「建設IT対応スキル標準教育体系、プログラム」の

建設技術者のITスキル教育について
~「建設IT対応スキル標準教育体系、プログラム」の紹介~
(後編:その4~6)
みらい建設工業(株) 宮本勝則
前編では建設業におけるIT教育・訓練の必要性と背景、ねらいとその意義について説
明しました。後編ではスキル体系およびスキルプログラムの内容と今後について説明しま
す。
■スキル体系およびスキルプログラムのフレームワーク
~職位別スキル標準とは~
スキル体系においては、実際には一覧表で表現されていますが項目が多く細かいので図-
2、3のように一部抜粋し表示しました。縦軸に現場業務に対応した職位レベルとして新
入社員から係員、主任、作業所長、ベテラン技術者の総合所長までを順に並べ、横軸に対
応スキルや教育・訓練する上で必要となる情報ならびに参照資料を列記しています。
IT/CALS対応スキルの教育体系(土木職員の場合)
<凡例>
◎:最適 ○:適する △:何とか適用できる
備考
代表的なソフト
/
OJT
集合 教育
職務遂行の為に必要な知識
(関連基準・ガイドライン・関連内容)
CBT eラー ニング
IT対応/CALS対応スキル
(資格など)
自 己啓発(マニュアル 参
考書 等、資格 取 得)
教育形態
年次又は段階レベルの一般的状況
/
・「土木製図基準(案)」(土木学会)
・CADの習得(図面の修正)
・「CAD製図基準(案)」(国交省)
○
◎
△
○
○
・「やさしいCAD図面電子納品入門」(土工協)
・基本ソフト(OS等)の操作習得
入社時
新入社員
(新人)
22~23 才 社会・組織への対応
・Windows 入門書(市販図書)
・一般アプリケーションソフトの習得
・パソコン基礎コースマニュアル(組織対応)
・インターネット技術の習得
インターネット利用環境等のインフラ整備
(18~21 才) (建設業全般知識の理解)
○
◎
△
◎
△
○
◎
・AutoCad LT ・CADWe'll ・V-nas
・ARCHI/BLUE/EXTREND ・JWCad 等
・MS WINDOWS ・一太郎
・初級シスアド
・MS OFFICE(Word,Excel,PowerPoint) 等
・Internet Explorer 等
・「ネチケット・ガイドライン」(RFC1855)日本語版
・初級シスアド
・初級シスアド
・「ネットワーク社会のここが危ない!!」(JNSA)
・ネットワークエチケットの理解
・情報システムセキュリティ規則(組織対応)
・個人情報保護対策マニュアル(組織対応)
○
○
・ウィルス対策ソフト(ウイルスバスター, Norton
AntiVirus,VirusScan) 等
・「コンピュータウイルス対策基準」、「コンピュータ
不正アクセス対策基準」(経産省)
・工事成果品文書管理
(XML/PDF 作成、ウィルスチェック 等)
24~26 才
工事の進行を任せられる
・デジタル工事写真管理
(職業に対するこだわり)
・「工事完成図書の電子納品要領(案)」、
「デジタル写真管理情報基準(案)」(国交省)
・「CAD製図基準(案)」(国交省)
○
○
○
◎
△
○
○
◎
△
○ ・LINUX(サーバ関連)
○
◎
△
○
・「やさしいCAD図面電子納品入門」(土工協)
3~7 年
・作業所内ネットワークの構築の基本的理解と修得
係 員
(若年)
(認証/セキュリティ/暗号化)
27~29 才
工事の運営を任せられる
・コスト管理、標準積算
(電子メール・ホームページ)
8~13 年
主任・所長
(主任技術者
・
30~35 才
工事の運営を任せられる
(業務管理者,後継者の指導育成)
監理技術
者
・折衝、プレゼンテーション技術
・プレゼンテーション資料の作成
年次又は段階レベルの一般的状況
建設IT対応スキル
・CADの基礎習得
(施工図作成、図面の修正)
入
社
時
新
人
22~
23才
新入社員
社会・組織への
対応
( 1 8 (建設業全般知識
~ 2 1 の理解)
・ARCHI/BLUE/EXTREND ・JWCad 等
・CAD 利用技術者
・SXF 技術者
・VPN/SSL 関連ソフト 等
・「土木技術者のための原価管理」(土木学会)
・ホームページの作成(組織対応)
・グループウェアおよび電子メールによる情報系 ○
◎
△
○
システムデータ活用方法(組織対応)
・話し方の技術(効果的な話し方/ボディランゲー
ジ/やりとりの技法等)
・文章の書き方(作成手順/構成法等)
