緑 膿 菌 性複 雑 性 尿 路 感 染 症 に対 す る

VOL.43
NO.1
緑膿 菌性 尿路感 染症 に対 す るCIPCの
89
再評 価
緑 膿 菌 性 複 雑 性 尿 路 感 染 症 に 対 す るcarindac田inの
渡辺
豊 彦 ・竹 中
畠
和 宏 ・小 野
皇 ・門 田
晃一 ・櫻 本
耕 司 ・林
俊秀
裕 巳 ・大 森
弘之
憲昭 ・津 川 昌也 ・公 文
岡山大学泌尿器科*
近
藤
捷
再 評 価
嘉
岡山赤十字病院泌尿器科
早
田
俊
司
鳥取市立病院泌尿器科
那 須 良 次
十全総合病院泌尿器科
赤
枝
輝
明
津山中央病院泌尿器科
片 山 泰 弘
玉野市民病院泌尿器科
(平成6年9月19日
受付 ・平成6年11月22日 受理)
Carindacillin(CIPC)はcarbenicillin(CBPC)の
さ れ,体
内 で はCBPCと
な り作 用 す る 。 今 回 我 々 は 緑 膿 菌 性 尿 路 感 染 症 に 対 す るCIPCの
床 的 再 評 価 を 行 っ た 。1983年
定 用broth中
し,年
∼1991年
の 間 に 分 離 さ れ た 尿 路 感 染 症 由 来 緑 膿 菌235株
治 医 判 定 な ら び にUTI判
対 す る 本 剤 のMICを
膿 菌 性 尿 路 感 染 症 に 対 し,本
定 に て 検 討 し た 。 ま た,分
測 定 し,OFLXと
比 較 検 討 し た 。CBPCの
MIC70は400μg/mlと,NFLX,OFLXの100μg/mlに
の 推 移 を み る と,NFLX,OFLXで
UTI判
剤500mgを1日4回,7日
尿 路 感 染 症 由 来 緑 膿 菌235株
比 し か な りの 高 値 を 示 し た が,年
は,尿
1,600μg/mlの
効8例,無
の う ち12株
は耐 性 化 の 傾 向 は
合 有 効 率 は61.9%で
析 対 象 例 は21例
で あ り,
あ っ た 。 細 菌 学 的 効 果 で は,投
が 除 菌 さ れ た 。 投 与 前 分 離 緑 膿 菌 に 対 す る 本 剤 のMICは6.25∼>
比 し 高 値 を 示 し た 。MIC高
剤 の 投 与 量1回500mg,1日4回
ュ ー キ ノ ロ ン 薬 と 比 較 し て,尿
た 。 以 上 よ り,緑
に対 す る
次 的 にMIC
中 で の 抗 菌 力 の 明 ら か な 低 下 が み ら れ る の に 対 し,
効8例,総
間 に 分 布 し,OFLXに
率 が 得 ら れ た の は,本
間経 口
離 さ れ たPseudomonas aeruginosaに
は尿 中 で の 抗 菌 力 の 低 下 は 軽 度 で あ っ た 。 臨 床 的 検 討 に お け る,解
定 で は 著 効5例,有
与 前 分 離 緑 膿 菌21株
た,ニ
に 対 し,MIC測
測定
は 急 速 な 耐 性 化 の 傾 向 が み られ る が,CBPCで
認 め ら れ な か っ た 。NFLX,OFLXで
CBPCで
基 礎 的 ・臨
お よ び 人 工 尿 中 で のCBPC,norfloxacin(NFLX),ofloxacin(OFLX)のMICを
次 的 に 比 較 検 討 し た 。 ま た,緑
投 与 し,主
エ ス テ ル 型 誘 導 体 で 経 口 投 与 に よ り腸 管 か ら吸 収
値 に も か か わ ら ず61.9%と
で あ り,高
高 い有 効
い 尿 中 濃 度 が 維 持 さ れ る こ と,ま
中 で の 抗 菌 力 の 低 下 が 軽 度 で あ る こ とが そ の 理 由 と し て 考 え ら れ
膿 菌 性 尿 路 感 染 症 に 対 し て のCIPCの
有 用 性 を再 確 認 す る と と もに ニ ュー キ ノロ ン薬
との併 用 の 可 能 性 も示 唆 さ れ た 。
Key
words:尿
路 感 染 症,CIPC・
緑 膿 菌 ・抗 菌 力 ・ 人 工 尿
緑 膿 菌 は複 雑 性 尿 路 感 染 症 の 原 因 菌 と し て 依 然 重 要 な 位 置
を 占 め て お り,そ のvirulenceはcompromised
hostの 状 態
に よ っ て は致 命 的 と な る こ と も あ る。 近 年 ・ 緑 膿 菌 に対 し て
ら あ る合 成 ペ ニ シ リ ン 系 抗 菌 薬 で あ るcarbenicillin
sodium(CIPC)を
告 す る。
も抗 菌 力 を もつ ニ ュ ー キ ノ ロ ン系 抗 菌 薬 の 開 発 が 続 い て い る
が,そ
る1)。今 回 我 々 は,緑
*
I.
