「 患者氏名 ( 腎がんに対する分子標的薬治療 」説明および同意書 四国がんセンター 泌尿器科 )さん 「御本人さんのみへの説明でよろしいですか?」 □ (いいえの場合は同席者の氏名をすべて記載します) ( ( はい 腎がん 転移部位 ( <治療> 注射(トーリセル) 内服(ネクサバール、スーテント、アフィニトール、 インライタ、ヴォトリエント) <治療開始予定日> 年 月 日 ) ) <病名> ) <治療期間> CT などで効果を確認しながら継続します。 <治療の前に> 近年、がん細胞と正常細胞の構造の違いやがん細胞の増殖のパターンなどが 徐々に明らかとなってきています。がん細胞において、その特徴となっている 部分、すなわち増殖や進行に関係する分子をターゲットにして開発されたのが 分子標的薬です。理論的には、がん細胞にだけ作用して、正常細胞への影響は 少ないはずです。しかしながら、実際にはこれまでに無かったような副作用が 出現し、中には重篤な副作用も発症することがわかりました。2008 年に分子 標的薬が本邦でも認可されましたが、それまで転移のある腎がんの治療は、イ ンターフェロンなどの免疫療法しかありませんでした。免疫療法の有効率は低 く、生存に関する有益性も少ないままでしたので、分子標的薬の出現により転 移のある腎がんの治療は大きく様変わりしました。現在腎がんに対しては6種 類の分子標的薬が使用可能です。 分子標的薬などの新規薬剤は、大規模な臨床試験において従来の治療と比較し 有用性が確認されてから許可されます。たとえば、下記の表において、ネクサ バールはサイトカイン(免疫療法)治療歴のある人に使用され、コントロール薬で ある偽薬(プラセボ)を内服した人に比べ有用性が認められたので使用できる 1 ようになりました。 分子標的薬 コントロー 奏功率 ル薬 無増悪生存期間中央 生存期間中央値 (コ 値(コントロール薬 ントロール薬との差) との差) ネクサバール プラセボ 10% 5.5 ヶ月(2.7 ヶ月) 17.8 ヶ月(なし) スーテント インターフ 47% 11.0 ヶ月 (5.9 ヶ月) 26.4 ヶ月(なし) ェロン アフィニトール プラセボ 1% 4.0 ヶ月(2.1 ヶ月) 未達 トーリセル インターフ 8.6% 3.8 ヶ月(1.9 ヶ月) 10.9 ヶ月 (3.6 ヶ月) 19.6% 8.3 ヶ月(2.6 ヶ月) 20.1 ヶ月(なし) 31% 8.4 ヶ月(なし) ェロン インライタ ネクサバー ル ヴォトリエント スーテント 28.3 ヶ月(なし) 奏功率:腫瘍が 30%以上縮小する 無増悪生存期間:腫瘍が悪化せず、薬の効果がある期間 この表を見るとスーテントの有効率が最も高いように思えますが、そうではあ りません。これら 6 種類の薬剤を直接比較した臨床試験はありませんし、対象 患者が違うため、有効率の比較を直接することが出来ません。 <各薬剤について> ネクサバール サイトカイン(インターフェロンなどの免疫療法)の治療歴のある人に対 して試験がなされました。 ネクサバールと比較された薬はプラセボ(偽薬で薬ではありません)です。 奏功率は 10%でした。 無増悪生存期間がネクサバールで 5.5 ヶ月、対照薬が 2.7 ヶ月でネクサ バールの方が延長しました。 生存期間には差はありませんでした。 副作用は、手足症候群、高血圧、肝機能異常などが主なものです。 日本ではこの薬が一番に認可されました。 スーテント 何の治療も受けていない人に対して試験がなされました。 対照薬はインターフェロンです。 2 奏功率は 47%です(インターフェロンは 12%)。 スーテントの無増悪生存期間は 11 ヶ月でインターフェロンに比べ有意 に延長しました。 生存期間はスーテントで 26.4 ヶ月、インターフェロンで 21.8 ヶ月とス ーテントが若干延長していますが、有意差はありません。 重篤な副作用は高血圧 12%、倦怠感 11%、下痢 9%、手足症候群 9% です。 重篤な血液毒性、好中球減少は 15%、血小板減少は 8%と報告されてい ますが、日本人の副作用の頻度はかなり高く、好中球減少が 51%、血小 板減少が 55%と報告されています。