・ビジュアル表現の技術
・工程表作成ソフトを用いた工程管理
・工程管理(PERT、CPM)の実践
・作業所内情報共有方法の提案
・情報共有のメリット
・作業所内の文書管理、ファイル管理
・自社ソフト ・Charites21 ・原価Kanri
・GAIA ・メビウス ・「基」 ・SUPER ESCON 等
・Internet Explorer ・Outlook Express
・Adbe Acrobat/Reader(PDF) ・DocuWorks
・ホームページビルダー ・情報共有システム
・プロジェクト管理ソフト(Buzzsaw,basepage)
◎
◎
○
○
○
◎
△
○
・現場代理人)
(ASP/グループウエア等の利用)
・XMLマスター
・蔵衛門 ・電納ヘルパー ・写真の達人 等
・AutoCad LT ・CADWe'll ・V-nas
・MS WINDOWS(インターネット接続、共有)
(業務の推進者)
・インターネット技術の活用
(中堅1)
・「JV現場ネットワークの構築と運用ガイドライ
ン」(土工協・BCS)
・現場図書館 ・現場編集長 ・現場名人
○
○
・「土木製図基準(案)」(土木学会)
・CADの習得(仮設図・竣工図書の作成)
○
◎
○
○
○
◎
△
○
・MS OFFICE(Word,Excel,PowerPoint)
・Adobe Acrobat 等
・Ms-Project ・Primavera ・Artemis ・CDPM
・工程's ・M1 for Windows、The PERT 等
・市販グループウェア(サイボウズ ・desknet's)
・自社イントラネット(Notes/Domino) ・ASP
職務遂行の為に必要な
知識
(関連基準・ガイドライン・
関連内容)
・「土木製図基準(案)」(土木学会)
・「CAD製図基準(案)」(国交省)
・「やさしいCAD図面電子納品
入門」(土工協)
・基本ソフト(OS等)の理解と操
作習得 ・一般アプリケーショ
ンソフトの理解と習得
・Windows入門書(市販図書)
・「港湾CALS Guide Book」
(埋立浚渫協会)
・ネットワーク利用技術の習得
・「ネチケット・ガイドライン」
(RFC1855)日本語版
・インターネット利用環境のインフラ整備
才)
・ネットワークセキュリティの
理解
・「パソコン利用も安全第一」(土工協)
・「ネットワーク社会のここが危ない!!」(
JNSA)
・「ネットワーク社会のここが危ない!!」(JNSA)
・情報システムセキュリティ規則(組織対応)
・個人情報保護対策マニュアル(組織対応)
・「コンピュータウイルス対策基準」、「コンピ
ュータ不正アクセス対策基準」(経産省)
図-4 建設IT対応スキル標準教育体系(新入社員の場合)-1
1
IT/CALS対応スキルの教育体系(土木職員の場合)
<凡例>
◎:最適 ○:適する △:何とか適用できる
備考
代表的なソフト
△
○
○
/
OJT
集合 教育
(関連基準・ガイドライン・関連内容)
CBT eラー ニング
職務遂行の為に必要な知識
IT対応/CALS対応スキル
自 己啓発(マニュアル 参
考書 等、資格 取 得)
教育形態
年次又は段階レベルの一般的状況
(資格など)
/
・「土木製図基準(案)」(土木学会)
・CADの習得(図面の修正)
・「CAD製図基準(案)」(国交省)
○
◎
・「やさしいCAD図面電子納品入門」(土工協)
・基本ソフト(OS等)の操作習得
・Windows 入門書(市販図書)
・一般アプリケーションソフトの習得
入社時
新入社員
(新人)
22~23 才 社会・組織への対応
・パソコン基礎コースマニュアル(組織対応)
・インターネット技術の習得
○
・MS WINDOWS ・一太郎
◎
△
◎
△
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
◎
△
○
○
◎
△
○ ・LINUX(サーバ関連)
○
◎
△
○
インターネット利用環境等のインフラ整備
(18~21 才)(建設業全般知識の理解)
・AutoCad LT ・CADWe'll ・V-nas
・ARCHI/BLUE/EXTREND ・JWCad 等
・初級シスアド
・MS OFFICE(Word,Excel,PowerPoint) 等
・Internet Explorer 等
・「ネチケット・ガイドライン」(RFC1855)日本語版
・初級シスアド
・初級シスアド
