全体景気動向(2015年1月期)

特別版
全体景気動向(2015年1月期)
年 4 回発行
目次
【企業マインド】
1
【消費動向】
2
【雇用環境】
3
【設備投資】
4
【海外動向】
5
【中部圏の展望・東海地方】
6
【中部圏の展望・北陸地方】
7
【企業マインド】
中小企業の景気は先行きに不安
中小企業の景気は先行きの悪化を懸念。内閣府/財務省の法人企業景気予測
調査(注)によると、景気が「上昇」と見る企業の割合から
「下降」と見る企業の割
合を引いた国内の景況判断指標
(BSI)は、中小企業の全産業で下降している。
2014年7~9月期における現状判断は
「-6.3」となり、前回調査の予想
(
「0.5」
)よ
り6.8ポイント下降。先行きも、10~12月期が
「-0.2」となり、前回調査と比べ
5.4ポイント下降した。2015年1~3月期の見通しは
「-2.8」と、景気のさらなる
下降を予想している。
日本政策金融公庫の中小企業景況調査によると、今後3カ月の売り上げ見通
しD.I.(季節調整値)は、7月から
「増加」超が続いている。2014年9月は
「7.8」
、10
月も「7.8」
、11月は
「12.3」
。11月の分野別売り上げでは、建設関連のみが
「減少」
超で、他はすべて
「増加」
超だった。
注)2004年4~6月期より、内閣府の法人企業動向調査と財務省の景気予測調査を一元化した。
法人企業景気予測調査および法人企業動向調査「企業経営者による景況判断指標」
40
BSI=「上昇̶下降」値
20
製造業
非製造業
0
−20
−40
−60
法人企業動向調査
(全規模)
−80
−100
2001
02
03
04
法人企業景気予測調査
(中小企業)
05
06
07
08
注)2014年10∼12月期と2015年1∼3月期は見通し
30
09
10
11
12
13
14 (年)
(出所:内閣府/財務省)
売り上げ見通しD.I.(今月以降3カ月間、過去3カ月の実績比「増加̶減少」)
20
10
0
−10
−20
季節調整値
−30
−40
−50
10月11月12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月
2012年
2013年
2014年
(出所:日本政策金融公庫)
1
【消費動向】
1世帯当たりの消費支出は2期連続で減少
総務省の家計調査によると、総世帯の1世帯当たり消費支出は2014年7~9月
期で前年同期比実質5.3%減と、2期連続の実質減少となった。支出項目のすべ
てが減少したが、なかでも減少率が高かったのは、教育
(17.4%減)だった。そ
の他で減少率が高いのは、家具・家事用品
(11.2%減)
、住居
(10.6%減)
、光熱・
水道(7.8%減)
など。勤労者世帯の消費支出も実質4.7%減となった。
経済産業省の商業販売統計によると、2014年7~9月期の小売業販売額は前年
同期比1.4%増の34兆5220億円となった。機械器具小売業の販売額が3.8%減と
回復が遅れているが、その他の業種は堅調となっている。2014年10月
(速報)は
前年同月比1.4%増の11兆3710億円。日本チェーンストア協会が毎月発表してい
る全国チェーンストア総販売額は、2014年10月が対前年同月比で1.9%減となっ
た。8月は0.1%減、9月は1.0%減だった。
7∼9月
4∼6月
1∼3月
12
月
13年
∼
7∼9月
12年
4∼6月
月
12
1∼3月
∼
(%)
7∼9月
11年
4∼6月
月
12
1∼3月
∼
10
7∼9月
10年
4∼6月
月
12
1∼3月
∼
7∼9月
5
(%) 消費支出の対前年同期実質増減率
4
(四半期ベース=月平均)
勤労者世帯
3
(1世帯当たり)
2
1
0
−1
−2
総世帯
−3
(1世帯当たり)
−4
−5
−6
−7
10
10
10
10
14年
(出所:総務省)
チェーンストアの販売額伸長率の推移(前年同月比)
0
月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
1月
月
月
月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
1月
月
月
月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
