Fourier transform on fusion categories

Fourier transform on fusion categories
—— 有限群の理論からテンソル圏へ ——
清水健一
名古屋大学
2015 年 9 月 3 日
清水健一 (名古屋大学)
第 50 回 関数解析研究会
Fourier transform on fusion categories
第 50 回 関数解析研究会
1/1
はじめに
o 私の研究対象
• ホップ代数とテンソル圏
• 位相不変量などへの応用
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はじめに
o 私の研究対象
• ホップ代数とテンソル圏
• 位相不変量などへの応用
o テンソル圏の研究
à 作用素環論に由来する手法が少なくない。
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2/1
はじめに
o 私の研究対象
• ホップ代数とテンソル圏
• 位相不変量などへの応用
o テンソル圏の研究
à 作用素環論に由来する手法が少なくない。
o 目次
1. テンソル圏とは
2. 有限群の表現論の圏論的理解
3. Fourier transform on fusion categories
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はじめに
o 私の研究対象
• ホップ代数とテンソル圏
• 位相不変量などへの応用
o テンソル圏の研究
à 作用素環論に由来する手法が少なくない。
o 目次
1. テンソル圏とは (ゆっくり)
2. 有限群の表現論の圏論的理解 (くわしく)
3. Fourier transform on fusion categories (はやい)
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テンソル圏とは
• 圏と関手
• テンソル圏とその例
群とホップ代数/トポロジー/作用素環論
• 最近のテンソル圏の研究(私の周辺で)
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圏
C が圏であるとは…
• 対象のクラス Obj(C) = {X, Y, Z, . . . }
• 射の集合 HomC (X, Y )
• 射の合成と呼ばれる写像
HomC (Y, Z) × HomC (X, Y ) → HomC (X, Z)
が定義されており、さらに射の合成が結合律および単
位律を満たすことを言う。
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圏
C が圏であるとは…
• 対象のクラス Obj(C) = {X, Y, Z, . . . }
• 射の集合 HomC (X, Y )
• 射の合成と呼ばれる写像
HomC (Y, Z) × HomC (X, Y ) → HomC (X, Z)
が定義されており、さらに射の合成が結合律および単
位律を満たすことを言う。
o だいたいの数学的構造は圏となる
à 集合の圏、位相空間の圏、ベクトル空間の圏……
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関手 —— 圏の『準同型』
圏 A から圏 B への関手 F : A → B とは
• 対象の間の対応 F : Obj(A) → Obj(B)
• 各 X, Y ∈ Obj(A) に対する射の対応
F : HomA (X, Y ) → HomB (F (X), F (Y ))
であって、射の結合および恒等射を保つもの。
o 関手の例
• 基本群(点付き空間の圏から群の圏への関手)
• 環上のテンソル積や Hom などは関手と思える。
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テンソル圏
例:Rep(G) —— 群 G の有限次元表現の圏
これは圏であるだけでなく、様々な構造を持つ。
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テンソル圏
例:Rep(G) —— 群 G の有限次元表現の圏
これは圏であるだけでなく、様々な構造を持つ。
• テンソル積表現 X ⊗C Y
• 自明表現 1 := C
• 反傾表現 X ∗ = HomC (X, C) (双対性)
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テンソル圏
例:Rep(G) —— 群 G の有限次元表現の圏
これは圏であるだけでなく、様々な構造を持つ。
• テンソル積表現 X ⊗C Y
• 自明表現 1 := C
• 反傾表現 X ∗ = HomC (X, C) (双対性)
o テンソル圏
(※通常はもう少し条件を加える)
対象の間に “結合的” かつ “単位的” な二項演算 ⊗ が
定義されているような圏。“双対” を持つことも仮定
することが多い。
+ Mac Lane: “Categories for Working mathematicians”,
Müger: “Tensor categories: A selective guided tour”.
