Fourier transform on fusion categories —— 有限群の理論からテンソル圏へ —— 清水健一 名古屋大学 2015 年 9 月 3 日 清水健一 (名古屋大学) 第 50 回 関数解析研究会 Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 1/1 はじめに o 私の研究対象 • ホップ代数とテンソル圏 • 位相不変量などへの応用 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 2/1 はじめに o 私の研究対象 • ホップ代数とテンソル圏 • 位相不変量などへの応用 o テンソル圏の研究 à 作用素環論に由来する手法が少なくない。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 2/1 はじめに o 私の研究対象 • ホップ代数とテンソル圏 • 位相不変量などへの応用 o テンソル圏の研究 à 作用素環論に由来する手法が少なくない。 o 目次 1. テンソル圏とは 2. 有限群の表現論の圏論的理解 3. Fourier transform on fusion categories 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 2/1 はじめに o 私の研究対象 • ホップ代数とテンソル圏 • 位相不変量などへの応用 o テンソル圏の研究 à 作用素環論に由来する手法が少なくない。 o 目次 1. テンソル圏とは (ゆっくり) 2. 有限群の表現論の圏論的理解 (くわしく) 3. Fourier transform on fusion categories (はやい) 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 2/1 テンソル圏とは • 圏と関手 • テンソル圏とその例 群とホップ代数/トポロジー/作用素環論 • 最近のテンソル圏の研究(私の周辺で) 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 3/1 圏 C が圏であるとは… • 対象のクラス Obj(C) = {X, Y, Z, . . . } • 射の集合 HomC (X, Y ) • 射の合成と呼ばれる写像 HomC (Y, Z) × HomC (X, Y ) → HomC (X, Z) が定義されており、さらに射の合成が結合律および単 位律を満たすことを言う。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 4/1 圏 C が圏であるとは… • 対象のクラス Obj(C) = {X, Y, Z, . . . } • 射の集合 HomC (X, Y ) • 射の合成と呼ばれる写像 HomC (Y, Z) × HomC (X, Y ) → HomC (X, Z) が定義されており、さらに射の合成が結合律および単 位律を満たすことを言う。 o だいたいの数学的構造は圏となる à 集合の圏、位相空間の圏、ベクトル空間の圏…… 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 4/1 関手 —— 圏の『準同型』 圏 A から圏 B への関手 F : A → B とは • 対象の間の対応 F : Obj(A) → Obj(B) • 各 X, Y ∈ Obj(A) に対する射の対応 F : HomA (X, Y ) → HomB (F (X), F (Y )) であって、射の結合および恒等射を保つもの。 o 関手の例 • 基本群(点付き空間の圏から群の圏への関手) • 環上のテンソル積や Hom などは関手と思える。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 5/1 テンソル圏 例:Rep(G) —— 群 G の有限次元表現の圏 これは圏であるだけでなく、様々な構造を持つ。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 6/1 テンソル圏 例:Rep(G) —— 群 G の有限次元表現の圏 これは圏であるだけでなく、様々な構造を持つ。 • テンソル積表現 X ⊗C Y • 自明表現 1 := C • 反傾表現 X ∗ = HomC (X, C) (双対性) 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 6/1 テンソル圏 例:Rep(G) —— 群 G の有限次元表現の圏 これは圏であるだけでなく、様々な構造を持つ。 • テンソル積表現 X ⊗C Y • 自明表現 1 := C • 反傾表現 X ∗ = HomC (X, C) (双対性) o テンソル圏 (※通常はもう少し条件を加える) 対象の間に “結合的” かつ “単位的” な二項演算 ⊗ が 定義されているような圏。“双対” を持つことも仮定 することが多い。 + Mac Lane: “Categories for Working mathematicians”, Müger: “Tensor categories: A selective guided tour”. 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 6/1 テンソル圏の例 — 群とホップ代数 o ホップ代数 群の概念の “非可換幾何学” 的な意味での一般化。 ホップ代数の表現圏は双対を持つテンソル圏となる。 注意:一般のホップ代数の表現圏においては X ⊗Y ∼ = Y ⊗ X は成り立たない。 o ホップ代数の例 • 群環 • Lie 代数の普遍包絡環 • 量子群 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 7/1 テンソル圏の例 — トポロジー o タングルの圏 T Obj(T ) = {0, 1, 2, . . . } HomT (n, m) = (n, m)-タングルの同値類 射の合成:タングルの縦結合 テンソル積:タングルの並置 双対:タングルを 180◦ 回転 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories (3, 5)-tangle の例 第 50 回 関数解析研究会 8/1 テンソル圏の例 — トポロジー o タングルの圏 T Obj(T ) = {0, 1, 2, . . . } HomT (n, m) = (n, m)-タングルの同値類 射の合成:タングルの縦結合 テンソル積:タングルの並置 双対:タングルを 180◦ 回転 (3, 5)-tangle の例 o 他にも…… リボンタングルの圏、コボルディズムの圏など。 ⇝ 量子不変量の構成の基礎。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 8/1 テンソル圏の例 — 作用素環論 o 因子環 自明な中心を持つフォン・ノイマン環。 因子環 N ⇝ ヒルベルト N -双加群のテンソル圏 o 部分因子環論からテンソル圏へ 指数有限な因子環の拡大 N ⊂ M ⇝ Q-systems ⇝ テンソル圏の “森田コンテキスト” + Müger, From subfactors to categories and topology I & II 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 9/1 私が主に興味を持っているテンソル圏 Finite tensor categories (Etingof-Ostrik) • 一般の有限次元ホップ代数の表現圏 • 有限群の正標数の体上での表現 • ある種の頂点作用素代数(恐らく…) Fusion categories (Etingof-Nikshych-Ostrik) = semisimple finite tensor categories • 有限群の標数 0 の体上での表現 • 因子環などから生じるようなもの 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 10 / 1 テンソル圏の研究 o テンソル圏の研究における(私の)指針 • 群・ホップ代数的な手法 • トポロジー的な手法(例:図式的計算法など) • 作用素環論的な手法(例:Q-system など) 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 11 / 1 テンソル圏の研究 o テンソル圏の研究における(私の)指針 • 群・ホップ代数的な手法 • トポロジー的な手法(例:図式的計算法など) • 作用素環論的な手法(例:Q-system など) これらを圏論の枠組みで整理・理解し、活用する 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 11 / 1 テンソル圏の研究 o テンソル圏の研究における(私の)指針 • 群・ホップ代数的な手法 • トポロジー的な手法(例:図式的計算法など) • 作用素環論的な手法(例:Q-system など) これらを圏論の枠組みで整理・理解し、活用する o 今日の話 有限群の指標理論や有限群上のフーリエ変換を テンソル圏の枠組みで理解する。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 11 / 1 テンソル圏の研究 o テンソル圏の研究における(私の)指針 • 群・ホップ代数的な手法 • トポロジー的な手法(例:図式的計算法など) • 作用素環論的な手法(例:Q-system など) これらを圏論の枠組みで整理・理解し、活用する o 今日の話 有限群の指標理論や有限群上のフーリエ変換を テンソル圏の枠組みで理解する。 o 今後考えなければならない話 その結果がトポロジーや作用素環論の文脈で いったい何を意味しているのか? 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 11 / 1 有限群の表現論の 圏論的理解 • • • • 有限群の指標理論 有限群上のフーリエ変換 テンソル圏の “中心” Yetter-Drinfeld 加群による理解 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 12 / 1 有限群の指標理論 有限群 G の表現 V の指標は次で定義される: χV (g) = Trace(V → V ; v 7→ gv) (g ∈ G) トレースの性質より χV は類関数: χV (gxg −1 ) = χV (x) (∀g, x ∈ G) o 良く知られている結果 • 表現は指標で決定される • 既約指標の数=共役類の数 • 既約指標の直交関係式 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 13 / 1 有限群上のフーリエ変換 フーリエ変換 f :G→C ⇝ F(f ) = ∑ f (g)g −1 ∈ CG g∈G フーリエ変換は G 上の類関数の空間と CG の中心の間 の同型写像を誘導する。さらに… • δ が G のある共役類 C 上の特性関数なら F(δ) は 共役類 C−1 の元の和 (class sum) となる。 • χ が既約表現 V の指標なら CG · F(χ) ∼ = V ⊕ dim(V ) 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 14 / 1 テンソル圏への一般化 o 簡単な観察 —— 類関数の空間について A = CG を共役作用によって G の表現と思うと HomG (A, 1) は類関数の空間と思うことができる。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 15 / 1 テンソル圏への一般化 o 簡単な観察 —— 類関数の空間について A = CG を共役作用によって G の表現と思うと HomG (A, 1) は類関数の空間と思うことができる。 o テンソル圏の枠組みでは…… • 自明表現 1 は ⊗ に関する “単位元” である。 • A のほうは一見しただけではよくわからない。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 15 / 1 テンソル圏への一般化 o 簡単な観察 —— 類関数の空間について A = CG を共役作用によって G の表現と思うと HomG (A, 1) は類関数の空間と思うことができる。 o テンソル圏の枠組みでは…… • 自明表現 1 は ⊗ に関する “単位元” である。 • A のほうは一見しただけではよくわからない。 à ホップ代数の理論を注意深くおさらいしてみると テンソル圏の “中心” と呼ばれるものを使うと A に対応するものを定義できることが分かる。