2015年研修旅行成果報告書 - 名古屋大学グローバル人材育成プログラム

グローバル人材育成プログラム 海外視察研修旅行
成果報告書
2015年9月8日~9月17日
名古屋大学経済学部
〒464-0814 名古屋市千種区不老町
TEL 052-789-2381 FAX 052-789-4924
2015年度
グローバル人材育成プログラム
海外視察研修旅行
成果報告書
2015年9月8日~9月17日
タイ・シンガポール
名古屋大学経済学部
伊藤理恵
大野友香
鎌田彩乃
北村夏子
西村朋美
坂野由実
水野練
吉岡千波
吉川桃世
1
2
目次
はじめに
名古屋大学
経済学研究科
教授
佐野良雄
p.5
研修旅行日程
p.6
第1部
研修旅行感想文
p.7
第2部
研修レポート
p.23
第3部
現地大学での発表資料
p.53
第4部
成果報告会(2015 年 10 月 17 日開催)資料
p.105
おわりに
p.119
3
4
はじめに
名古屋大学経済学研究科 教授 佐野良雄
名古屋大学が、ご賛同頂ける企業や官公庁からの絶大なご協力を得て、グローバル人材育成プログラ
ムを立ち上げてから今年 7 年目を迎えました。海外研修旅行は6回目の実施で、私自身3回目の引率で
す。
今年は、研修旅行出発3週間前に、バンコクで外国人観光客をターゲットにしたと見られる爆破事件
が発生し、実施が危ぶまれる時期がありました。その後犯人の一部と目されるグループが逮捕され、外
務省渡航自粛勧告も出なかったため、在タイの各企業様や名古屋大学のバンコク事務所と連絡を密に
し、安全に旅行が実施できると判断、予定通り出発しました。念の為夜間の外出や観光は控えることと
し、もしもの際には最善の安全策を準備した上での研修旅行実施となりました。現地に行ってみると、
警備が強化されており平穏を取り戻していましたので安心しましたが、政情が安定しつつあったタイで
もこのような「流動化事態」が発生するということを、身を持って感じました。
シンガポールでは訪問の前日が総選挙の投票日でした。前回の選挙で支持率を低下させた与党が、今
回は様々な手段を用いて支持率回復を図り、それを成し遂げたという説明を現地の大学や企業から聞い
て、経済的な優等生でかつ政治的に安定していると思われたシンガポールでもこのような動きがあり、
正に常に動いている世界を「いま」
「ここ」で体験した研修旅行となりました。
シンガポールは常夏で、いつも澄んだ青空が印象的でしたが、今年は滞在中ずっと Haze (煙霧)が掛
かっていて曇り空でした。スマトラで行われる焼畑農業の煙がシンガポールに来ているのが原因で、シ
ンガポール市民はマスクをしている人も多く、地球的環境問題がここでも起きているということを体験
することになりました。
タイ・チュラロンコン大学では英語のプレゼンテーションを行い、学生との質疑応答を行いました
が、彼らの英語力が益々上達しているという印象を受けました。聞けばタイでは英才教育を施したい親
は英語教育を行う幼稚園に子供を入れること、英国の学校が経営する全寮制の Boarding School に入れ
ることに必死であるとのこと。まさにそのような例をチュラロンコン大学の学生に見た思いがします。
シンガポールでは、従来のシンガポール経営大学に加え、今年はシンガポール国立大学にも訪れまし
た。アジア第一の大学と言われているだけあって、学生は溌剌としており、国の将来を担う気概が感じ
られました。そのような学生たちと向き合い、名大生は自らの英語力やコミュニケーション力が圧倒的
に不足していると感じたと思います。この学生たちとグローバルの世界で競合して行かなければならな
い、という恐れも感じたことでしょう。
グローバル人材の第一の要件は、自分の国の文化や歴史を理解し、それを外国語で表現することによ
り、他の文化にある人と対等の立場で共有し、また議論できることだと私は思っています。今そのスタ
ートラインに立ち、理想と現実とのギャップを感じた研修旅行参加者が、今後どのようにしてグローバ
ル人材に育って行くのか見守りたいと思っています。
今回もこのような機会を与えて頂いたグローバル人材育成協議会参加企業、および今回訪問させて頂
いた企業各位に改めて厚く御礼申し上げると共に、今後ともご支援賜りたくお願い致します。ありがと
うございました。
2015年11月
5
海外視察研修旅行日程 2015 年 9 月
火
水
タイ
10
11
木
金
12
土
13
日
14
シンガポール
15
16
月
火
水
全日 午前 午後 午前 午後 午前 午後 全日 全日 午前 午後 午前 午前 午後 午前 午後
9
曜日
日付
8
訪問先
夜 朝
17
6
木
内容
中部国際空港(セントレア)発 バンコク着
大学講義・プレゼン・ディスカッション・
チュラロンコン大学
キャンパスツアー
豊田通商タイランド
会社講義
大同特殊鋼
会社講義・工場見学・昼食
トヨタ自動車タイランド
会社講義・工場見学
新東工業
会社講義・工場見学・昼食
アユタヤ見学
バンコク発 シンガポール着
シンガポール観光(自由散策)
シンガポール
プレゼン・ディスカッション・
マネジメント大学
キャンパスツアー
ブラザー工業
会社講義・販売店訪問・夕食
野村證券
会社講義
三井物産
会社講義・ナショナルスタッフとの昼食
三井住友銀行
会社講義
PSA シンガポール
見学
シンガポール国立大学
フリーディスカッション・
キャンパスツアー
シンガポール発 バンコク着
バンコク発 中部国際空港(セントレア)着
第1部
研修旅行感想文
7
研修旅行を終えて
伊藤
理恵
初めての海外。長いはずの10日間はあっという間だった。日本企業で働く現地スタッフの方々は日
本語が上手で、現地の学生は勉強熱心で積極的であった。彼らの姿を見て自分も頑張らなければと感じ
た。海外はすごいと感じると同時に、タイとシンガポールでは何度か日本の製品や店舗、キャラクター
を見かけ、日本のものが予想以上に海外に広まっている事を知り、日本もすごいと感じた。この研修旅
行で得られたもの、発見できたものはたくさんある。このような機会を与えてくださった学校、企業の
方々に深く感謝する。
大学訪問では現地学生が原稿も見ずに堂々とプレゼンテーションをしている姿を見て圧倒された。彼
らはとても積極的で私たちのプレゼンテーションの後、疑問に思ったことをたくさん質問してくれた。
また、現地学生だけではなく今回一緒にプレゼンテーションをしたメンバーたちのすごさも感じた。限
られた準備期間の中でしっかりと原稿を書き、聞き手の目を見て自信を持ってプレゼンテーションをす
るメンバー、現地の学生と流暢な英語で会話をしているメンバーの姿を見てすごいと思った。この研修
旅行ではいろんな学生の頑張る姿を見て良い刺激を受け、自分も頑張らねばと感じた。
私は今まで海外に行ったことがなく、日本で働くことしか考えていなかった。しかし、今回の企業訪
問で日本人駐在員の方が現地スタッフと楽しそうに仕事をしている姿をみて、人種・国境という壁を越
えて一緒に仕事をする、一つのものを成し遂げる、創り出すことはすごい事だと感じ、海外で働くこと
も自分の選択肢の一つとなった。また、企業の方々からの言葉は心に残るものが多かった。まず、野村
証券の方の「英語ができることが Advantage ではなく、できないことが Disadvantage である。」とい
うお言葉。本当にそのとおりであると思う。たとえ英語ができたとしても話したい内容や話題がなけれ
ば会話ができない。逆に、今回の私のように現地学生との交流の場で聞きたいことがたくさんあっても
英語でうまく表現できない場合、相手と上手くコミュニケーションが取れなくなってしまう。言葉の壁
がなかったら文化や環境が異なる相手ともコミュニケーションをとることができ、考えや意見を共有し
あうことができるはずだと感じた。今回現地の方と話す機会をせっかく与えていただいたのに英語で自
分の意見をうまく表現できなかったことを反省し、これからはグローバル人材となるためにも英語の勉
強を今まで以上に頑張ろうと思った。また、三井物産の方の「Don’t be afraid of failure, challenges
and experiences are important.」という言葉。私はよく失敗したら、間違えたらどうしようと考えてし
まい、授業やゼミで質問、発言をためらってしまうことがある。しかし、この言葉を聞いてチャレンジ
する事に意味がありたとえ失敗したとしてもそれが経験となり次のチャレンジへとつながっていくこと
がよくわかった。現地大学や研修旅行成果報告会での発表では緊張して失敗してしまった部分もあった
が、大勢の人の前で発表することにチャレンジしたという経験が今では私の自信へとなっている。今回
のグローバル研修旅行で学んだこと、経験したことをこれからのチャレンジへとつなげていきたいと感
じた。
8
研修旅行を振り返って
大野
友香
今回の研修旅行では、タイとシンガポール 2 か国を訪問した。10 日という短い期間の間に社会、経
済、文化、全てが異なる 2 つの国を訪れて、その違いを肌で感じることができたことは大変貴重な機会
となった。
私はタイのチュラロンコン大学で「日本とタイの女性の社会進出における違い」をテーマにプレゼン
テーションを行った。その事前準備を行う中で、タイは日本よりも法整備は進んでいないにも関わら
ず、女性の社会進出が進んでいることが分かった。日本では女性の給料は男性の約 53%であるが、タイ
では男性の約 95%であり、ほぼ平等である。またクォータ制の影響で女性管理職の割合も日本の 1.1%
に対して、タイでは 9.7%と高い。このような事前知識を得たので、私は研修旅行では女性社員に注目
をして、それぞれの企業を訪問した。
タイ・シンガポールどちらの国の企業でも女性は生き生きと働いていた。特にタイの豊田通商では、
担当してくださった 3 人の現地女性社員のうち 2 人が妊娠中であった。そのうちの 1 人は驚くことに臨
月に入っていた。出産間近まで働くことができる周りの協力体制が日本にはないものであると感じた。
また、他の企業を訪問した際も、管理職の女性、3 か国語が話せて日本人駐在員と現地社員をつなぐ役
割をしている女性など、社内で活躍している女性は数多くいた。男性と変わらず働く女性の姿を見て、
研修旅行前に聞いた、日本のある企業の女性管理職の「女性とか男性とか関係ない。一個人として働
く」という言葉を痛感した。日本人の女性は結婚・出産・育児を男性に対しての disadvantage である
と考えてしまうことが多い。だが、そのようなライフイベントを肯定的にとらえて、一個人としてどの
ような働き方をしていきたいかを考えるのが重要であると感じた。現地の女性社員の働く姿に勇気づけ
られ、私も彼女たちに負けないような活躍をしたいと思った。
また、この 10 日間の研修旅行で私の前には言語の壁が立ちはだかっていると感じた。特に三井物産
での現地社員とのランチミーティングや現地大学の学生との交流の際、相手の言っていることは何とか
理解することができるが、こちらから言いたいことはなかなか伝えることができないという状況が続い
た。自分の英語力のなさを痛感したのだ。三井住友銀行を訪問した時、現地駐在員の通山様のお話の中
で「英語と仕事はリンクしていない、だが英語ができないとやりたい仕事はできない」というお言葉が
あった。つまり、英語ができないからといってグローバルで働くことを諦めることはしなくて良いが、
英語ができないと、能力があるにも関わらず、自分が納得、満足できるような仕事を任せられることは
ないということであろう。働くならば、自分の能力を発揮できるような仕事をしたいと誰もが思うはず
だ。だがグローバルで働く場合、能力を発揮するしない以前に言語の問題がある。英語ができないこと
が disadvantage になってしまうのだ。今回の訪問を通して、英語が公用語であるシンガポールの学生
はもちろん、タイ語が公用語のタイの学生も高い英語力を持っていることが分かった。つまり現時点で
私たちは言語に関して、不利位置にいるのだ。この状況が続いていくと、海外の優秀な人材に自分たち
がやりたい仕事を持っていかれるかもしれない。将来自分がしたい仕事をして活躍するために、残りの
大学生活の中で英語力の向上に努めていきたい。そして、野村證券の青木様がおっしゃっていたよう
9
に、英語力の前に自分が伝えたい内容をしっかり持っていなければならない。様々なことを体験した
り、日本について改めて考えたりして自分の中身というものも充実させていきたい。そして将来は英語
力と中身を兼ね備えて、グローバルという境界線を引かないで活躍できるような人材になりたい。
最後に、ご協力いただいた企業の方々、タイ・シンガポールの大学の方々、佐野先生、グローバルの
8 人のメンバーに感謝申し上げたい。本当にありがとうございました。
10
海外研修に寄せて
鎌田
彩乃
毎日朝から晩まで予定がぎっちりと詰まり、大変充実した密度の濃い 10 日間であった。私はかつて
シンガポールに滞在していた経験がある。また、タイにも何度か訪れたことがあったため、今回の研修
から異国として・異文化としての新鮮味を感じることは他のメンバーより少なかったかも知れないが、
企業訪問や現地の大学の学生との交流等、昔住んでいたときにはできなかった様々な体験を通して、以
前とは違う大変貴重な体験が出来た。さらに、日本で大学生として勉強し、少し成長した新しい視点か
ら物事を捉えることが出来たように感じる。
研修の前半で訪れたタイの印象は、
「日本に似ているようで似ていない」だ。まず、街並みが似てい
た。道路を走る自動車も日本車がその大半を占め、道沿いには日系企業の看板があちらこちらで存在感
を放っていた。海外の道路は、広さや色合い、構造が日本のものとはかなり異なっている印象がある
が、タイの道路はコンクリートの作りや色合いが日本と近いと感じた。また、タイの国民性も日本に近
いように感じた。「微笑みの国」として有名であるタイの人々は、私たちに笑顔を向け両手を胸の前で
合わせて挨拶をして下さったり、笑顔で対応してくれる姿が大変印象的であった。これは、タイが日本
に対して好感を持ってくれているからであろう。タイは親日国であるとよく耳にする通り、日本に興味
関心を持っているように感じた。大変嬉しいことだ。また、バンコク市内の出店や屋台の看板やメニュ
ーの表示は、タイ語・英語の次に日本語で書いてあることが多く、タイが親日国であるのと同時に、日
本人もタイを多く訪れるタイ好きの国でもあるのだと感じた。しかし、日本に似ているとはいえ、やは
り異国を感じる箇所も少なくなかった。日本と比較すると、道路上のバイクの量が非常に多く、道に収
まりきらず溢れかえっていた。信号などほとんどお構いなしに、歩行者と自動車・バイクがお互いスレ
スレの間を縫って通行していたのには驚いた。他に、バスから確認できる範囲内でも、いたるところに
国王の写真が飾ってあったり、街中に突然寺院が出現したりした。
後半に訪れたシンガポールの印象は、「さすが、世界 1 位の成長国のパワー」である。私の知らない
わずか 1 年半ほどにも急速に発展したように感じられた。かつて生活していた時によく訪れていたショ
ッピングモールの店舗も随分と入れ替わり、新しいものに変わっていることが少なくなかった。さら
に、通っていた学校の前の通りも工事の真最中であった。さすが経済発展真只中のシンガポールだな
と、国のパワーと勢いを感じた。しかし、一見順調そうに見えるシンガポールだが、問題がないわけで
はなさそうだ。外国人優遇政策に対する国民の反対が大きくなっていることや、マレーシアとの水の契
約の問題があり、日本と同じように進む少子高齢化の対策も早急に行う必要があるそうだ。
