一般入試/化学(後期) 出題のねらい

一般入試/化学(後期)
な値を示す。一方、原子が電子を1個取り入れて、1価
出題のねらい
一般(後期)の化学は、化学基礎・化学全般から出
の陰イオンになるときに放出するエネルギーを電子親
和力といい、
この値が大きい原子ほど陰性が強い。
題しました。いずれの問題も基本的な内容を理解してい (2)水素イオンを除く原子番号が20までの元素のイオン
るかを問うています。単なる暗記にとどまらず、基礎をしっ
では、原子番号が最も近い希ガス原子と同じ電子配
かりと固め、自分のものにしているかどうかを確認するの
がねらいです。
置をとる。
リチウムイオンLi+はヘリウム原子と同じ電子
配置を、
フッ化物イオンF-、
ナトリウムイオンNa+、マグネ
【1】 周期律、イオンの構造に関する問題と、酢酸と酢
酸ナトリウムの緩衝液に関して出題しました。化学平
衡について、平衡定数やルシャトリエの原理などしっ
かり確認しておきましょう。
シウムイオンMg 2+はネオン原子と同じ電子配置を、
カリ
ウムイオンK+、塩化物イオンCl-はアルゴン原子と同じ
電子配置をとる。
B 電離平衡(酢酸と酢酸ナトリウムの混合溶液)
(1)
(2)酢酸と酢酸ナトリウムの混合水溶液では、酢酸ナ
【2】 水酸化ナトリウムとシュウ酸の中和滴定実験に関し
て出題しました。実験操作については、操作の意味
をきちんと把握し、実験器具についても確認しておき
ましょう。濃度を求める計算問題については、演習
を通じて早く正確に計算できるように努めましょう。
【3】 酸素とその化合物をテーマにした問題です。酸素
に関連した幅広い知識が必要です。無機化学は内
容が豊富な分野なので演習をして、知識を整理して
おきましょう。
トリウムは、
CH 3COONa → CH 3COO- + Na+
と完全に電離している。酢酸イオンCH 3 COO-が多量
にあるため、酢酸については、
CH 3COOH 扌 CH 3COO- + H+
の平衡は左に大きく偏り、CH 3 COOH はほとんど電離
しない。
ここに、H+を少量加えると、
CH 3COO-+ H+→ CH 3COOH
と反応してCH 3COOH が生成する。
このため、水溶液
中の[H+]はほとんど変化しない。
【4】 サリチル酸の合成と反応を題材にして、芳香族化
合物の名称や構造式、用途などに関して出題しまし
た。フェノール類と塩化鉄(Ⅲ)水溶液の呈色反応
についても、確認しておきましょう。
また、OH-を少量加えると、
CH 3COOH+OH-→ CH 3COO-+ H 2O
の反応が起きる。
このため、水溶液中の[OH-]はほとん
ど変化しない。
このように、H+やOH-を加えてもpH がほとんど変化
【5】 核酸について、設問文の空所補充式を中心に基
しない溶液を緩衝液といい、
この作用を緩衝作用とい
う。
本的な知識を問う問題です。教科書で核酸の構造、 (3)酢酸の電離定数K a は、次のように表される。
種類などを一通りおさえておきましょう。
0 .20 mol/L の酢酸水溶液と、0.20 mol/L の酢酸ナ
【1】
トリウム水 溶 液を同 体 積 ず つ混 合した水 溶 液では、
【解 答】(37 点)
[CH 3 COO-]≒[CH 3 COOH]と近似できるので、[H+]=
A(1)ア ①
イ ⑦
ウ ⑥
エ ③
(2)⑥
B(1)ア ③
(各 4 点×4)
(4 点)
イ ④
(各 4 点×2)
(2)緩衝液
(4 点)
(3)4.7
(5 点)
【解 説】
A 物質の構造(周期律、
イオンの構造)
(1)原子から電子を1個取り去り、1価の陽イオンにするた
めに必要なエネルギーをイオン化エネルギーといい、同
じ周期の原子では、1族で最も小さく、18族で最も大き
K a が成り立つ。[H+]=2.0×10-5 mol/L より、
pH=-log(2.0×10-5)=-log 2.0+5=4.7
一般入試/化学(後期)
【2】
【3】
【解 答】(30 点)
【解 答】(26 点)
(1) ④
(5 点)
(2) ア メスフラスコ
イ ホールピペット
ウ コニカルビーカー
(1) 分留
(4 点)
(2) 2H2O2 → 2H2O + O2
(4 点)
(3) ①
(4 点)
(4) ④
(5 点)
(各 4 点×4)
(5)(a)
同素体
(4 点)
(3) ④
(4 点)
(b)
24 mL
(5 点)
(4) 0.160 mol/L
(5 点)
エ ビュレット
【解 説】
【解 説】
無機物質(酸素の単体と化合物)
(1)
(2)酸素は工業的には液体空気の分留によって得
物質の変化(中和滴定)
(1)0.100 mol/L のシュウ酸水溶液100mL中には、