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 15 / 1 テンソル圏の中心 テンソル圏 C に対し、その中心 Z(C) を次で定義: Z(C) の対象:V ∈ Ob(C) と自然同型 σX : V ⊗ X → X ⊗ V (X ∈ Ob(C)) の組 (V, σ) で次の条件を満たすもの: σX⊗Y = (idX ⊗ σY ) ◦ (σX ⊗ idY ) [以下略] 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 16 / 1 テンソル圏の中心 テンソル圏 C に対し、その中心 Z(C) を次で定義: Z(C) の対象:V ∈ Ob(C) と自然同型 σX : V ⊗ X → X ⊗ V (X ∈ Ob(C)) の組 (V, σ) で次の条件を満たすもの: σX⊗Y = (idX ⊗ σY ) ◦ (σX ⊗ idY ) [以下略] • ホップ代数でいうと Drinfeld double 構成 あるいは Yetter-Drinfeld 加群の概念に対応。 • 作用素環論では Longo-Rehren subfactor に対応。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 16 / 1 随伴対象 o 随伴関手 R : A → B が L : B → A の右随伴 def ⇔ HomA (L(X), Y ) ∼ = HomB (X, R(Y )) 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 17 / 1 随伴対象 o 随伴関手 R : A → B が L : B → A の右随伴 def ⇔ HomA (L(X), Y ) ∼ = HomB (X, R(Y )) o 随伴対象 (Shimizu, arXiv:1504.01178) C をテンソル圏とする。忘却関手 U : Z(C) → C, (V, σ) 7→ V が右随伴 R : C → Z(C) を持つと仮定する。 このとき A := U R(1) を C の随伴対象と呼ぶ。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 17 / 1 随伴対象をどのように決定するか? 随伴対象を決定することは一般には困難。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 18 / 1 随伴対象をどのように決定するか? 随伴対象を決定することは一般には困難。 o 難しい理由 Z(C) は一般的な設定の元で定義されるが、具体的な 計算に向いたものではない。随伴対象を決定するため には、何らかの形で Z(C) を “実現” する必要がある。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 18 / 1 随伴対象をどのように決定するか? 随伴対象を決定することは一般には困難。 o 難しい理由 Z(C) は一般的な設定の元で定義されるが、具体的な 計算に向いたものではない。随伴対象を決定するため には、何らかの形で Z(C) を “実現” する必要がある。 o Yetter-Drinfeld modules C がホップ代数 H の表現圏の場合、その中心 Z(C) は “H 上の Yetter-Drinfeld 加群の圏” として実現すること ができ、随伴対象が何か具体的にわかる。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 18 / 1 Yetter-Drinfeld G-modules 有限群 G 上の Yetter-Drinfeld (YD) 加群とは À G の表現 V であり ⊕ Á G-次数付け V = g∈G Vg を持ち Â 次の Yetter-Drinfeld 条件を満たすものである。 g · Vh ⊂ Vghg−1 (∀g, h ∈ G) V を YD 加群とする。G の表現 X に対し σX を σX : V ⊗ X → X ⊗ V v ⊗ x → gx ⊗ v (x ∈ X, v ∈ Vg ) で定義すると (V, σ) は Rep(G) の中心の対象。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 19 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules C := Rep(G) とおく。以上の対応により Z(C) = {Yetter-Drinfeld G-modules} 忘却関手 U : Z(C) → C は “G-次数付を忘れる”。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 20 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules C := Rep(G) とおく。以上の対応により Z(C) = {Yetter-Drinfeld G-modules} 忘却関手 U : Z(C) → C は “G-次数付を忘れる”。 o U の右随伴 R の構成 (Radford 2003) • R(V ) = CG ⊗C V (as vector spaces) • G-作用: g · (x ⊗ v) := gxg −1 ⊗ gv • G-次数: R(V )g := {g ⊗ v | v ∈ V } 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 20 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules C := Rep(G) とおく。以上の対応により Z(C) = {Yetter-Drinfeld G-modules} 忘却関手 U : Z(C) → C は “G-次数付を忘れる”。 o U の右随伴 R の構成 (Radford 2003) • R(V ) = CG ⊗C V (as vector spaces) • G-作用: g · (x ⊗ v) := gxg −1 ⊗ gv • G-次数: R(V )g := {g ⊗ v | v ∈ V } o 随伴対象 A := U R(1) = G の共役表現 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 20 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules YD 加群と共役表現の関係が明らかになったので 群論的に重要な概念を(本当は Z(C) でやるべき だがさしあたり)YD 加群の言葉で翻訳しよう。