異文化を体感することはもちろん、海外で働く日本人の話を伺う機会があったところが今回の研修の
特典であると感じている。実際に海外で活躍している日本人駐在員の方々の姿を間近で見て、将来は世
界に出てグローバルに働きたいと改めて思った。外国の方々と共に働くうえでは、文化的背景の異なる
相手との根本にある考え方の相違の存在を理解し、お互いを尊重し合うことが大切であると学んだ。ま
た、訪問先の企業で、日本人駐在員の方々と現地の従業員の方々が笑顔で会話をしている様子が大変印
象的だった。
そして、普段は決して見ることのできない貴重な企業の「現場」を見学することが出来たことも、大き
な財産となった。研修に行く前は、漠然としたイメージで企業や業界を捉えがちだったが、実際に職場の
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雰囲気を体感し、働いている様子を見学させて頂くと、180 度印象が変わるものも多かった。全 9 社への
企業訪問を通して、将来の職種を考える際にはもっと視野を広げて幅広い業界について知っていきたい
と思った。
さらに、海外の学生との交流もとても貴重な経験となった。海外の学生は、私たち日本の学生とは比べ
ものにならないくらいに非常に勉強熱心で、積極性が強かった。特に今回の研修で実感したのは、海外の
学生がプレゼンテーションやディスカッション等、大勢の前で自分の意見を主張する能力に大変長けて
いるということだ。
「彼らは将来自分たちのライバルになる」と言われ、彼らに負けないように努力する
べきだと強く感じた。
シンガポール・タイのそれぞれの国の良さを実感できたと同時に、日本の良さも再確認できた研修旅行
となった。今回の研修から露わになったこれからの課題として、英語の能力はもちろん、何事にも積極的
に果敢に挑戦することが大切だと思った。若いうちに、特に比較的時間の取りやすい学生のうちに、様々
な世界を知っておきたい。将来のキャリアの選択の幅を広め、その選択に大きな影響を与えるであろう。
最後に、ご協力いただいた企業の皆さま、現地の大学で私たちと交流してくださった皆様、引率してく
ださった佐野先生、旅行会社やガイドの方々、そして 8 人の素晴らしい仲間に感謝を示したい。皆さま
のおかげで、10 日間が宝物となりました。本当にありがとうございました。
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おなかいっぱい
北村
夏子
今回の海外研修視察旅行にタイトルをつけるとしたら、
「おなかいっぱい」であろう。このことは成果
報告会でも述べたが、いろいろな意味で満腹感が得られた 10 日間であった。というのも、このタイ・シ
ンガポールへの訪問が私にとって初めての海外で、見るもの聞くもの匂うもの食べるもの触れるもの、
すべてが新鮮であり、なにも知らない分、多くのことを吸収して帰国することができたように思う。
タイ、シンガポールの企業を訪問して、海外勤務に関する生の声だけでなく、社会人としての意識、さ
らには就職活動の心得までを学ぶことができた。企業の海外進出には、会社の設備や制度はもちろん、出
向する社員の方の考え方も、その国流に変えていく必要があることを知った。
また、タイとシンガポールでは 3 つの大学を訪問した。シンガポール・マネジメント大学で、以前、名
古屋大学を訪れた現地の学生との再会を果たし、うれしくてたまらなかった。この 3 か月間のできごと
を伝えたかった。しかし、うまく言葉にできず、もどかしさに苦しんだ。私は決して寡黙で聞き上手では
ないはずなのに、英語というフィールドに立つと、途端に人格が変わったようになにも話せなくなって
しまった。これは、交流の場では致命的であるため、帰りのバスの中で、実は落ち込んでいた。
帰国後、自分には今から何ができるかを考えた。積極性と英語力を高めることのできる何かを始めた
いと考えた。便利な世の中になったもので、今では、SNS で海外の多くの人と簡単につながることがで
きる。メールを送るのは少し勇気がいるが、SNS の投稿へのコメントなら手軽に、気軽にできるように
感じる。これは積極性と英語力、2 つの向上に役立つのではないかと考えている。
おなかいっぱいとなったこの海外研修視察旅行であるが、学んだことはハングリー精神の必要性であ
る。日本の学生にはハングリー精神が欠けていると言われがちであるが、海外の学生を目の当たりにし、
本当にその通りであると感じた。海外の学生は、わたしと同じくらいの年月を生きてきたはずなのに、私
よりずっと多くのことに興味を示し、経験し、そして、身につけていた。例えば、タイの学生は私たちの
プレゼンテーションに興味津々で次から次へと質問を投げかけてくるし、シンガポールの学生は夏休み
に 1~2 か月間のインターンシップにみっちり参加するのが当たり前であるそうだ。自分の視野を広げる
ための活動を当たり前のように行う彼らは、私が数年後に海外ビジネスの場においてあるときは協力し
合う仲間となり、またあるときは競い合うライバルとなる相手である。そんな彼らに、学生のうちに出会
うことができて、本当にうれしく思っている。
この海外研修視察旅行で、多くの方々と出会い、話をしながら、急成長するアジアの熱気と活気を肌で
感じることができた。そのなかで、自分の無力さに失望しながらも、数年後の自分が、この研修中に現地
で出会った社員の方々のもとで教わり、これまた現地で出会った学生とビジネスの話をしたあとは、現
地のおいしい料理を囲んで盛り上がるようすを想像すると楽しくなった。そんな自分になりたいと思っ
た。今後は、この妄想を現実のものとする努力の日々を送っていきたい。
最後に、このようなすばらしい機会を与えてくださった、企業関係者のみなさま、大学関係者のみなさ
ま、佐野先生、8 人の仲間たち、関わってくださったすべての方々に心より感謝申し上げます。ありがと
うございました。
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研修旅行を振り返って
西村
朋美
私は研修旅行を経験して、世界を舞台にして働きたい、そのためにはもっと自分を鍛えなければならな
いと感じた。大学、企業訪問そして初めての海外という視点から研修旅行について振り返る。
私たちは3つの大学を訪問し、現地の大学生の英語やプレゼンのレベルの高さに圧倒された。チュラ
ロンコン大学でプレゼンテーションを行った際には、タイの学生の積極的に質問する姿勢と英語力に驚
き、SMU でプレゼンを見た際には、原稿を見ないで聞き手を見て笑顔でプレゼンする姿に驚き、NUS の
学生と交流した際には、様々な国々から学生が来ているのをみてグローバル化をさらに実感した。将来、
このような人たちと一緒に働くのだと考えると今のままでは足を引っ張るどころか置いていかれる。今
以上に、英語の勉強をするだけではなく、日常でプレゼンを行う機会や、小論文を書く機会に自分ができ
る精一杯の力で取り組み、自分の能力を上げていかなければならないのだと思い知らされた。また、今ま
で関わったことのない海外の学生と交流したことで、もっとこのような文化が違う人たちと英語で話を
したいと感じた。
企業を訪問した際には、企業の方々が纏う空気に、尊敬の念と憧れを感じた。きっとこれまでに様々な
苦難を乗り越えてきたからこそ何も言わなくても現れるオーラなのだと思った。
特に印象に残っているのは、三井物産のランチミーティングでの話だ。これから社会人になる際に必
要なことは、自分に何が必要なのか、自分は何をしたいのかを考えること。また、人と違うことを、目立
つことを恐れてはいけない。これから先、人とは違うことをしなければならないことが多々ある。その際
に、失敗を恐れてはいけない。失敗をしても失敗して学ぶことができる。
企業の方々から話を聞いて、失敗を恐れず、積極的にやりたいことをやり、たくさんの経験を積んでい
きたいと感じた。また、楽しそうに会社、仕事の話をされている姿を見て、私もこのように仕事のことを
楽しいと感じられる仕事をしたいと考えた。
初めての海外は、1 つ目に異なる文化、2 つ目にアジアから見た日本、そして 3 つ目にグローバル化す
るアジアの大きく3つの点を知ることができた旅だった。
1 つ目の異なる文化について。私は、国によって文化が異なるというのは知ってはいたものの、聞くの
と実際目の当たりにするのとでは全く異なっていた。タイでは、国王、国に対する敬意や、宗教に対する
考え方が私たちとは全く異なる。朝の通勤時間に国歌が流れれば歩いていても立ち止まる。国王の悪口
を言えば不敬罪。挨拶するときには、しっかり手を合わせる。など様々なルールがあった。一方シンガポ
ールでは、市街を歩く人々がタイや日本とは全く異なる。世界各国から訪れている人々が沢山いた。食べ
物に関してもまた然り。タイではパクチやココナッツなどの独特の食材を使った料理に戸惑った。シン
ガポールでは、食べ物もまた日本料理や中華などの多国籍の料理が手軽に食べられるという一つの文化
が感じられた。これから先、グローバル人材として働くためには、それぞれの文化の考え方、ルールを理
解する必要があると実感しつつ新しい世界にワクワクした。
2 つ目のアジアから見た日本について。私は、タイで走っている車、建てられている企業はほとんど日
本企業だと話を聞いていた。しかし実際に行ってみると確かに日本企業は多いものの、欧米の企業もた
くさん見られた。どこの国へ行くにしても日本企業は欧米の企業と戦っていかなければならないのだと
実感した。欧米企業もいる中で、日本企業はどことなく日本らしさを残しながら戦い続けている。また、
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タイ、シンガポールから見た日本は、礼儀正しい、温かい、しっかりしているなどの印象があり、日本人
として誇らしく感じた。
そして最後に 3 つ目のグローバルしているアジアについて。シンガポールがグローバル化しているこ
とは言うまでもなく、タイの学生のグローバル化には驚いた。先にも書いた通り、私たちはタイの大学へ
行った。そこの学生は、流暢な英語を話していた。私は世間でグローバル化と言われても、英語が喋られ
なくても何とかやっていけると少なからず考えていたが、すでにタイでは英語を話す学生は当たり前な
のだ。野村證券の青木社長の言葉を借りると、英語が話せることが advantage になるのではない、しか
し、話せないことは disadvantage になるのだと痛感した。
初めての海外、海外で実際に働く人々、将来ともに働くだろう仲間と関わったことで、様々なことを思
い知らされた。私には、例えば英語力、積極性、論理的に話すことなどの鍛えなければならないスキルが
たくさんある。これからグローバル人材として働くために、勇気をもってさまざまなことを挑戦し、何事
も一生懸命取り組みたい。
最後に、私たちを受け入れてくださった各協賛企業の方々、タイ・シンガポールの大学の方々、佐野先
生、一緒に研修旅行に参加した仲間、グローバル研修旅行に関わってくださったすべての皆様に心より
感謝を申し上げたい。ありがとうございました。
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研修旅行を終えて
坂野 由実
私達は 10 日間タイ・シンガポールへ研修旅行に行った。この研修旅行は私にとって初めての海外経験で
あり、研修旅行に行く前はとても不安であった。しかし、実際に行ってみると様々な刺激的な経験ができ
た研修旅行であった。今からこの研修旅行を振り返って、印象に残っていること、私がこれから必要だと
思ったものについて書きたいと思う。
私がこの研修旅行で一番印象に残っていることは、海外の学生のレベルの高さである。私達はこの研
修でタイのチュラロンコン大学、シンガポールマネジメント大学(SMU)、シンガポール国立大学(NUS)
の三校を訪問した。タイでは英語が公用語ではないにもかかわらず、チュラロンコン大学の学生達はま
るでネイティブのような発音で英語をスラスラと話していた。私の英語力は彼らに比べてとても劣って
いると感じた。SMU では SMU の学生の一人がシンガポールの概要などについてプレゼンをした。彼女
は原稿を見ずに、聞いている人達の方を見て、堂々とプレゼンを行っていた。その様子を見て、私は圧倒
されたと同時に、私もこのようにプレゼンができるようになりたいと思った。NUS では、日本語を学ん
でいる学生達と話すことができた。彼らは日本語の勉強を始めて、まだ 1、2 年しか経っていないそうだ。
しかし、彼らとは日本語で会話することができた。私は中学生の時から 8 年以上英語を勉強してきてい
るが、英語でほとんど会話ができない。このことから、彼らがとても勤勉であると感じた。この三校を訪
れて、私達はこれからこのようなレベルの高い学生達と競争していかなければならないのだと思い、私
自身もっと学ばなければいけないことがたくさんあり、勉強しなければならないと痛感させられた。
次に、私がこの研修旅行を通してこれから必要だと思ったものについて書こうと思う。私が必要だと
思ったものの中で、大学生のうちに身につけたいものが三つある。一つ目はコミュニケーション能力で
ある。私が考えるコミュニケーション能力とは、相手にきちんと自分の考えを伝えられる言語力はもち
ろんのこと、身振り・手振り、表情などを使って相手に伝えようとすることだと考えている。二つ目は、
チャレンジ精神である。何をするにも誰でも一回目があり、実際にやってみないと結果はほとんどわか
らない。わかっていることは始めなければ何も変わらないということだ。この研修旅行で様々な企業に
訪問させていただき、そこでうかがったお話からも学生のときからどんどん挑戦していくことが大切な
のだと学んだ。三つ目は度胸である。これは二つ目のチャレンジ精神と通じるところがあるが、失敗を恐
れない心、一歩を踏み出す勇気である、度胸が必要だと感じた。
最後に、ご支援してくださった企業の皆様、先生方をはじめ、今回の研修旅行に関わり、支えてくださ
った全ての皆様に感謝いたします。このような機会を与えてくださり、誠にありがとうございました。
16
研修旅行を終えて
水野
練
百聞は一見に如かず。どれだけグーグルアースで世界を眺めても、そこに立ってみなければその国の風
は感じられない。
少し格好つけて言ってみましたが、本当に「行ってみなければわからない」のが、海外なのだなと感じ
させられました。なぜそう思ったのか、今回の研修旅行で学んだことを「研修」と「旅行」の二つに分け
て振り返りたいと思います。
まずは、
「研修」。今回は計9つの企業様と三つの現地大学を訪問させていただきました。それぞれの企
業の方々からは、海外で打つ戦略や、アジアへの思い、そこで仕事をする上での苦難、そして喜びについ
ても生の声でお聞きすることができました。
タイについては頻繁にジョブホッピングが行われているということ、そしてそれを防ぐため、社員の愛
社心と帰属意識を育む企画が行われ、会社内に家族のような団結と温かみが生まれていることが印象的
でした。グローバル化の進む世界の中、将来必ず一度は海外で働くことになるだろうと考えていた自分
にとって、和気あいあいと働いていらっしゃるタイの企業の方々の姿を見られたことは、国境を越えて
活躍することへの不安感を取り除き、今後の大きな後押しとなると感じます。
対するシンガポールでは、ASEAN の持つ底力のようなものを感じさせられました。シンガポールはそ
の政策が功を奏し、いまや ASEAN トップの先進国、あらゆる面において世界中の精鋭が集い、また国
内でも優秀な人材を育成している国です。
シンガポールの学生と交流した際、スライドを見ずスムーズなプレゼンテーションを堂々と披露する