また甲状腺機能低下も 22%に見ら れます。 アフィニトール ネクサバールやスーテントの治療後の再発症例に対して試験がなされま した。 対照薬はプラセボ(偽薬)です。 奏功率は 1%、無増悪生存期間はアフィニトールで 4.6 ヶ月、プラセボ で 1.8 ヶ月、アフィニトールが良い結果でした。 副作用は胃炎、倦怠感、貧血が主なものです。 トーリセル 高リスクグループで治療を受けていない人を対象に試験がなされました。 対照薬はインターフェロンです。 トーリセルは注射薬で、1 週間に 1 度点滴で治療します。 奏功率は 8.6%、無増悪生存期間は 3.8 ヶ月で対照薬のインターフェロ ンより有意に延長しました 全生存期間も有意に延長しました(10.9 ヵ月 vs 7.3 ヵ月)。 主な副作用は発疹、口内炎、高血糖などです。 インライタ インターフェロンやスーテントなどの治療歴がある人を対象に試験がな されました。 対照薬はネクサバールです。 奏功率はインライタで 19.6%、ネクサバールで 9.2%でした。 無増悪生存期間インライタで 6.8 ヵ月、ネクサバールで 4.7 ヵ月であり、 3 インライタ群が良い結果でした。 全生存期間には差はありませんでした。 主な副作用は、高血圧、手足症候群、発声障害、蛋白尿でした。 ヴォトリエント 何の治療も受けていない人を対象に試験がなされました。 対照薬はスーテントです。 奏功率はヴォトリエント®で高く、統計学的に有意差が認められました (ヴォトリエント®で 31%、スーテントで 25%)。 無増悪生存期間はヴォトリエントで 8.4 ヶ月、スーテントで 9.5 ヶ月で 有意差はありません。 全生存期間はヴォトリエントで 28.3 ヶ月、スーテントで 29.1 ヶ月で有 意差はありません。 主な副作用は、下痢 53.4%、高血圧 42.8%、疲労 38.4%、肝機能障害 35.1%、悪心 33.9%、毛髪変色 32.9%、食欲減退 28.9%、味覚異常 21.8%、嘔吐 21.4%、手掌・足底発赤知覚不全症候群 20.7%でした。 <副作用について> 以下の表に各薬剤の副作用をまとめました。これ以外にも頻度の少ないもの が数多くあります。 薬 頻度の高いもの(10%以上) 重篤なもの(G3 で 5%以上) ネクサバー 手足症候群(57%)、高血圧(34%)下痢(19%)、脱毛 手足症候群、肝機能異常 ル (17%)、アミラーゼ(14%)、発疹(14%)、肝機能 異常(11%) スーテント 血小板減少(61%)、手足症候群(37%) 、甲状腺機能 血小板減少、白血球減少、高血圧、手足 低下(36%)、高血圧(35%)、白血球減少(33%) 症候群 アフィニト 口内炎(44%)、発疹(30%) 、貧血(28%)、疲労(25%) 、 間質性肺炎、高血糖、貧血 ール 下痢(24%)、 トーリセル 発疹(59%)、口内炎(57%)、コレステロール(43%) 、 高血糖、口内炎、間質性肺炎、感染症、 インライタ 食欲不振(37%)、高血糖(32%) 胸水 高血圧(76%)手足症候群(71%)、下痢(63%) 、発 高血圧、手足症候群、疲労、蛋白尿、食 声障害(55%)、疲労(53%)、蛋白尿(40%)、甲状 欲不振、 腺機能低下(39%)、口内炎(32%)、 ヴォトリエ 下痢(53.4%) 、高血圧(42.8%)、疲労(38.4%)、肝 4 高血圧、肝障害、疲労、下痢、手足症候 ント 機能障害(35.1%)、悪心(33.9%)、毛髪変色(32.9%) 、 群 食欲不振(28.9%)、味覚異常(21.8%)、手足症候群 (20.7%) 以上のように、各薬剤にはそれぞれ特徴があり、また出現する副作用も違いま す。また、欧米人と日本人とで副作用の出現率が異なることにも注意が必要で す。 採血などにより、異常の早期発見に努めますが、何かあればすぐにお知らせく ださい。患者さんからの情報が合併症の早期発見のために重要です。早期発見 できれば適切な対応策がとれ、重症化せずにすみます。 