全国学力・学習状況調査の結果を踏まえて 池田市立細郷小学校 子どもたちひとりひとりに確かな学力と 豊かな人権感覚の育成を・・・ 1.はじめに 今年4月21日(火)、6年生対象に実施しました文部科学省による「全国学力・学習状況 調査」について、先月に結果の送付がありました。今回の調査も昨年度と同様に全国悉皆調査 として実施されました。この調査は、子どもたちの学力および学習状況を把握・分析し、成果 と課題を検証するとともに、これからの施策に役立てることを目的としています。結果につい ては、子どもの学力や学習状況、生活状況の一部分であり、全てを表すものではありませんが、 本校としても結果の現実をしっかりととらえ、子どもたちの学力向上のための資料として有効 的に活用し、学力の分析をしていきたいと考えています。結果として出された数値だけに一喜 一憂するのではなく、子どもたちの学力を生活との兼ね合いも考えながら、多面的に捉えてい く必要があると思います。 2.今年度の結果から 今年度の結果で気になるのは、基本的なことの定着に差があることです。教科別では、算数 A,国語ABは正答率が府平均を上回る結果となりましたが、算数B、理科につきましては、 府平均を若干下回る結果が出ました。問題によっては、読み返しや考え方の工夫によりケアレ スミスが解消できた問題も多くありました。子どもたち自身も、今一度、日々の学習を振り返 り、 「分からないことをそのままにしない」という姿勢を大事にし、「分からない、疑問に思う」 ところを積極的に授業の中で発言してほしいと思います。また、学校でも授業の中で「分から ないこと」を、 「分かったこと」に変えていけるよう指導を続けていきたいと思います。 教科別で見てみますと、国語Aでは、 「書くこと」がテーマになる調査問題で、文脈を読み正 しい解答ができており、全国のポイントよりも上回っていました。日々の授業の中で、意見交 換や話し合い活動をしてきた効果がある程度見られたのではないかと思います。 「話すこと」を つくり上げる力は、今後も継続して、子どもたちにつけていきたい力です。国語だけでなく、 その他の授業でも、子どもたちが意欲的に取り組めるようしていきたいと考えています。逆に、 全国に比べポイントが低い結果だったのは、 「漢字の書き」についての正しい理解でした。毎日 の漢字の練習、辞書を使って分からない言葉をきちんと理解する学習の姿勢づくり、(さきにも 書きましたが) 「分からないことをそのままにしない」姿勢、これらを育てていく必要性を感じ ました。また、国語B(活用に関する調査問題)では、文脈を理解して、その内容について要 点を絞って書く問題での正答率が低くなりました。 「要点を絞って」という考え方は、毎日の生 活の中でも鍛えられます。 「何が大事なのか」を意識した子どもとの会話・受け応えについても 意識をしながら指導を続けていきたいと思います。 算数Aでは、無回答率は全国・府平均とほぼ変わらない(図形問題は、 )ですが、算数Bでは、 全国平均よりも高くなる傾向でした。しかし、基礎的な四則計算問題や、算数の基礎知識を問 われた問題については高い正答率が現れています。日々の反復学習(宿題プリント、計算ドリ ル、授業の振り返りなど)の成果が出たと思われます。ポイントが低かったのは、①「問題を 正しく解いている式」を選ぶ問題や、②「作図の手順を正しく答える」問題でした。①につい ては、算数B(活用に関する調査問題)で問われる学力にも通じるものがあり、問題を正しく 理解し、解くための適当な筋道を書いたり、説明したりすることが必要となります。普段の授 業でも、子どもたちの理解度を、子どもたち自らの表現(発表、記述など)で確認しながら進 める必要を感じます。また、②については、決められた図形をかく手順(平行四辺形の性質か らの作図)や、簡単な作図の意味は理解しているが、用途に応じて(調査問題は正三角形の性 質から角度を求めるもの)手順を考えることが苦手だということが分かりました。授業の中で、 自分の立てた思考の道筋が「何を表すのか」「どうしてそう考えるのか」、と、自ら確かめ直す 視点を育てることが必要です。