学生、まだ半年しか勉強していないはずの日本語を完璧な発音で流暢にしゃべる学生など、その能力に
驚かされました。今後社会人になっていく上で僕たちはその差を縮め、追いつき追い越さなければなら
ないのです。そのことに今気づけたことは、自分にとっての大きな原動力となりました。
対照的に、企業の方々や大学生との交流の中で、自分の強みに気づくことができたのも今回の研修の大
きな成果です。世界に出るうえでは、この自分のもつ長所をいかにうまく使っていくか、それも大事だと
感じました。これもまた今回の大きな収穫でしょう。
次に研修ではなく「旅行」としての一面を。今回の研修旅行では、アユタヤとシンガポール内を観光し
ました。そこで出会った現地の人々との交流から、また違ったことを学んだと感じます。タイもシンガポ
ールも、食事の味、店員さんの対応、交通状況など、日本とは異なっています。長年日本にしか住んでい
ない僕たちにとっては衝撃もありましたが、それぞれの国にはそれぞれの考え方、物事の捉え方、好み、
全てにおいて個性があり、たとえ初めはその違いに違和感を持ったとしても、文化の壁を乗り越えてそ
の良さを見いだせる心が必要なのだと感じさせられました
本当に「行ってみなければわからない」の連続です。ASEAN が急成長しているという統計は何度も見
ていました。実際シンガポールの夜景はまるで近未来のようでしたが、まだバンコクには高層ビルの影
に、古びた家屋が立ち並ぶ路地が残っているという現実がありました。行って考えて肌で感じてはじめ
て世界が広がります。うまく喋れない、通じないと思っていても、生活のために必要となれば自分は喋り
ました、そして通じました。それも、行ってみて初めて実感したのです。
17
見知らぬ地で、新しい仲間に出会い、知らなかった自分を発掘した、そんな人生で最高に濃い 10 日間。
この機会で自分は変わったと実感します。英語を学ぶ本当の意味を知り、いまも頑張っています。就職の
さらにその先の人生についても深く考えるようになりました。
最後に、今回の旅行にご出資いただきました企業の皆様、訪問先の企業の皆様、大学の方々、生徒の皆
さん、そして 10 日間引率と盛り上げをしていただいた佐野先生と八人のメンバーに、心より感謝したい
と思います。
本当に、ありがとうございました。
18
研修旅行を振り返って
吉岡
千波
「みんなちがって、みんないい。
」この言葉は、小学校の国語で習った金子みすゞさんの「私と小鳥
と鈴と」という詞の中で繰り返し出てくるフレーズである。私は今回の研修旅行を通して、この言葉の
意味を改めて深く理解し、自分の価値観を見直した。
私は今までそれぞれの国やその文化に対して「進んでいる」「進んでいない」といったイメージが心
のどこかにあり、優劣をつけていたように思う。もちろんそのような発言をすることはないし、自分で
も自覚はなかったのだが、経済状況や生活水準などを数字で見ていく中で、いつしかその競争を「国」
「文化」の優劣と結び付けていた。しかし、今回の研修旅行最初の訪問国・タイでその事実に気づかさ
れ、そして改めることとなった。タイに到着してから、道路の整備や衛生状態において多少の不自由を
感じ「日本の方がいいな。」「タイの人たちは不便だろうな。」と思った事が何度かあった。ところが、
数日間における滞在の中で、タイの方が不便を感じているような場面に出会うことはなかった。そこ
で、私は自分が「日本の方がタイより優れているのだ」と勝手に決めつけていて、実際は「自分にとっ
ては慣れ親しんだ日本が落ち着く」だけであり、「タイの人にとってはこれが最適であり、それこそが
魅力なのだ」と気づいた。サービスは受け手が優位にあり、自分でトラブルを回避することや必要以上
のサービスを受けないことで双方にとっての無駄を省くことで、タイの方たちはよりスムーズな生活を
行い、私たちよりも遥かにたくましく、自立しているように感じた。もちろん地理的要因などはあるに
しろ、これだけグローバル化が進み世界が小さくなった現在においても、各国が同質化しないのはそれ
ぞれに魅力や強みがあり、まさに「みんなちがって、みんないい」からなのだ。このことに気づいたと
き、私は自分の勘違いを恥じ、今この報告書に書き留めておくことで、これからの将来においても忘れ
ることのない教訓としたい。
しかし、大学を卒業して就職すれば、個性が大切だとは言っても、そこは競争社会である。研修旅行
5 日目バンコク空港を出発して約 2 時間のフライトでたどり着いた次の訪問国・シンガポールで、その
ことを身に染みて感じることなった。私たちが滞在した時期はちょうどスマトラ島での大規模な野焼き
によって生じた煙が流れてきて大気が汚染されてしまうヘイズが発生しており、澄んだ青空を見ること
は出来なかったが、それでもしっかりと整備されており、きらびやかなショッピングモールやビルが立
ち並ぶシンガポールの街中の華やかさには圧倒された。到着した翌日は観光を大いに楽しみ、独立後急
成長を遂げ、今年独立 50 周年を迎える非常に豊かさを再認識した。けれども、その次の日から企業・
大学訪問が始まると、その競争力に衝撃を受け、焦りを感じることとなった。シンガポールで出会った
どの人からも感じたのは、自己の成長のための努力を惜しまないということである。アジアで最も優秀
なシンガポール国立大学の学生と交流した際に、彼らがいかに明確に自分の人生のビジョンを持ち、そ
れに向けて努力しているのかを目の当たりにした。留学やインターンなどは私たちも取り組んではいる
が、その期間やタイミング、それに対する目標意識などが全く異なっていた。海外に飛び出す不安や、
社会の中で挑戦することに対する不安よりも、得られるものの方がはるかに多いことを理解しており、
「生温い環境の中でただ 4 年間を過ごすなんてもったいない」と言うかのようにいきいきと今後の目標
を語ってくれた。私は将来彼女たちと対等に競争できるのだろうか。私たちとは環境が違うから、英語
が公用語だから、といつまで言い訳を並べて続けていられるのだろうか。同年代の学生とこんなにも差
19
が開いていることに私は焦りを感じざるを得なかった。また、シンガポールでは憧れを感じる場面も大
いにあった。特に三井物産でディスカッションさせていただいた現地の社員の方々はとても素晴らしか
った。誇りを持って会社で働いていることや向上心が高いことが伝わってきて、またそれらに関する自
身の経験に基づいた有意義なアドバイスをいただくことも出来た。シンガポールでは見た目や出身地も
異なる人々がお互いに尊重し合い、協力し合って暮らしているという点にも非常に憧れた。思えば、今
では世界有数の富裕国となったシンガポールも、自国の力だけで成長してきたわけではない。海外から
の支援や優秀な人材を上手に取り込み、協力することでここまで発展してきたのである。シンガポール
は協力することにも、競争するにおいても長けていたのだ。競争と協力は反するものではなく、どちら
にもおける力を手に入れなければならない。協力するにも、意思の疎通がスムーズに行われなれば簡単
にはいかない。今回の研修旅行中に英語で会話する場面は何度もあり、不自由を感じることはあまりな
かったが、学問的な内容やフォーマルな場においてはどうしても発言回数が減り、言葉に詰まることが
多かった。これでは社会人として海外に出た際に自力で議論や交渉を行うことは困難である。また自分
は経験が足りないということも自覚することが出来た。普通に日本で学生として生活しているだけで
は、外国人や社会人と交流する機会はほとんどなく、いざという時に自信がなくて行動できない。これ
らの経験を踏まえて、私は今後残りの学生生活において英語の学習とあらゆる場において経験を積むこ
とによって自分に自信をつけていきたいと思った。
振り返ってみると、自分の価値観を見直し、焦りと憧れを感じ、今後の課題を確認したとても濃密な
10 日間であった。私は今回の研修旅行の経験と仲間が自分の将来に大きな影響を与える財産となったこ
とを今確信している。この経験を無駄にしないように、残りの学生生活と今後の人生を悔いのないよう
に過ごしたいと思う。
最後にご協力いただいた各企業の皆様、ご指導と引率をしてくださった佐野先生、楽しい旅の思い出
と学びをくれた 8 人の仲間たち、全ての方々に心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございま
した。
20
グローバル研修旅行を終えて
吉川
桃世
今回の十日間の研修旅行は、あまり海外の国を訪れた経験のない私にとってとても刺激的で、自分の将
来について深く考えるきっかけとなる、貴重な経験であった。タイとシンガポール両国とも日本と同じ
アジアにある国でありながら、あまり深く知ろうとしたことはなかったのだろう。突然さまざまな異文
化に触れた私は、まさに“カルチャーショック”を受けた。異文化というのは習慣、町並み、交通、話し
方、食べ物、服装、環境、匂い、などあらゆるものに表れていて、なかにはあまり理解のできないものも
あったが、すべてが興味深く、素晴らしいものであった。今はネットでなんでも調べてしまえる時代であ
るが、文化というものは五感で感じるものも多く、実際に自分の体で体感するというのはとても楽しい。
また同じアジアにあってもこんなにも違うのだから、もっと世界のいろいろな国に訪れてみたいとも感
じ、自分の世界や価値観が少し広がったように思う。
また、現地の大学で同世代の学生と交流して、英語力や積極性の差に愕然とし、自分の不甲斐なさに落
ち込んだこともいい経験となった。第二言語として英語を流暢に話し、自分の意見を持ってそれを躊躇
なく主張していけるレベルが当たり前として存在している。
「英語を話せることが advantage”ではない、
英語を話せないことが”disadvantage”だ。」という言葉を身をもって感じた。海外の高いレベルの環境で
学んでいる優秀な学生や、世界で活躍する日本企業・日本人の方々を直接この目で見て、交流してお話を
することで、
「海外で働いてみたい」という気持ちがより一層強まった。それと同時に、海外で働くとい
うことの厳しさも実感した。将来本当にグローバル企業で働き、世界で戦っていくのならば、今の自分に
は足りないものが多く、たくさん努力しなければならない。
さて、海外の良さをいくつか挙げたが、この研修旅行で強く感じたのはまた日本の素晴らしさでもあっ
た。日本にいるだけでは気付かなかった日本の誇ることのできる部分を海外に出て初めて見つけて、単
純に嬉しく誇らしい気持ちになった。
「今の自分に足りないこと」
「今の自分が持っているもの」その両方
に気付くことができた。
このような気付きを得られたのは、実際に海外に出てみたからこそである。この世の中には自分の“知
らない”ことが思っていたよりも随分と多いと知った。出会わなければ“知らない”ことにも気付けない。
それは恐ろしく、もったいないことだ。これからはより積極的に自分の知らない外の世界に出て、さまざ
まなことにチャレンジして、たくさん失敗して、成長していきたい。将来を決める大きな転換期に近づい
ている自分自身にとって、こんなにも多くの気付きを得られたことはとても意味のあることだと思う。
これを無駄にせず、グローバルな視点を持って学び続けようと思う。
そして最後になりますが、このような機会を与えて下さった企業の方々、先生方、この研修旅行に関わ
って下さった全ての皆様に感謝致します。本当にありがとうございました。
21
22
第2部
研修レポート
23
24
お世話になった皆様
・Chulalongkorn University
Chayodom Sabhasri, Ph.D.
Nipit Wongpunya, Ph.D
Associate Professor
・Toyota Tsusho (Thailand) Co. Ltd
Executive Management Coordinator
木村和也様
Human Resource Department"
・Daido PDM (Thailand) Co.
窪 康秀様
森川 秀人様
瀧澤 祥一様
Ltd Director
General Manager of Marketing & Technical Dept.
General Manager of Sales & Marketing Dept.
・Toyota Motor Thailand Co., Ltd
Senior Division Coordinator Human Resources Dept.
冨永 孝様
・Thai Shintokogio Co, Ltd.
Manager, Operation Center
General Manager of Heat Treatment
Manager, Technical Center
Manager, Technical Center
Manager, Administration Centre
望月 康明様
荒城 隆様
羽鳥 左一郎様
稲垣 将史様
Ms. Napaporn Supanukanon
・Singapore Management University
Ms. Sumathi Nair
Manager, Centre for Scholars’ Development
Senior Assistant Manager, Centre for
Ms. Phyllis Pang
Scholars' Development"
・Brother International Singapore PTE Limited
Mr. Katsuhiro Miyazawa
Regional Product Manager
・Nomura Singapore Limited
取締役社長兼 CEO
青木 健男様
Associate, Japan Desk, Wealth Management
熊谷 恵太様
・Mitsui & Co.(Asia Pacific)Pte. Ltd.
村上 雄二様
Asia Pacific Business Unit, Deputy COO
Deputy General Manager, Strategic Planning Dept.
松岡 大志様
Planning Division
Deputy General Manager, Human Resources Department,
Human Resources & Administration Division Dept. Planning Division
Mr. Rafael Tintin Santamaria
Manager / Senior Economist
Strategic Planning Dept., Planning Division
島戸 治江様
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・Sumitomo Mitsui Banking Corporation
Joint General Manager, Treasury Department, Asia Pacific Division
通山 忠洋様
Joint General Manager, Treasury Department, Asia Pacific Division
太田 吉昭様
・Singapore Port Authority
PSA Corporation Ltd
Senior Corporate Communication Executive
Mr. Marc Sim Kok Heng
・NUS Business School
Assistant Dean, Director BBA Programmes
Senior Lecturer
Helen Chai, Ph.D
Jumana Zehalka, Ph.D.