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テンソル圏の例 — 群とホップ代数
o ホップ代数
群の概念の “非可換幾何学” 的な意味での一般化。
ホップ代数の表現圏は双対を持つテンソル圏となる。
注意:一般のホップ代数の表現圏においては
X ⊗Y ∼
= Y ⊗ X は成り立たない。
o ホップ代数の例
• 群環
• Lie 代数の普遍包絡環
• 量子群
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テンソル圏の例 — トポロジー
o タングルの圏 T
Obj(T ) = {0, 1, 2, . . . }
HomT (n, m)
= (n, m)-タングルの同値類
射の合成:タングルの縦結合
テンソル積:タングルの並置
双対:タングルを 180◦ 回転
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(3, 5)-tangle の例
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テンソル圏の例 — トポロジー
o タングルの圏 T
Obj(T ) = {0, 1, 2, . . . }
HomT (n, m)
= (n, m)-タングルの同値類
射の合成:タングルの縦結合
テンソル積:タングルの並置
双対:タングルを 180◦ 回転
(3, 5)-tangle の例
o 他にも……
リボンタングルの圏、コボルディズムの圏など。
⇝ 量子不変量の構成の基礎。
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テンソル圏の例 — 作用素環論
o 因子環
自明な中心を持つフォン・ノイマン環。
因子環 N ⇝ ヒルベルト N -双加群のテンソル圏
o 部分因子環論からテンソル圏へ
指数有限な因子環の拡大 N ⊂ M
⇝ Q-systems
⇝ テンソル圏の “森田コンテキスト”
+ Müger, From subfactors to categories and topology I & II
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私が主に興味を持っているテンソル圏
Finite
tensor categories (Etingof-Ostrik)
• 一般の有限次元ホップ代数の表現圏
• 有限群の正標数の体上での表現
• ある種の頂点作用素代数(恐らく…)
Fusion
categories (Etingof-Nikshych-Ostrik)
= semisimple finite tensor categories
• 有限群の標数 0 の体上での表現
• 因子環などから生じるようなもの
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テンソル圏の研究
o テンソル圏の研究における(私の)指針
• 群・ホップ代数的な手法
• トポロジー的な手法(例:図式的計算法など)
• 作用素環論的な手法(例:Q-system など)
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テンソル圏の研究
o テンソル圏の研究における(私の)指針
• 群・ホップ代数的な手法
• トポロジー的な手法(例:図式的計算法など)
• 作用素環論的な手法(例:Q-system など)
これらを圏論の枠組みで整理・理解し、活用する
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テンソル圏の研究
o テンソル圏の研究における(私の)指針
• 群・ホップ代数的な手法
• トポロジー的な手法(例:図式的計算法など)
• 作用素環論的な手法(例:Q-system など)
これらを圏論の枠組みで整理・理解し、活用する
o 今日の話
有限群の指標理論や有限群上のフーリエ変換を
テンソル圏の枠組みで理解する。
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テンソル圏の研究
o テンソル圏の研究における(私の)指針
• 群・ホップ代数的な手法
• トポロジー的な手法(例:図式的計算法など)
• 作用素環論的な手法(例:Q-system など)
これらを圏論の枠組みで整理・理解し、活用する
o 今日の話
有限群の指標理論や有限群上のフーリエ変換を
テンソル圏の枠組みで理解する。
o 今後考えなければならない話
その結果がトポロジーや作用素環論の文脈で
いったい何を意味しているのか?
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有限群の表現論の
圏論的理解
•
•
•
•
有限群の指標理論
有限群上のフーリエ変換
テンソル圏の “中心”
Yetter-Drinfeld 加群による理解
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有限群の指標理論
有限群 G の表現 V の指標は次で定義される:
χV (g) = Trace(V → V ; v 7→ gv) (g ∈ G)
トレースの性質より χV は類関数:
χV (gxg −1 ) = χV (x) (∀g, x ∈ G)
o 良く知られている結果
• 表現は指標で決定される
• 既約指標の数=共役類の数
• 既約指標の直交関係式
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有限群上のフーリエ変換
フーリエ変換
f :G→C
⇝
F(f ) =
∑
f (g)g −1 ∈ CG
g∈G
フーリエ変換は G 上の類関数の空間と CG の中心の間
の同型写像を誘導する。さらに…
• δ が G のある共役類 C 上の特性関数なら F(δ) は
共役類 C−1 の元の和 (class sum) となる。
• χ が既約表現 V の指標なら
CG · F(χ) ∼
= V ⊕ dim(V )
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テンソル圏への一般化
o 簡単な観察 —— 類関数の空間について
A = CG を共役作用によって G の表現と思うと
HomG (A, 1) は類関数の空間と思うことができる。
