はとても小さく、スピーカーで鳴らす前に大きく デジタルオーディオアンプ製作 する必要がある。アンプは、入力された小さな音 の信号をそのまま増幅し、スピーカーで鳴らせる レベルの信号にする。オーディオにとって何より 板垣 力起 入江 隼也人 重要なのは、いかに信号の波形を崩さずに、入力 上田 瀬凪 されたそのままの形で耳に届けることである。音 の信号を増幅するアンプは「よい音作り」にダイ レクトに関わるオーディオの欠かせない存在であ 1.まえがき る。アンプはプリアンプとパワーアンプに分かれ 僕たちはオーディオアンプの製作をした。高出 る。 力、高音質、高効率の自動車用オーディオアンプ プリアンプとは、入力するソース(CD、MD、 として開発された高性能な IC を使用した。 チューナー等)を選んだり、音質を調整したり、 初期の音響機器はアンプを持たず、微小な電気 音量の調整をする装置である。そこで増幅された 信号であっても反応性のよいスピーカーを内蔵す 信号レベルはスピーカーを鳴らせるほどの大きさ る事で対応した。真空管が発明されると、電気信 にはならない。 号の増幅、ひいては音声増幅が可能となり、通信 パワーアンプはプリアンプから送られてきた信 機、ラジオ、電気蓄音機などの音響機器に組み込 号を、スピーカーから音が出せるように増幅する まれた。これがアンプの発祥である。後に音響機 役割を担う。 器の種類が増えると、それぞれの音響機器にアン このプリ部とパワー部が独立しているものはセ プを内蔵するのでなく、アンプとスピーカーを独 パレート型と呼ばれ、それぞれで異なるメーカー 立させ、それに複数の音響機器を接続するように なる。 のものを使ったり2つをつなぐケーブルにもこ だわってみたり、自分好みのよい音を追求するの に適している。プリ部とパワー部が一体となった プリメインアンプでもかなり良い音でスピーカー を鳴らすことが可能となっている。 3.研究内容 いきなりはんだ付けの作業をしようと思っても 無理だと思ったので順を追って製作した。 (1)作業を始める前に まずは部品がすべてあることを確認するために 図 1 部品 キットに付属の部品表(図2)を参考に部品の確認 をした。 2.原 理 部品には、ケースや基板などの大きいものもあっ オーディオアンプを製作する上で、必要な知識 たが、細かい半導体や配線をするための線も多く があった。 あり、数を数えることが困難なときもあった。 アンプとはプレーヤーにより入力された信号の その場合は、ものがあったら紙にチェックを入れ 増幅や切り替えを行う機器である。スピーカーか るなどして部品をなくさないようにし、破損させ ら音を出す前に、その音をつくりあげる仕事をす たり数を間違えないように注意して作業した。 る。CD などプレーヤーから出力される音の信号 (2)外装について 1 外装:まずケースの寸法を測り、下書きをして卓上 ボール盤で穴をあけた。定規などで正確に寸法を 測り、穴をあける部分にはしるしをしてミスの無 いように行った。さらに、穴をあけた後に残った バリをやすりで削り形を整えた。 図 4 ホットボンド (3)基板について 基本となる基板に備え付けられていた抵抗、コ ンデンサ、コイルなどをはんだごてを使い、はん 図 2 部品表 だ付けしていった。スズメッキ線を使わなくても 回路が完成するので、基板の組み立ては容易であ り、時間をかけることなく、きれいに仕上げるこ とができた。 図3 アルミケースの加工 アンプの中は熱がこもり破損するきっかけにな ることもあり、放熱のため卓上ボール盤を使い小 図5 回路図 さい穴を長方形に続けてあけ、 ニッパーで切った。 だが、まだガタガタなので、やすりで削り形を整 えてきれいにした。そして、金網とホットボンド を使い加工した。最初はネジで固定しようとした が、ネジ穴が増え外装が不格好になってしまうの で、ホットボンドを使用した。 図 6 基本となる基板 2 (4)リレー回路について アンプとスピーカーを直接接続したときに電源 スイッチを入れると、大きな音が鳴りスピーカー が壊れてしまう。スピーカー保護のため、スイッ チを入れてから5秒後にスピーカーが接続される リレーによる遅延回路の製作をした。 図 9 完成写真 図 7 リレー回路図 (5)プリアンプについて 今回はパワーアンプの増幅度が低かったため基 本の回路とは別に増幅度10倍のプリアンプの製 図 10 完成写真 作も行い、増幅度を上げることにした。 5.あとがき 初めてアンプを作ったが、これほど複雑な作り だとは思わなかった。 普段使っていた基盤と違い、 付ける場所が決められていて、できるだけ場所を とらない付け方をするのに苦労した。使ったこと のない部品も多く、きれいに付けるために時間が かかってしまった。外装では説明書をよく見なが ら、穴の大きさや、穴の位置が間違わないように 気をつけて作業した。基盤での配線が複雑で、部 図 8 リレーとプリアンプの回路 品が接触すると破損してしまう原因になるので、 何度も確認しながら時間をかけて作業した。 だが、 4.まとめ 後半は時間をかけすぎてギリギリになってしまっ オーディオアンプ製作は、情報技術科の先輩が たので、そこは反省した方がいいと思った。今回 作っている作品を知っていたが、今回オーディオ のアンプ作りでは、電子回路が理解できていない アンプを新たに作るということで従来の作品より と作業が進まないので、大変だった。 よいものができるように努力した。 アンプ作りという特殊な経験ができ、とてもい い勉強になった。(上田 瀬凪) 3 最初アンプを課題研究でやると決まったとき、 自分は電子回路のことが苦手で、アンプなどは作 ったことがなかったのでうまくできるかどうか不 安でいっぱいだった。 最初はアルミのケースの加工などから作業は入 って行った。ここでも初めて使う工具なども多く あり戸惑いもあったが、先生に教えていただいた りして作業を進めていくことができた。電子回路 では、小さい部品も多くあり細かい作業になった のですごく大変なこともあった。しかし、リレー やプリアンプのことを作業する前の自分たちでは 何一つわからなかったことが、作業を進めていく につれて理解していくことができるようになった。 そのおかげで電子回路に興味も持つことができた。 しかし、全体的な作業の進行が少し遅かったので そこは反省点だと思う。初めてのアンプ作成で分 からないことが多くあったが、とてもいい経験が できてよかったです。今回の経験はこれからの物 づくりに生かしていきたい。 (板垣 力起) アンプという存在は知っていたが、触れたこと もなく、どういう用途かも分からず実際に作ると 決まったときは、完成がどうなるのか楽しみだっ た。最初はどの過程から作るのかまったく分から なかった。だが、キットを買って製作するという ことですぐ終わるのではないかと思っていたが、 リレーを使う遅延回路やプリアンプの回路を追加 するということで、 単純には終わらないと悟った。 作業に取り掛かるとキットのほうは簡単だったが、 追加した回路の間違いが多かったり、完成したと 思い測定してみると波形がよくなかったりし、何 度も作り直しをした。きれいな音をだすためには 小さなノイズや単純なミスをなくしていかないと たどり着けないということがわかった。アンプの 重要さを自分で理解することができ、とても勉強 になる課題研究ができたと思う。 (入江 隼也人) 4
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