心より御礼申し上げます。
26
チュラロンコン大学
吉川
桃世
私たちは9月9日にタイのチュラロンコン大学を訪問した。チュラロンコン大学は、タイ王国で最古の
歴史をもつ権威ある王立大学で、名門校として知られている。私たちは、素晴らしい大学で学んでいるタ
イの学生と交流することで、学ぶことが多く、良い刺激を受けた。
【プレゼンテーション】
私たちは「タイと日本における女性の社会進出」についてプレゼンテーションを行った。タイは日本よ
りも女性の社会進出が進んでいる。なぜタイの方が女性の社会進出が進んでいるのか、日本に生かすこ
とのできる点はあるのかという点に着目した。
タイでは歴史的・文化的に女性が働くということが当たり前のことであると認識されている。そして夫
は当然のこと、祖父母、親戚、近所の人も育児に積極的に協力している。つまり女性が出産を経ても社会
復帰し易い環境を、社会全体が作り出している。一方日本は、産後休暇や育児休暇といった制度面の充実
を図ろうとはしているのだが、
“セクハラ”
“マタハラ”といった状況がある上“育児は女性がするもの”
という観念も根付いており、依然として女性にとって働きやすい環境とは言えない。
タイと日本を比較することにより、産後休暇や育児休暇などを整えてさえいれば女性の社会進出が促
進されるというわけではないということに気が付くことができた。いきなり意識や観念の問題を改善し
ていくのは簡単なことではないが、そういった面にアプローチしていくことから始めなければならない
と感じた。
【ASEAN交換講義】
チュラロンコン大学の教授より、ASEAN について英語で講義を受け、私達研修旅行者 9 名に
Certificate が授与された。今まさに変化し、発展を遂げている ASEAN と日本の関係の重要性を認識し、
将来を担う私たちがより ASEAN について学んでいかなければならないと感じた。
【終わりに】
タイの学生と交流して感じたことは、日本人と比較するとタイの学生の方が圧倒的に積極性と英語力の
点で優れているということだ。私たちのプレゼンテーションが終わった後「何か質問はありませんか」と
言うと、すぐに次々と質問の手が挙がった。日本の大学ではあまりこのような光景は見られない。また、
その質問内容も答えに窮するような難しいものや、多くの知識を必要とするものでありタイの学生のレ
ベルの高さを実感するとともに、とても刺激を受けた。そしてタイの母国語はタイ語であるが、学生たち
は流暢に英語を話す。将来私たちがグローバル人材として社会に出たらこのようなレベルの高い環境で
当たり前に学んでいる彼らと一緒に働くことになるということを実感し、私たちは社会に出るまでに多
くの努力をし、自分たちの能力を上げていかなければいけないと感じた。
27
豊田通商タイランド
TTTC
吉岡

千波
はじめに
研修旅行で最初に訪問した企業はタイの豊田通商タイランドであった。
昨年はホテルからオフィスまで通常 15 分の移動が渋滞により 1 時間 30 分かかったそうで心配していた
が、訪問直前に起こった爆破テロの影響もあったのか、道もそこまで混んでいなかったため、時間通り
に到着できて安心した。その道中にも多くの日本車を見かけ、バスの中から見える風景に驚いていた。

講義
初めにナショナルスタッフの方から
1.タイの基本情報
2.タイの自動車産業
3.豊田通商タイランドの概要
4.豊田通商グループ会社の説明
また最後に駐在員の木村様から
5.駐在員に求められること
という流れで講義を行っていただいた。
ナショナルスタッフの方は 3 名とも
女性で、明
るく微笑みの国であるタイの魅力を感じた。情報の中では基礎的な知識だけでなく、タイ式のじゃんけ
んなど現地の方ならではのお話を聞くことができた。そして、タイの自動車産業に関する講義も非常に
興味深かった。
タイの自動車産業は拡大しており、その規模は東南アジアにおいて最大であり世界でも 9 位にまで成長
してきた。特にトラック市場においてはアメリカに次いで世界 2 位に位置している。実際にタイの道路
では、日本ではあまり多く見かけることのないピックアップトラックの荷台に人が乗っているという海
外らしい様子が良く見られた。
それに加えて、タイは Ease of Doing Business Index 2015(AEC)というビジネスの行いやすさを比較
した世界ランキングでも 26 位、ASEAN 加盟国では 3 位と評価されていることや、日本及びメコン地域
諸国の首脳会議で決定した「日・メコン協力のための新東京戦略 2015」によって、日本はメコン地域に
おける地域の安定と「質の高い成長」の実現のため、今後 3 年間(2016 年~2018 年)にわたり支援を行
うことになっていることも紹介してくださったことで、このように国同士の支援が行われており、自動
車産業が成長し続けていて、事業の行いやすいタイにおいて、豊田通商の役割はいかに重要なものかを
再認識することができた。
その後、豊田通商タイランドの歴史やグループ会社との関係性を学び、総合商社の事業展開の幅広さ
を学んだ。約 30 社の関連会社を紹介して頂いたが、トヨタグループの力強さを感じるとともに、豊田
通商タイランドはどの企業ともスムーズで円滑なビジネスを行っており、1957 年以来しっかりと腰を
据えて周囲の企業と連携のとれた事業を行ってきたという自信に満ちた印象を受けた。
28

タイで活躍する日本企業として
今回タイにおける企業訪問は豊田通商タイランドが最初だったということもあり、タイで事業を行う
日本企業としての心がけや注意点なども多く教わった。木村様から、まず駐在員に求められることとし
て次の 6 つを教わった。
「何のために働くのか、という自覚」「絶対にやってやるぞ、という気概」「グ
ローバルコミュニケーション力」「周囲を巻き込む動員力、人間性」「NS に活躍の場を提供するマネジ
メント力」「その国で働かせて頂いているという感謝」である。特に最後の項目に関しては、駐在員は
通常ナショナルスタッフより上の立場に就くため、疎かにしてしまいがちであるが、決して忘れてはい
けないと力強くお話しされていた。
また、日本との違いとして、男女比率や労働
法、産休、ジョブ・ホッピング、文化等につい
て具体的に説明してくださった。特に印象に
残っているのは、産休についてである。私たち
に講義をしてくださったナショナルスタッフ
3 名は全員女性であり、そのうち 2 名がちょう
ど出産間近で大きなお腹でお仕事されていた。
また、多くの場合は出産後 3 カ月で復帰する
というタイの女性の力強さと周囲のサポート
の充実を感じた。また、タイの国王に関するエ
ピソードも興味深かった。タイ国民は国王を敬う気持ちが非常に強く、不敬罪という法律も存在する。し
かし、日本から来た駐在員はそこまでの気持ちを持つことが出来ず、ナショナルスタッフとの間に衝突
を起こしてしまう問題あるそうだ。木村様はそのような文化の違いによるアクシデントの際にも、その
国で働かせて頂いているのだから、相手の文化を理解する気持ちが重要であると教えてくれた。
この講義を通して、日本企業が海外に進出する際に、その国の制度や文化を尊重する誠実な姿勢がい
かに大切かを学ぶことができた。この姿勢を保ち続けてきた豊田通商タイランドだからこそ、多くのナ
ショナルスタッフと良好な関係を築き、企業として成長できているのだと感じた。
29

感想・まとめ
豊田通商で行っていただいた講義では、タイにおける豊田通商の役割の重要さを知った上で、どのよう
にしてその役割を果たしてきたのか、また海外で活躍するためには何が必要かを学ぶことが出来た。海
外に大きな市場を持つ自動車産業に魅力を感じるとともに、日本の企業が海外でも関連会社としっかり
連携していることに驚いた。また海外で働く際の詳しい制度やエピソードを教えていただき、具体的な
イメージを持てた。今回豊田通商に訪問させていただいたことで、より一層自分の海外勤務への憧れが
強まり、目標となった。最後にこのような貴重な機会を与えてくださった豊田通商の方々に心より感謝
を申し上げたい。本当にありがとうございました。
30
大同特殊鋼 DAIDO PDM (THAILAND) CO. LTD.
鎌田
彩乃
名古屋に本社を置く大同特殊鋼は、1916 年創業の特殊鋼鋼材・機能材
料・磁性材料・自動車部品等の製造販売を行う日本最大級の特殊鋼メーカ
ーである。特殊鋼鋼材、機能材料・磁性材料、自動車部品・産業機械部品、
エンジニアリング、流通・サービスの 5 つの部門に分かれており、加工
した鋼材を自動車会社などに納品している。私たちはこの研修で、その海
外グループ会社である DAIDO PDM (THAILAND) CO. LTD.を訪れた。
今年で 20 周年を迎えたタイの大同特殊鋼での視察の様子を以下に記す。
*タイ国の概要・事業説明*
始めに、自己紹介の後、Director の窪康秀様からタイ国の概要についてご説明を頂いた。具体的には
タイ国の基本情報や歴史、政治体制、物価情報、さらにタイ国での生活はどのようなものであるか、実体
験も交えてお話頂いた。食費や交通手段の利用料等の身近な話題が多く分かりやすかった。また、タイの
物価が日本に比べていかに安いかを知り驚いた。さらに、タイにおける自動車関連情報も知ることが出
来た。タイでは現在政府による自動車産業推進計画が行われており、四輪車生産規模の拡大を目指す
Detroit of Asia 計画と、荷台付きの車である 1 トンピックアップトラックとエコカーの 2 本柱を目指す
エコカー計画が進行中である。タイ国内の景気は悪化したものの、近年タイ国を含む東南アジア諸国に
おける自動車市場は成長中であり、これから先も少なくとも輸出拠点としての伸びが予想されている。
その後、会社概要についての説明を聞いた。基本情報に加えて地域別の売上高や、製造工程の大まかな
説明を受けた。工場では 200 人以上の従業員が働いており、材料・切断ヤード、フライス加工ヤード、
熱処理ヤード、表面処理ヤードの 4 つのヤードに分かれて事業を行っている。これらの工程をセットで
行っているところが大同の強みであるとのことだ。
*工場見学*
工場見学では、複数の日本駐在員の方々が案内してくださった。製造過程はもちろん、朝の体操やホ
ウ・レン・ソウ、5S 等、多くの日本式を取り入れていた。
① 材料・切断ヤード
工場に入るとまず材料となる大量の工具鋼が目に入った。約 1,900
トンの鋼材が、工場の敷地面積(60m×120m)のおよそ 3 分の 1 を
占めている。これらは日本の本社で製造された高性能品を直接輸送し
たもので、熱間工具鋼、冷間工具鋼、プラスチック金型用鋼等、種類
豊富な工具鋼が在庫されていた。在庫体制はタイ国内で最大級であり、工具鋼の種類のみならず、サ
イズや形も多様に揃えられていた。タイでは需要が日本より少ないため、受注生産の形態を取ってい
るという。
31
切断ヤードには、全部で 19 台の切断機が整然と並んでいた。株式会社アマダホールディングスの
切断機を使用している。切断した部分に水に油を混ぜた白灰色に濁った液体を噴射することには、鉄
が錆びてしまうのを防止し、さらに削る際に発生する熱を冷却する機能もあるという。切断する刃に
は丸型・刃ノコ型の 2 種類があり、切る鋼材の条件に合わせて切る速度や方法を変えながら、じっく
り時間をかけて切断作業を進めるとのこと。刃は劣化するまでの大体 1 か月間同じものを繰り返し使
う。
②
フライス加工ヤード
フライス加工とは、丸ノコの様に多数の切れ刃を持つフライスで面加
工を行う切削加工である。切削時に発生する切り粉については、日本の
方式を導入し、容積を 10 分の 1 程に圧縮して切りくずとして再利用して
いる。
③
熱処理ヤード
熱処理の工程においても、各々の鉄の持っている特性を最大限に活かすことが大切だ。2台の機械
を用いて、およそ 1,030 度で用途ごとに硬さを調節している。
④ 表面処理ヤード
磨きの工程も含んだ表面処理ヤードでは、490 度の中、加工した
金属の表面を特殊なアンモニアをメインにした薄い膜でコーティ
ングすることで強化する。完成した金属は、金属に粘りが出れば柔
らかくしなる性質を持ち、硬いものほど折れやすくなる。
…上記 4 工程終了後、完成した鋼材の強度を最終確認する。先端に
ダイヤモンドが装着された機械を用いて、150 ㎏の圧をかけたとき
に開く穴の大きさで硬さをチェックする。
*現地職員の方々との交流*
工場見学の後、日本人駐在員や現地職員の方との交流を行った。学
生からの質問が中心だったが、従業員の方々から私たちに向けての質問
も多く、私たちに関心を持っていただいているように感じて嬉しかった。
タイ国の失業率(約 0.7%)は日本(約 3.3%)と比較すると非常に低
いという事実とその原因には非常に驚かされた。これは、人口に対する
職が多いからとのことだが、逆にジョブホッピングが比較的容易に行え
ることになるため、現地従業員をいかにして社内に留めるかが課題であるという。大同特殊鋼の場合は、
昨年度は新たに 56 名採用したが、38 名が退職した。そこで、従業員の定着を目指して、ソンクランとい
うタイの伝統的な水かけ祭りや、BBQ パーティー、運動会、忘年会等様々なイベントを企画し、お祭り
好きのタイ人が喜ぶ行事を積極的に行うことで雰囲気を盛り上げ、社印をつなぎとめるよう努力してい
る。ちなみに BBQ 用の鉄板は、自社製品とのことだ。
*感想・まとめ*
終始温かく私たちを迎え入れて下さり、和やかでアットホームな雰囲気がとても心地良かった。工場見
32
学の中で最も印象深かったのは、従業員の方々が手を一度止めて、両手を合わせて笑顔でタイ式の挨拶
をして下さったことで、私には大変嬉しかった。特殊鋼メーカーと聞くと、普段触れる機会が少なく取っ
つきにくい印象であったがこの視察でそれは激変した。大同特殊鋼は、社員同士国籍関係なくとても仲
が良かったように感じる。お互いがお互いを理解・尊重し合っているように感じた。職場が居心地の良い
ものになると、転職の恐れも減ると同時に、仕事が楽しくなりやる気が向上し、ひいては企業の成長に繋
がる良い循環になると考える。将来は大同特殊鋼のような雰囲気の良い会社に就職したいと思った。
最後に、大同特殊鋼の社員の方々のおかげで大変有意義な時間を過ごすことが出来た。日本で暮らして
いたのでは出会えなかった機会を頂けて、とても貴重な経験となった。本当にありがとうございました。
*参考資料*
・大同特殊鋼ホームページ
http://www.daido.co.jp/index.html
33
トヨタ自動車 Toyota Motor Thailand Co., Ltd
水野
練
【タイの中でのトヨタ自動車】
はじめにタイの自動車産業についてのプレゼンテーションを受けました。その中でわかったことは、タ
イは世界有数の自動車大国であるということです。タイでは今、国を挙げて自動車産業の発展に力を注
いでいます。時にデトロイト・オブ・アジア計画とも呼ばれる政府の動きは、自動車産業に国際的な強い
競争力を持たせることを目的としたもので、トヨタ自動車を始めとした自動車メーカー全体を後押しし
ているそうです。国内の自動車の需要についてですが、タイでは単純計算で国民の約五人に一台車が保
有されていることになり、その保有数は世界で見ても上位に位置します。
そのような市場の中、日本の自動車メーカーが占
めるタイ国内シェアは非常に大きく、特にトヨタ自
動車についてはトップシェアを誇っています。商用
車では 34%、乗用車は 41%、全体で言えば 37%ほど
だそうです。また顧客満足度においてもナンバーワ
ンに君臨しており、トヨタ自動車は日本同様タイ国
内においても確固たるブランドロイアリティを築き
上げていると言えるでしょう。
【工場見学】
今回はタイ国内にあるサムロン工場、ゲートウェイ工場、バンポー工場という3工場のうち、バンポー
工場を訪問しました。バンコクの市街地から離れた平原に広がる工場の敷地は非常に広大で清潔感があ
り、植樹された木々や社員の憩いの場となる芝生など、緑が非常に多いことが印象的です。
工場内はプレス、溶接、塗装、組立といった製造工程を行う建屋ごとに分かれており、今回私たちは組
立工程の現場を見学させていただきました。
組立ラインの見学で感じた第一印象は、事前に見学した日本の元町工場によく似ているというもので
す。アンドンというトヨタ自動車特有の装置や、巨大なラインと無数の部品置き場、製作途中の巨大な自
動車のボディーをロボットが自動で牽引し、工場内を無数の運搬車が移動している光景は圧巻でした。
巨大な工場内にひとつの整然とした物流が生まれています。この見学後駐在員の冨永様に質問しました
が、やはり工場内設備については日本もタイも基本として似ているそうです。
なぜタイと日本の工場設備が似ているかということですが、世界中に渡る「標準化」によるもの、そし
てその生産の根幹となっている生産方式が同様であるからというのが一つの大きな理由でしょう。次項
では世界中のトヨタ自動車の工場を支えるトヨタ生産方式、TPS について紹介します。
【トヨタ生産方式
TPS】
トヨタ自動車は基本的な考え方として、人間性尊重を根幹とし、生産の基盤として絶え間のない改善と
標準化を掲げています。そのうち「改善」を支える二つの行動指針が存在しています。それが「ジャスト
34
インタイム」と「ニンベンのついた自働化」です。ジャストインタイムは、
「必要なものを、必要なとき
に、必要なだけ」という生産の考え方で、製造における徹底的な無駄の排除に大きく貢献している考え方
です。自働化は異常が起きた際に機械が自動で判断を下して生産をストップし、その欠陥の原因を追求、
そして問題を解決してから再開するという、生産の改善へとつながる方式です。この大きな二本柱よっ
てトヨタ自動車は高品質、低コスト、短いリードタイムを実現しています。根底となる人間性尊重や改善
等のポリシー、
「トヨタウェイ」は、日本やタイに限らず、世界中のトヨタ自動車において揺らぐことな
く徹底して教育されており、それに付随する JIT と自動化も実現されておいるため、アンドン等の工場
内設備や、カンバン、水すましなど、工場内の動きが似てくると考えられます。
【タイと日本の比較】
タイと日本のトヨタ自動車を比較したときの違いはなんでしょうか。それは会社を取りまく人々や制
度の違いでしょう。
トヨタ自動車はタイ国内でトップシェアを誇っていますが、その売れ筋商品は日本とは異なるという
ことです。人気車種は「ハイラックス」です。車体後部に大きな荷台を持つ形状の車で、
「ピックアップ
トラック」という分類に入ります。研修中、移動中のバスからこの車種が多く目に入りました。日本では
ハイブリット車であるプリウスをよく見かけますが、それと同等、もしくは凌ぐ普及率のように感じら
れました。トヨタタイランドの主力商品であるハイラックスの人気は、タイ国内に農業就業者が多いこ
とと密接に関係しているそうです。このようにトヨタ自動車は、タイの需要を考え、手生産車種を選定し
ています。
従業員の違いについても聞きました。タイの他企業にも全般的に言えることですが「ジョブホッピン
グ」が多いようです。これは自分の能力がある程度成長したら、三年程度で転職するという労働者のキャ
リア選択です。油の匂いを嗅ぎ分けたり、音で不良を見つけられる、そんな能力を身につけた作業員を育
てても、短期で会社を辞めてしまうと非常な痛手となります。そこでトヨタ自動車ではタイ人持ち前の
「集団意識」を高めて、会社への帰属意識を育て、転職を軽減させているそうです。見学した時に見つけ
たのですが、工場内には、
「Banpho Happy Work Place and IKI IKI!」といった標語が掲げられていまし
た。
「Happy→good product」といったことも。これは日本での「良い品、良い考」に対応するタイ流の
標語なのでしょう。このようにして工場やオフィス内の職場の雰囲気も地域性に合わせて変化していま
す。
そして、海外駐在員にとって大きな壁となるのが、言語と、物事の捉え方の相違でしょう。冨永様から
お聞きしたエピソードですが、何か失敗をしたり、注意された時に発するタイ語「マイペンライ」は、直
訳すると「気にするな」という意味だそうで、言葉の微妙なニュアンスや考え方の違いが摩擦を生じかね
ないこともあるそうです。
しかしこうした壁を乗り越えつつ、トヨタ自動車は現地社員に「トヨタウェイ」を、妥協せず理解させ
る姿勢を貫いています。私たちは現地社員の方々に「トヨタに就職したことを誇りに思いますか?」とい
う質問をしましたその答えは全員が Yes でした。皆さん「トヨタウェイこそが正しいと信じている」と
語っていました。ジョブホッピングの激しいタイでも優秀な社員を保持し続け、顧客からの高い信頼も
勝ち取れるのは、
「トヨタウェイ」が国を越えて発揮する正当性と魅力によるもだと感じさせられました。
35
【学んだこと】
トヨタ自動車から学んだこと、それはグローバル化において「外は柔軟に、そして芯は硬く」といった
姿勢が大切だということです。消費者や制度、人材の違いに応じて柔軟に対応とサービス、職場の体制な
どを変化させる一方で、現地社員に向けては、根幹となる哲学やポリシーは妥協することなくじっくり
と浸透させていく、その鋼鉄の中軸を持つことが、グローバル経営に必要となってくる企業のあり方だ
と感じました。そしてそのポリシーのもと、世界中で活躍する海外駐在員と現地社員が一体となって会
社を動かしている、その巨大構造に感動しました。
最後に、訪問させていただいたタイのトヨタ自動車の方々に、深くお礼申し上げます。貴重な機会をい
ただき、本当にありがとうございました。
36
新東工業株式会社 Thai Sintokogio Co., Ltd.
