公益財団法人日本美術刀剣保存協会の今後の方針

 剣を所持出来る環境を整え、正しい知識を習得し、一振りでも所持
保存し、それを後世に伝えていくことです。初心者にも安心して刀
たが、当保存協会本来の目的は、愛刀家が刀剣類を所持し、大切に
これまでは、協会は会員を増やすことが主目的になっておりまし
3、初心者が定着出来る鑑賞会を考える
です。今、この原点に戻り、考え直したいと思っています。
るチャンスを与え、レベルの高い愛刀家を育てることであったはず
らいのでは、と考えます。先人達の目的は、名刀を愛刀家に鑑賞す
所は沢山あるはずです。また、入札鑑定だけでは初心者は定着しづ
上作、平凡作を見極める力)、銘の真偽、茎の状態等、勉強すべき
会長 小 野 裕
公益財団法人日本美術刀剣保存協会
公益財団法人日本美術刀剣保存協会の今後の方針
1、新刀剣博物館建設について
公益財団法人日本美術刀剣保存協会は設立六十七年を迎え、公益
財団法人として三年を経過しました。その間のさまざまな問題も一
つずつ解決し、信頼を取り戻しております。
今、さらなる大きな事業として、両国の新刀剣博物館建設に取り
組んでおります。また、刀剣ブームも追い風となっており、世界に
向かって日本固有の文化財である美術品の日本刀の素晴らしさを発
信していくことが、私達協会の今後の課題であります。
2、刀剣協会の原点を考える
して刀剣を楽しめるのも、先人達、特に本間薫山・佐藤寒山両先生
と思います。
たいと考えます。その方法は、役職員一丸となって考えて行きたい
し、日本刀の魅力を共有出来るような楽しい鑑賞会を目指していき
そのために、学芸員も含め、入札鑑定オンリーの鑑賞会から脱却
してもらえるような愛刀家を育てる努力をすべきであると思います。
の並々ならぬ努力の賜であったと思います。全国に日本刀の愛刀家
敗戦時、連合国GHQによる日本刀没収の危機を救い、現在こう
を育成する目的で支部設立にも尽力され、誰でも名刀を手にとって
永年の習慣を変えることはとても大変なことと思いますが、まず
っています。
これまでの鑑賞会にもう一工夫加えることから始めていきたいと思
点取りに終始しているのが現状です。入札鑑定も刀剣学の一課程で
なお、右記内容は、協力団体等に強要するものではありません。
しかし、現在は活動の大半が鑑定中心であり、当たり・ハズレの
鑑賞することが出来るようになったのです。
はありますが、本来の刀の美しさ、その作品の出来の良さ(作者の
31 刀剣美術2015.8(703号)