色も色いろ 第34話 梅雨空に紫陽花映えて 梅雨空に紫陽花の花が彩りを増す。開花時には薄黄緑色の花(実際にはガク)が白く なり、外側から薄い青紫色に、さらに紫、赤紫へと移ろっていく。その様から「七変化」 とも呼ばれ、花ことばは「移り気」 「浮気」とありがたくない名を頂戴している。それ故、 結婚式にはタブーとされていたが、最近ではブーケに用いられたりもするようだ。小花 が集まって咲く様子から「家族団欒」という花ことばによるとか。花屋の商魂には恐れ 入る。 花の色を構成する 3 大要素はカロテン類(黄、オレンジ、赤)、アントシアニン類(赤、紅、 ピンク、青、紫)、フラボン類(白、クリーム、淡黄色)で、これらの色素と発色機構 が組み合わさって多種多様な色彩を呈している。バラ作りの夢といえば、“青バラ”。し かしバラには、アントシアニンを合成する酵素をつくる遺伝子がないため、青いバラを 梅雨空に彩りを増す紫陽花 作り出すのは困難と云われる。 話を戻して、紫陽花は、一般に土が酸性の時青い花を、アルカリ性なら赤い花を咲か せる。ところが紫陽花の色を決めている主色素、アントシアニンは、小学校の理科の実 験で経験したように、酸性で赤く、アルカリ性で青くなる。逆ではないかと疑いたくな るが、この通りなのである。実は染色時には欠かすことができない媒染剤として馴染の アルミが関与している。酸性条件で、アルミは水に溶けだして吸収され、アントシアニ ンと結合し、青い発色を呈する。アルミがない場合は、本来の色ピンクを呈するという わけだ。染色の世界も自然から学んだのかも知れない。 ところでアジサイの名の由来は“集まって咲く真の藍”「集真藍」(あじさい)から来 たという。酸性土の日本の紫陽花は元々は藍色なのだ。漢字の「紫陽花」は白楽天の詩 によるが、これは「ライラック」のことをさすようだ。 個人的には紫陽花より樹間にひっそりと咲く純白のヤマアジサイや薄紫のコアジサイ 樹間にひっそりと咲くコアジサイ に惹かれる。因みに花ことばは前者が「乙女の愛」後者は「忍耐強い愛」である。
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