北村
夏子
◆ タイ新東工業とは
タイ新東工業は 1996 年、遺跡の街アユタヤに設立された。当初は、自動車部品製造に関わるお客様へ
のメンテナンス、設備据付、部品及び機械販売の提供を行っていたが、2007 年より表面処理装置の現地
調達のニーズを受け製造を開始した。表面処理とは、サビを磨いた
り、表面の突起を取り除いたりする作業のことである。基本的には、
注文を受けた機械の製造を行っているが、すぐに出荷できるように
消耗品も生産し、工場内にストックしてある。
◆ 工場見学
工場内には、従業員の安全に対する意識の向上を図るための危険
体感道場が設けられていた。工場内で起こりうる危険を体感することができる場所である。ここでわた
したちは実際に、ものすごい速さで落下してくる金属に指を挟まれたり、電気ドリルに軍手を巻き込ま
れたりした。と言っても、本物の機材は使われていないので、安全に、危険を体験できた。しかし、その
迫力は衝撃的なもので、製造の現場で起こっていたらと想像するとぞっとした。
◆ タイ流に
タイ人の考える現地企業もしくは欧米企業と日系企業について、現地の従業員の方にお話を聞いたと
ころ、それぞれの企業に対してまったく異なるイメージを持っていることがわかった。現地・欧米企業に
対して、賃金は高いが、福利厚生はあまりよくないと感じている。一方、日系企業に対して、賃金は高く
ないが、福利厚生は手厚いと感じている。そのため、給料がすべてで、とにかく遊びたいと考える若い内
は、現地・欧米企業への就職を考える。年を重ね、守るべきものができたとき、自身と家族の健康を考え
日系企業への転職を考えるそうだ。
このジョブ・ホッピングは、生活スタイルが変化するタイミングだけではなく、日系企業に転職した後
にも頻繁に起こる。少しでもよいと思える条件の企業があれば、ためらいなく、そちらへ転職の準備を始
めるのがタイ人の考え方の特徴のひとつであるといえる。
このようなタイ人の考え方を踏まえて、タイ新東工業ではスポーツデーと海外旅行を開催している。
タイ人は、お祭りが大好きであると聞いた。そんな彼らが楽しめるイベントとしてスポーツデーがある。
右の写真は今年の 2 月に開催されたときの様子で、従業員や家族が一緒に参加し、大変盛り上がったそ
うだ。また、その下の写真は慰安旅行で香港のディズニーランドに行ったときの様子である。タイ人はゴ
ルフも大好きで、休日のほとんどを国内のゴルフ場で過ごすそうだ。あまり海外へ行かない彼らは、非日
常の空間で大いに楽しむことができたようだ。これらスポーツデーや海外慰安旅行などのイベントは、
タイならではの新東工業の取り組みであると感じた。
タイ新東工業で働く日本人には、日本からの出向者と、現地採用の従業員がいたため、この現地採用に
ついてメリットは何かと疑問をぶつけた。日本からの赴任者よりコストを抑えることができる、また、タ
37
イに長く住みたいと考える日本人にぴったりとのこ
とであった。つまり、現地採用は両者にとって大変よ
いことであるとわかった。タイに住む日本人のほう
が赴任者よりも現地についてよく知っていること
も、現地採用のメリットであると考えた。また、管理
職を日本人からタイ人に変えていく動きが積極的に
進められており、実際に今年の 6 月、M&I 部のポス
トにタイ人が就任している。タイ新東工業は、このよ
うなナショナルスタッフ化を目指していることがわ
かった。
38
シンガポール・マネジメント大学
SMU
伊藤
理恵
シンガポール・マネジメント大学は、変化の多い時代に対応できるリーダーや企業家を育成すること
を目的とし、シンガポール政府が出資して 2000 年に設立された。現在は経営学やビジネスを中心とし
た6つの学部から構成され、学生数は約 8000 人である。また、少人数教育が特徴である。
今回私たちはシンガポール・マネジメント大学にてお互いプレゼンテーションを実施し、その後に討
議や交流の機会を得た。まずは、現地学生のプレゼンテーションでシンガポールの経済や政治、地理に
ついて紹介してくれた。シンガポールは今年建国 50 周年であり、来年には日本との国交樹立 50 周年を
迎える。現地学生は非常に堂々とわかりやすいプレゼンテーションをしてくれて、私も英語力やプレゼ
ンテーションの仕方を見習わなければと強く感じた。
続いて私たちのプレゼンテーションでは外国人労働者受け入れについて発表した。現在、シンガポー
ルも日本も少子高齢化の影響で労働者数が減少している。そこで対応策として外国人労働者の受け入れ
という考えがある。しかし、シンガポールは多民族国家である一方、日本は単一民族国家でありこの対
応策に対する考え方が異なる。そこで両国の外国人労働者受け入れに対する考え方を比較しながら説明
した。お互いのプレゼンテーションの後は一緒に昼食をとり大学生活や日本のアニメのことを話して楽
しい時間を過ごすことができた。
今回、現地学生と交流することで彼らの能力の高さを実感することができ、私たちがグローバル人材
として成長するためにより努力をしなければならないと決意するきっかけとなった。せっかく現地学生
と交流する機会があったが、私は自分の伝えたいことをうまく英語で表現できず悔しさを感じた。ま
た、彼らと会う機会があったらその時は自信を持って英語でコミュニケーションをとりたいと強く思っ
た。
39
ブラザー工業
伊藤
1.
理恵
はじめに
まず、ブラザー工業の概要について説明を受けた。ミシンの製造から始まり現在ではプリンター
事業、カラオケなどの通信システム事業が加わり事業が拡大している。また、世界各地のニーズに
合った製品の提供や環境への取り組みについても説明を受けた。特に、お客様の意見に耳を傾け新
たな価値を生み出していく、あらゆる場面でお客様を第一に考える”At your side”の精神が印象に残
っている。今回の訪問では1名の日本人駐在員の方と2名の現地スタッフの方が担当して下さり、
それぞれのキャリアについてもお話をうかがう事ができた。
2.
Global Network
現在、ブラザー工業は 44 か国・地域に工場
や営業所があり、シンガポールでは営業のみを
行っている。また、海外売上比率が約 80%と
なっており、日本の企業であるが従業員の約
70%が外国人であるということには驚いた。こ
のように、各地のニーズに合った事業活動を展
開するために人材や生産などの経営基盤がグロ
ーバル体制で行われている。
3.
オフィス見学
ブラザー工業はプリンターやミシン、カラオケシステムなど各種事業をされているが今回私たち
はプリンター事業を中心にお話を聞いた。先進国ではプリンターの機能性が重視されるが、新興国
では安さが重視される。そこで、新興国では非純正消耗品が多く販売されており、純正の消耗品が
どのくらい使われているかを示す純正率が 30%の国もあるそうだ。従って、新興国ではプリンター
市場全体は伸びていないが、低価格消耗品の割合は高まっているという現状である。また、新興国
といっても国や地域ごとにニーズが異なる。たとえば ASEAN 地域だったらほとんどの国ではイン
クジェットプリンターが主流であるが、ベトナムに関してはレーザープリンターが主流である。そ
こで、お客様とリセラー両方に市場調査をすることで数字からでは読み取れない市場のニーズを把
握し対応していく。ブラザー工業では独自のマネジメントシステム「ブラザー・バリューチェー
ン・マネジメント(BVCM)」が実践されている。これは“At your side”の精神でお客様に優れた
製品・サービスを提供するためのものであり、お角様に価値を伝達するまでの過程を「デマンドチ
ェーン」「コンカレントチェーン」「サプライチェーン」という3つのチェーンでつないだものであ
る。「デマンドチェーン」では市場調査などによりお客様のニーズを分析し、「コンカレントチェー
ン」ではお角様のニーズを具体化するために商品開発が行われる。そして「サプライチェーン」で
は開発された商品を販売していく。
4.
40
販売店視察
オフィスが入るビルの一階にはブラザー製品の修
理などを受け付ける窓口やミシンの使い方・活用方
法を、実際に製品を使って教える施設が設けられて
おりアフターサービスが充実していると感じた。そ
の後は、現地の販売店を訪問した。日本の家電量販
店のように多種類の家電を扱い、一つの家電につき
複数のメーカーの製品が陳列されている売り場もあ
れば、別の場所ではブラザー独自の店舗があり、実
際にブラザーの製品を試すことができた。日本では先に述べたような一つの店舗に複数のメーカー
の製品を並べる販売方法が一般的であり、各企業が独立した店舗を設置することは珍しく、今回の
販売店視察で国ごとに販売形態が異なることがよくわかった。
5.