の 使 用 量 の 増 加 に伴 い,耐 性 化 の 報 告 が 増 え て き て い
岡山 市 鹿 田 町2-5-1
膿 菌 性 複 雑 性 尿 路 感 染 症 に 対 し従 来 か
1.
抗菌力
indanyl
基 礎 的 ・臨 床 的 に再 評 価 を行 っ た の で 報
材 料
と 方
法
日本 化 学 療 法 学 会 雑 誌
90
JAN.
1983年 ∼1991年 の 間 に 分 離 され た教 室 保 存 尿 路 感 染
症 由 来Pseudomonas aeruiginosa
Table
2.
Protocol
1995
design
235株 に対 す る本 剤 お
よびnorfloxacin(NFLX),ofloxacin(OFLX)のMIC
を,MIC-2000を
用 い て 接 種 菌 量105cfu/mlで
測定 し
た 。 培 地 は 日本 化 学 療 法 学 会 標 準 法2)に従 い,MullerHinton
brothにCaイ
20mg/lを
オ ン40mg/1お
よ びMgイ
添 加 し,カ ル シ ウム 濃 度,マ
をそ れ ぞ れ1.1mM,1.0mMと
下MIC測
オン
グ ネシウム濃度
した もの を 用 い た(以
定 用broth)。
また,人 工 尿3,(Table1)中
で
の 緑 膿 菌 に 対 す る 本 剤 お よ び 各 種 ニ ュー キ ノ ロ ン薬 の
MICを
測 定 し,MIC測
定 用brothで
Patient
得 ら れ たMICと
characteristics
比 較 検 討 し た 。 な お,CIPCはcarbenicillin(CBPC)
の エ ス テル 型 誘 導 体 で,経 口 投 与 に よ り腸 管 か ら吸 収 さ
れ,非 特 異 的 エ ス テ ラ ー ゼ に よ り加 水 分 解 され,生 体 内
に お い てCBPCと
して 作 用 す るのた め,CBPCと
して抗
菌 力 を測 定 した。
2.
臨床効果
対 象 は平 成5年3月
よ り平 成6年2月
まで の期 間 に お
CIPC.
carindacillin
い て,岡 山 大 学 泌 尿 器 科 な い し関 連 施 設 に通 院 中 も し く
は入 院 中 で,臨 床 試 験 参 加 の 同 意 が 得 られ た緑 膿 菌 性 複
雑 性 尿 路 感 染 症 患 者21例
性 膀 胱10例,前
症2例,水
結 石1例,前
立 腺 肥 大 症4例,腎
腎 症1例,腎
結 石1例,膀
立 腺 術 後 感 染 症1例
盂尿 管移行部 狭窄
1.