シュウ酸(COOH) 2 が、 含まれ
ればよいので、
シュウ酸二水和物(COOH) 2・2H 2Oを
とり、水で溶かして100mLにす
れ ば よ い 。は か りと っ た シ ュ ウ 酸 二 水 和 物
(COOH) 2 ・2H 2 O の質量は、(COOH) 2 ・2H 2 Oのモル
質量が126g/mol より、
る。実験室では、過酸化水素水に、触媒として酸化マ
ンガン(Ⅳ)を加えて得ることが多い。
2H 2O 2 → 2H 2O + O 2
(3)希ガスは化合物をつくりにくい。
(4)ある温度において、一定量の溶媒に溶ける気体の物
質量(あるいは質量)は、溶媒に接している気体の圧
力に比例する
(ヘンリーの法則)。
標 準状態で、水1 L に溶ける酸素の物質量は、
である。
3.0×10 5 Pa の空気中の酸素の分圧は、
(2)それぞれの器具の名称は次の通りである。
であるので、ヘンリーの法則より、水1 L に溶けている
酸素の質量は、
(5)
( a)酸素O 2 とオゾンO 3 は、同じ元素からなる単体で
性質の異なる物質であり、互いに同素体の関係にあ
る。
メス
フラスコ
メス
シリンダー
ホール
ピペット
コニカル
ビーカー
ビュレット
正確な体積の液体をはかりとる器具はホールピペット、正
(b)同温・同圧では気体の体積の比は物質量の比に
等しい。
よって、3x〔mL〕の酸素がオゾンになったとす
ると、体積の変化は次のようになる。
確に希釈する器具はメスフラスコ、滴下に用いる器具は
3O 2 → 2O 3
ビュレットである。
メスシリンダーは目盛りの精度が低い。
反 応前 100.0 0
(3)
フェノールフタレインは塩基性で赤、
中性~酸性で無色
である。
(4)
中和点では、酸からのH+の物質量と塩基からのOH-の
反 応後 100.0-3x 2x 単位mL
反 応後の気体の体積の合計は、92.0 mLであるから、
(100.0-3 x )
+ 2x =92.0
物質量が等しい。
よって、水酸化ナトリウム水溶液の濃度
x=8.0 mL
をy〔mol/L〕
とすると、
反 応した酸素の体積は、3×8.0=24 mL
一般入試/化学(後期)
(3)
DNAに含まれる塩基は、
アデニン、
グアニン、チミン、
シ
【4】
トシンの4種類で、
RNAに含まれる塩基は、
アデニン、
【解 答】(32 点)
(1)(ア)
ナトリウムフェノキシド
(ウ)
サリチル酸
(5 点)
グアニン、
ウラシル、
シトシンの4種類である。
(5 点) [核酸の構造]
(5 点) ・ヌクレオチドの構造
(エ)
アセチルサリチル酸
(2) ④
(4 点)
(3) ③
(4 点)
(4) ②
(4 点)
(5)(ウ)
,
(オ)
(完答 5 点)
・ポリヌクレオチドの構造
【解 説】
有機化合物(サリチル酸)
(1)
(2)
(3)フェノールに水 酸 化ナトリウムを加えると、
中和 反 応が起きて(ア)ナトリウムフェノキシドが生成
する。
これに、二酸化炭素を高温・高圧で作用させる
と
(イ)サリチル酸ナトリウムが生成する。サリチル酸ナ
糖は、
トリウムは塩であるので、
より強い酸の硫 酸を加える
DNA ではデオキシリボース
と
(ウ)サリチル酸 が 遊 離 する。サリチル酸に無 水 酢
RNA ではリボース
酸と濃硫酸を加えて反応させるとアセチル化が起こり
(エ)
アセチルサリチル酸が、
メタノールと濃硫酸を加
えて加熱するとエステル化が起こり
(オ)サリチル酸メ
チルが生じる。
(4)サリチル酸メチルは湿布薬などに用いられる。
(5)塩化鉄(Ⅲ)水溶液はフェノール類の検出に用いられ
る。
フェノール性ヒドロキシ基により、赤紫色~青紫色
塩基は、
に呈色する。
DNA では、
アデニン、
グアニン、
シトシン、
チミンの4 種
【5】
RNA では、
【解 答】(25 点)
(1) ア ②
アデニン、
グアニン、
シトシン、
ウラシルの4 種
イ ③
ウ ①
エ ⑤
(各 4 点×4)
(2) ⑤
(4 点)
(3) ④
(5 点)
【解 説】
高分子化合物(核酸)
(1)
(2)核酸とは、通常ヌクレオチドが次々と結合したポ
リヌクレオチドのことをさす。その単量体に相当するヌ
クレオチドは、窒素を含む有機塩基と五員環の糖とが
結合したヌクレオシドに、
さらにリン酸が結合した構造
をもつ。核酸のうち、
DNAは、
2本のポリヌクレオチドが
水素結合により結合した二重らせん構造を形成してお
り、そのヌクレオチドの塩基配列は通常変化しないの
で、その配列が生物の遺伝情報となる。一方、
RNAは
通常ポリヌクレオチドが一本鎖で存在し、生体内のタ
ンパク質の合成に関わる。