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テンソル圏への一般化
o 簡単な観察 —— 類関数の空間について
A = CG を共役作用によって G の表現と思うと
HomG (A, 1) は類関数の空間と思うことができる。
o テンソル圏の枠組みでは……
• 自明表現 1 は ⊗ に関する “単位元” である。
• A のほうは一見しただけではよくわからない。
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テンソル圏への一般化
o 簡単な観察 —— 類関数の空間について
A = CG を共役作用によって G の表現と思うと
HomG (A, 1) は類関数の空間と思うことができる。
o テンソル圏の枠組みでは……
• 自明表現 1 は ⊗ に関する “単位元” である。
• A のほうは一見しただけではよくわからない。
à ホップ代数の理論を注意深くおさらいしてみると
テンソル圏の “中心” と呼ばれるものを使うと
A に対応するものを定義できることが分かる。
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テンソル圏の中心
テンソル圏 C に対し、その中心 Z(C) を次で定義:
Z(C) の対象:V ∈ Ob(C) と自然同型
σX : V ⊗ X → X ⊗ V (X ∈ Ob(C))
の組 (V, σ) で次の条件を満たすもの:
σX⊗Y = (idX ⊗ σY ) ◦ (σX ⊗ idY )
[以下略]
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テンソル圏の中心
テンソル圏 C に対し、その中心 Z(C) を次で定義:
Z(C) の対象:V ∈ Ob(C) と自然同型
σX : V ⊗ X → X ⊗ V (X ∈ Ob(C))
の組 (V, σ) で次の条件を満たすもの:
σX⊗Y = (idX ⊗ σY ) ◦ (σX ⊗ idY )
[以下略]
• ホップ代数でいうと Drinfeld double 構成
あるいは Yetter-Drinfeld 加群の概念に対応。
• 作用素環論では Longo-Rehren subfactor に対応。
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随伴対象
o 随伴関手
R : A → B が L : B → A の右随伴
def
⇔ HomA (L(X), Y ) ∼
= HomB (X, R(Y ))
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随伴対象
o 随伴関手
R : A → B が L : B → A の右随伴
def
⇔ HomA (L(X), Y ) ∼
= HomB (X, R(Y ))
o 随伴対象 (Shimizu, arXiv:1504.01178)
C をテンソル圏とする。忘却関手
U : Z(C) → C, (V, σ) 7→ V
が右随伴 R : C → Z(C) を持つと仮定する。
このとき A := U R(1) を C の随伴対象と呼ぶ。
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随伴対象をどのように決定するか?
随伴対象を決定することは一般には困難。
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随伴対象をどのように決定するか?
随伴対象を決定することは一般には困難。
o 難しい理由
Z(C) は一般的な設定の元で定義されるが、具体的な
計算に向いたものではない。随伴対象を決定するため
には、何らかの形で Z(C) を “実現” する必要がある。
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随伴対象をどのように決定するか?
随伴対象を決定することは一般には困難。
o 難しい理由
Z(C) は一般的な設定の元で定義されるが、具体的な
計算に向いたものではない。随伴対象を決定するため
には、何らかの形で Z(C) を “実現” する必要がある。
o Yetter-Drinfeld modules
C がホップ代数 H の表現圏の場合、その中心 Z(C) は
“H 上の Yetter-Drinfeld 加群の圏” として実現すること
ができ、随伴対象が何か具体的にわかる。
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Yetter-Drinfeld G-modules
有限群 G 上の Yetter-Drinfeld (YD) 加群とは
À G の表現 V であり
⊕
Á G-次数付け V = g∈G Vg を持ち
 次の Yetter-Drinfeld 条件を満たすものである。
g · Vh ⊂ Vghg−1 (∀g, h ∈ G)
V を YD 加群とする。G の表現 X に対し σX を
σX : V ⊗ X → X ⊗ V
v ⊗ x → gx ⊗ v (x ∈ X, v ∈ Vg )
で定義すると (V, σ) は Rep(G) の中心の対象。
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続き
Yetter-Drinfeld G-modules
C := Rep(G) とおく。以上の対応により
Z(C) = {Yetter-Drinfeld G-modules}
忘却関手 U : Z(C) → C は “G-次数付を忘れる”。
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Yetter-Drinfeld G-modules
C := Rep(G) とおく。以上の対応により
Z(C) = {Yetter-Drinfeld G-modules}
忘却関手 U : Z(C) → C は “G-次数付を忘れる”。
o U の右随伴 R の構成 (Radford 2003)
• R(V ) = CG ⊗C V (as vector spaces)
• G-作用: g · (x ⊗ v) := gxg −1 ⊗ gv
• G-次数: R(V )g := {g ⊗ v | v ∈ V }
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Yetter-Drinfeld G-modules
