おかめちゃんのけんきゅう ~[おかめちゃん まんまよ~]~ 呉市立内海

<特選>
《研究作品の概要》
おかめちゃんのけんきゅう ~[おかめちゃん まんまよ~]~
呉市立内海小学校 第1学年
廣川 芽衣
けんきゅうさくひん
《研 究 作品のポイント》
く ふう
てん
○ 工夫した点
・1年かんのカメとのくらしを,しゃしんやえできろくしたこと。
・じぶんがかんじたことや,じっけんでわくわくした気もちを,じぶんのにがおえを入れて,たのし
くまとめたこと。
・さかなつりのようにひもにたべるものをぶらさげて,カメのすきなたべものをしらべたこと。
・足のうらにすみをぬったり,ちがういろの4しょくのえのぐをぬったりして,カメのあるきかたを
しらべたこと。
わ
てん
○ 分かった点
・カメは,にくやさかなややわらかいくだものがすきだということ。
・カメはうたとはちがって,はしるのがはやいということ。
・カメは,くねくねあるくということ。
・カメは,右手と左足,左手と右足をどうじに出してあるくということ。
○
ついきゅう
てん
もっと追 究 したい点
・カメのあるきかたは,赤ちゃんのはいはいや,犬のあるきかたとはちがっているようだったけれど,
カメとおなじあるきかたをするどうぶつがいるのか,どうぶつえんにいってさがしてみたい。
《審査評》
この研究は,昨年4月から飼い始めた亀の動きの特徴や習性について,世話や観察をする中で気付い
たり,実験を通して考えたりしたことをまとめたものである。まるで自分の家族のように,日々「おか
めちゃん」に呼びかけながら繰り返しかかわり,愛着や興味・関心を深めていったことが感じられる極
めて優れた作品である。
<特選>
《研究作品の概要》
音がつたわるふしぎ ~糸電話からちょうしんきまで~
広島市立東浄小学校 第2学年
若松 真
けんきゅうさくひん
《研 究 作品のポイント》
く ふう
てん
○ 工夫した点
じ ゅ わ き
・糸や受話器のそざいのしゅるいをできるだけ多くしてくらべたこと。
ば めん
・生活の中の「音がつたわる」場面をじっけんでさいげんしたこと。
わ
てん
○ 分かった点
じ ゅ わ き
わ
・糸や受話器のそざい,形など,もっとも聞こえやすい糸電話のじょうけんが分かったこと。
わ
・
「音がつたわる」とは,空気や水,糸などを通して「ふるえがつたわる」ということが分かったこと。
し
く
し
く
り よう
わ
・ちょうしんきは,音がつたわる仕組みをうまく利用していることが分かったこと。
ついきゅう
○
てん
もっと追 究 したい点
・虫,声,スピーカーの音が出る仕組みについてしらべてみたい。
・公園のゆうぐのように,1かいと2かいで話せるような糸電話を作ってみたい。
・音の大きさや強さ,高低を数の大小でくらべてみたい。
《審査評》
この研究は,どんな糸電話がよく聞こえるのか調べてみたいと興味をもったことをきっかけに,17 種
類の糸電話を作成し,その条件について追究したものである。身の回りにある物を使って実験方法を工
夫し,結果から「なぜそうなったのか」を考え,自分なりの結論を導いている,極めて優れた作品であ
る。
<特選>
《研究作品の概要》
糸電話からはなれた人たちにも声はとどくかな?