・「ネットワーク社会のここが危ない!!」(JNSA)
・情報システムセキュリティ規則(組織対応)
・ネットワークエチケットの理解
・個人情報保護対策マニュアル(組織対応)
・ウィルス対策ソフト(ウイルスバスター, Norton
AntiVirus,VirusScan) 等
・「コンピュータウイルス対策基準」、「コンピュータ
不正アクセス対策基準」(経産省)
・工事成果品文書管理
・「工事完成図書の電子納品要領(案)」、
(XML/PDF 作成、ウィルスチェック 等)
24~26 才
工事の進行を任せられる
「デジタル写真管理情報基準(案)」(国交省)
・デジタル工事写真管理
(職業に対するこだわり)
・「土木製図基準(案)」(土木学会)
・CADの習得(仮設図・竣工図書の作成)
・「CAD製図基準(案)」(国交省)
・「やさしいCAD図面電子納品入門」(土工協)
3~7 年
・作業所内ネットワークの構築の基本的理解と修得
係 員
(若年)
(認証/セキュリティ/暗号化)
27~29 才
工事の運営を任せられる
・コスト管理、標準積算
(電子メール・ホームページ)
主任・所長
(中堅1)
(主任技術者
・
30~35 才
ン」(土工協・BCS)
工事の運営を任せられる
(業務管理者,後継者の指導育成)
監理技術
・折衝、プレゼンテーション技術
・プレゼンテーション資料の作成
者
教育形態
◎
△
○
システムデータ活用方法(組織対応)
ジ/やりとりの技法等)
・文章の書き方(作成手順/構成法等)
・ビジュアル表現の技術
・工程表作成ソフトを用いた工程管理
・工程管理(PERT、CPM)の実践
・情報共有のメリット
OJT
集合
教育
CBT
/eラ
ーニ
ング
自己啓
発
(マニ
ュアル
/参考
書等、
資格取
得)
(2005年11月現在)
・作業所内の文書管理、ファイル管理
・自社ソフト ・Charites21 ・原価Kanri
・GAIA ・メビウス ・「基」 ・SUPER ESCON 等
・Internet Explorer ・Outlook Express
・グループウェアおよび電子メールによる情報系 ○
・話し方の技術(効果的な話し方/ボディランゲー
・作業所内情報共有方法の提案
代表的なソフト
・CAD 利用技術者
・SXF 技術者
・MS WINDOWS(インターネット接続、共有)
・ホームページの作成(組織対応)
・Adbe Acrobat/Reader(PDF) ・DocuWorks
・ホームページビルダー ・情報共有システム
・プロジェクト管理ソフト(Buzzsaw,basepage)
◎
◎
○
○
○
◎
△
○
・現場代理人)
(ASP/グループウエア等の利用)
・XMLマスター
・蔵衛門 ・電納ヘルパー ・写真の達人 等
・AutoCad LT ・CADWe'll ・V-nas
・ARCHI/BLUE/EXTREND ・JWCad 等
・VPN/SSL 関連ソフト 等
・「土木技術者のための原価管理」(土木学会)
(業務の推進者)
・インターネット技術の活用
8~13 年
・「JV現場ネットワークの構築と運用ガイドライ
・現場図書館 ・現場編集長 ・現場名人
○
◎
○
○
○
◎
△
○
・MS OFFICE(Word,Excel,PowerPoint)
・Adobe Acrobat 等
・Ms-Project ・Primavera ・Artemis ・CDPM
・工程's ・M1 for Windows、The PERT 等
・市販グループウェア(サイボウズ ・desknet's)
・自社イントラネット(Notes/Domino) ・ASP
備考
(外部資格 等)
<凡例> ◎:最適 ○:適する △:何とか適用できる
○
◎
○
○
・AutoCad LT ・CADWe'll ・V-nas
・EXTREND武蔵 ・Expert-CAD ・JWCad 等
・CAD利用技術者
○
○
◎
○
・MS WINDOWS ・一太郎
・MS OFFICE(Word,Excel,PowerPoint) 等
・初級シスアド ○
◎
△
・Internet Explorer 等
・情報セキュリティ検定
○
◎
○
・ウィルス対策ソフト(ウイルスバスター, Norton ・情報セキュリティ検定
AntiVirus,VirusScan等)
○
図-5 建設IT対応スキル標準教育体系(新入社員の場合)-2
また、スキルプログラムにおいては、図-4のように、上位のスキル体系の「対応スキ
