(論文要旨)医博乙239太田 諒

学 位 論 文 の 要 旨
り
が
名
整 理番 号
な
ふ氏
※
おおた
太
田
まこと
H/7、
HBWIE‐ l and CD15 iHHnunocytocheHlistry in the rbllicular variant of
学位論文題 目 thyroid papillary carcinoma
(甲 状腺濾 胞型 乳頭 癌 にお け る HBME‐ 1お よび CD15の 発現 に関す る免疫細胞化学的検討)
背景】
【
甲状腺 乳頭 癌 は 甲状腺 悪性腫 瘍 の 大部 分 を 占め る組 織型 で あ るが ,通 常型 乳頭 癌以外
に複 数 の 亜型 が存在 してお り,濾 胞型 乳頭 癌 は主要 な亜型 の一つ で あ る。 乳頭癌 の術前
診 断 には穿 刺 吸 引細胞診 が 有効 とされ広 く普及 してい るが ,濾 胞型 乳頭癌 にお い て は乳
頭癌 の特徴 で あ る乳頭 状構 造 が み られ な い こ とに加 えて ,乳 頭 癌 の最 も重 要 な診 断根拠
とな る核 所 見 (ス リガ ラス 状核 ,核 溝 ,核 内細胞 質封 入 体 )が 明瞭 ではない症 例 もあ る
た め ,し ば しば正 確 な診 断 が 困難 で あ り問題 とな ってい る.甲 状腺 細胞診 にお け る乳頭
癌 の診 断精度 を向上 させ る方 法 と して は ,免 疫 細胞化 学染 色 の併用 が簡便 で あ り,こ れ
まで に複数 の マー カ ー が 報 告 され て い る。 しか しなが ら,そ の殆 どは組織 亜型 の 存在 を
考慮 せ ず に ,あ るい は通 常型 乳頭癌 を主 な対象 と して 検討 され て い るた め ,濾 胞型 乳頭
癌 にお け る有 用性 は不 明確 で あ る。
【目的】
本研究 では,乳 頭癌 のマーカー として報告 されてい る抗 中皮細胞抗体 (ク ロー ン名 で
ある HBME‐ 1が 通称 として普及 してい る)お よび抗 CD15抗 体を用いた免疫細胞化学
染色 が,濾 胞型乳頭癌 の細胞診断にも有用 であるかを検討す ることを目的 とした。
方法】
【
福 井大学 医学部 附属病 院 にお い て ,平 成 18年 か ら平成 25年 の 間 に 甲状腺 疾 患 に姑す
る手術 を施 行 され ,そ の術 中迅 速組織診 断実施 時 に捺 印細胞診標本 が得 られ た症 例 の う
ち,手 術組 織診標本 を病理 医 3名 が 個別 に鏡検 し全 員 の診 断 が一 致 した 50症 例 を対象
と した。組 織型 の 内 訳 は通 常型 乳頭 癌 19症 例 ,濾 胞型 乳頭癌 13症 例 ,濾 胞腺腫 7症 例
腺腫 様 甲状腺腫 ■ 症例 で あ る。これ らの捺 印細胞診標 本 を脱色 の うえ,抗 中皮 細胞抗体
(以 下 HBME‐ 1)お よび 抗 CD15抗 体 (以 下 CD15)を 用 い た高感度 ポ リマー 法 に よる
免疫 細胞化 学染色 を行 っ た 。また ,比 較検討 の た めに同一 症例 か ら得 られ た組織診 標本
につ い て も HBME‐ 1お よび CD15の 免 疫組織化 学染 色 を行 っ た。捺 印細 胞 診標 本 お よ
び組 織診標 本 のい ずれ にお い て も,1個 以 上 の上 皮 細胞 に細胞膜 または細胞 質 の染 色 が
認 め られ た場合 を陽性 と判 定 し,各 染色 の通 常型 お よび濾 胞型 乳頭癌 に対す る感 度 ,特
異度 の算 出お よび統 計学 的解析 を行 つた 。 なお ,本 研 究 は福 井 大学 医学部倫 理 審 査委 員
会 の 承認 を得 て 実施 した。
,
結果】
【
捺印細胞診標本における HBME‐ 1の 免疫細胞化学染色では,通 常型乳頭癌 17/19例
(89%),濾 胞 型 乳頭癌 12/13例 (920/0),濾 胞腺腫 2/7例 (29%)が 陽性 を示 し,腺 腫 様 甲状腺
腫 11例 はす べ て 陰性 で あ っ た。感 度 は通 常型 乳頭 癌 に対 して 890/0,濾 胞 型 乳頭癌 に対
して 920/0で あ り,特 異度 は 89%で あ つ た。組 織 診標 本 にお け る HBME‐ 1の 免 疫組 織化
学染色 では ,通 常型 乳頭 癌 19/19例 (100%),濾 胞 型 乳頭 癌 12/13例 (920/0),濾 胞腺腫 2/7
例 (290/0),腺 腫 様 甲状腺腫 2/11例 (18%)が 陽性 を示 した。感度 は通 常型 乳頭 癌 に対 して
1000/0,濾 胞型 乳頭 癌 に対 して 92%で あ り,特 異 度 は 78%で あ つ た。捺 印細胞診標 本 お
よび組 織診標 本 のい ずれ にお いて も,通 常型 乳頭 癌 と濾 胞型 乳頭癌 に姑す る感 度 に有意
差 は認 め られ なか っ た (F些 0。 7284お よび 0.8462;χ 2検 定).
