社会科(歴史)学習指導案及び実践報告 <川口市立仲町中学校> 平成27年6月29日(月)第4校時 1年1組 男子16名 女子18名 指導者 小林 智之(視聴覚室) 文明のおこりと日本の成り立ち 1 単元名 2 単元について (1)生徒の実態 世界地理の学習から入ったが、学習態度は良好で理解力も全体的に高い。特に世 界各地の人々の生活に興味・関心が高かった。歴史学習に移ったが、歴史の方が好 きだという生徒が多く、大半の生徒の学習意欲は高い。挙手、発言も積極的であり、 想像力を問う問題では自分なりの意見を言える生徒がいる。つぶやきなどの中にも 興味深いものが多い。小集団活動でもほとんどの生徒が参加態度が良く、生徒の活 動の場面では生き生きとしている。 (2)単元について 文明のおこり、縄文・弥生・古墳の学習は世界の歴史と日本の歴史を併行して学習 する単元であり、ある面、混乱をおこしたすい。世界地理の学習を生かし、世界の古 代文明を、縦軸・横軸の両面で構造的に整理していく。日本の歴史については、小学 校での既習知識を生かし、さらに興味が深まるような切り口を用意し、真実に迫る学 習がのぞまれる。 (3)指導観 歴史学習のスタートにあたり、生徒の歴史に対しての興味・関心と学習意欲をしっ かりつかませたい単元である。日本の歴史に関しては、郷土資料を活用するなどして、 本物との触れあいを通して、距離を縮めたいと考えている。川口(埼玉)にも、こん んなことがあったんだという発見を、生徒の目線でもとらえられるよう工夫したい。 また、歴史というとすでに教科書等に載っていて、すべてがこれを見ればわかると 思いがちだが、最近の発見や研究の中で、古代のことが判明していくわけで、まだ謎 も多いという点も、生徒の心をつかむのではないかと考える。生徒の想像力、イマジ ネーションをかき立て、歴史に魅力を感じるようになれたらと考える。 (4)校内研修とのかかわり 今年度のテーマは「一人一人が意欲的に学習に取り組む指導の工夫」である。社会 科は普段どうしても講義型の授業に陥りがちだが、生徒の活動の場面を増やし、進ん で学習に取り組み、お互いに意見交換できるような雰囲気を育てていきたいと考える。 本時では、ブレーンストーミングと出店式見学、シャッフル型班編制、文化財活用と 想像力コメントなどの場面を盛り込んでみた。 単元の目標 ・世界の古代文明や宗教が生まれたこと,また,日本列島で狩猟・採集を行っていた人々 の生活が農耕の広まりとともに変化していったことを理解させる。 ・日本の国家が形成されていく過程のあらましを,東アジアとのかかわり,古墳の広ま り,大和政権による統一を通してとらえさせる。 3 4 単元の指導計画 指導計画 ① 人類の出現 ② 人類の進化と文明のおこり ③ 古代文明の発展 ④ 中国の古代文明、宗教のおこり ⑤ 縄文時代の生活と文化 ⑥ 弥生文化と邪馬台国 ⑦ 大王の時代と古墳文化 1時間 1時間 1時間 1時間 1時間・・・本時 1時間 1時間 -1- 5 単元の評価規準 社会的事象への 関心・意欲・態度 古代までの歴史的事象 に対する関心を高め, 意欲的に追究し,古代 までの文化遺産を尊重 しようとする。 社会的な 思考・判断・表現 古代までの歴史的事象 から課題を見いだし, 古代までの特色などを 多面的・多角的に考察 し,公正に判断して, その過程や結果を適切 に表現している。 資料活用の技能 年表や歴史地図,映 像など古代までに関 する様々な資料を収 集し,有用な情報を 適切に選択して,読 み取ったり 図表などにまとめた りしている。 社会的事象について の知識・理解 古代までの特色など を,世界の歴史を背 景に理解し,その知 識を身に付けてい る。 6 本時の指導計画 縄文時代の生活と文化 (1)目標 ①縄文時代が狩猟・採集が中心の生活で、土器や石器など様々な道具を使っていたこと が理解できる。 ②川口の本物の文化財に触れ、縄文時代の謎解きに挑戦しようとする意欲が持てる。 ③川口の縄文時代の様子を知るとともに、縄文人の生活の知恵や苦労を探ろうとするこ とができる。 (2)本時の評価規準 社会的事象への 関心・意欲・態度 川口出土の文化財に 直接触れ、縄文時代 の人々の生活に興味 を持ち、意欲的に調 べようとしている。 社会的な思考・判断 ・表現 様々な実物資料など から、想像力を働か せ、何に使われたの かなどを考えようと している。 (3)展開 主な学習内容と学習活動 資料活用の技能 イラスト資料など から、縄文時代の 生活についての情 報収集に努め、他 の人の意見も吸収 している。 