おわりに
プリンターといっても国によってタイプが異なることには驚いた。たとえば、日本ではカートリ
ッジタイプのインクが使用されているが、シンガポールでは液体のインクを補充するタイプのもの
が使われている。このように国や地域ごとに異なるニーズに応えるためにブラザー・バリューチェ
ーン・マネジメント(BVCM)を実践し製品やその販売形態を考えていくことはまさに”At your
side”の精神だと感じた。また、スタッフの方から「Challenging spirit が大切」という言葉を聞
き、ブラザーの社員の方々がいきいきと仕事をされているのは目標に向かってチャレンジしようと
いう意識を大切にしているからだと感じた。私も今回の研修旅行での経験を活かし、失敗を恐れず
いろんなことにチャレンジし、自分をより成長させていこうと思った。
41
野村証券
西村
朋美
野村証券(ノムラ・シンガポール・リミテッド)では、シンガポールの現状とノムラ・シンガポール・リ
ミテッドについて説明を受けた。
【シンガポールについて】
シンガポールでは私たちが到着する直前に総選挙が行われた。シンガポールは、1968 年にマレーシア
から独立してから継続して人民行動党(PAP)による与党一党独立体制に施政が行われている。PAP は
著しい経済成長を実現させてきたが、国民の貧富の差が大きく、少子高齢化社会などの問題が見られ、前
回の選挙で PAP は過去最低の支持率(60.1%)を記録した。そのため、今回の総選挙はどのような結果
になるか注目されていた。PAP は、これまでのように経済成長を謳うだけでなく、低所得者や高齢者向
けの社会福祉政策の拡充に注力していることをアピールし、支持率 69.9%まで回復させた。では、シン
ガポールの経済はどのようなもので、強みは何なのだろうか。
シンガポールの GDP は 3,081 億米ドルであり、日本円で 35 兆円である(日本は 500 兆円)。また、
1人当たり GDP を見ると、シンガポールは 56,284 米ドルと日本(36,332 米ドル)を上回っている。経
済規模は日本より小さいが、1人当たりをみると日本より大きい。その著しい経済発展を遂げた要因と
して、海外企業が参入しやすいことがあげられる。それはシンガポールの強みである、教育水準が高いこ
と、英語が公用語であること、法人税等の税制上のメリット、自然被害が少なく資金調達がしやすいこと
などが要因である。
また、シンガポールは観光政策にも力を入れている。観光客数は 2000 万人とシンガポール人口の 4 倍
である(日本への観光客数は 1300 万人)。セントーサリゾートやマリーナベイサンズリゾートなどの総
合リゾートを整備して観光客を増やしてきた。また政府主導で国際会議の開催やカジノの開設により訪
問客を増やしてきた。
このように、シンガポールは海外から様々な企業、人を取り入れることによって独自の経済発展を遂
げてきた。シンガポールについて聞いて思ったことは、シンガポールにはシンガポールの、日本には日本
のよさがあるのだということだ。お互いの良さを認め、真似できるところは真似し、差別化するところは
差別化し、お互いが高め合える。
【ノムラ・シンガポール・リミテッドについて】
ノムラ・シンガポール・リミテッドは野村証券グループの海外関係会社である。野村グループの現在の
取り組みである「アジアに立脚したグローバル金融サービス・グループとして確固たる地位を築き上げ
る」の要として、アジアの金融ハブであるシンガポールは重要な存在だ。
野村グループは、世界で活躍する企業であるために、環境に応じて人事や戦略の形を変えている。例え
ば、人事において日本企業だからといって日本人をトップにつけるのではなく、誰でも資格のある人を
積極的に管理職に登用する。また、状況にあった戦略を練られるよう 2001 年から経営会議の諮問機関と
して『アドバイザリー・ボード』を設置した。2015 年には、第 8 期メンバーとしてアジアの有識者 4 名
42
を迎え入れ、野村証券の海外戦略に関して、アジアの視点からアドバイスを受けている。
中でも、メンバーの一人である、ゴー・チョクトン氏が日本企業である野村証券のアドバイザーを引き
受けた理由が印象的であった。ゴー氏は、1990 年から 2004 年までシンガポールの首相を務めた後、同
年より 2011 年まで同国上級相を務めた。彼は、アドバイザーになる企業の条件として、①企業の国がシ
ンガポールにとって大切か、②企業に尊敬すべきところがあるかという 2 つの点を挙げている。今や GDP
では中国に抜かれ成長力が衰えた日本が、今でもシンガポールにとって大切な国とされていることに安
堵した。また、同氏が経済的な面だけではなく、日本の企業の伝統的経営や日本文化に対する愛着などか
らアドバイザーを引き受けた要因になっていることを誇らしくまた嬉しく感じた。
このように野村証券は、アドバイザリー・ボードを設置したり、拠点によって注力する業務を変えるこ
と、また環境に応じて人事戦略や経営戦略を変えることで、世界のトップ企業の一つとして戦っている
と実感した。
【最後に】
私はこの訪問を終えて早く社会人になりグローバル人材として活躍したいと感じた。青木社長のお話
を伺って、これまでのご経験から醸し出される人間的な魅力に憧れを抱いたからだ。しかし早く働きた
いと感じた一方で、研修旅行で自分の勉強の足りなさを痛感し、もっと机の上の勉強だけではなく自ら
行動して様々な勉強をしなければならないと感じ、学生のうちにたくさんのことを学ばなければいけな
いとも感じた。
青木社長は言われた。
「大学生のうちにすべきことは、たくさんのことを経験することだ。アジアに出
て、日本以外の世界を知ること、世界にはこんなに素晴らしい人たちがいると知ること、もっと努力しな
ければならないと思い知らされることが良い経験になる。英語を話せることは advantage にはならない
が、話せないことは disadvantage になる。」
今回のお話を受けて、学生のうちに、英語を勉強するだけでなく、さまざまなことに挑戦し一生懸命取
り組み、今後世界で活躍していこうとく思いを強くした。
43
三井物産
吉川桃世
私たちは9月 15 日にシンガポールでアジア・太平洋州三井物産を訪問した。
【はじめに】
最初に三井物産の会社概要について説明を受けた後、ASEAN
最新動向について講義を受け、知識を深めることができた。また
ナショナルスタッフの方々との昼食や、現地駐在員の方々との質
疑応答の場を設けて頂き、楽しい中にも学ぶことの多い有意義な
時間となった。
【ASEAN と日本】
ASEAN(東南アジア諸国連合)の最新動向について講義を受け、正に今変化を遂げている ASEAN と
日本企業の関係について学ぶことができた。日本企業にとって ASEAN の魅力とは何か。ASEAN 諸国
において拡大し続けている消費市場と人件費の低さである。しかしインフラの未整備、政情不安、人件費
の上昇、また一部の国では労働者不足などビジネス環境上の課題が多く残されている。また現在 ASEAN
は AEC(ASEAN 経済共同体)による「単一市場化」を目指しており、2015 年末までの統合を目標と掲
げていたが、内部の国々の経済格差もあり、非関税障壁、サービス、人の移動など、合意困難な部分も多
く、統合へはまだ時間がかかると思われる。日本もアジアの国の一つとして、AEC 統合に向けて協力的
なアプローチを行い、ASEAN との関係強化に努めていく必要がある。
【ランチミーティング】
講義の後は、昼直を一緒に取りながら、ナショナルスタッフの方々と交流した。少人数のグループに分
かれ、国籍も部署も各々違う方々より仕事から人生観まで様々なお話を伺い、貴重な機会となった。
特に印象に残ったお話は、違う国の出身者が口を揃えて“会社ではなく仕事で選ぶべき”と強く言って
いたことだ。私たちがお話しした三人全員が、入社する前は三井物産という会社の名前は知らなかった
そうだ。しかし「会社名は知らなかったが、仕事内容や働く環境に魅力を感じたからここで働いている。
どの企業で働くのか、どこで働くのかではなくて、どんな仕事をしたいかをしっかり考えて。」という強
いメッセージを頂いた。将来を考える大事な時期にい
る今、グローバルに活躍している方々から直接“働く
ということ”についてお話を伺うことができ、とても
貴重な経験をしたので、自分自身の就職活動に生かし
ていきたい。
【質疑応答】
また、駐在員の方々との質疑応答では、海外進出に
44
関するお話を伺った。海外進出と言うと目的は利益を求めると捉え勝ちだが、その国の社会の発展に貢
献するという重要な役割も担っている。発展途上国では人口上昇に伴いインフラ整備が不可欠となり、
そこでは大きなインフラプロジェクトを行い、発展の手助けを行う。社会における商社の重要な役割や
グローバル企業で働くということの魅力を知ることができた。
【終わりに】
三井物産の企業訪問では、ASEAN 諸国、シンガポールのビジネス環境について知識を深めるととも
に、三井物産の商社としての役割、日本企業の世界での役割を改めて認識することができた。地域との連
携、言語、ビジネスインフラなどの面で、もっと”globalize”していかなくてはいけない部分もまだ多くあ
るということを感じたが、一方発展途上国で日本企業が貢献しているということや、会社名を知らない
海外の方々から優れた仕事をしていると評価されている日本企業を知り、とても誇らしく感じ、日本の
良さもまた発信し続けるべきであるし、発信できる人材になっていきたいと思える貴重な経験となった。
45
三井住友銀行
大野
友香
今回、三井住友銀行ではアジア、取り分け ASEAN の現状についての講義を受け、それを踏まえた上
で三井住友銀行シンガポール支店が取り組んでいる事業について学んだ。講義後は、事前に送っていた
質問や、講義を聞いて疑問に思ったことに対して回答を頂き、知識をさらに深めることができた。ま
た、ディーラー室の見学では、普段間近で見ることのできないディーラーの仕事を見学することがで
き、大変貴重な機会となった。
○シンガポールで事業を行うメリット
アジア・ASEAN の現状についての講義を受けて、三井住友銀行がシンガポールで事業を行うメリッ
トは 4 つあることが分かった。それは以下の 4 つである。
(ⅰ) 世界第 3 位の国際金融センター
(ⅱ) 規制が緩い
(ⅲ)
ASEAN の成長
(ⅳ) 日系企業のお客様が多い
まず(ⅰ)については、シンガポールはロンドン、ニューヨークに次いで世界第 3 位の規模の国際金融
センターである。そのため多様な銀行や証券会社などの金融機関がシンガポールには集中している。
(ⅱ)については、シンガポール国内では、資本・資金の移動が比較的自由に行うことができる。これは
貸出規制の上限金額が ASEAN の中でも高めであることが関係する。資金余剰があるところから資金不
足のところへの移動を行いやすいのだ。(ⅲ)については、ASEAN の成長速度は世界で見ても早い。
ASEAN 諸国の 2004 年と 2014 年の名目 GDP を比較すると、インドネシアで 0.28 兆ドルから 0.89 兆
ドル、タイで 0.16 兆ドルから 0.37 兆ドル、シンガポールで 0.11 兆ドルから 0.31 兆ドルと、それぞれ
の国で名目 GDP が倍以上に成長していることが分かる。最後に(ⅳ)については、日系企業の海外進出先
の割合に注目する。2013 年時点で、約 70%がアジアに進出している。ASEAN は全体の約 13%を占め
ている。ASEAN の中での内訳に注目すると、ASEAN のうち約 19%がタイ、約 18%がインドネシ
ア、約 9%がシンガポールである。シンガポールの国土が東京 23 区程であることを考慮すると、大変
多くの日系企業がシンガポールに集中していることが分かる。
○取り組んでいる事業
先程挙げた4つのメリットがあるシンガポールにおいて、三井住友銀行は「アジア・セントリック」
という事業に取り組んでいる。「アジア・セントリック」の事業内容は、資金・人材をアジアに集中さ
せるというものである。アジアビジネス強化を最重要戦略と位置付け、アジア屈指の金融グループを目
指すのだ。この事業を進めるうえで三井住友銀行は、アジアビジネスで成功を収めている 3 つの銀行、
HSBC Bank、Standard Chartered、Citibank をお手本としている。そしてこの3つの銀行と三井住友
銀行を比較した時の課題として、アジア進出の歴史が浅いこと、地元との繋がり・ネットワークが弱い
こと、多国籍企業との関係ということを挙げている。これらの課題を改善しながら、事業を進めていく
46
という。
○まとめ
通山様のお話の中で、
「海外進出を考えたときに、デメリットの方が多い」というお言葉があった。
日本と海外では、言語、通貨、ビジネスルールなどあらゆるものが異なってくる。そのようなデメリッ
トが多い環境の中で、それを凌駕するメリットがあるか考えることが重要であると言われた。昨今の日
本では、大企業だけではなく、中小企業も海外展開をし始めていて、海外で働くことは珍しくない。海
外で事業を行うときは、
「何故この事業を海外で行うのか、日本ではいけないのか、メリット・デメリ
ットは」といったグローバルで働くということの本質を考えることが重要であると思った。
「グローバ
ルで働く傾向にあるから海外で働く」と安易に考えてしまっては、デメリットが多い海外事業は失敗に
終わってしまうだろう。今回の訪問ではデメリットの多い環境に対応しつつ最善の事業を選択すること
ができるグローバル人材が必要であると感じた。
47
PSA シンガポール
坂野
1.
由実
はじめに
私たちは、9 月 17 日に PSA 社を訪問した。まず初めに、PSA 社の紹介のビデオを見て、その後ビ
ル最上階の 30 階からシンガポール港全体の説明を受けた。その後バスで制限区域のコンテナターミナ
ルの見学を行った。
2.
PSA 社・シンガポール港について
シンガポール港は世界各国の約 600 港と結ばれ、世界最大級の貨物積み替えの中心地であり、2014
年には 3355 万 TEU の貨物取引量を記録している。2013 年の世界の港湾取扱貨物量ランキング、2014
年の世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキングで中国の上海港につぐ 2 位である。₍₁₎ 上海港は多く
が自国向けであるのに対し、シンガポール港では多くが世界各国への Transshipment(積み替え)で
ある。
シンガポール港のターミナルは Tanjong Pagar(タンジョンパガー)、Keppel(ケッペル)、Brani(ブ
ラニ)、Pasir Panjang(パシルパンジャン)にあり、ひとつの総合設備として機能している。Pasir
Panjang とほかの三つのターミナルとは場所が離れているが、長い一つの道路でつながっている。最
近、Pasir Panjang に新しいターミナルが完成し、新たなターミナルを建設中である。
シンガポール港は立地に恵まれており、太平洋とインド洋を結ぶ貿易航路の要、アジアとヨーロッパ
を結ぶ航路が必ず通るマラッカ海峡の入り口に位置している。この位置がどれほど重要かを考えてみ
よう。日本が中東から石油を輸入する際、石油はマラッカ海峡を通って運ばれる。もしタンカーがマラ
ッカ海峡を通れなくなってしまったら、石油を海外からの輸入、特に中東からの輸入に頼る日本にとっ
て、死活問題となる。このことだけでも、シンガポール港の重要性が想像できる。さらに、シンガポー
ル港では地震や台風など自然災害の影響を受けることがほとんどない。このことは、シンガポール港の
発展の理由として考えられるであろう。
PSA 社は港のインフラ、設備、技術に継続的に投資をしている。この投資により、信頼ある質の高
いサービスの提供が可能となった。大規模で複雑な積み替えの配列作業を効率的に 24 時間 365 日休ま
ずに行っている。船の大型化やビジネスの複雑化が増す中、より優れた効率性や生産性が求められてい
る。PAS 社は長年 Flow-Through Gate system に投資している。このシステムでは、ゲート通過の際
48
のセキュリティチェックなどの作業を 25 秒で終えトラックを入構させることができる。また、トラッ
クのドライバーはコンピュータによって行先の指示を受けるため混雑がない。また、一部のクレーンで
はコンピュータ室での遠隔操作が行われている。このように、PSA 社ではシステムやクレーンなどの
電子化、自動化が進んでおり、将来はパシルパンジャンターミナルで、トラックとクレーンの完全自動
化を目指している。
3.
まとめ・感想
シンガポール港を見て、私はその広大さに驚いた。ビル
から見渡したシンガポール港には見渡す限りコンテナが
並べられていた。
私が興味を持っていたことは自然災害への対策であっ
た。日本では港湾施設やその他のさまざまなところで自然
災害対策がされている。上述したように、シンガポールは
地震や台風などの自然災害の影響がほとんどない。では、自然災害への対策は何かやっていないのであ
ろうか。私はこのことが気になり質問した。自然災害はないから対策はいらなく、していないという回
答だった。この回答には驚いた。私は自然災害がないといっても、津波対策など何かしらの対策はして
いるだろうと思っていたからである。自然災害が少ないことは、取引に影響を与えず、自然災害対策へ
投資せずに自動化などへの投資に集中できる。日本では津波対策や台風への対策など自然災害へ対応
していかなければならないことを考えると、自然災害の少ないことはシンガポール港発展の一つの理
由ではないかと思う。
港湾事業では、クレーンの自動化などはすぐにほかの港も取り入れてくるので、競争はますます厳し
くなってくるであろう。そのようななか、PSA 社はより良いサービスに向けての投資や挑戦を続けて
いる。PSA 社はまだまだ革新を続けている、とても力強い企業であると思った。これからもその動向
を見ていきたいと思う。
最後に、今回視察させてくださった PSA 社の皆様に深くお礼申し上げます。ありがとうございまし
た。
<参考文献>
(1) 国土交通省 統計情報
http://www.mlit.go.jp/statistics/details/port_list.html
49
シンガポール国立大学 NUS
大野
友香
○シンガポール国立大学とは
シンガポール国立大学は 1905 年に創立されたシンガポールで最も歴史のある総合大学である。16 学
部 55 の学士課程を開講している。ホームページには「A leading global university centred in Asia」と
いう記載があり、グローバル化に力を入れている大学であることが分かる。そのため、全学部生の約
15%が外国人学部生であり、世界 40 ヵ国のトップ大学と 300 の交換留学制度を設けている。
また、QS World University Rankings 2015/2016 では、世界で 12 位、アジアの中では 1 位になって
いる。日本の大学は、日本のトップで京都大学の 38 位、続いて東京大学の 39 位であり、私たちの名古
屋大学は 120 位であった。日本の大学と比較して明らかのように、シンガポール国立大学大変優秀であ
ることが分かる。
○フリーディスカッション・キャンパスツアー
私たちは現地の学生とフリーディスカッションを行い、その後キャンパスツアーとしてシンガポール
国立大学の中を見学した。
フリーディスカッションのトピックは、それぞれの大学生活について、就職について、文化について
など様々であった。現地学生の中には日本語を学んでいる学生もいて、その学生たちは特に日本のサブ
カルチャーに興味津々であった。中には日本人の私たちよりもサブカルチャーに詳しい学生もいて驚い
た。日本は様々な角度から注目されていると改めて感じた。
キャンパスツアーでは普段使用している講義室や図書館、ホール、食堂などを見学した。講義室は半
円形になっていて、教授と学生の距離が近いと感じた。この距離の近さが授業中の教授と学生のコミュ
ニケーションを生んでいるという。食堂は、フードコート形式になっており、中華料理、タイ料理、和
食など、アジア各国の料理が提供されていた。この食堂からもシンガポール国立大学には各国から留学
生が学びに来ていることを感じた。
○まとめ
シンガポール国立大学は今回の研修旅行で訪れた最後の訪問先であった。そのためそれまでに訪れて
いた企業や大学で感じたグローバルで働く上での英語の重要性、現地学生の英語能力の高さを改めて感
じる場となった。私たち日本人に圧倒的に足りないものは英語力である。これから私たちが働いてくう
えで競争相手・ビジネスパートナーとなって行くのは、今回であった学生たちのような高い英語能力を
持った人たちである。今回、生活や文化について自分たちが分かる範囲の英語で話していた内容が、将
来は事業内容や契約についてビジネス英語で会話していかなければならないのだ。今の私たちではシン
ガポールの学生たちと同じラインに立つことができていない。私たちは、優秀な海外の学生と肩を並べ
られるようなグローバル人材になっていくべきであると感じた。今回の研修旅行は仕事を始める前にそ
のことに気が付くことができた良い機会であった。将来会議室で出会うまでに、英語力を伸ばしていき
たい。
50
51
52
第
現
の
第3部
現地大学での発表資料
3部
地大学で
発表資料
53
Contents of Presentation
<Chulalongkorn University>
Women’s Empowerment in
Japan and Thailand
Yuka Ohno
Tomomi Nishimura
Yumi Banno
Ren Mizuno
Momoyo Yoshikawa
<Singapore Management University>
Some Aspects of Foreign Workers in
Singapore and Japan
Rie Ito
Ayano Kamada
Natsuko Kitamura
Chinami Yoshioka
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Chulalongkorn University
Women’s empowerment in Japan and Thailand
(The Script of the presentation)
We will show about “women’s empowerment in Japan and Thailand” by following steps. First, we
will talk about why we chose this theme. Second, we will show you some data of Japan and Thailand.
