SHIMADZU APPLICATION NEWS

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島津アプリケーションニュース
●粉粒体測定
No.
Powder Property Analysis
LAAN-C-PT022
Q102
単層カーボンナノチューブへの各種ガスの吸着特性
Adsorption Properties of Different Gases to Single-Wall Carbon Nanotubes
„ はじめに
Introduction
カーボンナノチューブは一般に高い比表面積を有
し,優れた吸着剤としても応用が考えられます。今回,
市販されている 3 種類の単層カーボンナノチューブ
(Single-Wall Carbon Nanotube,以下 SWCNT と略しま
す)を対象に,各種ガスの吸着特性を測定・比較した
結果をご紹介します。
測定には,高機能比表面積/細孔分布測定装置
ASAP2020 マイクロポアシステム(Fig.1)を用いてい
ます。測定対象は,いずれもアーク放電法による
SWCNT で,製造時に使われる触媒の異なる A と B,
さらには B を高純度化した C の 3 種類です。
Fig.1 ASAP2020 外観
Overview of ASAP2020
„ 液体窒素温度での窒素吸着測定
Nitrogen Adsorption(LN2 temperature)
比表面積/細孔分布測定のために,最も一般的に使用
される,液体窒素温度(77°K)における窒素ガス吸
着を行い,その際に得られた吸脱着等温線を Fig.2 に
示します。またこの等温線から得られる BET 比表面
積(BET Sa)と全細孔容積(TPV,Total Pore Volume
C:\2020\CNT\N2-A.SMP
の略)も図中に示しました。使用する触媒により全細
孔容積に大きな差が生じていること,高純度化(B→C)
で比表面積が約 2 倍(177→360 ㎡/g)に増加している
ことなどが読み取れます。
C:\2020\CNT\N2-B.SMP
C:\2020\CNT\N2-C.SMP
600
A:BET Sa=166 ㎡/g
TPV= 0.308cm3/g
Quantity Adsorbed (cm³/g STP)
500
B:BET Sa=177 ㎡/g
400
TPV= 0.919cm3/g
C:BET Sa=360 ㎡/g
300
TPV= 0.809cm3/g
200
100
0
0
10
20
30
40
50
60
Absolute Pressure (kPa)
70
80
90
100
Fig.2 SWCNT への窒素ガスの吸脱着等温線(液体窒素温度)
Adsorption & Desorption Isotherms of Nitrogen on SWCNTs(LN2 temperature)
No.Q102
さらに極低圧領域に着目し,HK(Horvath-Kawazoe)
法によるマイクロポア解析を行いました。Fig.3 に積
分型,Fig.4 に微分型の細孔分布を示します。
特に高純度化された C のマイクロポア領域(細孔直
径 2nm 以下)の細孔容積(大きい矢印)は,B のそれ
(小さい矢印)の 2 倍以上になることがこれらの結果
から見て取れます。
Slit Pore Geometry (Original H-K)
Slit Pore Geometry (Original H-K)
0.16
0.35
C
0.14
0.30
C
0.10
Smoothed dV/dw (cm³/g·nm)
Pore Volume (cm³/g)
0.12
A
0.08
0.06
0.25
0.20
A
0.15
0.10
B
0.04
B
0.05
0.02
0.00
0.0
0.00
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
Pore Width (nm)
1.4
1.6
1.8
2.0
0.0
2.2
0.2
0.4
Fig.3 HK 法による積算細孔容積分布
Horvath-Kawazoe Cumulative Pore Volume Plot
0.6
Fig.4
0.8
1.0
1.2
Pore Width (nm)
1.4
1.6
1.8
2.0
2.2
HK 法による微分細孔容積分布
Horvath-Kawazoe Differential Pore Volume Plot
„ 水素吸着と炭酸ガス吸着
Adsorption of Hydrogen and Carbon Dioxide
同じ A,B,C の 3 種類の SWCNT に対して,液体窒素
温度における水素ガスの吸着等温線,ドライアイス+
メタノール温度(195°K)における炭酸ガスの吸着等
温線を,それぞれ Fig.5,Fig.6 に示します。
低圧部分を除き,水素と炭酸ガスの吸着量は,サン
プル C>A>B となっており,単純に比表面積(C>B>A)
や全細孔容積(B>C>A)の違いだけでは説明できませ
ん。また,その比率や,圧力領域によっては逆転が起
C:\2020\CNT\H2-A.SMP
C:\2020\CNT\H2-B.SMP
きていること,単位表面積あたりでは A が最も吸着能
力が優れていることなど興味深いデータを得ること
ができました。
このように異なるガスの吸着特性を調べることに
より,比表面積だけでなく固体表面のいろいろな評価
を行うことができます。これは SWCNT だけでなく他
のナノテク材料や吸着剤への応用も可能です。
C:\2020\CNT\CO2-A.SMP
C:\2020\CNT\H2-C.SMP
C:\2020\CNT\CO2-B.SMP
C:\2020\CNT\CO2-C.SMP
120
C
40
Quantity Adsorbed (cm³/g STP)
Quantity Adsorbed (cm³/g STP)
100
A
30
20
C
80
60
A
40
B
10
B
20
0
0
0
10
20
30
40
50
60
Absolute Pressure (kPa)
70
80
90
100
Fig.5 液体窒素温度での水素吸着等温線
Adsorption Isotherms of Hydrogen(LN2 temperature)
0
10
20
30
40
50
60
Absolute Pressure (kPa)
70
80
90
100
Fig.6 ドライアイス+メタノール温度での炭酸ガス吸着等温線
Adsorption Isotherms of Carbon Dioxide (Dry Ice & Methanol temperature)
初版発行:2007 年 7 月
分析計測事業部
応用技術部
※本資料は発行時の情報に基づいて作成されており,予告なく
改訂することがあります。改訂版は右に示す島津 WEB で閲覧で
きます。
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●京都
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