~糸電話がスピーカーになれば,声はとどくはず!~
尾道市立日比崎小学校 第3学年
西浦 百香
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・1年生から続けている研究の結果を生かし,より長い距離でも声が届く糸電話を作ることができな
いかと考えたこと。
・それぞれの実験の目的に対して,コップ・糸などはどの素材が最も効果的であるか,繰り返し見直
しながら実験したこと。実験が成功するたびに,さらによりよい結果になるように考え,試したこ
と。
・実験の様子を,図を用いて分かりやすく記録したこと。
○
分かった点
・紙コップ1個に糸を一本ずつ通して作った場合,紙コップの数が多いほどよく声が聞こえたこと。
・針金は揺れる音が大きくて声が聞こえにくいので,たこ糸を使った方がよいこと。
・プラスチックコップにメガホンを付けたものを増やすと,声がよく聞こえるようになった。震えを
逃がさないようにするために,メガホンは内側に入れるとよいこと。
・糸を曲げると震えが弱くなり,伝わる声が小さくなることは2年生の時の実験で分かっていた。糸
電話スピーカーは,糸を曲げるとスピーカーに付けた糸同士がからまり,震えを止めてしまうので,
声は聞こえなくなったこと。
・声(震え)をうまく伝えるために,一つのコップにたくさんの糸をつければよいこと。
○
もっと追究したい点
・プラスチックコップ 10 個は成功したので,20 個でもできるのか調べてみたい。
・紙のメガホンではなく,プラスチックのメガホンだったら,どのように聞こえるのか。全部のコッ
プにプラスチックのメガホンを付けて,調べてみたい。
・スピーカーは糸が曲がっていても音が聞こえたので,どんな仕組みで音が聞こえているのか調べて
みたい。
《審査評》
この研究は,去年までの研究をもとに台所で料理をしているお母さんにも聞こえる糸電話スピーカー
を作ることを目的に研究したものである。日常生活における必要性から出発し,去年までの研究をもと
に予想を立て,工夫しながら実験を行い,科学的に追究した極めて優れた作品である。
<特選>
《研究作品の概要》
ありのふしぎ発見
呉市立和庄小学校 第4学年
小野 桃和子
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・自らの素朴な疑問や予想に基づいて研究を進めるとともに,その過程で新たな疑問を見つけ,研究
を深めていること。
・ありの活動の様子を1時間ごとに観察し,図や絵を使って分かりやすく記録していること。
○
分かった点
・ありは甘いものが好きだが,より小さく運びやすいものを選ぶこと。
・ありは視覚より主に嗅覚によって食べ物を見つけること。
・ありは水を怖がらないが,泳ぐことは得意ではないこと。
・ありが特に苦手とするものは,調べたものの中では「漂白剤」であったこと。
・食べ物に砂や土をかける習性から,家の周りにいるありは「トビイロシワアリ」であると考えられ
ること。
・トビイロシワアリが砂をかける理由は,その場を通りやすくするためであると考えられること。
○
もっと追究したい点
・ありの好き嫌いについてさらに調べたい。
・他の種類のありについても調べてみたい。
・トビイロシワアリが食べ物に砂や土をかける様子を詳しく観察したい。
《審査評》
この研究は,アリの食べ物に対する好き嫌いを調べる過程で,新たに生じた疑問について追実験し,
結果を基に考察したものである。身近な生きものを,独自の視点で観察し,その過程で生まれる疑問に
ついて追究した極めて優れた作品である。
<特選>
キアゲハの観察と研究Ⅳ 明るさと「蛹化の場所」
,「羽化のタイミング」の関係
呉市立三坂地小学校 第5学年
日高 優
《研究作品の概要》
《研究作品のポイントなど》
○
工夫した点
・明るい面と暗い面を作る時に,実験1・2では,条件をそろえるためにLEDライトを使用し,実
験3では,段ボールで周りを覆い自然の状態に近付けたこと。
