きりん組(4歳児) < 友達の中で育ち合う > 友達との輪が広がり、より深くなっていくこの時代。“みんなで遊ぼうよ”“みんなであ そぶと楽しいよ”と保育者も一緒になって遊んできた。 特に大好きなあみほっぽったと引越し鬼。登園すると“よしやるぞ”と外に飛び出し「あ みほっぽった」と始まっていく。初めは、一人で走るのは不安で、みんなの中に入ろうと せず、やりたくないという子もいたが、まずは安心した中で楽しく遊べるようにと、保育 士が「一緒にやろうよ」声を掛け、手をつなぎながらの“あみほっぽった”をくり返し遊 んできた。一緒に走っていると楽しいと感じ、自分でタッチしたい、逃げ切りたいと思え るようになったこども達は“もう大丈夫”と手を離して遊びに入っていくようになった。 タッチをされ悔しくて涙が止まらない子、鬼になるのが嫌で抜けてしまう子もたくさんい たが、「悔しかったね、惜しかったね」「今度はタッチする番だね」と声を掛けながら、励 ましていくと子ども達は自分の中から次への頑張る力を出して、 「うん」と涙を拭いて走り 出していく。まだ、立ち直れない子も保育者と手をつなぎながら、走っていくと自然に、 手もほどけてきて、タッチするのに夢中になっていく。けんかもたくさんしてきたこども 達。「タッチしたよ」「されてない」「線から出たから鬼だよ」真剣だから出てくる厳しい言 葉もあった。言い合っている子たちだけでなく、他の子たちにも友だちが泣いたりケンカ してる姿に気付いて欲しい、一緒に考えて欲しいという担任の思いから、遊びの途中でも 「ねぇ、来て、聞いて」「今こんな事があったんだけど、どう思う?」と聞いていく事にし た。子ども達からはいろんな意見が出てきて遊びの中でのルールもわかっていった。“あみ ほっぽった”をしていた時、 「タッチした」、「されてない」で言い合う二人。気になった子 たちも集まってきた。 保「A 君はタッチしたんだけど B 君はされてないと思うんだって…どうしようか?どう やってタッチしたの?」 子「こう」とやって見せてくれる A 君。 保「洋服にタッチしたのかな?」と言うと「そうだよ」と他の子たちもうなずく。 保「じゃあ、わからないかもね」 子「でもタッチしたもん」 保「そうだよね…どうしたらわかるかな?やってみようか」と一人ずつ後ろ向きになっ て“今のは、タッチしたかしてないか”実際にやってみると「わかんない」の答え。 保「うーん、じゃあわからなかったらなしにする?」と提案すると「やだ、ずるい」の 声。 すると、「教えてあげたらいいんじゃない?」と子どもから声が上がった。 子「そうだね。それがいい!」みんなも大賛成。 保「でも怖く言ったらどうかな?」 子「やだ」 子「やさしくいってほしい」 保「そうだよね。今度から、タッチして気付いてなかったら教えてあげよう!服にタッ チするのはありね」 子「うん。線から出てもダメだから、教えてあげる」 子ども達が自分の持ってる考えを出して解決できたやりとりだった。 時にはきりん組だけでは解決できず、ぞう組に聞いたり教えてもらうこともあった。毎日 遊んでいく子ども達同士の中で「一緒にやろうよ」と誘ったり、泣いている子に気付いて 声を掛け合う姿がたくさん見られるようになり、タッチされて泣いていた子にも「泣くな よ」と一言、友達に言われた一言に「うん」と力をもらってまた遊び始める。友達とたく さん体を動かして遊ぶ中で経験してきたことが周りを見る力、友達と解決していく力にな っていったのだと今の子ども達の姿から実感している。 周りをよく見る力がついてきて、友達と自分自身を比べ“やりたいな…でもでできるか な”とたくさん葛藤する4歳児。運動会、クリスマス会では自分とぶつかり、本当はでき るようになりたいと思っているけど、 「できないからやりたくない」とためらっている子も いた。できない姿はかっこ悪いからみせたくないというプライド、周りから見られている ことも気にする時代。でも“大丈夫だよ” “一緒にやろう”と支えてくれる大人や友達がい ると、少し頑張ってやって見せてくれる。そして出来るようになったときには確かな自信 になり、次への意欲へと繋がっていく。 描画活動の中でも葛藤する姿は見られた。消防車を描いたとき、自分のイメージ通りに いかず、黒く塗りつぶしてしまった子がいた。とても大きく描けていたのに、本人の思い とは違ったのだ。保育士が「もう一度描こうよ」誘うと一気に描いていく。すると少しは み出してしまい、「もうやだ」とぐしゃぐしゃにしようとする。保「きれいにぬりたいの?」 と聞くと、 「うん、でもはみ出しちゃったからやだ」とその子は言った。保「大丈夫、力い っぱいぬるとはみ出ちゃうから、優しくぬるといいよ」と、その思いを実現できるよう声 を掛けながら、やっていくと納得いくような絵を描くことが出来て、とても満足そうな顔 を見せてくれた。豆まきの絵では、力強く一気に描きあげていった子ども達。“鬼が来てビ ックリした!” “頑張って葉っぱをいっぱい投げたんだ”どの子の絵を見ても心を揺さぶら れた思いが聞こえてくる。心を揺さぶられ、いろんな思いをした体験がこども達の“聞い て、聞いて”の思いを引き出していき、そんなお話が子ども達の描画活動にも繋がってい くのだと思う。 友達の中でたくさん自信をつけていったきりん組。その仲間の中でつけていく自信がと ても大きいものなんだ、だから、仲間と一緒に遊ぶことが大切なんだということ実感した 一年だった。
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