1月
月
月
月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
1月
−10
10 1112
11年
10 1112
12年
10 1112
13年
2
10
14年
(出所:日本チェーンストア協会)
【雇用環境】
完全失業者数は53カ月連続で減少
総務省の労働力調査(速報)によると、前年同月比でみた完全失業者数は2014
年8月、9月、10月にそれぞれ40万人減の231万人、25万人減の233万人、30万人
減の233万人となった。完全失業率
(季節調整値)
は、2014年8月3.5%、9月3.6%、
10月3.5%。10月の結果を男女別でみると、男性は3.8%、女性は3.2%。また、
2014年7~9月期の完全失業率を地域別・前年同期比でみると、全国9地域のう
ち7地区で失業率が低下。失業率が最も低かったのは東海の2.8%(前年同期比
0.4%低下)。一方、失業率が上昇したのは近畿の4.4%(同0.1%上昇)
。変わら
ずは中国・四国の3.8%だった。厚生労働省発表の有効求人倍率
(季節調整値)
は、
2014年10月は1.10倍(正社員は0.68倍)で、前月比で0.01ポイント上昇した。厚生
労働省の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は前年比で2014年8月3.6%減、9
月3.1%減、10月は2.9%減
(速報)
となった。
完全失業者数(万人)
380
370
360
350
340
330
320
310
300
290
280
270
260
250
240
230
220
210
200
有効求人倍率と完全失業者数の推移
有効求人
倍率(倍)
1.1
有効求人倍率
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
完全失業者数
0.5
0.4
12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
2011年
2012年
2013年
2014年
(出所:完全失業者数は総務省「労働力調査報告」。有効求人倍率は厚生労働省「一般職業紹介状況」)
2 前年同月比(%)
1
0
−1
−2
実質賃金の推移
−3
−4
10
月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
2月
3月
月
1月
月
10 11 12
月
9月
2013年
注:2007年11月分より、算定方式を変更している
8月
7月
6月
4月
2012年
5月
2月
3月
月
1月
月
10 11 12
月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
−5
2014年
(出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」)
3
【設備投資】
機械受注には不透明感が漂う
内閣府の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である
「船舶・電
力を除く民需」
(季節調整値)は、2014年7月が前月比3.5%増、8月は4.7%増、9
月は2.9%増と堅調に推移した。四半期ベースでみると、2014年7~9月期は前期
比5.6%増の2兆4110億円となり、前回の見通し
(2.9%増、2兆3484億円)を上回
った。製造業は12.6%増、非製造業は1.2%減だった。2014年10~12月期は、製
造業は2.7%減、非製造業が1.2%増となり、全体で0.3%減としている
(注)
。
日本政策金融公庫の中小企業動向調査によると、2014年7~9月期における設
備投資実施企業の割合(季節調整値)は前期と比べて0.4ポイント増の35.5%と、
前期の減少から増加に転じた。製造業は2.0ポイント増の42.4%、非製造業は0.5
ポイント増の31.0%となった。
注)需要者別内訳の合計は全体の季節調整値とは一致しない
(十億円)
機械受注額の推移(船舶・電力を除く民需、四半期ベース=月平均)
1,500
月次
四半期(月平均)
1,400
2014年7月 7717億円
2014年
4∼
6月期 7608億円