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 21 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules YD 加群と共役表現の関係が明らかになったので 群論的に重要な概念を(本当は Z(C) でやるべき だがさしあたり)YD 加群の言葉で翻訳しよう。 o 類関数の空間 CF(G) := HomC (A, 1) 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 21 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules YD 加群と共役表現の関係が明らかになったので 群論的に重要な概念を(本当は Z(C) でやるべき だがさしあたり)YD 加群の言葉で翻訳しよう。 o 類関数の空間 CF(G) := HomC (A, 1) o 共役類 {G の共役類 } ↔ {R(1) の既約な “YD 部分加群”} [g] 7→ spanC {xgx−1 | x ∈ G} 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 21 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules 随伴の定義より次の同型が存在する: CF(G) = HomC (U R(1), 1) ∼ = HomZ(C) (R(1), R(1)) 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 22 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules 随伴の定義より次の同型が存在する: CF(G) = HomC (U R(1), 1) ∼ = HomZ(C) (R(1), R(1)) o 共役類上の特性関数 { 共役類 } ↔ {R(1) の既約な “YD 部分加群”} ↔ {EndZ(C) (R(1)) の既約な冪等元 } ↔ { 対応する共役類上の特性関数 } 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 22 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules 随伴の定義より次の同型が存在する: CF(G) = HomC (U R(1), 1) ∼ = HomZ(C) (R(1), R(1)) o 共役類上の特性関数 { 共役類 } ↔ {R(1) の既約な “YD 部分加群”} ↔ {EndZ(C) (R(1)) の既約な冪等元 } ↔ { 対応する共役類上の特性関数 } o 群環の中心 HomC (1, A) ∼ = 代数 CG の中心 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 22 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules o 表現の指標 V を G の表現とする。このとき µ : A ⊗ V → V, a ⊗ v 7→ av は G-加群の射。さらに次の G-加群の射がある: ε : V ⊗ V ∗ → 1, v ⊗ ξ 7→ ξ(v), ∑ η : 1 → V ⊗ V ∗ , 1 7→ ei ⊗ ei V の指標 χV : A → id⊗η 1 を次の合成により定義: µ⊗id → A −−−→ A ⊗ V ⊗ V ∗ −−−→ V ⊗ V ∗ − ε 1 à 通常の意味での指標と一致する。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 23 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules o フーリエ変換 λ ∈ CF(G) を λ(g) = δg,1 で定め F : CG → Map(G, C), F(g)(h) = λ(gh) とおくと、これはフーリエ逆変換 F−1 になる。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 24 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules o フーリエ変換 λ ∈ CF(G) を λ(g) = δg,1 で定め F : CG → Map(G, C), F(g)(h) = λ(gh) とおくと、これはフーリエ逆変換 F−1 になる。 観察: HomZ(C) (R(1), 1Z(C) ) = spanC {λ} 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 24 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules o フーリエ変換 λ ∈ CF(G) を λ(g) = δg,1 で定め F : CG → Map(G, C), F(g)(h) = λ(gh) とおくと、これはフーリエ逆変換 F−1 になる。 観察: HomZ(C) (R(1), 1Z(C) ) = spanC {λ} o Class sum 共役類上の特性関数をフーリエ変換すれば得られる。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 24 / 1 続き Yetter-Drinfeld G-modules o フーリエ変換 λ ∈ CF(G) を λ(g) = δg,1 で定め F : CG → Map(G, C), F(g)(h) = λ(gh) とおくと、これはフーリエ逆変換 F−1 になる。 観察: HomZ(C) (R(1), 1Z(C) ) = spanC {λ} o Class sum 共役類上の特性関数をフーリエ変換すれば得られる。 …と、このような調子で、関連するものが 共役表現 A および YD 加群 R(1) で記述され テンソル圏へと一般化が可能となる。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 24 / 1 ここまでの関連する文献 • Yongchang Zhu (1997) YD 加群と共役類の関係を観察(恐らく初出) • Cohen-Westreich (2007, 2008, 2011) 上記の Zhu の観察に基づき、共役類や指標表を 有限次元半単純ホップ代数へと拡張する。 • Fuchs-Schweigert (2010) 共形場理論への応用へ向け、今回紹介したものと ほぼ同様の手法で指標の概念を導入。 • Neshveyev-Yamashita (2015, arXiv:1501.07390) テンソル圏の中心とフュージョン代数(指標環) の関係など。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 25 / 1 Fourier transform on fusion categories — summary — • ここまでの話をフュージョン圏へと一般化 • 最近の結果の紹介 + Shimizu (arXiv:1504.01178) 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 26 / 1 フュージョン圏 ある種の有限性・半単純性・双対構造を持つような C-線形テンソル圏をフュージョン圏という。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 27 / 1 フュージョン圏 ある種の有限性・半単純性・双対構造を持つような C-線形テンソル圏をフュージョン圏という。 o ピボタル構造 (pivotal structure) ∼ = j:X− −−− → X ∗∗ , jX⊗Y = jX ⊗ jY このような構造を持たないようなフュージョン圏は知 られていない(ので、以下では存在を仮定)。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 27 / 1 フュージョン圏 ある種の有限性・半単純性・双対構造を持つような C-線形テンソル圏をフュージョン圏という。 o ピボタル構造 (pivotal structure) ∼ = j:X− −−− → X ∗∗ , jX⊗Y = jX ⊗ jY このような構造を持たないようなフュージョン圏は知 られていない(ので、以下では存在を仮定)。 o 組みひも構造 (braiding) ∼ = σX,Y : X ⊗ Y − −−− → Y ⊗ X, σV,X⊗Y = (idX ⊗ σV,Y ) ◦ (σV,X ⊗ idY ), σX⊗Y,V = (σV,X ⊗ idY ) ◦ (idX ⊗ σY,V ). 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 27 / 1 いろいろな概念の一般化 C をフュージョン圏とする。このとき U : Z(C) → C は右随伴 R を持つ (Müger)。 有限群論の様々な概念に対し YD 加群を用いた解釈を 与えたが、それと平行して以下のものが定義可能: À 随伴対象 A = U R(1) Á 類関数の空間 CF(C) := HomC (A, 1) Â 指標を対応させる写像 ch : Obj(C) → CF(C), X 7→ ch(X) Ã 共役類:R(1) の既約な部分対象 ※ Â の構成はここまでで述べたことだけでは無理。 関手 R をもう少し具体的に表示してやる必要がある。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 28 / 1 フーリエ変換 À まず A は実は “algebra in C” である。つまり u : 1 → A, m : A ⊗ A → A で結合律と単位律を満たすものがある。 Á λ ∈ HomZ(C) (R(1), 1) で λ ◦ u = id を満たすも のがただひとつ存在(ホップ代数上の積分と対応)。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 29 / 1 フーリエ変換 À まず A は実は “algebra in C” である。つまり u : 1 → A, m : A ⊗ A → A で結合律と単位律を満たすものがある。 Á λ ∈ HomZ(C) (R(1), 1) で λ ◦ u = id を満たすも のがただひとつ存在(ホップ代数上の積分と対応)。 o フーリエ変換 F : HomC (1, A) → HomC (A, 1) a 7→ λ ◦ m ◦ (a ⊗ idA ) F は全単射であることが示せるので F = F−1 とおき、 これをフーリエ変換と呼ぶ。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 29 / 1 指標表 o 共役類上の特性関数と class sum HomZ(C) (R(1), R(1)) ∼ = HomC (A, 1) 共役類に対応する冪等元 ↔ 共役類上の特性関数 (by Fourier tr.) 清水健一 (名古屋大学) ∼ = HomC (1, A) ↔ 共役類の class sum Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 30 / 1 指標表 o 共役類上の特性関数と class sum HomZ(C) (R(1), R(1)) ∼ = HomC (A, 1) 共役類に対応する冪等元 ↔ 共役類上の特性関数 (by Fourier tr.) ∼ = HomC (1, A) ↔ 共役類の class sum o 指標表 類関数の空間と HomC (1, A) の間にペアリング 合成 HomC (A, 1) × HomC (1, A) −−→ EndC (1) ∼ =C がある。指標と class sum のペアリングをとり適当に 正規化すると、C の “指標表” が定義できる。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 第 50 回 関数解析研究会 30 / 1 結果の紹介とまとめ フュージョン圏において指標と関連する概念を定義し た。フュージョン圏が組みひも構造を持つ場合、次の ようなことが成り立つ: • 指標の直交関係式 • 指標表の値が代数的整数であること à 問題:有限群の理論はどこまで一般化できるか? さらに C が “モジュラーテンソル圏” であるとき、 指標表は S-行列を適当に正規化することで得られる。 • 指標の直交関係式はフェアリンデ公式と対応して いるようにみえる。 ご清聴ありがとうございました。 清水健一 (名古屋大学) Fourier transform on fusion categories 清水健一 第 50 回 関数解析研究会 31 / 1
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