲ.集団の中の個人(議論、協 職業を限って行っているプログラムは今回 働)のように区分し、どのレベルの組み合 はみられなかった。おそらく教職員共済組 わせを実施しているかという視点で各施設 合の病院併設の施設は、対象者を教職員と の独自性を検討してみた。全てのレベルの しているかもしれない。 プログラムを行っている施設はなかった。 ⅠとⅢ、ⅡとⅢのレベルのプログラムを実 6.就労状況 施している施設が各 1 施設あった。Ⅲを中 すべて離職者を対象としたプログラムで 心にⅠを合わせて実施しているプログラム あった。休職者が中心となる医療リワーク は 2 施設あった。ⅠⅡⅢの反復で、より復 プログラムにおいて離職した参加者へのサ 職の準備性が高まると考えると、より多様 ポートを行う事は時に困難であり、全く異 なプログラムを行っている施設に着目する なったノウハウが求められるものである。 べきであると考えた。 医療リワークでは対人関係をより重視する 作業スキルアップについては OT による 傾向があるが、離職者を対象としたこれら PC 指導、特殊プログラムにより PC をブラ のプログラムでは作業能力により焦点付け インドタッチまで可能にさせる施設などが られたものが多く見られた。 あった。 7.生活状況 9.その他 高齢者限定プログラムの報告あった。身 その他としては、デイケア卒業生と語り 体と頭のトレーニングとして、週 4 日、各 合う会(参加者は入院患者・外来患者・家族 回 3 時間で行われているのだと言う。リワ など)やその会の企画運営が 2 件あった。ま ークとして行っているか不明のため、問い た、興味深かったのは油圧式リハビリ機を 合わせることとした。 利用したサーキット形式の運動を週 4 日 2 時間行っている施設があったことである。 8.業務内容 その他、認知リハビリの一環として NEAR に基づいた認知リハビリセッションや OT 現業に特化しているという側面では教職 員を対象として模擬授業を行っている施設 プログラムを施行している施設もあったが、 のみで、メンバーを対象に不定期の実施で いずれも入院プログラムとしてであった。 4 E.結論 本報告は初年度の取り組みとして行った 2 度にわたるアンケート調査の結果であり、 様々な独自に工夫されたプログラムについ て情報を収集することが出来た。今後、各 施設への詳細な電話インタビューなどを行 い、2 年度目の中心課題である実地調査実 施に向けて、調査するに値するリワーク施 設の絞り込みを行う。 F.健康危機情報 なし G.研究発表 1.論文発表 なし 2.学会報告 なし H.知的財産権の出願・登録状況(予定を 含む。 ) 1.特許取得 なし 2.実用新案登録 なし 3.その他 なし I.引用文献 なし 5
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