By comparing two countries we wish to clarify the causes of problem. Last, we will introduce our
suggestions and opinions. We would like you to understand how the gender problems of Japan are
different from those of Thailand, and we would like you to be interested in those matters.
So next, we will talk about why we chose this theme.
<Introduction>
It’s kind of sudden, but please look at this bar chart.
This is a quiz. Do you know what this graph indicates? Please guess. There are some blue bars and
red bars. In a point, blue is 634 and red is 279. The gap of two color bars is twice at most. What’s this?
The hint is, “this indicates the levels of something in Japan”.
The answer is the salaries of men and women in Japan. This is average rate and horizontal axis shows
the age. Blue bars are data of men and red bars are women’s. Let’s see the whole graph again.
Please look at the center of the horizontal axis. As you can see in this graph, the gap between men
and women is biggest in middle ages. So, how these data are different from the data of Thailand?
Next, we will explain about the difference between two countries.
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Please look at this.
This is a calculation of “the proportion of average annual salary for men and women”.
The upper is a figure of Thailand, and the lower is that of Japan. The difference between two is clear.
In Thailand, the female salary is 95% of male salary and they are nearly equal. But in Japan, the gap
is about 50%, the salary of female is half of that of male.
As a matter of fact, Japan seems to be behind in development of gender equality in the world. In the
ranking of the gender equality in employment, Thailand stands at 26th in the world but Japan is
102th.
As I mentioned earlier, Japan is delayed in the women’s empowerment. However Japanese people do
not ignore this problem. We are often pointed out this bad tendency by other countries that Japanese
women’s empowerment is very much behind. So we understand that problem has to be solved and our
government has tried to realize the gender equality as an important subject. But in spite of many
efforts and many measures of the government, we would not catch up with the equal level with other
countries. In the first place, why does Japan fall behind on women’s empowerment after Thailand?
Why cannot our government solve the problems by making rules? We cannot answer that only by
looking at our country. Thailand, the nation which is famous as a gender equal nation is a very
important object to compare with Japan. So then, we think we can approach to the solutions for the
Japanese gender problems by searching some differences between two countries, analyzing some
causes of the issues and discuss how we should solve them, and asking some opinions from the
students of Thailand. That is why we chose this topic as our presentation theme.
<Main topics>
Firstly, we grasp the present condition as to how the situations of Japan and Thailand are different.
Secondly, we will introduce some problems which are suggested in the case of the differences. Finally,
we will propose measures and solutions which Japan should take.
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Please look at this graph.
This is “proportion of female directors” all over the world. The ratio of female directors in Thailand is
9.7%. On the other hand, the ratio in Japan is only 1.1%. There is a big difference between the ratio
of Thailand and Japan. This fact that women are not promoted to directors in Japan has an effect on
wage difference by gender as we talked about in the introduction. It is the case that Japanese old
traditions and trends are entangled in this fact. If you hear our further presentation, you will
understand this reason. Also, there is small number of women not only for company directors but also
Member of Parliament in Japan.
The country such as Thailand implements the very efficient system for women to get on a board of
directors relatively easily. The system is “a quota system.” As you already know, “a quota system”
has a rule which directors and councils are ensured of the constant ratio of women. In Thailand, each
political party introduces “a quota system” independently. Therefore, there are opportunities which
women participate in the world of politics. This leads to a strong reflection of women’s opinion, and it
contributes to the gender equality in the whole society. We feel that this system is very rational one
from a viewpoint of us without any quota system. Now, some people say that Japan should introduce
“a quota system”, but other people say that this system leads to “reverse discrimination” for men.
Therefore, Japan doesn’t adopt “a quota system” in fact. In countries which advocate gender equality,
many people have a notion of female preponderance such as “ladies first.” Considering this fact, we
in Japan need to give women some odds for gender equality, and we certainly need “positive action”
which we correct a differential between men and women by “reverse discrimination” for men. We
think that a lack of notion of female preponderance in the whole society is a factor of difficulty of
advancing into society for Japanese women.
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When we came to know about the quarter system, we think that there is a difference between
Japanese and Thai laws and we try to find it out. But, the reality is not that Japanese laws and its
system lag behind Thai laws. Rather, we think that women are supposed to receive favorable
treatments by the Japanese law and its system.
There are some common laws both in Japan and Thailand such as “equal pay for equal work for men
and women”, prohibition of dismissal by pregnancy,
maternity leave system, prohibition that
pregnant women work in dangerous work places and so on. But, “childcare leave”, which is introduced
in Japan but not in Thailand, is a usable system. A childcare leave is leave system, designed for
parents to concentrate on raising their child while their child is small. During maternity leave parents
cannot get salaries, instead they can take benefits. And both mother and father can take childcare
leave and they can take the leave whether biological child or adopted child. There is maternity leave
system that parents can take half-paid holidays during maternity leave period in Thailand. On the
other hand, there are a maternity leave system, and paternity leave system, and a childcare leave
system in Japan, so we can assume that Japanese system is more favorable to parents than the Thai
system.
In addition, the Director-General of the Women’s Management Bureau has been given a position as
the director of the internal bureau, within the Ministry of Health, Labour and Welfare in Japan. The
bureau administers matters relating to the establishment, revision, abrogation and interpretation of
the special provisions in the laws relating to women.
In comparison between Japanese and Thai legal system, we realize that the Japanese legal system
does not have politically incorrect views. Japanese legal system may be more advanced than Thai one.
As mentioned in the beginning of my presentation, the Japanese government has tried to establish
policies on gender equality. As a result, difference of work environment among men and women has
been improved and the voices of women in society haves been heard more. In other words, the
difference between men and women had been worse than the difference today.
What effects did such laws regarding maternity leave and protection of women make in terms of
advancement of women to the society?
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The only line which has deep concave in this figure is line of Japan. This graph shows women’s
employment ratio by age. As indicated by this graph, the ratio deeply falls around the age of thirty.
This graph is called “M-shaped curve”, which is very famous to such an extent that almost all
Japanese junior high school students and over know this graph. The graph explains women’s social
advancement issues in Japan.
Many of Japanese women leave their jobs once when they are about thirty years old, that is, when
they have a baby. Other data support the fact. The acquisition of above-mentioned childcare leave is
1.89% of fathers and 83.6% of mothers. Parents can take a childcare leave regardless of gender, but
men do not take as much leave as women in fact. Actually, many of women leave the jobs without
taking childcare leave.
There is the other issue on this graph. The lump to the right in this graph shows employment rates
of Japanese women around the age of forty-five. Many of women around forty-five years old work as
part-time employees or take irregular employments. The Japanese government calls out for equal pay
for men and women, however, because women take up a low-wage jobs in comparison with men, the
difference of wages between men and women become as large as about 50%. This is the reason for the
graph form that we showed you before.
Why the law system does not function in Japan? Do you have any ideas? In fact, the things that
prevent Japanese women’s advancement into society are difficult to see than the law system. They
are culture, history, religion and the so-called custom which came out as a result
Next, we want to focus on the difference between Thailand and Japan. It is difficult to understand
from the data and realize the essence of the difference in women’s advance into society between
Thailand and Japan.
<Why different>
Now, we change our talk, take a little break time. First, what images of Japanese men do you,
especially women, have? We collect the images of Japanese men for foreigners. On the one hand, some
foreigners have strong images such as ninja, samurai and sumo, on the other hand, some foreign
women have the following images.
“Japanese men confine within themselves (often called “otaku” or “anorak”) and they are only
interested in their works.”
“Japanese men do not usually respect women.”
There are such negative images. Next, what images of Japanese women do you have? We collect the
images of Japanese women.
“Japanese women are kind.”
“They are domestic.”
“They do a lot for their husbands and their family.”
There are such images. In fact, we, that is Japanese people, have such images.
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Do you know the Japanese word, “yamatonadeshiko”? Put simply, the word means the Japanese ideal
woman figure that Japanese people have thought through the ages. The word do not have a clear
definition, but we think that yamatonadeshiko is similar images of Japanese women that foreigner
have. Many old Japanese literatures say that an ideal man is strong and brave like a samurai and an
ideal woman is self-effacing and devoted.
This Japanese culture produced interesting things. Look at these characters.
Each of these Japanese words mean a husband and a wife, syujin means a husband and kanai means
a wife in English. Each kanji has its own meanings. Syujin means a master person and kanai means
inside house. As seen in this example, a Japanese married relationship has been the relation of male
superiority throughout the ages, and it has been sharing of roles that a husband works outside house
and a wife does domestic works and she cares for family members inside house.
We will now return to the topic about the issues of women’s advance into society. We think
that the sharing of roles has a lot of influence on those issues.
Please look at these graphs.
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Graph 3 shows time which father spends for child care by working hours. Graph 4 shows the rate
which married couples spend for work and child care. Both graphs compare Japan, Korea, Thailand,
America, France and Sweden. First of all, Japanese fathers spend less time for child care than Thai.
And Thai spend more time for child care than others.
Let`s look at graph 3 in detail. Second from the left shows the rate, ‘husbands spend more time for
work and wives spend almost same hours for work and child care’ and third from the left shows the
rate, ‘husbands spend more time for work and wives spend more time for work’. From that, Japanese
and Korean husbands concentrate on work, and wives spend more energy for child care. On the other
hand, the number of married couple who think that the value of work and childcare is same for
Thailand, America, France and Sweden, which show bigger proportion than
for Japan and Korea.
According to these graphs, we can find that Japanese people think that wife should take care of their
children. And Thai people think the responsibility for child care rests both on husband and wife.
researched the article about the lives and cultures of the both countries.
We
And we found that the
present situation in Japan is behind in the social advancement of women. We consider this is caused
by Japanese characteristic attitude toward wife, how mother should be. Japanese consider a wife as
a person who takes care of her child inside house.
From the example we told before, *syujin* which
means the main person, and *kanai* which means within house, we can infer that mother has
responsibility for child care more than father in Japan.
According to blogs written by Japanese mothers who live in Thailand, Thai mothers need less energy
for childcare than in Japan, as Thai mothers are helped by neighbors, their relatives or nannies who
can take care of children while they are at work. But mothers in Japan are thought that they should
bring up their children mainly by themselves. Even if they ask someone to take care of their children,
such persons and facilities must be trustable such as relatives, qualified baby sitters, and decent
nursery houses and so on.
Japan has some social problems, the number of nuclear family increase. Nuclear family means
separate family members that grandparents do not live together with their children and
grandchildren, and Japan does not have sufficient nursery homes to satisfy demands of Japanese
parents. If the family lives separately, it is difficult to ask grandparents to help their housework. And
if there are not people to take care of their children nearby, many mothers use facilities such as
unauthorized nursery homes, or they sometimes ask for persons without qualifications. As there are
not enough facilities in Japan, many mothers muse take care of their children by themselves, although
they want to work. These problems prevent Japanese mothers from working outside.
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Please look at next graph.
This graph shows what mothers are doing after giving birth to first child. The first, second and third
block from the bottom are the rate of the wives who had worked before giving birth, and the rate is
about 60%. And about 60% of the wives who had worked before giving birth leave their jobs. From
those data, we found that taking care of children prevents mothers from working outside in Japan.
The first block from the bottom is the rate of wives who take maternity leave. And it is increasing.
But there is still a social problem that women who take maternity leave tend to receive pregnancy
discrimination, which is called “maternity harassment” in Japanese workplace.
In comparison, what about the Thai couple?
In contrast to Japan, the gap of roles for childcare in
the home between husband and wife is smaller in Thailand. It will also inevitably reduce gender
discrimination in the company from its effects. Depending on each household woman after the
maternity leave shares the childcare with her husband and sometimes uses facilities and babysitting.
Also there are many women in the upper layers of the companies, so it is easier for the mothers to
resume their careers than women in Japan.
We consider that this good spiral is a factor that is
progressing social advancement of Thai women
Cause that hinders the social advancement of Japanese women, of course, is not only the heavy
responsibility as a mother, but it exists in the company. In the old days of Japanese companies there
were people called "Ocha Kumi".
make and serve them tea.
"Kanai" to the company.
Women used to go to the desk of other employees, usually men, to
This was a result of the old concept of gender roles called "Syujin" and
Men were main players and women were domestic assistants to men in the
companies. Now it is not the case anymore, but there was still a tendency that executives are roles of
men and women are expected to be their assistants. It would have left relics even now.
Although
there is no clear data, there is a phenomenon that man is likely to be adopted than women because
men are more likely to continue their jobs in the future. Women are regarded disadvantages for the
long-term jobs
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However Japan role sharing system does not only have downsides. Let's look again at the figures
of wages.
In Japan, there is a big gap between men and women, but it is high wage level of the average
annual income to support a four-person family.
In terms of the average income of Thailand, dual
income is necessary to support the family, but in Japan you can manage without working women in
families.
Stability in wage affects woman to become full-time housewives. It makes the big
difference in terms of women's social advancement.in Japan and in Thailand due to the gap of gender
relationship that assumes the role sharing in Japan, and the concept of work collaboration in
Thailand. So, what should we do to help the social advancement of Japanese women?
<The solutions of some problems>
The reasons for the difference in the gender gap in Japan have been raised so far are as follows.
① the presence or absence of the concept of "female priority", such as the quota system
② the balance of sharing of husband and wife for childcare (mothers are troubled with "waiting
children", "insufficient system of childcare leave")
Both issues are related to Japanese conventional thoughts However, it should be possible to help the
social advancement of women by the additional system and its alternation and abolition.
In order to redress the gender gap in Japan, the adoption of large-scale quota system seems to be
effective as a first step.
Since there is a movement to introduce the quantitative target, the
probability of the realization is high. Quota system introduced by the government will spread to
private sectors as a whole. This system is not only for politicians, considering it can also apply to
recruitment activities of the companies.
The inclusion of certain percentage, or more executive posts
to be assigned to women will help their social advancement.