C := Rep(G) とおく。以上の対応により
Z(C) = {Yetter-Drinfeld G-modules}
忘却関手 U : Z(C) → C は “G-次数付を忘れる”。
o U の右随伴 R の構成 (Radford 2003)
• R(V ) = CG ⊗C V (as vector spaces)
• G-作用: g · (x ⊗ v) := gxg −1 ⊗ gv
• G-次数: R(V )g := {g ⊗ v | v ∈ V }
o 随伴対象
A := U R(1) = G の共役表現
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Yetter-Drinfeld G-modules
YD 加群と共役表現の関係が明らかになったので
群論的に重要な概念を(本当は Z(C) でやるべき
だがさしあたり)YD 加群の言葉で翻訳しよう。
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YD 加群と共役表現の関係が明らかになったので
群論的に重要な概念を(本当は Z(C) でやるべき
だがさしあたり)YD 加群の言葉で翻訳しよう。
o 類関数の空間
CF(G) := HomC (A, 1)
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YD 加群と共役表現の関係が明らかになったので
群論的に重要な概念を(本当は Z(C) でやるべき
だがさしあたり)YD 加群の言葉で翻訳しよう。
o 類関数の空間
CF(G) := HomC (A, 1)
o 共役類
{G の共役類 } ↔ {R(1) の既約な “YD 部分加群”}
[g] 7→ spanC {xgx−1 | x ∈ G}
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随伴の定義より次の同型が存在する:
CF(G) = HomC (U R(1), 1)
∼
= HomZ(C) (R(1), R(1))
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随伴の定義より次の同型が存在する:
CF(G) = HomC (U R(1), 1)
∼
= HomZ(C) (R(1), R(1))
o 共役類上の特性関数
{ 共役類 } ↔ {R(1) の既約な “YD 部分加群”}
↔ {EndZ(C) (R(1)) の既約な冪等元 }
↔ { 対応する共役類上の特性関数 }
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随伴の定義より次の同型が存在する:
CF(G) = HomC (U R(1), 1)
∼
= HomZ(C) (R(1), R(1))
o 共役類上の特性関数
{ 共役類 } ↔ {R(1) の既約な “YD 部分加群”}
↔ {EndZ(C) (R(1)) の既約な冪等元 }
↔ { 対応する共役類上の特性関数 }
o 群環の中心
HomC (1, A) ∼
= 代数 CG の中心
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o 表現の指標
V を G の表現とする。このとき
µ : A ⊗ V → V, a ⊗ v 7→ av
は G-加群の射。さらに次の G-加群の射がある:
ε : V ⊗ V ∗ → 1, v ⊗ ξ 7→ ξ(v),
∑
η : 1 → V ⊗ V ∗ , 1 7→
ei ⊗ ei
V の指標 χV : A →
id⊗η
1 を次の合成により定義:
µ⊗id
→
A −−−→ A ⊗ V ⊗ V ∗ −−−→ V ⊗ V ∗ −
ε
1
à 通常の意味での指標と一致する。
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続き
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o フーリエ変換
λ ∈ CF(G) を λ(g) = δg,1 で定め
F : CG → Map(G, C), F(g)(h) = λ(gh)
とおくと、これはフーリエ逆変換 F−1 になる。
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o フーリエ変換
λ ∈ CF(G) を λ(g) = δg,1 で定め
F : CG → Map(G, C), F(g)(h) = λ(gh)
とおくと、これはフーリエ逆変換 F−1 になる。
観察: HomZ(C) (R(1), 1Z(C) ) = spanC {λ}
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o フーリエ変換
λ ∈ CF(G) を λ(g) = δg,1 で定め
F : CG → Map(G, C), F(g)(h) = λ(gh)
とおくと、これはフーリエ逆変換 F−1 になる。
観察: HomZ(C) (R(1), 1Z(C) ) = spanC {λ}
o Class sum
共役類上の特性関数をフーリエ変換すれば得られる。
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o フーリエ変換
λ ∈ CF(G) を λ(g) = δg,1 で定め
F : CG → Map(G, C), F(g)(h) = λ(gh)
とおくと、これはフーリエ逆変換 F−1 になる。
観察: HomZ(C) (R(1), 1Z(C) ) = spanC {λ}
o Class sum
共役類上の特性関数をフーリエ変換すれば得られる。
…と、このような調子で、関連するものが
共役表現 A および YD 加群 R(1) で記述され
テンソル圏へと一般化が可能となる。
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ここまでの関連する文献
• Yongchang Zhu (1997)
YD 加群と共役類の関係を観察(恐らく初出)
• Cohen-Westreich (2007, 2008, 2011)
上記の Zhu の観察に基づき、共役類や指標表を
有限次元半単純ホップ代数へと拡張する。
• Fuchs-Schweigert (2010)