・羽化を調べる実験4では,異なる三種類の明るさを設定し,それぞれの明るさと温度を測定して,
どちらの要因が羽化に関係しているかを調べたこと。
○
分かった点
・蛹化の実験から,キアゲハが蛹になる場所を決定する要因の一つに明るさがあること。
・羽化の実験(朝,急に明るくなる南東向きの蛹が最も早く羽化すること)から,明るさが羽化する
タイミングに関係していること,温度の要因だけが羽化のタイミングを決定するのではないこと。
○
もっと追究したい点
・キアゲハを飼育する中で,蛹のまま越冬するもの,真冬でも羽化する蛹がいたことから,蛹が越冬
する要因を調べたい。
・キアゲハの幼虫に食草を与え続けると,多くの幼虫がだんだん臭角を出さなくなってきた。臭角を
出さなくなった原因を調べたい。
《審査評》
この研究は,一年の時から続けているキアゲハの研究で,幼虫が蛹になる場所や蛹が羽化するタイミ
ングについて,明るさがどのように影響しているのかを研究したものである。キアゲハが蛹になるとき
や羽化するときの明るさの影響について数多くの実験を行い,それらのデータから信頼性の高い考察を
している極めて優れた作品である。
<科学賞委員会特別賞>
クモとぼくらの夏休み ―灰塚のクモ大研究―
三次市立灰塚小学校 第5学年
落合 亮太
藤井 純也
《研究作品の概要》
藤川 乃絵瑠
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・学校周辺に生息している様々な種類のクモについて,解剖顕微鏡を使って丁寧にスケッチし,それ
を基にクモの種類を調べたこと。
・疑問から課題を設定し観察・実験を行い,そこで生まれた新たな疑問からまた次の課題を設定して
いくというように,思考が次々と連続していくよう研究を進めたこと。
○
分かった点
・学校周辺には想像していた以上の数・種類のクモが生息しており,種類によってすむ場所もおおよ
そ決まっていること。
・クモは,巣に獲物がかかったことを色や形で判断するのではなく,振動によって判断すること。
・クモの巣の縦糸は太く,横糸は細く粘り気があること。また,クモは縦糸の上を歩いているため,
くっつかないで歩くことができるということ。
○
もっと追究したい点
・本研究で,種類の特定ができなかったものが何種類かいた。さらに多様な種類のクモを観察してみ
たい。
・種類によって,クモの巣の強度,粘り気に違いはあるのか調べてみたい。
・クモの生息場所と餌等には,どんな関係があるのか調べてみたい。
《審査評》
この研究は,学校の周りなど身近なところにたくさんのクモがいることに気付き興味・関心をもち,
クモについてさまざまな視点で研究を行ったものである。クモを丁寧に観察し,さまざまな視点からク
モの生態について調べ,観察・実験結果を基に考察している模範的な作品である。
<特選>
《研究作品の概要》
紙が水を吸収する力
呉市立波多見小学校 第6学年
播磨 奎志
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・多くの種類の紙を集めて実験を行ったこと。
・紙に色水を垂らした時の吸収の仕方を調べる際,紙そのものの吸収力を見るために紙を空中に浮か
せた状態で実験を行ったこと。
・正確な実験結果を得るため,同じ実験を3回繰り返して行い平均をとったこと。
・紙に色水を垂らした時の吸収の広がり方と速さの関係を,一つの表に整理したこと。
・実験結果をグラフに整理し,分かりやすくしたこと。
○
分かった点
・新聞紙は他の紙より水を吸い上げる力は弱いが,ぬれた靴の中に詰めた時は水をよく吸収すること。
・紙は水分をよく吸うと伸びて,乾くと縮むこと。
○
もっと追究したい点
・新聞紙は他の紙より水を吸い上げる力は弱いが,ぬれた靴の中に詰めた時には水をよく吸収する理
由について調べたい。
・紙は水分をよく吸うと伸びて,乾くと縮んだ。その伸び方,縮み方は,紙の種類によって違ってい
