景気循環論(第1回) 飯塚 信夫 授業概要 マクロ経済学、経済統計学などの基本知識を生 かし、各種データを観察することなどを通じて新 聞などの経済記事を理解できるようになることを 目標とする。 具体的には、日本銀行「金融経済月報」「経済・物 価情勢の展望」などを題材として、各種データを 用いて日本経済の現状を把握する方法を示す。 あわせてマクロ経済学の基礎理論も復習する。 2 1 テキスト 「マクロ経済学・入門 第4版」 (有斐閣アルマ) 福田慎一・照山博司 編 講義内でマクロ経済学の復習をする際に 利用します。 各回の該当ページを事前に読んでおき、 分からない点を確認しておくこと。 他にマクロ経済学の入門書を持っている 学生はそれを使って構わない。 3 参考書 レジュメを中心に講義しつつ、適宜、参考書を 提示していく。 各種経済データについて書いてある本を一つ でも読んでおくと講義の理解に役立つであろう。 日本銀行が毎月WEBで公表している「金融 経済月報」は、本講義で教材として使う 年2回公表される「経済・物価情勢の展望」も http://www.boj.or.jp/mopo/index.htm/ 4 2 授業計画 ※ 第1回 秋学期ガイダンス 第2回 国民経済計算から見た日本経済 第3回~第4回 輸出入の変動をとらえ、その要因を探る 第5回 物価の変動をとらえ、その要因を探る 第6回~第7回 金利の変動と金融政策 第8回 中間まとめ 第9回 家計消費の変動をとらえ、その背景を探る 第10回 労働市場の変動をとらえ、その背景を探る 第11回 企業収益の変動をとらえ、その背景を探る 第12回 設備投資の変動をとらえ、その背景を探る 第13回 財政の現状をとらえ、その背景を探る 第14回 総まとめ 第15回 期末試験 スケジュールの変更の可能性あり 5 授業運営・成績評価 毎回の講義資料等は、 ホームページに掲載する。 http://econo-buo.la.coocan.jp/details1013.html ダウンロードに必要なID、パスワードは講義内で伝える。 成績評価は基本的に期末試験で行う ただし、講義内容の理解度を把握するために、不定期 に講義内クイズなどを課すことがある。各受講生の取り 組み具合は加点評価する。 昨年度、講義の最後の方に出席し、名前だけ書いて提 出している学生が散見されましたが、ゼロ評価です。 6 3 受講上の注意点 私語は厳禁→他の学生が迷惑!! 飲食や無用の出入りも厳禁 携帯電話の電源を切ること(マナーモード不可) 違反者は退場を命じ、指示・命令に従えない者は 定期試験から減点する 7 本日の講義の狙い • 本講義の狙いは、様々な「データ」を生かして 「日本経済を見る眼」を養ってもらうこと。 • データを生かすには以下の3ステップが重要。 1. データの収集 2. データの加工 3. データの解釈 • まずは良き手本をまねることから始めたい。 • 良き手本の一つ、日本銀行「金融経済月報」を 本講義では取り上げる。 4 なぜ、金融経済月報? 1. 日本銀行が金融政策を判断する際の材料 – – – 金融政策は世の中の金利を動かす 預金の利子、住宅ローン金利、企業の事業活動などに 影響 皆さんに非常に関係が深い(特に、社会人になってか ら) 2. データが毎月更新され、加工もひと工夫されている – – データの並び順にも意味がある →マクロ経済学で学んだことを思い出しつつ読もう グラフの描き方、見せ方も参考になる 3. 無料で日本銀行のホームページからPDF形式で ダウンロードできる – 「生きた教科書」が無料で入手できるのはうれしい! 金融経済月報の構成 金融経済月報(2012年9月)の構成は以下の 通り。 解説文章パート・・・1~17頁 グラフパート・・・・・・18頁以降すべて 解説文章パートはさらに以下の通りの構成。 全体の要旨(1~2頁) 実体経済(3~13頁) 物価(13~15頁) 金融(15~17頁) 5 実体経済→物価→金融 の順の意味 • • • • マクロ経済学の教科書に出 てくる左図を思い出そう。 総需要曲線(D)と総供給曲 線(S)の交点に対応して総 産出量(GDP)と物価水準 が決まる。覚えてますか? 一般的に短期的に変動する のはDと考えられる。それを とらえるのが金融経済月報 の「実体経済」パート。 金融政策を決める重要な ファクターの一つは「物価」 →物価はおカネの価値! さあ、読み始めよう! 本日の講義では冒頭の文章を一緒に読んでみ たい。 まず、最初の文章。 わが国の景気は、緩やかに回復している。 6 「わが国の景気」とは? • 景気をとらえるデータはいろいろあるが、基本は国内総 生産(GDP)。 • 金融経済月報の冒頭の文章にある「回復」「持ち直し」 や「横ばい」なども基本的にはGDPの動きを表している。 • GDPが重視されるのは、それが各国の経済が一定期 間に生みだした付加価値(もうけ)を表しているから。 • 身近な事例に置き換えて意味を考えてみよう。 付加価値とは? • 学園祭の模擬店で焼きそば屋をやることを想像し てみよう。 – 収入は、「焼きそば販売数量×価格」 – 焼きそばを作るには、麺、肉、野菜、ソースなどの原材 料の仕入れが必要 – 収入から仕入れを差し引いたものが付加価値(もうけ) だ • GDP統計に置き換えると。。。 – 収入に当たるのが産出 – 仕入れに当たるのが中間投入 – GDPは、様々な企業(経済主体)の「産出-中間投入」 を積み上げたものと考えてよい 7 付加価値って自分に関係あるの? • 学園祭の模擬店の付加価値はどう分配される? – – • GDP統計に置き換えると。。。 – – – – • 先輩から引き継がれた、サークル秘伝の鉄板など七つ道具は修繕 しなくて大丈夫? みんなで山分け?サークルの活動費?それとも? 給料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・雇用者報酬 企業や個人事業主の利益・・・・・・・・・・営業余剰・混合所得 機器を使って“すり減った”部分のメンテ・・・固定資本減耗 消費税などの支払い ・・・生産・輸入品に課される税―補助金 将来、サラリーマンになる(雇用者報酬)にしても、会社を興す (営業余剰・混合所得)にしても、あなたの将来とGDPは切っ ても切り離せないよね? 付加価値を生み出す源泉は「最終需要」 • 最終需要とは?・・・仕入は「中間需要」 – 消費、投資、輸出 – 最終需要は輸入で賄われる部分もある →ただし、国内生産(販売)の需要にならない – Y(GDP) =C(民間消費)+I(民間投資)+G(政府支出) +X(輸出)-M(輸入) – 民間投資=住宅投資+設備投資+在庫投資 – 政府支出=政府消費+公共投資+在庫投資 16 8 最終需要をウオッチする順番 • 最終需要をウオッチする順番が、「金融経済月 報」の文面に表れている • 海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、 全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうし たもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、 企業収益が改善するなかで、持ち直しつつある。公 共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが 明確になっている。個人消費は、雇用・所得環境に 改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移 している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産 は緩やかに増加している。 • なぜこの順番なのか? 9
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