共形場理論への応用へ向け、今回紹介したものと
ほぼ同様の手法で指標の概念を導入。
• Neshveyev-Yamashita (2015, arXiv:1501.07390)
テンソル圏の中心とフュージョン代数(指標環)
の関係など。
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— summary —
• ここまでの話をフュージョン圏へと一般化
• 最近の結果の紹介
+ Shimizu (arXiv:1504.01178)
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フュージョン圏
ある種の有限性・半単純性・双対構造を持つような
C-線形テンソル圏をフュージョン圏という。
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フュージョン圏
ある種の有限性・半単純性・双対構造を持つような
C-線形テンソル圏をフュージョン圏という。
o ピボタル構造 (pivotal structure)
∼
=
j:X−
−−−
→ X ∗∗ , jX⊗Y = jX ⊗ jY
このような構造を持たないようなフュージョン圏は知
られていない(ので、以下では存在を仮定)。
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フュージョン圏
ある種の有限性・半単純性・双対構造を持つような
C-線形テンソル圏をフュージョン圏という。
o ピボタル構造 (pivotal structure)
∼
=
j:X−
−−−
→ X ∗∗ , jX⊗Y = jX ⊗ jY
このような構造を持たないようなフュージョン圏は知
られていない(ので、以下では存在を仮定)。
o 組みひも構造 (braiding)
∼
=
σX,Y : X ⊗ Y −
−−−
→ Y ⊗ X,
σV,X⊗Y = (idX ⊗ σV,Y ) ◦ (σV,X ⊗ idY ),
σX⊗Y,V = (σV,X ⊗ idY ) ◦ (idX ⊗ σY,V ).
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いろいろな概念の一般化
C をフュージョン圏とする。このとき U : Z(C) → C
は右随伴 R を持つ (Müger)。
有限群論の様々な概念に対し YD 加群を用いた解釈を
与えたが、それと平行して以下のものが定義可能:
À 随伴対象 A = U R(1)
Á 類関数の空間 CF(C) := HomC (A, 1)
 指標を対応させる写像
ch : Obj(C) → CF(C), X 7→ ch(X)
à 共役類:R(1) の既約な部分対象
※ Â の構成はここまでで述べたことだけでは無理。
関手 R をもう少し具体的に表示してやる必要がある。
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Fourier transform on fusion categories
第 50 回 関数解析研究会
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フーリエ変換
À まず A は実は “algebra in C” である。つまり
u : 1 → A, m : A ⊗ A → A
で結合律と単位律を満たすものがある。
Á λ ∈ HomZ(C) (R(1), 1) で λ ◦ u = id を満たすも
のがただひとつ存在(ホップ代数上の積分と対応)。
清水健一 (名古屋大学)
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フーリエ変換
À まず A は実は “algebra in C” である。つまり
u : 1 → A, m : A ⊗ A → A
で結合律と単位律を満たすものがある。
Á λ ∈ HomZ(C) (R(1), 1) で λ ◦ u = id を満たすも
のがただひとつ存在(ホップ代数上の積分と対応)。
o フーリエ変換
F : HomC (1, A) → HomC (A, 1)
a 7→ λ ◦ m ◦ (a ⊗ idA )
F は全単射であることが示せるので F = F−1 とおき、
これをフーリエ変換と呼ぶ。
清水健一 (名古屋大学)
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指標表
o 共役類上の特性関数と class sum
HomZ(C) (R(1), R(1)) ∼
= HomC (A, 1)
共役類に対応する冪等元 ↔ 共役類上の特性関数
(by Fourier tr.)
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∼
= HomC (1, A)
↔ 共役類の class sum
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指標表
o 共役類上の特性関数と class sum
HomZ(C) (R(1), R(1)) ∼
= HomC (A, 1)
共役類に対応する冪等元 ↔ 共役類上の特性関数
(by Fourier tr.)
∼
= HomC (1, A)
↔ 共役類の class sum
o 指標表
類関数の空間と HomC (1, A) の間にペアリング
合成
HomC (A, 1) × HomC (1, A) −−→ EndC (1) ∼
=C
がある。指標と class sum のペアリングをとり適当に
正規化すると、C の “指標表” が定義できる。
清水健一 (名古屋大学)
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結果の紹介とまとめ
フュージョン圏において指標と関連する概念を定義し
た。フュージョン圏が組みひも構造を持つ場合、次の
ようなことが成り立つ:
• 指標の直交関係式
• 指標表の値が代数的整数であること
à 問題:有限群の理論はどこまで一般化できるか?
さらに C が “モジュラーテンソル圏” であるとき、
指標表は S-行列を適当に正規化することで得られる。
• 指標の直交関係式はフェアリンデ公式と対応して
いるようにみえる。
ご清聴ありがとうございました。
清水健一 (名古屋大学)
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