———江部乙丘陵地のファンクラブ——— 2015 年 6 月 14 日 野生ランの仲間たち ■ ラン科は日本だけで 200 種以上あり、独特の美しい花を咲かせるので、栽培品種も多くあります。一方で、 光合成能力の乏しい、あるいは全くない種もあり、根からの栄養摂取や種子の発芽には共生する菌類の存 在が不可欠な植物で、環境ごと保全しないと生きていけない植物です。美しい姿と商品価値が高いため、 野生ランの盗掘は後を絶ちませんが、移植すると間もなく枯れてしまい、種で増やすことも困難ですから、 その場で愛でて、また来年逢えるのを楽しみにしたいものです。残念ながら、場所を不用意に人に話したり、 ネットで公開すると、たちまち盗られてしまうこともあるのが、悲しい現実です。 ■ 花は通常の円形ではなく、左右対称型の独特の形です。基本は 6 枚ですが、大きく発達した唇弁と側花弁が左右に 2 枚、さらに 2 枚 の側萼片と 1 枚の後萼片が基本形です。距をもつものも多く、この 形や長さが分類の決め手になります。(図はコケイランの説明→) 雄しべと雌しべは太く一体化してずい柱という構造になります。根 は太短く、本数も少なく、しっかり植物体を支えるような構造でなく、顕微鏡でみると根生菌の菌糸がはいり こんでいます。葉も 1~2 枚のものが多く、光の乏しい森床で、光合成ができなくても菌を経由して栄養をと りこんでいます。 【ノビネチドリ】 ノビネチドリ】 (テガタチドリ属) 高さ 25~60cmと大型で、葉も茎もしっかりしていて、草原などでも生育するので比較 的見つけやすいランです。葉は 4~10 枚、互生で茎を抱き、はっきりした葉脈と縁が波 打つのが特徴です。花は淡い赤紫ですが、白花も結構あります。 【サイハイラン】 サイハイラン】 (サイハイラン属) 淡い紅紫の下向きの長い花を穂状につけます。戦国武将が戦の合図につかったハタ キのような指揮棒 「采配」 が名前の由来。でも、つぼみの時は上向きです。長い葉が 根元に 1 枚で、葉のない種類をモイワランといいますが、サイハイランでも花の時期に 葉が枯れてしまっているのもあって、こうなると区別は厄介です。 【コケイラン】 【コケイラン】 (コケイラン属) 小さな花ですがよくみると標準的なラン科の花のつくりです。10~40 個の黄褐色の総状 花序で下から咲いていきます。葉は花の時期にはなく、花が終わってから根元から 2 本、 細長い葉がでて、緑のまま冬を越します。 【クゲヌマラン】 【クゲヌマラン】 (キンラン属) ギンランの変種とされていますが、外来種という説もあります。ギンランとの違いは白い花 に距がないことです。全体に大型で葉が細長く花より上にでるのが、ササバギンラン、逆に 葉が退化して小型のがユウシュンランです。いずれも葉は互生で、茎を抱きます。今日、観 察できるのはどれでしょうか? 花の形、葉のつき方をよく観察してみましょう。 【クモキリソウ】 【クモキリソウ】 (クモキリソウ属) 地味な緑の花ですが、細長い側花弁 をもちます。雲霧草の字もありますが側花弁を長い足 にみたてた蜘蛛切草のほうが納得です。この仲間はスズムシソウ、ジガバチソウなど同じ発 想で虫の名前がついています。根元から 2 枚、向きあった縁の波打つ葉が特徴です。 【オオヤマザキソウ】 (ツレザキソウ属) この仲間も多く、トンボソウ属との分類上の混乱もあり、区別は難しいです。根元に出る 2 枚 の葉は光沢があって、波打ちはなし、茎には稜と托葉があります。これから長い距をもつ白い 花が咲いてくるはずですので、継続して次回また観察しましょう。 文:磯 写真:磯・中島 参考文献 北海道の野の花 北海道新聞社
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