ルレベル」を基に、要求事項をITスキルとして具体的に表現し、カリキュラムとして利
用できるよう研修・講習会を設定しています。
●スキル対応の構成
スキル体系においては、一般的な土木工事主体の建設会社における現場の職位を意識し、
縦軸に①入社時(新人)
、②3~7年(若年)、③8~13年(中堅1)
、④14~20年(中
堅2)、⑤21~30年(壮年)ならびに、職位として①新入社員、②係員、③主任・所長、
④総合所長まで標準年齢と業務レベルを付加して並べています。
次に、横軸の大きな2列目に「建設IT対応スキル」として、習得すべきスキルを職位
ごとにレベル設定しています。3列目には「職務遂行の為に必要な知識」に関する資料(関
連基準やガイドライン、資料など)を掲載し、参照できるようにしています。4列目には、
教育形態として、「OJT」「集合教育」「CBT/eラーニング」「自己啓発」にカテゴリを
分け、各々の対応スキルを習得するのにどの教育形態が適正であるのかを「◎:最適、○:
適する、△:何とか適用できる」の3段階で評価しています。そして、5列目では、IT
ツールとして主なアプリケーションを作成時点のものを掲載しています。最後に、「備考」
として、その習得スキルの客観的評価に繋がる外部資格をレベル、内容に合わせて参考程
度に提示しています。
2
対象者:新入社員
要求事項:社会組織への対応(組織の一員としてコンピュータとネットワークを安全、適切、快適に利用できる)
研修・講習会名称
研修のねらい
・CADの必要性や
有効性の理解
CAD基礎研修
達成レベル
期間
テキスト
・CADと手描きの違いが
分かる
・「CAD研修テキスト初級編」(建設
情報化協議会)
・CAD図面の運用・保 ・図面の読込み、表示、
・「土木製図基準(案)」(土木学会) [CADの基礎習
修正、形式変換・保存が 1日間
・「CAD製図基準(案)」(国交省) 得]
守の理解
できる
・「やさしいCAD図面電子納品入
門」(土工協)
・基本図形の描画操 ・レイヤーの概念を理解
し簡単な施工図が描ける
作の習得
・Windows入門書(市販図書)
Windowsマスター ・パソコン知識および ・Windowsの機能を理解
1時間 ・パソコン基礎コースマニュアル
し円滑に操作ができる
研修
操作の基礎
(組織対応)
書類作成
初級研修
対応スキル
レベル
・Word/Excel入門書(市販図書)
・現場書類の効率的 ・Word/EXCEL等を利用
し書類を効率的に作成 2時間 ・「港湾CALS Guide Book」(埋立
な技術の習得
できる
浚渫協会)
[基本ソフト
(OS等)の操作
習得]
[一般アプリケー
ションソフトの
習得]
図-6 スキル標準プログラム(新入社員の場合)
スキル体系、スキルプログラムのフレームワークの基調として、図-5に示すように、
職位に相応しいITスキルレベルを想定し構成作りをしています。単純に高い職位が高い
ITスキルレベルとなるわけではないことが分かります。つまり、職位の新入社員、係員、
主任・所長までは、職位レベルが上がるに従いITスキルレベルが上昇しますが、複数の
工事を統括管理する役割の総合所長は、これまでの急速な業務のIT化事情を考慮し、係
員と同等のITスキルレベルに設定しています。
●スキルプログラムの構成
スキルプログラムにおいては、まず、職位ごとに要件に対応する理想とするITスキル
レベルをヘッダーに載せています。スキル体系をより具体的な内容で詳細に表現するとと
もに、研修・講習会を企画準備する際に利用できるよう、カリキュラムを意識し構成され
ています。縦軸に「対応スキルレベル」に対応した想定される「研修・講習会名称」を並
べ、横軸に各研修に対応する項目として、①「研修のねらい」②「達成レベル」③「期間」
④「テキスト」⑤「対応スキルレベル」、⑥「備考」を並べています。
「研修のねらい」、「達成レベル」ともに、分かりやすく具体的な内容としています。「期
間」は、時間単位で表現し、半日あるいは1日での研修・講習会を前提としています。よ
って、必要な研修・講習会をカフェテリア方式で抽出し、組み合わせることにより、望ま
しい的確な研修・講習会の実施が可能となります。
3
高い←(
職位レベル)
←低い
総合所長
主任・作業所長
係員
新入社員
低い→ (ITスキルレベル) →高い
図-7 職位レベルとITスキルレベルの関係
次に、図-8は、業務レベルとITスキルレベルとの関係を図示した上に、ITスキル