また、現在内服中の薬に中に飲み合わせの悪い薬もありますので、薬剤師が確 認します。 <治療の選択について> さて、問題はどの薬剤を使用するかです。ガイドラインでは各薬剤に対して 行われた臨床試験の対象者をもとに推奨する薬剤を決めています。以下にヨー ロッパ泌尿器科学会から出されたガイドラインを示します。一つ例をとってみ ると、治療を受けていない人(ファーストライン)で淡明細胞がん、高リスク グループ(poor リスク)ならトーリセルが推奨される、ということになります。 ただ、このガイドラインはあくまで参考にしかなりません。実際には患者さん の状況は一人一人違うのでその都度最適な治療を考えることになります。 リスクグループについて: 全身状態や貧血、カルシウム値など 5 つのリスク因子の内、3 つ以上のリス ク因子があれば高リスクグループ(poor リスク)、1-2 つあれば中間リスクグ ループ(intermediate グループ)、全くなければ低リスクグループ(good リス ク)となります。 組織型および治療ライン 淡 明 細 胞 が ん リスクおよび 前治療 標準治療 ファースト 低リスク スーテント ライン治療 または 中間リスク ヴォトリエント 高リスク トーリセル サイトカイン 治療後 ネクサバール インライタ セカンド ライン治療 5 ヴォトリエント チロシンキナーゼ阻害剤 アフィニトール 投与後 インライタ ネクサバール サード ライン治療 チロシンキナーゼ阻害剤 アフィニトール 投与後 mTOR 投与後 非淡明細胞がん ソラフェニブ スーテント アフィニトール トーリセル チロシンキナーゼ阻害剤;ソラフェニブ、スーテント、インライタ、ヴォトリ エント mTOR;アフィニトール、トーリセル 今回は、これまでの経過から先に示した分子標的薬を使用することにしました。 <費用など> 分子標的薬の治療はいずれも現在の医療保険で腎がんの患者さんに対して適 応が認められており、治療にかかる一切の費用は医療保険制度に添って請求と 支払がなされます。これらの治療によって健康被害が生じた場合の特別な補償 の制度はありませんが、病院で誠意をもって治療にあたります。治療費は保険 を使用した場合の一般診療での対処に準じて行われます。 分子標的薬は非常に高額です。以下に各薬剤を 1 ヶ月間スケジュール通り内 服した場合の費用をお示しします。実際の支払いは保険の種類によって異なり ます(1 割-3 割)。 薬剤名 薬剤単価 1 日あたり の使用量 1 ヶ月あたりの 治療日数 1 ヶ月の 薬剤金額 ネクサバール 4547.2 円 4錠 30 日 約 55 万円 スーテント 4錠 28 日 約 80 万円 2錠 30 日 約 76 万円 7161.8 円 アフィニトー 12711.1 円 6 ル トーリセル 132915 円 1瓶 4回 約 53 万円 インライタ 9094.4 円 2錠 30 日 約 55 万円 ヴォトリエン 4142.3 円 ト 4錠 30 日 約 50 万円 以上 「 腎がんに対する分子標的薬治療 説明年月日 」について説明しました。 平成 年 月 日 年 月 日 説明医署名 説明時同席者 担当医より上記内容について説明を受けました。 説明年月日 平成 患者氏名 同席者氏名 (患者さんとの関係: 7 ) 同意書 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 院長殿 治療名: 腎がんに対する分子標的薬 <説明および同意内容> □<病名> □<治療> □<治療開始予定日> □<治療期間> □<治療の前に> □<各薬剤の説明> □<副作用> □<治療法の選択について> □<費用など> 私は、治療の内容についてそれぞれ説明を受けた上、治療を受けることに同意 いたします。 同意日 平成 年 月 日 患者氏名 同席者氏名 私は、治療について上記の項目を説明し、同意が得られたことを確認します。 確認日 平成 医師氏名 同席者氏名 8 年 月 日
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