Second, another system to increase female executive is the "female leader training".
of training performing skills as a leader only for
This is a system
woman. Although it will increase promotion
potential of women, it may have an aspect of "reverse discrimination" against men. This is also
based on the idea of "female priority". Some companies have already incorporated such systems and
it is very reasonable.
Third is a return-to-work support for mothers.
upgrading their skills during childcare leave.
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For example, company provides training to help
Also, there is a system that mothers can work at
home so women can continue to contribute to companies during childcare. It is constructive to both
for companies and women. Moreover these systems decrease "Maternity harassment", as it will reduce
the shock after mothers return to work from childcare leave.
In addition childcare leave can be
substituted by "flexible time" instead of full day "holiday". Both fathers and mothers can have time
for childcare and they can continue to work.
What about ‘waiting children’ problem. “Waiting children” problem mean that there are not
enough nursery facilities for parents to entrust their children while they work. Japanese government
is working out some measures on these issues.
Effective measure is that the central and local
government help increasing the number and capacities of nursery homes, extending the available
time for the nursery. This measures need big budget and qualified manpower, so it is difficult to realize
them immediately. However, I assumed that establishing consulting services for parents who have
troubles with “waiting children” can help those parents to select nursery homes more smoothly.
We have to change the consciousness of fathers to improve the present state that fathers do not join
childcare.
There is a Japanese word" Ikumen". It means fathers who make positive roles in childcare. This is
a positive buzzword containing a meaning "Father taking care of his children positively is so cool’.
This word has a fairly big impact on young fathers of Japan. There are no statistics, but I feel more
opportunity to see Ikumen in the city. To spread the image by the central and local governments, and
also by mass media, they will inform "father image that society demands", and soon there will be no
doubt a big achievement.
At the same time, it is very important to spread the awareness of the currently existing system for
women. With not only approach by the government, municipalities and mass media, but also both
men and women themselves should try to understand the ‘gender gap’ issues.
I am sure that gender
gap is going to be corrected if these points are aligned.
<Conclusion>
So today, we have to think what we should do to promote the empowerment of women in Japan by
comparing Japan and Thailand.
I do not mean to trouble you, finally I want to ask you a very primary question. Why is the division
of roles by gender a bad problem? Why do many people try to promote
This is the last quiz. 58.5%
women’s empowerment now?
What is this percentage? (Pause) The answer is the percentage of people
who want to be full-time housewives in total women between 20 and 30 years of age. About half of
Japanese women do not feel any wrongness about division of gender and they accept to be “inside a
house”. On the contrary, they have very positive thinking about division of roles by gender. To tell the
truth, some women who want to be full-time housewives say “I do not want to work outside all my
life”. Half of women do not wish to have the empowerment of women, therefore, this is a core of gender
problem in Japan. Why should we promote the women’s empowerment, while many women do not
want to? How do you think?
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One of the answers is for money. A full-time housewife does not have to pay income tax and they can
get tax deduction from their spouses from the national tax office. So the increase of women who work
outside houses will gives some positive influences to economy.
The other answer is that many women do not want to work, but there are some women who want to
work. Also, some men want to be devoted to housework. This is a very important motive of actions for
gender equality. Until now, we focused on the empowerment of women. But in Japan, there is an
atmosphere which says not only “women should do housework” but also “it is natural that men work
to support their family”. Maybe, the fathers who are devoted to housework are condemned more
strongly than the mothers who are devoted to working outside houses. The gender discrimination in
Japan is “the discrimination to the people who are unsuitable for typical image of gender”.
The real gender equality is a hope for the society both gender can live freely as they wish. Our country
has not realized this status yet. Japanese people not know the liberty for the gender equality. So we
must not stop making efforts to realize it.
That’s all. Thank you for listening.
※References
ハフィントンポスト日本版
http://www.huffingtonpost.jp/2014/05/06/woman-in-japan_n_5274351.html
首相官邸
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/women2013.html
世界ランキング統計局
http://10rank.blog.fc2.com/blog-entry-252.html
日本生命保険相互会社 HP
https://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/44.html
国際にみる世界の家族と子育て
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- 舩橋惠子
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Singapore Management University
“Some Aspects of Foreign Workers in Singapore and Japan”
1. Introduction
This paper is about the acceptance of foreign workers in Singapore and Japan. The theme is
“Some Aspects of Foreign Workers in Singapore and Japan,” especially about the present
conditions and a prospect for the future regarding foreign workers in the both countries. We
compared two countries focusing on their histories and social problems which have been solved as
well as caused by accepting foreign workers.
2. Outline
First, we will explain the present conditions of Singapore and Japan. Second is about the
acceptance of foreign workers in Singapore and Japan, while referring to the history, purpose,
system and its effects. Third is the common point and difference of the both countries. And last is
our opinion about the future of them.
3. Present condition of Singapore
We are going to start with talking about Singapore first. Please look at this graph.
This bar graph shows the change of population of the foreign workers in Singapore. The line graph
shows the change of the ratio of foreign workers out of all employees. From this graph, we can say
that the number of the foreign workers in Singapore has been increasing. This is mainly caused
by shortage of workers due to the low birthrate and aging of population. But, recently, the
regulations of accepting foreign workers have started. From this line graph, we can find growth
of the ratio of foreign workers was declining in 2008, and it has been steadily increasing again. I
will explain details of this change later.
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4. Present condition of Japan
Next, let’s take a look at a change of the population and the rate of foreign workers out of all
employees in Japan.
From this graph, we can say that the number of the foreign workers in Japan has also been
increasing. In Japan, the main reasons of this increase are the low birthrate and aging of
population, and rapid internationalization of the economy. In 2012, the number of foreigners
working in Japan was 680,000. This was only 1% of all employees. In terms of industry, the ratio
of the foreign workers in Japan looks like this. The highest ratio is manufacturing, which is 39%.
And then, service industry, hotel industry and the industry concerned with the service of foods,
retail businesses, education and information and communication.
5. Comparing of the graph of both countries
Now, let’s compare the graph of Singapore and Japan focusing on the growth ratio of the foreign
workers. In 2012, the rate of foreign worker was 38% in Singapore but in Japan it was only 1%.
Although the number of foreign workers has been increasing in both countries, what caused the
difference of the ratio of foreign workers? To find out the reason, let’s move on to the next topic,
the progress of acceptance of foreign workers.
6. The foreign workers in Singapore
First, we will tell you about the history of Singapore. Singapore is a new country, which became
independent from Malaysia in 1965. To make the best use of human resources is one of the most
important strategies of the country, so they brought in a merit system, or a meritocracy. This is
applicable to workers not only within Singapore but also for visiting workers. Singapore required
foreign workers to bring about excellent human resources with great skills. It seemed that the
foreign workers helped Singapore enter a period of high economic growth. So the government
made ‘Work Permit’ for blue-collar workers and ‘Employment Pass for white-collar workers’, and
‘S Pass’ for the middle of these. As a result, the number of foreign workers increased from 67,000
to 120,000 in 10 years from 2001 to 2011. This is one third of the whole workforce in Singapore.
However, recently, they started to institute the restrictions on employment of the foreigners. Why
did this happen? The first reason is that the worldwide financial crisis made Singapore difficult
to keep high growth rate. And second reason is that the nation is in fear of that foreign workers
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might take jobs away from the domestic workers. For these reasons, the government has taken
four ways to restrict the number of foreign workers in Singapore. First is to raise monthly salaries,
and set higher qualification of them required for each pass. Second is to set restrictions on the
number of foreign workers. Third is to institute “Foreign Worker Levy”, which is tax on the
employers who employ foreign workers. Forth is to limit the number of new foreign workers.
Last is about the future vision about foreign workers in Singapore. Opinions of companies and
the nations about restriction of the foreign workers seemed to differ. For companies, increasing
the number of foreign workers makes it easy to gain superior and low-wage workforce, so they
disagree with many restrictions. On the other hand, for the nations, this also means increasing
the number of rivals from foreign countries, so they agree with restrictions.
7. The foreign workers in Japan
First, we will discuss the history of Japan. Before World warⅡ,there were abundant labor force
in Japan. But after the war, the birthrate had declined and aging had proceeded. So, the number
of workers has declined. Even though Japan had great technologies, it also started to take in
higher skills from other countries. To solve the problem of labor force, Japan needed to accept
foreign workers to increase workers. So there were two main reasons why Japanese companies
need foreign workers. One reason is that due to the low birth rate and aging society, companies
could not obtain sufficient number of workers which they need. The other is that young people
require higher academic qualifications, so they want to be engaged in more “white color jobs”, not
unskilled labors. In short, for Japanese companies to keep their competitiveness with lower labor
costs, they have to pay attention to foreign workers. Then, what kind of qualification is needed for
foreigners to work in Japan? It is necessary to judge whether foreigners are permitted to work in
Japan based on the provisions of the Immigration Law for their status of residence. If foreigners
are given “permanent resident”, or spouses of Japanese, there are no restrictions for them to work.
However other statuses such as “Engineer, Specialist in Humanities” need certain eligibilities.
For example, they can work as system engineers, interpreters and cooks, namely persons with
special skills. These are confined to only those types of jobs, and the simple labor is not accepted.
However, recently by system called “the skill training system for foreigners,” the number of foreign
workers who do unskilled works has increased. Nevertheless, there are fewer foreign workers in
Japan than in Singapore. Why is it?
In Japan, there is a big gap between the government’s and companies’ present conditions.
Companies already have unique technologies and sufficient technical staff. So, now they need
more manual labors. But, the government has not provided for favorable environments for
accepting foreign workers. As a result, there are not enough manual workers in Japan. Why is
Japanese government so careful about accepting foreign workers? There are mainly three reasons.
First, the Japanese government is concerned with Japanese workers losing their jobs. An
unemployment rate of Japan was 3.3% in 2014, which was twice as high as that of Singapore.
Second is because foreign workers might cause problem about the quality of services. The
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difference of sense of value between foreign countries and Japan may confuse some Japanese who
receive services. These may happen especially in medical care business and in elderly care
business. And finally, the government is so afraid of Japan making the same mistake as Europe.
They are aware of the current problems of accepting guest, immigrant, and sometimes illegal
workers in Europe. In Europe after accepting foreign workers, aforementioned problems
happened, and crimes increased. And now, each European government tries to control the number
of foreign workers. Japan should learn much from their experiences. From these reasons Japanese
government is rather negative or at least reluctant for accepting foreign workers. That is to say,
Japan’s policy to accept foreign workers is simply made as temporary counter-measures against
shortage of workforce and ageing problem and it can cause a big problem in future. Accepting
foreign workers is the policy with many disadvantages at the time of economic maturity in Japan
and there is much difficulty for a country of the single nation country. Whereas it has many
advantages at the time of developing in Singapore, because it can make use of being a multiracial
nation.
8. Why differences occur between Singapore and Japan?
Now we already know both countries’ situation and we are going to compare them. This table
shows the differences.
At the stage of a country development, Singapore started accepting foreign workers. The purposes
were to adopt higher skills from foreign countries and to solve the problems of low birthrate and
aging society. However, the problems such as unemployed people occurred and the Government
has limited the number of the foreign workers. But the number continued to increase. On the other
hand, in Japan, when economy got matured, in order to solve the problems of low birthrate, aging
society, and labor shortage, the government considered accepting more foreign workers. But they
found many disadvantages of the policy and so they are still negative or reluctant to accepting it.
Also the cultural conception against foreigners is different because Singapore is multiracial nation
and Japan is so-called “single nation”. That is to say, foreign workers can smoothly get into
Singapore, but in Japan it is not that easy. These are how Singapore and Japan are different.
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9. Prospect of Singapore
Finally, we would like to say our opinion about the future policies of the two countries. As longterm merits, Singapore can change the stance for accepting the foreign workers by controlling the
acceptance of the foreign workers while breaking off the complaints of the Singaporeans by the
tightening of the acceptance of foreign workers and by raising tax for them. And it is important to
pay attention to
the education of own nationals. We found useful policy which already conducted
in Singapore. It is called
"Skills Future Credit system,” which is provided to all nationals over
25 years old. Assuming future
additional supply, it starts with 500 Singapore dollars at first,
and people can take various training
programs whenever they like. Thus Singapore can
gradually decrease the dependence on high skilled
foreign workers. This practical system
should spread all over in Singapore. Also we hope that the similar
policy and program should
be introduced in Japan.
10. Prospect of Japan
And next is about Japan. Japan’s fundamental problems are the low birthrate and the
advancement of aging. Accepting foreign workers is not a radical solution of these problems and
we should consider other solution strategy. However, we are not saying that Japan should not be
open to foreigners. The globalization of the economy is advancing rapidly, so we should push
forward the global education such as improving citizen’s English skills. Also the present Japanese
environment for tourist is not good. We cannot avoid the opportunities to communicate and do
business with foreigners. Therefore, it is necessary to introduce the global education and to
prepare comfortable living environment for foreigners. To change the Japanese society more
opened to foreigners, Singapore can be a good example as a country succeeded as a multiracial
nation.
Finally, we came up with the solution for the problem of the low birthrate and the aging society,
which is the basic problem. In our opinion, we need sufficient subsidies or supportive system when
we get more than two children. The main factor of the problem is that most family has single or
just two children. If we retain this tendency, the number of children will decrease. However, this
system will motivate people to have many children.
11. Conclusion
In conclusion, when we began searching for this theme, we had a question why there are a lot of
foreign workers in Singapore while there are fewer foreign workers in Japan, even though
globalization has advanced in the both countries. But through this research, we have discovered
many new findings about Japan. Singapore and Japan are both isolated countries as island and
geographically they are similar. So we think there are many things we can learn from each other.
We want to deepen interchange more from now on.
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おわりに
名古屋大学経済学部経済学科 北村夏子
グローバル人材とはどのようなものか、また、何をすればよいのか。マニュファクチャリング、ファイ
ナンス、ロジスティクスという 3 分野を履修する中で、私たち 9 人はそれぞれ、自分なりの考えを持っ
ていました。しかし、それはぼんやりとした不安定なものでした。このふわふわしたイメージを、しっか
りとした目標に変えるきっかけとなったのが、今回の海外研修視察旅行でした。
9 人が集まって渡航前準備を始めたころから、反省と今後の抱負を定める現在まで、脳がものすごい速
さでグローバル人材について考え続けています。それぞれが考えるグローバル人材は、9 人が集まって語
り合うことでよりクリアに、また、タイ・シンガポールで多くのものを目にし、感じ、多くの方々と話を
することでより具体的になっていきました。さらに、帰国後、10 日間を振り返るなかでグローバル人材
となるために掲げるべき目標をそれぞれが見つけました。
大学 3 年の秋、いよいよ本格的に自分自身の将来について考えなければならない時期となりました。
今回の海外研修視察旅行が、私たちに大きな刺激を与え、将来設計のひとつの指針となったことは間違
いありません。同じ場所で同じ時を過ごした 9 人ですが、感じとったことも、目指すグローバル人材も、
掲げた目標も異なります。それぞれが胸に描く将来を実現させ、グローバル人材として成長したときに、
その姿を 9 人で見せ合おうと約束しました。
海外研修視察旅行のメンバーで初めて顔を合わせた日から、半年と数か月が経ちました。渡航前準備
から、現地での企業・大学訪問、帰国後の成果報告会までの間で、自分たちでも驚くほどの大きな成長を
遂げることができたように思います。また、この成長を止めないように、今後も私たちは歩みを進めてい
きます。このような、将来への確かな 1 歩を踏み出すきっかけを与えてくださったことに心より感謝い
たします。今回の海外研修視察旅行でお世話になったみなさま、本当にありがとうございました。
2015 年 11 月
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