学校もこの視点を忘れず、子どもたちの力を伸ばしていきたい と思います。 理科では、全国平均より少し低い結果となりました。 「知識」に関する問題では、全国・府平 均とほぼ変わらない数値でしたが、 「活用」に関する問題では、全国・府平均を下回る結果とな りました。しかし、自然事象についての知識・理解は、高い数値を示しており、地域の特性を 活かした生活科から理科につなげる低学年からの系統的な取り組みの成果が表れているのでは ないかと考えます。しかし、児童質問紙にもある「理科の勉強は大切ですか」「観察や実験は好 きですか」の項目は、全国・府平均より大きく下回りました。将来において、「理科離れ」をな くしていくためにも学習したことを活用することや学習(実験や観察)に対する興味・関心・ 態度を高めていく取り組みも学校として考えていく必要があります。 3.児童生徒質問用紙の結果から 【学ぶ力の育成】 ① 「国語・算数・理科は好きですか。」の項目では、 国語【本校25% 全国24.8%】算数【本校33.8% 全国38.7%】理科【本校22.1% 全国55%】 ② 「国語・算数・理科の勉強は大切だと思いますか。」の項目では、 国語【本校67.6% 全国65.9%】算数【本校80.9% 全国74.5%】理科【本校32.4% 全国 59.7%】 という数値になりました。 特に、算数が大切だと思う意識は全国より高く、日常より少人数指導を中心とした算数の授 業の取り組みが数値となって表れているのだと思います。そのことは、算数の授業で、「新し い問題に出合った時にそれを解いてみたい。」【本校48.5% 全国52.7%】 「解き方が分からない時に諦めずにいろいろな方法を考える。」【本校39.7% 全国45.5%】 という項目での数値につながっているものと思います。 【自己肯定感、将来の夢、達成感・成就感】 毎年、細小・伏小とも自己肯定感(=「自分にはよいところがある」)の数値は、全国より 低く、学習面・生活面を通し子どもたちに自尊感情を高める取り組みを進めていますが、今年 度も、「当ては まる」と答えた子どもは全国より低いという現状でした。 【本校25% 全国36.3%】 本校も含め、全国的に自尊感情が低い原因は何なのか、それにつながる子どもたちに関する 要因を検証していく必要があると思います。将来の夢や目標については、「当てはまる」と答 えた子どもは、全国とほぼ同じ数値でした。 【本校70.6% 全国70.5%】 しかし、最後までやり遂げるという達成感や失敗を恐れないでチャレンジする気持ちは、全 国より低い数値になりました。 達成感【本校57.4% 全国72.9%】 チャレンジする気持ち【本校19.1% 全国25.6%】 【規範意識】 「学校のきまり」を守っていると思っている子どもは、「当てはまる」と答えた数値が、 全国より低い数値となりました。 【本校35.3% 全国41.7%】 「いじめは、どんな理由があってもいけないこと」の項目で、強く思う数値は、全国より高 い数値となりました。 【本校89.7% 全国81.8%】 また、「人の気持ちの分かる人間になりたいと思いますか。」の項目で、「当てはまる」と 強く答えた子どもも全国より低い数値になりました。 【本校67.6% 全国72.1%】 本校でも、日々の学校生活での仲間づくりや集団づくりを中心とした取り組みの子どもたち のつながりをていねいに見ていく必要があると考えます。 【読書の習慣】 学校では、本とのふれあいを出来るだけ多く持たせるため、読書月間や朝の読書タイム、「お はなし会」などを設けています。今回の児童意識調査の中にも「学校の授業時間以外に、普段、 1日当たりどれくらいの時間、読書しますか。」の項目は、全国より高い数値【本校22.1% 全 国17.6%】になっており、「本を読んだり、借りたりするために、学校図書館や地域の図書館 にどれくらい行きますか。」の項目では、週に4回以上【本校17.6% 全国3.4%】、週に1~ 3回程度【本校23.5% 全国14.2%】と、本校の方が高い数値になっていました。本校が、今 年度、小中一貫校としてスタートし、メディアセンター(学校図書館・PC教室)の子どもた ちの利用が増えた表れだと考えます。