抗菌力
胱 結 石1例,尿
1)
CIPCお
管
で あ った 。
(1)
日間経 口投 与 し た。 臨 床 効 果 判 定 は主 治 医 判 定 な ら び に
効 評 価 基 準(第3版)5)に
結
果
よ び ニ ュー キ ノ ロ ン薬 の 緑 膿 菌 に対 す る
抗菌 力の年次変遷
投 与 方 法 は,原 則 と し て本 剤500mgを1日4回,7
UTI薬
II.
で あった。基礎 疾患 は神経因
準 じ て 行 い.全 例 に つ
MIC測
Fig.1に
定 用brothを
用 い た検 討
緑 膿 菌 に 対 す るNFLXのMICの
を 示 し た 。1983年
年次 推移
で はMIC70は1.56μg/mlで
あ った
い て 自 ・他 覚 的 副 作 用 な らび に臨 床 検 査値 の 異 常 変 動 の
が,1987年
有 無 を検 討 した(Table2)。
年 次 的 に 明 ら か な 耐 性 化 傾 向 が 認 め ら れ た 。 ま た,
ginosaに 対 す る本 剤 のMICを
また,分 離 され たP.aeru測 定 し,OFLXと
比 較検
討 した。
MIC測
に は6.25μg/ml,1991年
定 用brothで
は,1983年
の 緑 膿 菌 に 対 す るOFLXのMIC70
で は3.13μg/mlで
6.25μg/ml,1991年
に は100μg/mlと,
あ っ た が,1987年
に は
に は100μg/mlと,NFLXと
同様
に 年 次 的 に 明 ら か な 耐 性 化 傾 向 が 認 め ら れ た(Fig
CBPCの
Table
1. Composition
constitutes
of artificial
of normal
urine
human
derived
urine
from
尿 路 感 染 症 由 来 緑 膿 菌235株
は3.13∼>1,600μg/mlの
間 に 分 布 し て お り,MIC70
は400μg/mlとNFLX,OFLXの100μg/mlに
り の 高 値 を 示 し た 。 し か し,年
る と,NFLX,OFLXで
た が,CBPCで
.2)。
に 対 す るMIC
比 しか な
次 的 にMICの
推移 をみ
は急 速 な耐 性 化 の傾 向 が み られ
は年 次 的 耐 性 化 の 傾 向 は 認 め ら れ な か
っ た(Fig.3)。
(2)
人 工 尿 を用 い た検 討
Fig.4に
人 工 尿 中 で の 緑 膿 菌 に 対 す るNFLXのMIC
の 年 次 推 移 を 示 す.MIC測
同 様 に,年
定 用brothを
用 い た場 合 と
次 的 に 耐 性 化 傾 向 が 認 め ら れ,1983年
MIC70は12.5μg/ml,1991年
で は>400μg/mlと
で は
な って
い た。
pH 5.7
725 mosmol/kg
ま た,人
は,1983年
工 尿 で の 緑 膿 菌 に 対 す るOFLXのMIC70
で は12.5μg/mlで
あ っ た が,1987年
に は
VOL.43
Fig.
1.
NO.1
Annual
of Pseudomonas
Fig.
2.
Annual
of Pseudomonas
Fig.
3.
of
Annual
Pseudomonas
50μg/ml,1991年
緑膿 菌性 尿路 感染症 に対す るCIPCの
change
in
the
sensitivity
distribution
change
in
the
sensitivity
distribution
in
5.
of
the
sensitivity
distribution
Annual
aeruginosa.
に は400μg/mlと
Fig.
6.
91
change
Annual
change
Pseudomonas
Annual
年 次 的 に耐 性化 して
間 に 分 布 し て お り9MIC70は800
the
sensitivity
distribution
in
the
sensitivity
distribution
sensitivity
distribution
aeruginosa.
change
μg/mlとNFLX,OFLXに
し か し,MIC
in
aeruginosa.
of Pseudomonas
人 工 尿 中 で の 緑 膿 菌 に 対 す るCBPCのMICは0.39
>1,600μg/mlの
Fig.
aeruginosa.
change
4.
of Pseudomonas
い た(Fig.5)。
∼
Fig.
aeruginosa.