たので,その伸び方,縮み方と吸収の関係について調べたい。
《審査評》
この研究は,雨にぬれたサッカーシューズを乾かすとき,新聞紙を丸めてシューズの中に入れると早
く乾いたことから,紙が水を吸収する力に興味をもち,その力を追究したものである。日常生活で興味
をもったことについて,適切に条件制御した実験を複数回行い,結果を図,表,グラフ,文章で分かり
やすく記録し,論理的に考察した極めて優れた作品である。
<特選>
尾道の冬虫夏草Ⅴ
~オニハエヤドリタケの培養菌糸体追求と冬虫夏草菌の解明へ~
尾道市立高西中学校 第1学年
吉武 太郎
《研究作品の概要》
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・オニハエヤドリタケの培養菌糸体から子実体を発生させるため,工夫した培地を作成したこと。
・生きたハエに接種試験をすることにおいて,キャピラリーを作成し使用したこと。
・各種昆虫の幼虫及び蛹に接種試験をすることにおいて,シリンジを使用したこと。
○
分かった点
・菌の成長状態は培地の栄養分によって違うこと。
・冬中夏草を昆虫の幼虫,蛹にシリンジで接種すると,人工的に感染が可能であること。
・冬中夏草菌を昆虫の幼虫に接種後,その幼虫の生存率が高いほど冬中夏草菌の感染率が高くなるこ
と。
○
もっと追究したい点
・多種の昆虫の体内に,オニハエヤドリタケ菌を接種試験することで,昆虫の体内養分等で子実体発
生が違うのではないかという点。
・培養菌糸体水の菌糸濃度を調整し,より確実に感染及び子実体形成へと導きたいという点。
《審査評》
この研究は,生態がほとんど明らかにされていない非常に珍しい冬虫夏草の一種であるオニハエヤド
リタケについて継続的に研究したものである。学術的に未解明の課題に取り組んだ研究であり,実験と
継続的な観察でオニハエヤドリタケの培養に関する貴重なデータを得た極めて優れた作品である。
<特選>
《研究作品の概要》
Peaceful バブルリング
呉市立両城中学校 第2学年
亀﨑 永夏
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・実験①では,どの条件がよいかを確かめるために,同じ条件の実験を 10 回繰り返した。48 種類のろ
うとを使って,空気の量を3~6㎤まで4段階変えて行ったので,1000 回近い実験を行ったこと。
・空気の泡の様子を目で観察するのは難しいので,1秒間に 120 枚の写真が撮れる水中カメラで記録
したこと。
・定規を撮影したものをテレビ画面で写し取り,それをスケールにして1枚ずつ写真を観察し,自作
の用紙に記録したこと。
・シロイルカや自作のバブルリング発生装置でのバブルリングの様子はビデオで撮影し,スロー再生
して観察したこと。
○
分かった点
・ろうとの穴を通る時に空気が水圧で潰され,空気の泡がキノコのような形になり,そこで周辺に水
流が生じ,バブルリングが生じること。
・シロイルカは,水流を作って空気の泡を吹き出して,バブルリングを作っていたこと。
・ポンプで先に水を吹き出し,続いて空気を吹き出すと,バブルリングが再現できること。
○
もっと追究したい点
・バブルリングが発生するための,空気の量とろうとの穴の大きさや形状については,一定の条件が
あることが分かった。空気の量や穴の大きさの関係については,さらに実験を繰り返し明らかにし
ていきたい。
・水中に小さな浮遊物を漂わせて,水槽の中の水の流れを観察しやすくするといった工夫を行い,バ
ブルリングの周りの水流だけでなく,水槽内の水流の影響についても明らかにしていきたい。
・人が手で持って実験を行うと,空気の泡の出方なども少しずつ変わってしまう。実験装置を工夫す
ることで,100%バブルリングを再現できる方法を考えてみたい。
《審査評》
この研究は,白いイルカが出すバブルリングを見て,それがどのようにできるかを調べたものである。