1,300
8月 8078億円
7∼ 9月期 8037億円
1,200
9月 8316億円
10∼12月期 8016億円
1,100
1,000
900
800
700
600
6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12
08年度
09年度
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
注)2014年10∼12月期は見通し
(出所:内閣府)
50 (%)
中小企業の設備投資実施割合
45
40
35
30
製造業
25
全体
20
非製造業
15
7∼9月
4∼6月
12
1∼3月
2013年
10
∼ 月
7∼9月
4∼6月
4
12
1∼3月
2012年
10
∼ 月
7∼9月
4∼6月
12
1∼3月
2011年
10
∼ 月
7∼9月
4∼6月
12
1∼3月
2010年
10
∼ 月
7∼9月
4∼6月
10
2014年
(日本政策金融公庫)
【海外動向】
米商務省によると、米国の2014年7~9月期における実質国内総生産
(GDP改
定値、季節調整値)は前期比年率で3.9%増となり、前月発表の速報値から0.4ポ
イント上方修正された。市場予想の3.3%増も上回った。内訳をみると、GDP
の7割を占める個人消費が2.2%増となり、速報値から0.4ポイント上方修正。民
間投資は5.1%増、住宅投資は2.7%増、政府支出も4.2%増となった。
2014年12月5日発表の米国の雇用統計によると、2014年11月の非農業部門雇
用者数(季節調整値)は前月に比べて32万1000人増加。市場予想の23万人増程度
を大幅に上回り、2012年1月以来の高い伸びとなった。失業率は5.8%で、前月
と変わらなかった。
12月3日発表の米連邦準備委員会
(FRB)
・地区連銀経済報告
(ベージュブック)
は、「米国経済は大半の地区で拡大した」との認識を示した。ガソリン価格が低
下した影響もあり、個人消費が増加。雇用も多くの地区で増加した。
欧州連合(EU)統計局が12月3日に発表した、ユーロ圏
(17カ国)の2014年7~9
月期における実質域内総生産
(GDP改定値、季節調整済み)
は、速報値と同じで
前期比0.2%増となった。前年同期比では0.8%増だった。EU全体
(28カ国)では
前期比0.3%増。ユーロ圏経済の3分の1を占めるドイツが前期比0.1%増で、前
期の0.2%減から改善。フランスは0.3%増、スペインは0.5%増と好調。一方、
イタリアは0.1%減だった。
中国国家統計局によると、中国の2014年7~9月期における実質経済成長率
(GDP前年同期比伸び率)は7.3%増となり、前期の7.5%増から0.2ポイント伸び
率が低下した。これは2009年1~3月期
(6.6%増)以来の低い伸び。2014年10月の
鉱工業生産は、
前年同月比7.7%増となり、
前月の8.0%増から増加幅が縮小した。
国際通貨基金
(IMF)は2014年10月に世界経済見通しを改定し、2014年の世界
経済の成長率を7月の見通しより0.1ポイント下方修正し3.3%とした。2015年は
0.2ポイント下方修正し3.8%。2014年を地域別にみると、ユーロ圏は0.3ポイン
ト下方修正し0.8%、新興市場および途上国・地域は0.1ポイント下方修正し4.4
%、米国は0.5ポイント上方修正し2.2%、日本は0.7ポイント下方修正し0.9%と
している。
5
【中部圏の展望・東海地方】
東海地方の経済は不透明感が漂う。日本政策金融公庫の中小企業動向調査に
よると、静岡と長野を含む東海地方の景況天気図は、2014年4~6月期から引き
続き、7~9月期も「薄曇り」となった。10~12月期、2015年1~3月期も
「薄曇り」
の見通し。
鉱工業生産指数は、全業種で前年同月比プラスを維持している。2014年7月
はプラス3.7%、8月はプラス0.5%、9月はプラス5.6%だった。主力業種の指数
(2014年9月)をみると、電子部品・デバイス工業
(プラス31.1%)
、はん用・生産
用・業務用機械工業(プラス14.6%)
、電気機械工業
(プラス7.9%)などの業種が
プラスになった。一方、マイナスは、金属製品工業
(マイナス15.0%)
、情報通
信機械工業
(マイナス12.6%)
などだった。