再評 価
broth中
in
the
aeruginosa.
比 し か な りの 高 値 を 示 し た 。
で の 検 討 と 同 様 に,CBPCで
は
年 次 的 耐 性 化 の 傾 向 は 認 め ら れ な か っ た(Fig.6)。
MIC測
定 用broth中
と人 工 尿 中 で の 緑 膿 菌 に 対 す る
日本 化 学 療 法 学 会 雑 誌
92
CBPC,NFLX,OFLXのMIC分
OFLXで
が,CBPCで
2.
1例,不
布 を み る と,NFLX,
は尿 中 で の抗 菌 力 の 明 ら か な低 下 が み られ る
は そ の低 下 は軽 度 で あ っ た(Fig.7)。
率61.9%(13/21)で
効8例,無
効8例
で有効
UTI疾
少4例,菌
交代
変13例
で あ っ た 。 最 終 的 に,
効8例,無
効8例
で 有 効 率 は61,9%で
あっ
た(Table3)。
あ っ た。
細 菌 尿 に対 す る効 果 は陰 性 化9例,減
善2例,不
効 評 価 基 準 に も とつ く総 合 臨 床 効 果 判 定 で は著
効5例,有
主 治 医 判 定 で は著 効5例,有
1995
変7例 で あ っ た。 ま た,膿 尿 に対 す る効 果 は正
常 化6例,改
UTI薬
臨床効果
JAN.
患 病 態群 別 効 果 を み る と,単 数 菌感 染 群14例
で は,著 効4例,有
複 数 菌 感 染 群7例
効5例,無
効5例
で は,著 効1例,有
で 有 効 率64,2%,
効3例,無
効3例
で あ っ た。 カ テー テル 留 置症 例 で は2症 例 に対 し投 与 し
た が 有 効 以 上 の症 例 は認 め られ な か っ た(Table4)。
細 菌 学 的 効 果 で は,本 剤 投 与 前 に尿 中 よ り分 離 され た
34株 中21株
が 消 失 し,除
aeruginosaは21株
除 菌 率 は57.1%で
と,8菌
種13株
除 菌 率 は69.2%で
MIC別
菌 率 は61.8%で
分 離 され,そ
あ っ た。P
の う ち12株
が 消 失 し,
あ っ た 。P.aeruginosa以
が 分 離 され,そ
の う ち9株
外 でみる
が 消 失 し,
あ っ た(Table5)。
細 菌 学 的 効 果 を み る と,分 離 され た 緑 膿 菌 に
対 す るCBPCのMICは6.25∼>1,600μg/mlの
布 し て お り,50μg/ml異
CBPC: carbenicillin,
Fig. 7.
Sensitivity
NFLX: norfloxacin,
distribution
OFLX: ofloxacin
of Aeudomonas
Table
Table
4. Overall
clinical
MIC値
aeruginosa.
3.
Overall
efficacy
clinical
が50μg/mlを
示 し た5株
μg/mlを 示 し た1株 が,ま
efficacy
of carindacillin
の う ち2株
た1,600μg/ml以
of carindacillin
classified
間 に分
常 の株 が多 数 を占 め ていた。
by the type of infection
が,200
上 であっ
VOL.43
NO.1
緑 膿 菌性尿 路感 染症 に対 す るCIPCの
Table
Table
6. Relation
5.
Bacteriological
between
response
93
to carindacillin
MIC and bacteriological
CIPCの
再 評価
response
to carindacillin
投 与 に よ り除 菌 され た。
な お,自
・他 覚 的 副 作 用 お よび 臨 床 検 査 値 に異 常 変 動
を認 め た症 例 は1例
もな か っ た。
III.