これからも、司書やPC教室の先生たちとメディアセン ターの充実に努めていきたいと思います。 【休日の過ごし方】 休日の過ごし方については、「1日にどれくらいの時間、テレビゲーム(携帯ゲームを含む) をしていますか。」の項目では、3時間以上と答えた子どもは、全国よりも高い数値になって いました。【本校20.6% 全国17%】土曜日・日曜日、子どもたちは家の中に居るか、居ると きもテレビゲームをして過ごすことが多いという結果がでました。また、テレビやビデオを見 ている時間についても、3時間以上見ている子どもの割合は、全国と代わらない数値ですが、 3人に1人は、3時間以上視聴しているという数値になっています。 【本校32.3%全国36.1%】 長い時間でのテレビの視聴やテレビゲームは、就寝時刻が遅くなり、次の日の朝の目覚めに も大きく影響するので、家庭でもお子様と話し合ってみることも大切ではないかと考えます。 【社会への興味・関心】 「新聞を読んでいますか。」の項目では、「当てはまる」と答えた子どもは、全国平均より やや高い数値となりました。【本校11.8% 全国8.7%】新聞を読んでいると数値は少し高い結 果がでましたが、子どもたちが読んでいる内容(日々のニュースや世の中の出来事等)につい ては、分析していく必要があると考えます。 情報化社会と言われていますが、本校でも携帯電話の普及率が高く、メールや通話をしてい る子どもたちが非常に多い現実があります。「1日当たりどれくらいの時間、携帯電話やスマ ートフォンで通話、メール、インターネットをしますか。」の項目は、3時間以上は全国とほ ぼ変りませんが【本校4.4% 全国5.7%】、2~3時間は、全国の4倍近くありました。 【本校14.7% 全国3.7%】 子どもたちをさまざまな誘惑や非行から守る意味からも、使用に当たって家庭で約束をして いる中身(メールの制限、有害サイトへのアクセスのフィルタリング、使用金額等)についても う一度検討していく必要があると思います。 【保護者・地域連携】 「学校に行くのは楽しいと思いますか。」の項目では、「そう思う、どちらかといえばそう 思う」と答えた子どもは、9割近い数値となりました。 【本校89.8% 全国87%】 今後も、子どもたちにとって、学校が温かい居場所になるよう努めていきたいと思います。 「家の人(兄弟姉妹を除く)と学校での出来事について話をしますか。」の項目では、「し ている。どちらかといえば、している。」と答えた子どもは、全国より高い数値となりました。 【本校91.2% 全国80.4%】 また、「家の人は、授業参観や運動会などの学校行事に来ますか。」の項目でも、全国より 10%高い数値となりました。 【本校91.2% 全国81.2%】 これは、保護者の方も学校での出来事に関心を持ち、家庭でも子どもとの会話を大切にして いることにつながっていると考えますので、今後も保護者とともに学校づくりを進めていきた いと思います。学校においても、お互いのコミュニケーションをとるひとつとして、子どもた ちはもちろん職員も元気なあいさつを心がけています。 子どもたちにとっても、あいさつが習慣化し、学校、地域や家庭でも広がっていくことが、 『元気な学校づくり』のひとつだと考えています。 4.おわりに 一貫校になり、初めての全国学力テストでしたが、6年生の子どもたちはどの教科もよくが んばっていたと思います。新しい学校、新しい仲間との出会いなど子どもたちの意欲が今回の 結果として表れていたと考えています。今回の学力・学習状況調査を踏まえ、学力における本 校の子どもたちの課題やつけなければならない力を生活実態調査と重ね合わせ分析し、今後の 本校の学力向上に役立てていきたいと考えています。 今回分析したことを本校での集団づくりや授業づくりに活かし、子どもたち一人ひとりに豊 かな感性と確かな学力、主体的に学ぶ意欲や態度を育み、「生きる力」を身につけさせていく 手だてにしていきたいと思っています。
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