農家レストラン開設・ 運営に関する留意点 農業の 6 次産業化に伴い、直販、加工等に取り組む農業者が増えており、直食(以下「農家レストラ ン」)への関心も高まりつつあります。今回は、農家レストランに取り組むための留意点について紹介 します。 1 農家レストランとは 農林水産省の定義によれば、「農業を営む者が、「食品衛生法」に基づき都道府県知事の許可を得て、 不特定の者に自ら生産した農産物や地域の食材をその使用割合の多寡にかかわらず用いた料理を提供し 料金を得ている事業」となっています。 このような農家レストランが全国的に増えている理由としては、食の安全・安心が求められている中、 産地へのこだわりや自然豊かな農村文化に触れながら郷土食を 通じて交流するグリーン・ツーリズムが盛んになっていること が背景として考えられます。 2 メニューづくりの原則~逸品料理を作ろう~ 農家が飲食店事業に取り組むメリットは、新鮮な食材料が原 価で入手できることと農村の地域資源が活かせることです。あ りのままの自然や伝統的な食文化や歴史、農家の佇まい(居住 空間)等が地域資源であり、その地域でのストーリーと共に郷 土料理や家庭料理を提供できることが最大のメリットです。 郷土食をメインにしたメニュー 農家レストランに求められるものは、農村地域で普通に食べ られている手作りの暖かな家庭料理や現在ではなかなか食べられなくなったその土地にしかない郷土料 理等です。これらに創意工夫を加えて現代風にアレンジすることもよいですが、「安全・安心」と「食 文化」は、メニューづくりの重要なコンセプトになります。また、メニュー数を多くするより、自慢の 逸品である名物料理 ( 郷土食等 ) を絞り込んで提供した方が特徴を出せます。そして、料理の由来や調理 の手順やコツ、盛り付け方などを記載したレシピ(料理の処方箋)を整備しましょう。 表1 農家レストランの経費割合 10 3 農家レストランの計数管理 経営規模や営業体制にもよりますが、開業するとなると 1 人でできるものではなく、複数人のスタッフ確保や店舗の運 営や接客、労務管理等の経営管理の知識と実践が必要になっ てきます。農家レストランが利益を出すためには、飲食業経 営の大原則が実践できていなければなりません。飲食業の二 大費目は、食材費と人件費です。この経費の合計が売上げの 60%以内でなければ利益が出ないと言われています。また、 食材原価率は30%程度を目安にして価格設定をしなければな りません。その他、 水道光熱費、 施設の維持管理にかかる費用、 税金などすべて売上から捻出しなければならないからです。 4 開業に向けて 飲食店を新規に開業するとかなりの 資金が必要になります。建物にかかる 費用は、なるべく抑える工夫をしま しょう。廃校になった校舎を改築し、 給食室設備の機材を入れ替えそのまま 活用し、農家レストランとして開業し ている事例も多く見られます。また、 築100年 余 の 自 宅 を 古 民 家 風 に 改 築 し、古い家具や農具などをインテリア として活用している方もいます。そし て、経営計画づくりは、メニュー研究 や店舗の雰囲気、材料の調達等、その 名にふさわしいサービスを提供できる よう十分に時間をかけ慎重に練らなけ ればなりません。客単価や予測入込人 数、 1 日の見込売上高と営業時間や日 数等を設定し、年間の売上高を見込み、 人件費、施設管理費、減価償却費等の 経費を算出し、損益分岐点等を予測し ながら計画をたてていきます。ここで の留意点は、客単価は決して安くしな 農家レストラン開業の手順 いことです。イベント等へ参加し、ター ゲットとなるお客へアンケートを取るなどして(テストマーケティング)意見を取入れ、満足感の得ら れるメニューを決定しましょう。 また、飲食店営業は、食品衛生法による営業許可が必要となります。食品衛生法上の施設要件を満た すことが重要となりますので、店舗設計の段階で保健所への相談をおすすめします。 そして、施設整備後、実際の開店にあたりいきなりオープンするのではなく、関係者を招待したプレ オ-プン・レセプションの段階を数回踏むことにより、スタッフの調理や接客等のトレーニングの機会 を作ることができます。最初からスムーズにいかないことはあたり前ですが、プレオープンを通じて出 された問題点はすぐに改善策をたて、ルールとして徹底しておくことが重要です。 農家レストランは、飲食店営業をベースにした経営ノウハウが必要であり、適正な利益を生み出すた めにも先進地の視察や綿密な事業計画の作成に時間をかけましょう。地元の農業者・商工業者のネット ワークづくりも有効です。農家レストランの取組が活発になり地域活性化につながることを期待します。 【引用文献】高桑 隆著『農家レストランの繁盛指南』 9月にオープンした村上市大毎の「こころまい」築150年の自宅を改築し営業 【経営普及課農業革新支援担当 河内 由紀子】 11
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