日銀の2014年9月短期経済観測調査によると、東海3県の設備投資額
(土地投
資含む)は、2013年度が全産業で前年度比4.6%減
(全国平均は5.6%増)となっ
た。2014年度計画は、全産業で前年度比13.4%増としており、前回調査
(2014年
6月)の予想から0.6ポイント上昇した。製造業は14.1%増
(前回調査比1.3ポイン
ト上昇)
、非製造業は12.7%増
(0.1ポイント低下)
と強気の見通し。
雇用環境は堅調。2014年7~9月期の静岡を含む東海地方の完全失業率は2.6%
となり、前期比で0.4ポイント低下、前年同期比では0.5ポイント低下となった
(全
国平均は3.6%)
。有効求人倍率は2014年10月が1.33倍
(全国平均は1.10倍)とな
り、前年同月比で0.14ポイント上昇した。
静岡県を含む東海地方の建設工事受注高は、2014年7月5478億円
(前年同月比
4.2%減)
、8月5406億円
(4.7%減)
、9月6347億円
(6.6%減)
と、低調になっている。
新設住宅着工戸数も、2014年8月が7867戸
(前年同月比24.0%減)
、9月が8986戸
(同
10.9%減)
、10月は8664戸
(同19.6%減)
と、減少が続いている。
消費は回復基調を維持。岐阜、愛知、三重3県の大型小売店販売額は2014年7
月1641億円、8月1592億円、9月1519億円で推移した。既存店ベースの対前年同
月増減率をみると、3県の合計で2014年7月が0.6%減、8月は0.5%増、9月は2.0
%増だった。また、名古屋市は2014年7月が0.8%増、8月は1.1%増、9月は4.0%
増となった。
(2014年9月はいずれも速報)
。
6
【中部圏の展望・北陸地方】
北陸地方の経済は底堅い動き。日本政策金融公庫の中小企業動向調査による
と、北陸地方の景況天気図は2014年4~6月期以来の
「薄曇り」が継続。2014年10
~12月期、2015年1~3月期も「薄曇り」の見通しとなっている。鉱工業生産指数
は、2014年7月、8月、9月に、それぞれ前年同月比プラス1.8%、プラス1.0%、
プラス6.8%となった。9月の指数を業種別にみると、前年同月比で、はん用・
生産用・業務用機械工業
(プラス17.2%)
、化学工業
(プラス13.4%)
、電子部品・
デバイス工業(プラス11.2%)、プラスチック製品工業
(プラス5.5%)などがプラ
スとなった。一方、電気機械工業
(マイナス8.3%)
、繊維工業
(マイナス4.2%)
、
鉱業(マイナス3.1%)
などがマイナスとなっている。
民間設備投資は増加する見込み。日銀の2014年9月短期経済観測調査による
と、設備投資の2013年度実績は、全産業で前年度比2.3%減
(全国平均は5.6%増)
と、2012年度実績
(9.9%増)を大きく下回った。しかし、2014年度計画では前年
度比24.8%増と、大幅な改善を見込んでいる
(全国平均は4.2%増)
。製造業は
46.3%の大幅増、非製造業は3.0%増としている。
雇用も底堅く推移。2014年7~9月期の新潟を含む北陸地方の完全失業率は3.2
%で、前期と同率。前年同期比では0.2ポイント低下となった
(全国平均は3.6
%)。一方、有効求人倍率は2014年10月に1.27倍
(全国平均は1.10倍)となり、前
年同月比で0.12ポイント上昇した。
公共投資は低調。北陸地方の公共工事請負金額は、2014年7月が551億円
(前
年同月比10.3%減)、8月は350億円
(20.2%減)
、9月は447億円
(16.3%減)となっ
ている。新設住宅着工戸数(新潟県を含む)は、2014年8月が2122戸
(前年同月比
23.2%減)
、9月が2374戸
(33.3%減)
、10月は2684戸
(28.1%減)
と低水準が続く。
消費は堅調に推移。富山、石川、福井3県の大型小売店販売額は2014年7月
302億円、8月306億円、9月は277億円となった。既存店ベースの対前年同月増
減率を県別でみると、富山県は2014年7月0.5%減、8月1.3%増、9月1.3%増。石
川県は2014年7月0.2%増、8月2.0%増、9月2.7%増。福井県は2014年7月1.4%減、
8月2.1%増、9月1.4%増となっている
(2014年9月はいずれも速報)
。
7