MRI検査における人体の一部で形成された ループの発熱に関する検討

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MRI検査における人体の一部で形成された
ループの発熱に関する検討
~測定箇所における温度依存性の検討~
大阪市立大学医学部附属病院 ○山﨑 勝,出田 貴裕,村井 雅美
工藤 禎宏,東田 満治
【目的】われわれは,これまでにMRI検査における人体の一部で形成されたループと発熱に関す
る検討について,自作ループファントムをスキャン室内温度と同じにして温度測定を行ってきた.
そこで今回,人体の正常体温に近い状態で温度を測定するために,ループファントムの接触箇所
を加温し,測定箇所における温度依存性について検討を行ったので報告する.
【使用機器】Philips社製 Achieva1.5Tおよび3T MRI装置,Bodyコイル.
ファントム:自作人体等価両下肢アガロースファントム(以下,ループファントム)
温度測定器:高周波磁場環境対応型温度計(Neoptix社製光ファイバー温度計Reflex).
【方法】撮像条件:1.5T,3T MRI装置の3種類の撮像シーケンス(SE法,TSE法,Gradient Echo
法:GRE法)においてSpecific Absorption Rate(SAR)を最大に設定し,15分間,測定を行った.
Tableに3種類の撮像シーケンスの撮像パラメータおよび全身SAR値を示す.
ループファントムの温度設定:ループファントムの接触箇所を体温(35℃)と室温(24℃)の状
態に設定し,それぞれの状態において撮像中の温度測定を行った.測定箇所はループの接触箇所
のみとした(Fig.1) .測定値は接触点の温度変化分とした.
【結果】加温後の最高温度変化は1.5T-GRE-SAR-Maxで2.3℃,最低温度変化は3T-TSE -SAR-Maxで
-6.6℃であった.加温前後における温度変化は,いずれも加温後の方が加温前よりも温度上昇が
低くなった.Fig.2に加温前後における各撮像シーケンスの温度変化のグラフを示す.
【考察】測定箇所において温度が上昇あるいは下降した理由について,ファントムの場合,生体
と異なり,温度保持能力が低いことが考えられる.RF出力による発熱がファントムの温度降下よ
りも大きい場合,わずかながら温度が上昇するが,その反対の場合,温度は下降し,RFによる発
熱とファントムの温度降下が釣り合うところまで下降すると考えられる.今回の実験では,接触
箇所を一時的に加温しただけであったが,人体を考慮した温度測定を行うのであれば,ファント
ムを恒温状態に保つ必要があると考えられる.
【結語】接触箇所における温度変化において,温度依存性があることが認められた.
Table 3種類の撮像シーケンスの撮像パラメータおよび全身SAR値
Whole Body SAR ( W/Kg )
1.5T Max
3T Max
Sequence
TR/TE
GRE
420/20
T2* weighted
3.9
0.9
SE
450/15
T1 weighted
2.4
0.9
TSE
ETL19
3500/120
T2 weighted
1.2
0.9
12
10
8
6
4
2
0
-2 0
℃ -4
-6
-8
3T : 加温 (+)
1.5T : 加温(+)
3T :加温 (-)
1.5T :加温 (-)
2
4
GRE法
6
8
10
12
14
撮像時間(分)
12
10
8
6
4
2
0
-2 0
-4
-6
-8
Fig.1 ループファントムの外観と測定箇所(
3T : 加温 (+)
1.5T : 加温(+)
2
4
6
3T :加温 (-)
1.5T :加温 (-)
8
SE法
10
12
14
撮像時間(分)
12
10
8
6
4
2
0
-2 0
-4
-6
-8
3T : 加温 (+)
1.5T : 加温(+)
2
TSE法
Fig.2 加温前後における各撮像シーケンスの温度変化
― 64 ―
4
6
)
3T :加温 (-)
1.5T :加温 (-)
8
10
12
14
撮像時間(分)