考
察
宿 主 側 因 子 の 変 化 と耐 性 菌 の増 加 に伴 い,抗 菌 薬 治療
に 抵 抗 す る慢 性 持 続 性 感 染 症 が増 加 し て お り,そ の 多 く
の 症 例 に お い て細 菌 バ イ オ フ ィル ム の 形 成 が 新 しい慢 性
難 治性 尿 路 感 染 症 の病 態 概 念 と して注 目 を浴 び て い
る6)。な か で も緑 膿 菌 は,他 の細 菌 に比 し高 い バ イ オ フ
ィル ム 形 成 能 を有 し7,8),慢 性 難 治 性 尿 路 感 染 症 の 原 因
Fig.
8.
MIC
Pseudomonas
distribution
of
clinical
isolates
of
菌 と して 重 要 な位 置 を 占 め て い る。 近 年,緑 膿 菌 に対 し
抗 菌 力 を もつ ニ ュー キ ノ ロ ン系 抗 菌 薬 の 開 発 が依 然 と し
aeruginosa.
て続 い て い る もの の,そ の 使 用 量 の増 加 に伴 い,抗 菌 力
た8株 の う ち5株 が 除 菌 され ず存 続 し た(Table6)。
分 離 さ れ た 緑 膿 菌 に 対 す るCBPCお
MIC分
布 をFig.8に
示 す 。OFLXのMIC値
よ びOFLXの
が25μg/
ml以 上 の 高 度 耐 性 株 を15株 認 め た が,こ の うち7株 が
は年 次 的 に明 らか に低 下 し て い る。 一 方,新 規 セ フ ェム
剤 の進 歩,開 発 も著 しい ものが あ るが.抗 緑 膿 菌 活 性 と
い う観 点 か ら は み る べ き進 歩 が な い。 そ こ で,他 に 代 わ
る べ き薬 剤 の な い現 状 に お い て,今 回 我 々 は,緑 膿 菌 に
JAN.
日 本 化 学 療 法 学 会 雑1誌
94
Table
7. pH,
magnesium
concentration
concentration
in MIC broth
1日4回
and calcium
and
artificial
1995
で あ り,高 い 尿 中 濃 度 が 維 持 さ れ る こ と,ま
た,前 述 し た よ うに ニ ュー キ ノ ロ ン薬 と比 較 し て,尿 中
urine
で の抗 菌 力 の 低 下 が 軽 度 で あ る こ とが そ の理 由 と して考
え られ た。 以 上 よ り,比 較 的 高 投 与 量 に もか か わ ら ず安
全性 の 問 題 も特 に な い こ とか ら,CIPCは
緑 膿 菌性 尿 路
感 染 症 に対 して 今 日 で も有 用 な薬 剤 の ひ とつ で あ る と考
え られ た。 今 後,ニュ
性 も含 め て,さ
ー キ ノ ロ ン薬 との 併 用 療 法 の 可 能
ら に検 討 す る 予定 で あ る。
文
対 し適 応 を有 す る合 成 ペ ニ シ リ ン系 薬 剤 で あ るClpCの
1)
基 礎 的 ・臨 床 的 再 評 価 を行 っ た。
Muller-Hinton
brothを
用 い た抗菌 力 測定 法 は同一
菌 種 に対 す る抗 菌 剤 の 抗 菌 力 の比 較,ま
た同一薬剤 の異
2)
な る菌 株 に対 す る抗 菌 力 の 比 較 と して客 観 的 に優 れ た も
の で あ る9,10)。しか し,尿 路 感 染 症 に お い て は,薬 剤 の
作 用 す る場 を尿 中 と考 え た場 合,尿
が,よ
中 で の薬 剤 の 抗 菌 力
公 文裕 巳:経 口抗菌 薬 の特徴 とその 使 い分 けIV:尿路 感
染症, Pharma
Media, 10 (4):77∼85, 1992
日本化 学 療 法学 会抗 菌剤感 受 性 測定 法 検 討委 員 会:微
量液体 希釈 によ るMIC測 定 法 (微量液体 希釈 法)― 日
本 化 学療 法 学 会 標 準 法 ― 。Chemotherapy
38: 103∼
105,
3)
by
定 用broth中
で の 緑 膿 菌 に 対 す る抗 菌 力 は,
4)
著 しい耐 性 化 が認 め られ た。 ま た,人 工 尿 中 に お け る抗
くの ニ ュ ー キ ノ ロ ン薬 に お い てMIC測
定用
5)
性 化 傾 向 が 認 め られ た 。 一 方,ニ ュー キ ノロ ン薬 の 著 し
い 耐 性 化 に 比 し,CIPCの
緑 膿 菌 に対 す るMICは
高値
定 用broth中,人
工 尿 中 と もに 年 次
N,
Musher
of
urine.