社会的事象について の知識・理解 プレゼンテーション などを通して、川口 の遺跡・文化財の様 子から、縄文時代の 人々の生活を理解し ようとしている。 指導上の留意点 観点別学習状況の評価 ※校内研修との関わり 導 ○落とし穴の発掘現場の写真 ・興味を引きつける題材で、・川口の遺跡に興味を 入 を見て、何かを考える。 縄文への謎にせまるよう 持つ。(関心) 5 ○今日の課題を確認 心をつかむ。 ・「落とし穴 」につい 分 「縄文時代の人々はどんな生 ・テーマからぶれないよう て、豊かな想像力を 活をしていたのだろう 注意する。 働かせようと努めて か?」 ・既習ポイントの確認 いる。 ○「狩猟・採集生活」が中心 展 ○教科書P.29のイラスト ・その間、班編制用のシャ ※シャッフル型班編成 開 を見てわかることをノート ッフルカードを配る。 を用い、班学習のマ にメモする。 ンネリ化を防ぎ、新 1 ○シャッフル型の学習班に席 ・移動はすばやく。カード 鮮な気持ちで学習す 6 を移動し、協同作業する。 には司会者が指定されて る。 分 「どんなことがわかるか」 いるので、その人を中心 ※制限時間を設け、で をブレーンストーミング式 にてきぱき進行できるよ きるだけ沢山発見さ にカードに書き出し、ボー う、机間支援する。 せる競争を通して、 ドに貼っていく。 ・簡易タイマーを用意し、 意欲を高める。 ・時間は7分以内。 残り時間が見えるように ・イラストから読み取 -2- 資料 TV 画像 学習 課題 シャ ッフ ルカ ード タイ マー 用紙 ボー する。 れる様々な情報を、 ○自分の班のボードをそのま ・ボードの下の方には、す 多面的に、協同的に ま机の上に置き、他の班の でに知っていたことを、 収集できる。 (資料) ボードを見学し、新たな発 上の方には新たにわかっ ・他の班から謙虚に学 見をノートにメモする。 たことを配置させる。 ぶ姿勢を持つ。 ・時間は3分 ・タイマーで終了。 (関心) ○他の班に学んだことを発表 ・発表の仕方を黒板に掲示 ※意見を言う機会を設 する。 し発表しやすくする。 け生徒の活動場面を 「○班の発表に△△△△△ 増やす。 △というのがありました。 これには気づきませんで ・発見したことについ した。」 て人前で発表でき る。(表現) 実物を見たり触ったりしてみ A・・縄文中期土器-火にかけ食事を煮たりする よう!(地元川口の文化財) B・・安行式土器-食事用の皿 ○いずれも、川口市内からの C・・磨製石斧-大型獣の狩猟や解体、木の伐採や切断、 出土品で、本物の文化財で 土掘りなど多目的 あることを知る。 D・・打製石斧-土を掘る ○土器や石器などの展示物を E・・矢じり-矢で小動物をしとめる 見る。1~4班は廊下側か F・・スクレーパー-皮をはぎ、肉をそぐ ら、5班~8班は窓側から G・・土錘-漁の時に使うおもり 見学。 H・・土偶-まじない、安産等の願い? ○A~Kの物につい、「何に I・・石皿-木の実を擦る皿 裏面にドングリをたたく穴 使われたのか」を想像して、 J・・磨石-石皿で擦ったり、木の実を割ったりする 1 黒板に用紙をを貼ってい K・・耳飾り-耳に穴を開け飾るもの 6 く。 分 ○使い方について、同じ班の 人と話し合っていく。 ○書けるだけ書いて席に戻 ・触っても良いが、土器の ※本物の文化財に触れ る。 扱い方などについては注 ることによって、学 ○席に戻った人は板書をノー 意を与える。 習意欲を喚起する。 トに写す。 ・机間支援し、たまにヒン ・注意深く観察し、想 ・時間は10分 トを与える。 像力を働かせ、自分 なりの意見を持つこ ○用途について吟味し、教師 ・予想を超える縄文人の知 とができる。 (思考) とともに考える。 恵、技能の高さに気づか せる。 ド 発表 の仕 方 川口 文化 財セ ンタ ーか ら借 用し た土 器、 石器 等 コメ ント カー ド ボー ド ○「川口の縄文時代」のプレ ・貝塚はゴミ捨て場である ・川口の縄文時代の陸 ゼンテーションを見て縄文 が、そこから様々な情報 と海の分布が理解で 人の生活についてさらに考 が得られることを理解さ きる。 える。 せる。どんな物を食べて ・「これは何 か」とい いたのか、どんな物を使 う問に答えようとし っていたのかがわかる。 ている。(思考) ・考古学の科学的創造力に ・遺跡や文化財から様 ついてその一部を垣間見 々なことがわかった させる。 