また,バブルリングを再現できる装置の製作も行っている。気泡やバブルリングの発生の仕組みを詳細
に調べ,バブルリング発生装置を製作し再現している極めて優れた作品である。
くう
<特選>
呉市立広南中学校 第2学年
第1学年
《研究作品の概要》
蚊が0研究 PROJECT
濵田 祥吾
山根 海
西尾 瑠捺
山口 ひかる
綾野 裕次郎
竹内 伊吹
綾野 早紀
山下 咲香
折口 こころ
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・蚊やボウフラの収集やボウフラの撲滅活動,ボウフラの発生しやすい条件調査など,広南学園の児
童・生徒全員が関わって調査した結果を活用していること。さらに,プロジェクトチームで役割分
担をしながら観察・実験を行っていること。
・企業からボウフラや蚊を提供してもらい,たくさんのボウフラを用いて観察・実験を行っているこ
と。
○
分かった点
・ボウフラは落ち葉や土で汚れた水,木など日陰になっている場所でよく発生すること。
・ボウフラを駆除する方法で最も効果的だったのは,溜まった水になたね油を入れておくこと。また,
クララ草の根や茎の粉末や煮汁を入れておくと,ボウフラを駆除できること。
・溜まった水に銅板を入れておくと,ボウフラが発生しないこと。
・野生のボウフラと人工飼育のボウフラでは,洗剤に対する耐性に違いがあること。
○
もっと追究したい点
・さらに条件を変えて調べることで,ボウフラが発生しやすい条件を追究していきたい。
・クララ草を入れておいた水に,アカイエカのボウフラが発生した原因を明らかにしたい。
・蚊の種類と出現する時期や時間帯について調べたい。
・取組みを地域に広げ,地域の蚊も絶滅させることができるか確認をしたい。
《審査評》
この研究は,自分たちが住んでいる広南はかつて「蚊やハエがいない町」を実現したことがあるとい
うことで全国から注目された町であり,
「蚊がいない町」を再現することを目指して行ったものである。
郷土史の情報を基に蚊を退治する方法を知り,実験によってその効果を調べるなど,地域に密着した研
究を行っている極めて優れた作品である。
<特選>
ヴァイオリンの弓になぜ松脂を塗るのか
広島大学附属高等学校 第3学年 大住 華子
小田 麻央
藤本 将秀
古霜 友貴
《研究作品の概要》
澤﨑 太一
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・擦弦時の弦の振動の振幅がとても小さく測定が難しかったが,動画を撮影し,それをプロジェクタ
で拡大することで測定可能にしたこと。
・ヴァイオリンの弦からチェロの弦に変えることで低い音にし,単位時間あたりのデータ数を増やし
て弦の振動の特徴をつかみやすくしたこと。
・弦の振動を,弓の動きと一体となった等速運動と弓に対して滑る単振動に分けて考えたこと。
・弦の振動と松脂の状態変化を結び付けて考えたこと。
○
分かった点
・弦を振動させるには,松脂を塗る必要があること。
・松脂を塗った弓が周期的な振動を弦に与え,音を発生させる振動が生じていること。
・弓がつくる周期的な振動の特徴は,等速運動と単振動の組み合わせになっていること。
・松脂が状態変化することで,弦に周期的な振動を与えていること。
○
もっと追究したい点
・松脂の融点以上の条件の場合に,弦に振動は生じないのかについて,松脂を塗った弦を加熱して擦
弦し,観察を行う。
・擦弦中の温度測定を行い,松脂の融解,凝固と温度との関連性を明らかにする。
《審査評》
この研究は,ヴァイオリンを弾く際に松脂を塗ることに疑問をもち,松脂の働きについて調べたもの
である。適切な条件制御による実験と詳細な観察及び論理的な考察によって,松脂の働きを解明してい
る,極めて優れた作品である。
<特選>
金平糖の形の数理モデリング
広島大学附属高等学校 第3学年
藤岡 真由
井野口 光宏
川野 達也
北村 晃成
《研究作品の概要》
小方 智景
鈴木 蓮