the
J.
第22回
UTI研
6)
Infect.
的 に耐 性 化 傾 向 は認 め られ ず,人 工 尿 中 で の抗 菌 力 の低
Indanyl
(Table7),pH,Mg2+濃
れ,人
度,Ca2+濃
工 尿 のpHがMIC測
高 値 で あ る こ とが ニ ュ ー キ ノ ロ ン薬 に お け る尿 中MIC
の上 昇 に関 与 し て い る9∼12)と
考 え られ た 。
また,緑 膿 菌 性 尿 路 感 染 症21例
で は,著 効5例,有
効8例,無
効8例,有
効 評 価 基 準 (第
34: 409∼441,
1986
7∼15,
1993
西 谷 嘉 夫: In vitro実 験 モ デ ル に よ る 複 雑 性 尿 路 感 染
Marrie
T
J,
717∼727,
Costerton
study
surface.
J
of
W:
1991
Scanning
uropathogen
Appl.
Environ.
45:
(16施 設 お よ び 関 連 施 設): 複 雑 性 尿 路
朝 ・夕1回
投 与 の比
40: 40∼59,
浩,
1992
11)
力 測 定 の意 義 。 感 染 症 学 雑 誌66: 522∼528,
1992
熊 田 徹 平, 深 田 智 子, 清 水 喜 八 郎: 抗 菌 剤 の 尿 中 抗 菌
12)
小 野 寺 昭 一: 抗 菌 剤 の 尿 中 抗 菌
る成 績 で あ る30.3%(10/33)13),60.0%(18/30)14),61.8%
14)
第37回
in Rats.
第38回
第39回
387∼394,
(Fleroxacin),
(AT-4140)
(DR-3355)
1989
新薬 シ ン
岐 阜,
日 本 化 学 療 法 学 会 西 日 本 支 部 総 会,
ポ ジ ウ ム 。 Levofloxacin
1989
新薬 シ ン
和 歌 山,
日 本 化 学 療 法 学 会 西 日 本 支 部 総 会,
ポ ジ ウ ム 。 Sparfloxacin
15)
薬 物 動 態3:
日 本 化 学 療 法 学 会 西 日 本 支 部 総 会,
ポ ジ ウ ム 。 AM-833
(21/34)15)と 比 較 し て優 る と も劣 らな い もの で あ っ た。
1986
Okazaki O,
Kuruta T, Tachizawa
H: Studies on
the Mechanism
of Pharmacokinetic
Interaction
of Aluminium hydroxide,
an Antacid , with New
Quinolones
13)
好 な 成 績 が 得 られ た の は,本 剤 の投 与 量 が1回500mg,
to
Microbiol.
