スピン分極したHubbard模型の超流動と擬スピンの秩序

2015. 2. 7
スピン分極した Hubbard 模型の
超流動と擬スピンの秩序
栗原研究室
修士2年
中村 直人
Fermi 粒子系の超流動
★ 冷却原子気体系の制御可能なパラメータ
Cooper対
◆ 原子間引力相互作用の大きさ ( Feshbach 共鳴 )
◆ トラップする各成分の原子数
引力
◆ 光格子の導入・その構造
BCS - BEC クロスオーバーの観測に成功
量子渦
M. W. Zwierlein et al., Nature (2005).
弱結合
( BCS 超流動 )
強結合
( BEC 超流動 )
弱結合の超流動状態
★スピン分極:なし
↑&↓バンド
Fermi面(FS)
Fermi 面上でのペアリング
( 重心運動量ゼロ )
BCS 超流動
弱結合の超流動状態
★スピン分極:あり
↓バンド
↑バンド
FS↑
FS↓
Fermi 面からずれたペアリング
( 重心運動量ゼロ )
だけ損
弱結合の超流動状態
★スピン分極:あり
↓バンド
↑バンド
FS↑
FS↓
Fermi 面上でのペアリング
( 重心運動量 をもつ )
Fulde – Ferrell (FF) 超流動
本研究の目的
① 格子系のスピン分極した強結合超流動秩序の探索
弱結合の理論に基づき
正方格子系・立方格子系の相図を作成
② 強結合領域で有効な摂動ハミルトニアンの導出
① の超流動秩序を擬スピン ( 後述 )
の秩序にマップして考察
モデルと計算手法
★ 引力 Hubbard 模型
最近接サイト間ホッピング on-site 相互作用
化学ポテンシャル
★ 平均場近似による解析
超流動の秩序変数
Cooper 対の重心運動量
・Brillouin Zone ( BZ ) 内の方向を考慮
・自由エネルギーを最小化するように決定
結果:正方格子系の相図
1次転移
2次転移
スピン分極率
★重心運動量の方向
引力の大きさ
( : バンド幅 )
・重心運動量の方向が異なる2つの FF 相が出現
・ 強引力領域で重心運動量が
の
相 が存在
結果:正方格子系の相図
1次転移
2次転移
スピン分極率
★重心運動量の方向
引力の大きさ
( : バンド幅 )
・重心運動量の方向が異なる2つの FF 相が出現
・ 強引力領域で重心運動量が
の
相 が存在
実空間でのストライプ
結果:立方格子系の相図
1次転移
2次転移
スピン分極率
★重心運動量の方向
引力の大きさ
( : バンド幅 )
・重心運動量の方向が異なる3つの FF 相が出現
・ 強引力領域で重心運動量が
の
相 が存在
強結合領域での有効ハミルトニアンの導出
★ 擬スピン表示
( 実数 )
超流動秩序変数
1サイトあたりの粒子数密度
の成分 (模式図)
強結合領域での有効ハミルトニアンの導出
★ 引力 Hubbard 模型の二次摂動展開
過剰な up 粒子
スピン分極を考慮した基底
強結合ペア
Ex)
始状態
中間状態
終状態
強結合領域での有効ハミルトニアン
★ 磁場・ドープありの “ t-J模型 ”
過剰な up 粒子
の運動を表す項
スピン分極による磁場
擬スピン間の
反強磁性相互作用
擬スピンが感じる
Z方向の磁場
超流動と擬スピンの秩序
BCS 超流動
スピン分極率
( 一定 )
擬スピン
X 方向に反強磁性
引力の大きさ
磁場
( : バンド幅 )
スピン分極率
超流動と擬スピンの秩序
擬スピン
強磁性
引力の大きさ
磁場
( : バンド幅 )
スピン分極率
超流動と擬スピンの秩序
擬スピン
Z軸負の方向に飽和
引力の大きさ
磁場
( : バンド幅 )
( 擬スピンの強磁性 ) の考察
★ 長岡強磁性 (金属の強磁性を厳密に証明 )
ホールの運動
ホールをドープ
反強磁性
・粒子間斥力
・各サイトに粒子が一つ
強磁性
ホールの運動
エネルギーを最小化
( 擬スピンの強磁性 ) の考察
★ 長岡強磁性からの類推
「ホール」
に対応
過剰な up 粒子
反強磁性相互作用
の運動を表す項
Z方向の磁場
擬スピンの反磁性秩序
過剰な up 粒子 + 磁場
擬スピンの強磁性秩序
(
)
まとめ
・正方、立方格子系のスピン分極した強結合超流動
重心運動量
の
及び
が存在
・スピン分極した強結合超流動の有効ハミルトニアン
磁場・ドープありの “ t-J模型 ”
・
( 擬スピンの強磁性 ) の考察
磁場・ドープ の運動によって誘起される可能性あり
今後の展望
・ 有効ハミルトニアンの解析
Appendix : 計算の詳細
★引力Hubbard模型
最近接ホッピング
Hartree-Fock-Gor‘kov 近似
on-site相互作用
化学ポテンシャル
Appendix : 計算の詳細
★超流動秩序変数
q
Fourier変換
★平均場 Hamiltonian
Hartree項を考慮
Cooper対が
重心運動量 q をもつと仮定
Appendix : 計算の詳細
★対角化 (Bogoliubov 変換)
★熱力学的ポテンシャル
Appendix : 計算の詳細
★自己無撞着方程式
:Fermi 分布
自由エネルギーを最小化するようにq を決める
正方格子系・立方格子系の相図を作成
Appendix : FF & LO の秩序変数
★ Flude-Ferrell (FF) 状態
q
一方向の重心運動量 q をもつ
★ Larkin-Ovchinnikov (LO) 状態
-q
q
双方向の重心運動量 q と–q が縮退
Appendix : 一様系の強結合超流動
★ 先行研究:三次元一様系
スピン分極率
強結合領域で Sarma 状態
が現れることを示唆
Sarma
Normal
FF
FS↑
引力の大きさ
H. Hu and X. –J. Liu, PRA (2006).
FS↓
Fermi 面からずれたペア
Appendix : 正方格子系の相図 (
)
1.0
0.8
スピン分極率
0.6
0.4
0.2
0.0
1.0
0.0
引力の大きさ
2.0
( : バンド幅 )
P. A. Igoshev et al., PRB 81, 094407 (2010).
Appendix : 実空間の粒子数分布の観測法
★位相差画像化法
“in situ imaging method”
δ2
δ1
Y. Shin et.al, Phys. Rev. Lett. 97, 030401 (2006).
それぞれの超微細準位の共鳴周波数から離調した参照光をあてる
散乱光 と 非散乱光 の位相差を画像化し密度差をみる
Appendix : 波数空間の粒子数分布の観測法
★time-of-flight
C. A. Regal et al, Phys. Rev. Lett. 92, 040403 (2004).
原子気体をトラップ(光格子)から開放し自由落下させる
参照光を吸収させ、原子気体の運動量分布を観測