捺 印細胞 診標 本 にお け る CD15の 免 疫 細胞 化 学染 色 で は ,通 常型 乳頭癌 19/19例
(100%),濾 胞型 乳頭 癌 3/13例 (230/0)が 陽性 を示 し,濾 胞腺腫 7例 お よび 腺腫様 甲状腺腫
11例 はす べ て 陰性 で あ つ た。感度 は通 常型 乳頭 癌 に対 して 1000/。 ,濾 胞型 乳頭 癌 に対 し
て 23%で あ り,特 異度 は 100%で あ っ た。組 織 診標 本 にお け る CD15の 免 疫組 織化 学染
色 では ,通 常型 乳頭 癌 17/19例 (89%),濾 胞型 乳頭 癌 4/13例 (31%)が 陽性 を示 し,濾 胞腺
腫 7例 お よび腺腫 様 甲状腺腫 11例 はす べ て 陰性 で あ つ た。感度 は通 常型 乳頭 癌 に対 して
890/0,濾 胞 型 乳頭癌 に対 して 31%で あ り,特 異度 は 100%で あ った。捺 印細胞診標 本 お
よび組 織診 標本 のい ずれ にお い て も,通 常型 乳頭 癌 に比 べ て濾胞型 乳頭 癌 では 有意 に感
度 が低 か つ た(P<0.05,χ 2検 定
)。
考察 】
【
HBME‐ 1の 免 疫細胞 化 学染 色 は ,通 常型 乳頭 癌 お よび濾胞型 乳頭癌 のい ずれ に対 して
も高感 度 で あ る 。 しか しなが ら,一 部 の 良性 病 変 も陽性 とな り特異度 が 100%で はな い
こ とか ら,偽 陰性症 例 の 削減 を主 な 目的 と した ス ク リー ニ ン グ用途 に適 す る と考 え られ
る。また ,各 組 織型 にお け る陽性 率 は ,組 織診標 本 の免疫組織化 学染 色 お よび過 去 の文
献報告 とも近 似 す る結果 で あ るた め ,HBME‐ 1の 免 疫染色 は標本種別や染 色方 法 の違 い
に よる影 響 を受 けに くく,高 い安 定性 が期待 で き る と考 え られ る
CD15の 免疫 細胞 化 学染 色 は ,通 常型 乳頭 癌 に対 して は高感度 で あ る ものの ,濾 胞型
乳頭癌 に対 して は感 度 が不 十分 で あ るた め ,濾 胞 型 乳頭癌 の る ク リー ニ ン グ用 途 には適
さな い 。 しか しなが ら,良 性 病変 は全例 が 陰性 を示 した こ とか ら,特 異度 に 関 して は極
めて優 れ てお り,陽 性像 が確認 で きた場合 には 高 い診 断的価値 があ る と考 え られ る。 な
お ,捺 印細胞診標 本 と組 織診標 本 のい ず れ にお い て も,通 常型 乳頭癌 と濾 胞型 乳頭 癌 で
は明 らかに 陽性 率 が 異 な る とい う点 は 興 味深 く,分 子 レベ ル にお け る何 らか の差異 の存
在 が示 唆 され る 。濾 胞型 乳頭 癌 にお け る CD15発 現 の有無 と各種 分子異 常や 生物 学 的態
度 との 関連 を今 後 の 検討 課題 と した い 。
.
結論】
【
HBME‐ 1の 免疫細胞化学染色を細胞診標本 に適用することによ り,濾 胞型乳頭癌 のス
クリー ニ ングと偽陰性症例 の削減 が可能になると考えられた。CD15の 免疫細胞化学染
色は濾胞型乳頭癌 のス ク リーニングには適 さないが,HBME‐ 1に よるス ク リー ニ ング後
の症例に用 い ることによ り,濾 胞型乳頭癌 を含 む悪性診断の確定を補助 で きると考えら
れた。
備考
1
2
※ 印 の欄 は、記入 しない こ と。
学位論文 の要 旨は、和文 に よ り研 究 の 目的、方法、結果 、考察、結論等 の順 に記 載 し、
2,000字 程度 で タイ プ等 で 印字す るこ と。
3
図表 は、挿入 しない こ と。