ことを理解する。 (知識・理解) プレ ゼンテ ーション 発 ・2人ほどにが今日の感想を ・振り返りカードに、今日 ・自分なりの発見や驚 展 語る。 の感想を特に新たな発見 きなどを中心に、感 5 ・振り返りカードに各自感想 を含め、3行以上書かせ 想を述べることがで 分 等を記入する。 る。 きる。(表現) -3- 振り 返り カー ド 8 分 (4)教室の配置 (5)板書計画 【縄文時代の生活と文化】縄文時代の人々はどのような生活をしていたか? -発見川口! 狩猟・採集が中心 貝塚→ 様々な情報 どんぐり、栗、山菜 貝(あさりなど)、魚 小動物(鹿など) 縄文式土器 竪穴住居 争いが少ない 寿命30歳? 協力 黒っぽい、厚手、模様 磨製石器 土偶 共同生活 文化財-何に使われたの A F 川口市文化財センター、川口市郷土資料館 -4- B G D C H I E J K 【実施後の感想や反省等】 1.成果があがった点 ○実物の資料、しかも私たちに身近な川口の文化財を使用することにより、縄文時代への距 離が一気に縮まった。 ○土器や実際に触れ、生徒の目の輝きが一段と増した。においを嗅いでいる生徒、重さを実 感している生徒、音を聞いている生徒。「これは何に使われていただろう?」という問に 対して、男女問わず、相談しながら真剣に考えている姿が印象的であった。 ○お借りした文化財の中でも、特にサプライズであったのが、 ①「安行式土器」-完璧に近い状態。川口の地名が全国区に。縄文中期の土器の重さにも びっくり。 ②「みみずく型土偶」-川口安行東中の生徒が30年前に発見。しかも地域清掃活動時。 顔がほぼ完璧。 ③「石皿とすり石」-生徒の予想では、トイレ・食事用の皿など、まったく当たらず。す り石の摩耗部分にも気づく。しかもリバーシブルになっていて、裏面の穴が開いており。 どんぐり等を立てて、石で割ることに気づく。縄文人の知恵にびっくり。 ④「耳飾り」-こちらも予想はまったく当たらない。耳に穴を開けて入れると聞いてさら にびっくり。もっと巨大な飾りがあるものもあることを知る。 ⑤「緑の磨製石器」-半分がかけてはいるものの、この肌触りに皆びっくり。どうやって こんなにつるつるにしたのか。 など、川口は文化財の宝庫である。発見が多かったようだ。 ○シャッフル型班編制、ブレーンストーミング風の資料読み取りと出店見学、実物観察とカ ードへの記入・貼り付けなど授業の流れに変化をもたせ、テンポよく展開できた。 ○オリジナルのプレゼンテーションを使い、導入で心をつかみ、仲町中付近はこの時代海の 下にあったことなど、地元情報満載で興味を高めることができた。 ○川口の考古学の成果を謎解きのように共に考えることができた。 「この地面のくぼみは何か」-落とし穴の貴重な遺跡 「貝塚から発見されたこの骨は何か」-タヌキから始まりバンドウイルカ(石神貝塚) 「トチの実加工場」(赤山陣屋遺跡)-渋い栗の実から3日間水にさらし渋をとる ※全国でも珍しい発見 「ただの穴の連続」-魚を捕るためのわなの網のくいの跡 ○生徒同士のつぶやきに興味深いものが多かった。 ○縄文文化の基礎基本が押さえることができた。 縄文式土器 貝塚 竪穴住居 磨製石器 土偶 ○生徒の興味と探究心がさらに広がった。 2.反省点や今後の課題 ○1時間でやる内容としては盛りだくさんすぎた。(中学校での授業進度を考えるとやむを 得ないか) ○発表させる時間や、意見を言い合う時間があまりとれなかった。 ○生徒の予想やコメント、つぶやきをもっと拾って、投げ返せたらよかった。 「どうしてそう思ったの?」 ○時間をとり、しっかり振り返りさせるべきだった。 3.最後に ○指導課の岡田先生、ご指導ありがとうございました。 ○郷土資料館の坂本先生に資料の貸し出しや、指導内容についてお世話になりました。あり がとうございました。 ○文化財センターの職員の皆さんにお話をうかがい、改めて勉強になりました。 ★授業用のパワーポイントの資料をアップしました。ご自由にお使いくだ さい。 -5- 他班の発表ボードから学ぶ。気づかなかった点は? 重さや肌触り、耳にあてて音?等を確かめつぶやき合う -6- 不思議な物体に遭遇し、想像をめぐらす生徒たち 手触りを実感。磨製石器の精巧さにびっくり。 -7- 生徒の発想は面白い。大根おろし!なるほど。トイレのふたではない! -8-
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