透過型砂防堰堤の土石流制御機能に関する研究 水山高久* 1. 研究の目的 透過型砂防堰堤を含めて土石流対策の構造物を設計する条件の中で、土石流ピーク流量、土石流ハ イドログラフは最も重要なものの一つである。現行の技術基準は土石流ピーク流量を過大に見積も る傾向があり、コストからより合理的な設計条件の設定が望まれる。ここでは、具体的な土石流渓 流を念頭に置いて、種々のシナリヲについて、1次元の土石流シミュレーション計算手法(KANAKO) を適用し、谷の出口でどのような土石流ハイドログラフになるかを検討した。 2. 研究の方法 図―1のような流域を対象に、渓床幅を5m、渓床堆積物厚さを2mとして、図―1の No.1,2,3 の位置での流量を上流端から与える場合(Case1,2,3)、No.1,2,3 に高さ 3,6,12m の天然ダムを想定 する場合について、谷出口での土石流ハイドログラフを KANAKO で計算し、結果を考察する。流量は、 平成 24 年 7 月九州豪雨時の熊本阿蘇乙姫の食う量を貯留関数法で流量に換算した。 図―2 縦断図 表―1 図―1 図―3 流域平面図 降雨量と流量ハイドログラ フ * 京都大学農学研究科・教授 パラメータ 3. 得られた成果 計算結果は、図―4に示す通りで、渓流の谷の出口に近いところに天然ダムが形成される場合に ピーク流量は大きくなった。天然ダムの高さはそれほどピーク流量に影響を与えていない。現行の 土石流に対する技術基準と比べるとかなり小さな土石流ピーク流量になっており、実際の土石流の 調査、災害調査、そしてこのようなシミュレーションによって、さらに検討を進める必要がある。 図―4 4. 謝 計算ハイドログラフ 図―5 計算土砂濃度 辞 この研究は、砂防鋼構造物研究からの委託によって実施された。研究の機会を与えていただいた 研究会とその関係者に謝意を表します。 参考文献;中谷加奈・里深好文・水山高久(2008):GUI を実装した土石流一次元シミュレータ開発, 砂防学会誌,Vol.61,No.2,p.41-46
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