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・金平糖の角形成において重要な条件や角形成のメカニズムを明らかにするために,角形成の過程を可
視化することができる数理モデルを用いた数値シミュレーションによって研究を進めたこと。
・数値シミュレーションの結果に表れる形状が実際の金平糖の形を再現しているのかどうかを検証する
ために,
角の形を定義してその個数を数えるという先行研究にない手法で両者の形状を比較したこと。
○
分かった点
・
「突出した部分ほどより突出しやすい」と「周囲とある程度高低差がつくと突出した部分がけずれる」
という二つの条件だけで金平糖の角が形成されうること。
・数理モデルで再現された金平糖の形成過程の解析から,角形成のメカニズムは「高低差の拡大」
,
「角
の高さの均一化」及び「角の統合」という三つの過程で説明できること。
○
もっと追究したい点
・金平糖の表面の曲面上における角形成の再現を試みてみたい。
・数理モデルにおけるパラメータに対応する現実の設定について詳しく調べてみたい。
《審査評》
この研究は,金平糖が形成される様子を数理モデルで表し,数値シミュレーションで金平糖の断面の
形状を再現することによって,金平糖の角が形成されるメカニズムを解析したものである。身近なお菓
子の金平糖の角のでき方に興味をもち,適切な測定基準を設けて論理的な考察を深め,数理モデルで断
面を再現している極めて優れた作品である。
<特選>
セトウチマイマイの起源と進化
広島県立広島国泰寺高等学校(代表)
広島県立廿日市西高等学校
広島県立広島商業高等学校
《研究作品の概要》
~殻の形態とミトコンドリア遺伝子の解析~
広島県立千代田高等学校 広島県立大門高等学校
広島県立祇園北高等学校 広島県立西条農業高等学校
安田女子中学高等学校
広島国泰寺SSH科学クラブアシスタンス(全 63 名)
《研究作品のポイント》
○
工夫した点
・各校が協力し,県内及び近隣県のセトウチマイマイを採集したこと。
・DNAの抽出,遺伝子の増幅,精製など,高校生同士が教え合って研究を進めたこと。
・3年間のデータを基に,独創的な考察を行ったこと。
○
分かった点
・広島県及び近隣県のセトウチマイマイは,殻高がやや小さく,螺塔がほぼ均一の特徴をもつこと。
・色帯は,0204 が約5割,0000 が約4割で,山間部や島嶼部にユニークな色帯が見られること。
・遺伝的に四つのグループ(A,B,C,D)に分かれる。約 220 万年から 310 万年前に,祖先集団
からABとCDのグループに分かれ,さらにその後,AとB,CとDのグループに分かれた。広島
県に広く分布するAグループの起源集団は岩国周辺,Bグループの起源集団は安芸太田周辺と予測
され,約 40 万年から 100 万年前に分岐したと考えられること。
○
もっと追究したい点
・3年間で多くの個体を採集したが,セトウチマイマイの起源と進化の道筋を明らかにするために,
さらに広い範囲で調べたい。
・殻の火炎模様,軟体部の模様,腹足の長さなど,詳細な点についても分析していきたい。
・河川や山岳,土質など,セトウチマイマイの進化に関連するような環境条件をさらに加味して考察
していきたい。
・遺伝子解析は,採集個体の五分の一程度しかできなかった。重要地域をピックアップして,能率よ
く解析を進めたい。
・殻の模様と直接リンクする核の遺伝子(マイクロサテライト)についても調べてみたい。
・色帯を決定する遺伝子について,交配実験を行って,自分たちの仮説を検証してみたい。
《審査評》
この研究は,3年目の研究であり,県内の高等学校が協力し,広島県産セトウチマイマイの殻の特徴
と,ミトコンドリアDNAのCOⅠの塩基配列から,その類縁関係や進化の道筋を解明しようとしたも
のである。セトウチマイマイについて,県内各地の分布を調べ,遺伝子レベルで解析し,類縁関係や進
化の道筋を解明した,学術的に価値の高い極めて優れた作品である。