遠 藤 勝 久, 清 田
効 率61.9%
比較 的良
electron
adherence
1983
公 文 裕 巳, 他
Chemotherapy
(12/21)と い う成 績 は,ご く最 近 発 売 され た ニ ュー キ ノ
ロ ン系 薬 剤 の複 雑 性 尿 路 感 染 症 に対 す る臨 床 試 験 にお け
値 に も か か わ らず,有 効 率61.9%と
1974
10)
で あ っ た 。 細 菌 学 的 効 果 に お け る緑 膿 菌 除 菌 率57.1%
MIC高
Sodium,
力 と腎 排 泄 。 日 本 臨 床44: 2620∼2625,
に お け る臨 床 的 検 討
1976
較 検 討 。 ― 臨 床 比 較 試 験 の成 績 と そ の 基 礎 的 解 析 ― 。
比 し低 値 で あ
ど2価 の陽 イ オ ン濃 度 が
14•`21,
感 染 症 に 対 す るsparfloxacinの
度 に相 違 が 認 め ら
定 用brothに
る こ と,ま た,Mg2+,Ca2+な
9)
B:
gentamicin
公 文 裕 巳: 尿 路 感 染 症 の 発 症 メ カ ニ ズ ム ―新 し い病 態
1018•`1024,
人 工 尿 の組 成 を 比 較 し た と こ ろ
133:
S
of
究 会 (代 表: 大 越 正 秋): UTI薬
plastic
下 もニュ ー キ ノ ロ ン薬 に比 し,軽 度 で あ っ た。
定 用brothと
Dis.
症 の 解 析 。 西 日泌 尿53:
8)
Thorsteinsson
activity
概 念 に つ い て ― 。 臨 泌47:
7)
M,
日本 化 学 療 法 学 会 総 会 シ ン ポ ジ ウ ム
microscopic
MIC測
D
antibacterial
3版)。 Chemotherapy
brothと 比 較 して3管 程 度 低 下 して お り,年 次 的 に も耐
で あ るが,MIC測
J
Carbenicillin
今 回 検 討 した ニ ュー キ ノ ロ ン薬 す べ て に お い て 年 次 的 に
菌 力 は,多
1990
Minuth
Inhibition
り臨 床 成 績 を反 映 す る もの と思 わ れ る。
MIC測
献
1990
新薬 シ ン
大 分1991
VOL.43
NO.1
Basic
緑膿 菌性 尿路 感染症 に対 す るCIPCの
and
urinary
clinical
tract
evaluation
infection
caused
再評 価
of carindacillin
by
95
for
Pseudomonas
complicated
aeruginosa
Toyohiko Watanabe,
Tadasu Takenaka,
Koushi Sakuramoto , Kouichi Monden,
Toshihide Hayashi, Kazuhiro Hata, Noriaki Ono , Masaya Tsugawa,
Hiromi Kumon and Hiroyuki Ohmori
Department of Urology, Okayama University, Medical School (Director: Prof H. Ohmori),
2-5-1 Shikata-cho, Okayama 700, Japan
Katsuyoshi Kondo
Departmet of Urology, Okayama Red Cross Hospital
Syunji Hayata
Department of Urology, Tottori City Hospital
Yoshitsugu Nasu
Department of Urology, Juzen General Hospital
Teruaki Akaeda
Department of Urology, Tsuyama Central Hospital
Yasuhiro Katayama
Department of Urology, Tamano City Hospital
We evaluated the antibacterial activity and efficacy of carindacillin (CIPC), a synthetic
penicillin, in the urological field.
1) Antimicrobial activities: Statistical studies
were performed on Psudomonas aeruginosa
isolated from patients with urinary tract infection from 1983 to 1991. Antimicrobial activities of
new quinolones against these strains were annually reduced both in Muller-Hinton broth (MHB)
and in artifical urine (AU). Antimicrobial activities of new quinolones in AU were more reduced
than those in MHB, but the antimicrobial activities of CIPC were less reduced in both MHB and
AU than those of the new quinolones. It was considered that the antimicrobial activities of the
new quinolones were reduced due to low pH and high concentrations of magnesium and calcium in
AU.
2) Clinical efficacy: According to the criteria of the Japanese UTI Committee, the overall
clinical efficacy rate was 61.9% (13/21). Bacteriologically, 21 of 34 strains (61.8%) isolated were
eradicated. The eradication rate for P. aeruginosa was 57.1% (12/21).
3) Side effects: No clinical side effects or abnormal laboratory changes were observed.
Based on the above results, CIPC might be useful in the treatment of urinary tract infection
caused by P. aeruginosa