を必要とする業務をマッピング(位置づけ)したものです。ITスキルレベル層の設定は、
ITスキルの低い方から順に「デジタルデバイド層」、
「情報リテラシ層」
、
「ミドルレンジ」、
「ハイレンジ」、「管理者層」となっています。各層の説明と期待する役割を以下に列記し
ます。
4
高い←(
ITスキル)
←低い
ネットワーク・セキュリティ
文書・納品
管理
原価管理・会計 汎用CAD
調達/EDI
専用CAD
ゼン
プ レ ショ ン
テー
管理者層
ハイレンジ
ミドルレンジ
情報リテラシ層
OFFICE
デジタルデバイド層
低い→ (業務レベル) →高い
図-8 業務レベルと層別ITスキルに適する業務の位置づけ
●デジタルデバイド層
電子化された情報を閲覧したり発信したりするスキルを持たない者、或いは持たな
いに等しい者。情報格差基礎的なITスキルからの習得が必要である。
●情報リテラシ層
PCや基本ソフトなどの基本操作ができる者、また上位レベルの指導の下、IT関
連業務が遂行できる者。業務の効率化に向けて、一層のスキルアップが望まれる。
●ミドルレンジ
自らのITスキルを利用してIT業務をこなすことのできる者、またITに関わる
課題に気付き上位者の指導の下、解決できる者。下位レベルの者の指導に期待する。
●ハイレンジ
ITスキルを駆使してリーダとして組織全体の情報化に寄与する者。組織内方針、
目標を明確にし組織対応による下位レベルのスキルアップに期待する。
●管理者層
ITのプロであり、ネットワークやIT利用業務を管理する支援業務に従事する者。
一般的に支援組織(バックヤード)に所属し基本的に直接業務に関与しない。
5
■おわりに
~継続的メンテナンス及び運用の必要性~
今回の東建IT研究会による本スキル体系は初版であり、その妥当性が検証されている
わけではなく継続した修正、メンテナンスが必要です。加えて、建設ITの進展のために
標準教育体系の必要性を感じ、早期に提示することを重視したため、内容が概念的でまだ
まだ不十分であると認識しています。
今後の予定として、今回提示した体系とプログラムを適宜に洗練化するとともに、その
対応スキルの要件に則った「職位別ITスキル評価基準」を作成し、その基準に従い個人
ITスキルアッププランの進捗状況と達成度指標となる「ITカルテ」とその運用方法に
ついて提案する予定です。次に、所属組織や利用システムの成熟度判定に照らし合わせ、
個々人に合致した「教育・研修カリキュラム」が選定できる“仕組み”を提供できればと
考えています。
また、既にある教育・訓練市場を調査・評価し推奨する各種研修サービスや講習会とし
て逐次紹介するともに、現場環境に適する理想的な教育形態・教育技法などについて検討
し紹介していきます。さらに、ニーズに適った効果のある教育・研修サービスを提供して
いただけるよう関係組織に教育・研修の企画を働き掛けていくことも重要なことと認識し
ています。
判定
処方箋
ITカルテ
個人、企業保有
教育・研修カリキュラム
キャリアプラン/継続教育
情報収集
選定、提供
企画、策定
診断
教育実施
診断ツール
職位別ITスキル評価基準
ITカルテ
更新、反映
策 定/見直し
モニタリング
(監 視)
ITスキル体系(CITES)
評価/洗練化
ITスキルプログラム(CITSSP)
図-9 ITスキル体系の監視と洗練化
今後、東建および会員会社のみならず、現場マネジメントの教育・訓練に関係する方々
の意見も積極的に取り込むことで、理想的な「建設IT対応スキル標準(教育)
」として継
6
続的に最大限まで洗練化していくことが必要です。そして、本スキル体系の利用の高まり
が技術者のITスキルの向上に繋がることを望んでいます。
そして、本スキル体系がトリガーとなり、産官学の諸組織におけるITスキル教育・訓
練に関する機運の高まりと、各種教育・訓練サービス提供機関による職位に応じた具体的
なITスキル教育・訓練マニュアルなどの整備と有効な教育技法・形態の提案に期待して
います。と結んでいます。
これまで、日本の社会は建設技術者をバッシングし、経営者は粗末に扱いすぎたと言え
るのではないでしょうか。これからは、技術者のモラール(やる気)とES※の向上無くして、
企業、組織の成長ビジョンは描けないと思います。まずは、建設業における人材が優良な
「人財」となるよう、知識・ノウハウの習得と、継続的学習、スキルアップに投資すると
ころからはじめましょう。
※ ES = Employee Satisfaction 従業員満足度
7